ジェームズ・キャメロン監督の最新作、映画「アバター」
プロデューサー、ジョン・ランドー氏インタビュー
「ゲームでは映画と違う3つのストーリーが用意されている」

10月18日収録

12月23日公開




 20世紀フォックス映画は12月23日より全国の劇場にて映画「アバター」の公開を予定している。映画公開に先がけ、10月17日に第22回東京国際映画祭で「アバター」の一部の映像を先行公開した「フッテージ映像」が公開され、さらに10月18日には主要キャストとプロデューサーのジョン・ランドー氏の記者会見が行なわれた。

 「アバター」は、ジェームズ・キャメロンの一般劇場で公開される作品としては12年ぶりの監督作品で3D映像で撮影され、いくつかの劇場では3Dで見ることができる。宇宙の遙か彼方で地球人類が発見した衛星パンドラでの出会いと事件を描く。衛星パンドラの美しさ、異星人との出会いを経て、「人間とは何か」というテーマを問うSF大作である。

 本作はユービーアイソフトから「アバター THE GAME」として2010年1月7日の発売を予定している。プラットフォームはPS3、Xbox 360、DSの3機種となる。本稿では映画の情報のみならず、ジョン・ランドー氏が語ってくれたゲームの情報も紹介したい。

 


■ 幻想的な3D映像で描かれる衛星パンドラ、青い肌を持つ美女との出会いで生まれる恋の物語

主人公ジェイク。後ろは彼の操るアバターだ

 「アバター」は日本では12月23日よりTOHOシネマズ日劇他、全国でロードショーとなる。「タイタニック」や「ターミネーター」、「ターミネーター2」、「エイリアン2」など多数の作品を手がけたジェームズ・キャメロンの12年ぶりの監督作品である。「アバター」は構想14年といわれており、CGキャラクターと実写映像を合成し、さらに3D映像で収録するという新技術をふんだんに投入した映画となる。

 同作は10月17日、東京・六本木で行なわれた第22回東京国際映画祭オープニング・デイに約30分の「フッテージ映像」が上映された。この映像は「アバター」の本編から前半を中心にいくつかのシーンを抜き出し、3D映像で一足先に体験できるものだ。今回、劇場で配布された3Dメガネをつけて、この映像を楽しむことができた。

 「アバター」では、地球から遙かに離れた衛星「パンドラ」が舞台となる。時代は人類が宇宙進出を果たした22世紀だ。パンドラには物体を空中に浮かせる貴重な鉱物アンオブタニウム(1kg=20億円)があり、この鉱物を採掘しようと企業を中心に計画が進められていた。核になるのが「アバター計画」である。

 パンドラには知能が高く、3メートルの身長と尾を持つ原住民「ナヴィ」が原始的な生活を送っている。アバター計画はナヴィと人間のDNAを組み合わせた肉体“アバター”を作り出し、人間の脳波でコントロールし、アバターによってパンドラの調査、採掘作業の準備をするというものだった。

 主人公の元兵士のジェイクは事故で下半身が動かない体となってしまっていた。生きる目的を失いかけたジェイクは死んでしまった双子の兄が進めていたアバタープロジェクトから誘いを受ける。アバターはコピーしたDNAと同じものでしか動かせない。兄は死んでしまったが、一卵双生児のジェイクならば兄のDNAで作ったアバターを動かせるのだ。アバターという第2の体を得たジェイクは歓喜する。再び両足で地面が踏みしめられるようになったのだ。

 ジェイクは生物学者のグレース博士などアバタープロジェクトのメンバーと共に、アバターでパンドラを探索していく。あるきっかけで命を救われたナヴィの1部族の族長の娘ネィティリと知り合い、ジェイクはやがて恋に落ちていく。ジェイクは徐々にナヴィの生活を学び、受け入れられていった。しかし地球軍の決断がジェイクとネィティリの運命を大きく翻弄する。鉱物確保に焦った地球軍はロボット兵器等と共に軍隊を投入、ナヴィに対し戦争を仕掛ける。ジェイクは2つの種族と恋の狭間で苦悩する。彼が下した結論とは?

 今回見ることができたフッテージ映像では、3D映像の迫力に圧倒された。特に衛星パンドラに降り立ったときの衝撃が大きい。パンドラはジャングルのような植物の絡まる生命溢れる地で、手前の植物の質感から、森の奥に広がる闇の重さ、画面内を飛ぶ羽虫の存在感など、実際のジャングルを歩いているような感触と、パンドラならではの異世界感を感じさせる。パンドラは夜になるとさらに驚きを与えてくれる。森には夜行植物が多く、さらに幻想的な美しさを見せてくれるのだ。

 映像では、宇宙空間からパンドラに近付く地球の船、アバターを見つめるジェイク、アバターとなり足が動くことに興奮を抑えられないジェイクの様子、緊張しながらパンドラに降り立つアバター達といった場面が展開する。そしてジェイクを救うネィティリ。夜の幻想的な森の中で襲撃してくる原住生物を次々と倒すネィティリは、キャメロン監督が作品の中で繰り返し描く「強く美しいヒロイン」を受け継いでいると感じさせた。ナヴィは長い尾を持ち、人間の2倍近くの身長がある。とがった耳や縦長の頭など人間とは違った外見だが、野生動物と人間のどちらの美も感じさせる。

 フッテージなため、場面は次々と変わり細かいストーリーはわからないのだが、ジェイクがナヴィに受けいられていく場面が描かれる。ナヴィには触手のような特別な感覚器があり、これを野生動物の同じ感覚器にからみつかせることで意のままに操ることができるのだ。ジェイクはこの力で翼竜のような生物バンシーをてなづけ、自由自在に空を飛び回る。「空に岩塊が浮かぶ」というパンドラならではの風景は特に3Dと相性が良く、岩の間に伸びた木の根を渡る“高さ”の恐怖感、空を飛ぶ爽快感が感じられた。

 ここからは瞬間的なカットが続く。パンドラに次々と降下する巨大な人型兵器、弓と矢で立ち向かうナヴィ達。ストーリーがどう展開するか興味が惹かれた。「アバター」は日本では12月23日より全国公開される予定だ。劇場情報などは下記公式ページをチェックして欲しい。


映画のシーン。右上の写真でナヴィの大きさがわかる。下段は幻想的なパンドラの風景と、戦いを予感させる地球軍の飛行機

【最新予告編】
※予告編では12月18日公開となっておりますが、正式な公開日は12月23日となります。

【予告編】


■ 役者の本質を問う「アバターの撮影」、キャメロン監督が求め続けるぶれない方向性

写真右から、プロデューサーのジョン・ランドー氏、グレース博士役のシガーニー・ウィーバーさん、ジェイク役のサム・ワーシントンさん、ネィティリ役のゾーイ・サルダナさん
こちらはゾーイさん、サムさん、ジェイクさんのカット

 10月18日には、東京六本木で主要キャストとプロデューサーのジョン・ランドー氏の記者会見が行なわれた。登壇したキャストはグレース博士役のシガーニー・ウィーバーさん、ジェイク役のサム・ワーシントンさん、ネィティリ役のゾーイ・サルダナさん。

 最初にランドー氏はシガーニーさんの役名は最初“グレース・シップレイ”だったが、シガーニーさんが演じるにあたって、シガーニーさんがかつて「エイリアン」で演じた“リプリー”に音の響きが似ていたため、“グレース・オーガスティン”に変えたという。ランドー氏は「映画は皆様と感動をわかちあえたいから作っている。『アバター』でもうすぐそれができる、私は今興奮している。現在、我々はサウンドを入れた形での編集の最終段階で、VFXの確認作業は8~10時間行なっているところだ」と制作の進行状況を説明。

 さらにランドー氏は「東京国際映画祭に来れたことは私にとってとても感慨深い。12年前、私とキャメロンは『タイタニック』をここで出展し、とても高い評価をもらった。それは世界的な大ヒットとなった。『アバター』もその旅路の延長線上にある。キャメロンは常に観客のためを思って自分にプレッシャーをかけるタイプの男だ。『アバター』は『タイタニック』同様、自信を持ってお届けできる作品になっている」と言葉を続けた。

 シガーニーさんは何度かキャメロン作品に出演していることからキャメロン監督について「この映画の最初のアイデアは14歳の時に見たかった映画だと語っていました。観客の中の『14歳の自分』に語りかける映画だと思います。何度も見たくなる映画になっていると思います。自分の経験と、キャメロン監督の時間と努力を感じてください。SFは、『人間とは何か』を問うテーマを持っていると思います。今の時代にマッチしたテーマを持つ作品です」と語った。

 このコメントを受けサムさんは、「キャメロン監督が作り上げたこの素晴らしい世界の一部になれたことは、誇りに思ってます」。ゾーイさんは「キャメロン監督は映画を愛しており、素晴らしいストーリーを作る人です。私も参加ができて名誉に思えます」と語った。

 撮影の時にキャメロン監督から何かアドバイスはあったか、という質問にゾーイさんは「監督はうまくいくと指を鳴らす癖があるの。それは彼がONになっている印で、『今はとてもいい状態なんだ』ということがわかるようになったんです」と答えた。サムさんはそれに被せるように「毎回指を鳴らしてくれたわけじゃないけどね」とユーモアを交えて語った。

 サムさんはさらに「映画は永遠に残るものだ。監督の作品には彼の血と汗と涙がこもっている。僕もこの作品には同じようにすべてを捧げたつもりだ。彼の想像力のすべてが込められているし、キャメロン監督は俳優にベストを求めるタイプの人だ。僕らもまたベストを尽くした。映画でそれらを感じて欲しいね」と語った。

 シガーニーさんは「私は何度か監督と映画を作りましたが、彼は自分に過剰なプレッシャーをかけ、独自性と野心的で興奮させられる作品を作ります。彼と仕事を続けていくとどんどん楽しくなってくる。今回監督は『3Dカメラ』という新技術を発明し、世界観、キャラクターも独自のものとなっています。大変な仕事でしたが、その素晴らしさを感じて欲しいです」とアピール。

 3DCGと実写映像を合わせた「エモーションキャプチャー」という技術に関しては、サムさんは「僕たちは灰色一色の部屋で、何もない状態でモーションキャプチャーのスーツだけ着て撮影したんだ。それは僕にとっては解放された経験だったね。役者の想像力ですべてを作るというのは、演技の本質に戻るものだとおもう。僕自身もとても楽しんだ。映画では素晴らしく動く鳥バンシーも、キャプチャースタジオではおもちゃのゴムの鳥で、撮影では5歳の子供の遊びのような感じだった。これでお金がもらえるのは、犯罪に近いんじゃないかとも思ったね。ほんとにとても楽しかったよ」とジョークを交えて答えた。

 サムさんのコメントに続き、ゾーイさんは「子供の遊びのような撮影だけど、開放感を与えてくれるものでした。これは映画に新しい進化をもたらしてくれると思う。ヘアメイクやセットの準備がなく、監督と役者がオープンなフィールドで撮影できるというのは、想像力を最大限に使って作ることができる。作られたパンドラの世界は素晴らしくて、ここにいたい、帰りたくないと思いました」と語った。サムさんは「灰色のスーツに体中ドットをつけた姿で演技をしなくちゃいけない、さらにとんがり耳とシッポまでついてるから、みんな笑わずに演技するのが大変だったよ」と再度会場を笑わせた。

 サムさんはさらに制作時のエピソードも紹介した。「僕らは撮影の前、ハワイにあるジャングルに裸に近い恰好で映画の感触を体験する事をやったんだよ。監督はハンディーカムでそれを撮影してね。そしたら観光客に見つかって、何してるんだと聞かれて、『キャメロンの映画を撮っているんだ』って答えたら、『ずいぶん落ちぶれたなあ』って言われたよ」と明かした。シガーニーさんは「ハワイの撮影は楽しかった。私は植物学者という設定なので、ハワイで実際に植物採取もやってみました。休日はパラソルをビーチに立て、一杯飲んで……とても楽しかったです」と振り返った。

 ランドー氏は「劇中、ジェイクは『これまで俺は何のために戦っているか、見つけられなかった』。ジェイクはパンドラに降り立ちネィティリと出会うことで様々なことを学び、ナヴィと地球人の間で苦悩し、やがて戦うための理由を見つけていきます。『アバター』は皆さんをエモーショナルな旅に誘います。向上心を持った感情移入のできるキャラクターと共に旅を楽しんでください」とアピール。

 シガーニーさんは「この映画は精神的にはもちろん、肉体的にも旅をするような充実感を与えてくれます。準備はいいですか? これまでの3D映画はショッキングな映像で驚かすだけでしたが、この作品はスケールの大きなシリアスなストーリーを最もリアルな感触で描くために技術を使っています。“新しい映画”がこの作品から始まると思います」と3D技術が導入された意義について言及。

 最後にシガーニーさんは映画を待つファンに向かって、「今回、素晴らしいキャストとスタッフと共に素晴らしい体験をさせてもらいました。キャメロン監督が日本に来れなかったのはとても残念でしたが、みなさんをぜひ『アバター』の世界にお招きしたいと思います」と語った。

 記者会見の後、プロデューサーのランドー氏と個別にインタビューを行なうことができた。ゲーム化に関しても深く関わっていて、ランドー氏自身ゲームが大好きだという。インタビューは他の媒体と合同で行なわれたのだが、筆者がゲーム誌の記者だと知ると、「通訳に聞く前から、『ゲーム』という単語はわかったよ、ゲームのことを語ろう!」と積極的な姿勢を見せてくれた。ゲームに関してのコメントは別章で紹介したい。

 インタビューでランドー氏は映画「アバター」に関して、キャメロン監督がソニーに特別に発注した軽量化カメラを2台用い、2つの異なる視点から生まれる映像を重ねることで3D映像を作り上げたという。このカメラは自由に視野や視界を変えられるように台にも工夫がされていて、これまでにない3D映像を撮ることに成功したという。

 「3D映像は結局、技術ではなく、哲学だと思う。スクリーンを意識させず、観客が実際にその世界の中にいるような感覚を体験して欲しくて今回は3Dという映像表現を選んだ。私達はその理念を追求したつもりだ。

 もちろん、革新性に挑戦しながら、テーマそのものは観客に考えてもらう映画になっている。アプローチによって受け取るメッセージは違うと思う。2つの民族の関係、地球環境への考察、外国へ侵略を行なうことの是非を考える人もいるだろう。映画を見ているときは脅威の映像とストーリーに圧倒されるかもしれない。一歩劇場から出たときに色々なことに思いを巡らせる作品になっている」とランドー氏は語った。

 ランドー氏が最後に語ったのは、ジェームズ・キャメロン監督のことだ。ランドー氏は「キャメロンはものすごく遠くにあるターゲットを見つけることができる。そのターゲットとはストーリーでありキャラクターだ。映画作りは長い道を歩むがキャメロンはその道を踏み外さない。多くの監督が技術や演出などにそれてしまう中、キャメロンはストーリーとキャラクターというフォーカスから外れないんだよ」と語った。キャメロン監督が産み出すこの新たな作品がどんなものになるか楽しみである。


映画の制作中の場面。右が監督を務めるジェームズ・キャメロン氏。構えているのが今回開発されたカメラだろうか


■ ランドー氏ゲームを語る。「アバター THE GAME」は3つのストーリーと映画を補完する情報が魅力

ジョン・ランドー氏はゲームが好きとのことで、映画に劣らぬ情熱でゲームのことも語ってくれた

 「アバター」のゲームに関しては、「アバター THE GAME」としてユービーアイから2010年1月7日に発売予定だ。プラットフォームはPS3、Xbox 360、DSの3機種となる。本作は、日本では今回の東京ゲームショウ2009で公開された。ゲームショウで公開されたのはPS3とXbox 360版で映画同様3Dに対応するモニターと3Dグラスさえあれば立体的な映像を楽しめるという。

 今回、ジョン・ランドー氏はゲームに関しても様々なポイントを教えてくれた。映画スタッフは今回のゲーム制作にも深く関わっている。ゲームパートナーとなったUBIは映画のストーリーをそのままゲーム化するのではなく、ゲームオリジナルのストーリーを展開する、UBIの作品としてのゲームを作れる会社として選んだ。日本での発売は、PS3、Xbox 360、DSが予定されているが海外では更にWii版も発売される予定で、PS3版とXbox 360版のストーリー、Wii版のストーリー、DS版のストーリーと3つの異なるストーリーが用意されているという。

 PS3版とXbox 360版には「全天候型ビークル」が登場するが、デザインは映画チームが手がけたという。この車両は映画でも背景として登場することになった。さらにこのビークルは「アバター」の公開に合わせて発売されるおもちゃのラインナップの1つとなったという。また、このバージョンでは地球人側とナヴィ側どちらかを選んでプレイできる。全17ステージが用意されているが、1本のゲームで2つの視点それぞれで全ステージをプレイできるゲームになるということだ。

 一方、Wii版は翼竜のようなバンシーをWiiボードに乗って体重移動で操縦できるという。もちろんWiiボードがなくてもプレイできるがこのギミックは映画スタッフの方から「何か新しいことをやって欲しい」という要望にUBIが応えたものだという。さらにWii版はいつでも2プレーヤー側が参加可能で、例えば1人がバンシーを操りながらもう1人がWiiリモコンを使って矢を射るという遊び方も可能になっている。

 「今日のエンターテイメントは1つのメディアに限られるものではないと我々は思っている。ゲームは『アバター』の世界を更に広げてくれるものだ。ゲームの中には『パンドラペディア』というデータベースが用意されていて、クリーチャーや車両など様々な情報を閲覧できる。映画で出てくるものもさらに細かく知ることができる。映画はもちろん、ゲームも是非チェックして欲しい」。ランドー氏は最後にこう語った。映画とは異なる視点から「アバター」を楽しめる作品として、発売を心待ちにしたい。


PS3版とXbox 360版の「アバター THE GAME」のスクリーンショット。人類側とナヴィ側どちらでもプレイできるという

(C)2009 Twentieth Century Fox. All rights reserved.
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(2009年 11月 10日)

[Reported by 勝田哲也]