東京ゲームショウ2009レポート

アクワイアブース、オンラインゲームレポート
戦国時代の純和風MMORPG「ZIPANG(仮)」の試遊台を出展、
ロシア産MMORPG「フラゴリア」もプレイ可能


9月24日~27日 開催(24日、25日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


 東京ゲームショウ2009のアクワイアブースではコンシューマーゲームに加え、「ZIPANG(仮)」、「フラゴリア」という2本のMMORPGが出展されていた。本稿ではこの2つのタイトルと関連するイベントの模様をお伝えしたい。

 「侍道」や「勇者のくせになまいきだ」といったコンシューマタイトルを手掛けるアクワイアは、2008年のTGSでMMORPG「ZIPANG(仮)」を発表し、オンラインゲーム業界への参入した。2008年12月に「ZIPANG(仮)」の公式サイトをオープン。そして2009年9月にロシア産のブラウザでプレイできるMMORPG「フラゴリア」のティザーサイトをオープンし、9月10日~13日までオープンαテストを行なった。

 各タイトルのサービススケジュールは「フラゴリア」が近日オープンβサービステストを実施予定、「ZIPANG(仮)」は未定だ。会場では「ZIPANG(仮)」、「フラゴリア」の試遊ができた。特に「ZIPANG(仮)」はタイトルが発表されて以来、コンセプトアートやゲームの概要は明らかになったものの、これまでスクリーンショットなどゲームの実際の姿は全く公開されていなかったことで、注目度が高い。「ZIPANG(仮)」はどんなゲームなのだろうか。




■ リアルな戦国時代の街で冒険できた「ZIPANG(仮)」試遊バージョン。オンラインゲームとしての実像はまだまだこれから

「ZIPANG(仮)」のプロデューサーを務める薬師寺健治氏
試遊台で初めて公開となった「ZIPANG(仮)」。今回のバージョンはあくまで開発中のため今後変更される可能性もあるとのことだが、グラフィックスの美しさに引き込まれる
WEBラジオ公開収録に登場した杏野はるなさん。27日にも公開収録が予定されている

 「ZIPANG(仮)」は戦国時代を生き抜き、大名を目指すことも、剣の道を目指すこともできるというMMORPGだ。「侍道」、「天誅」を作ったアクワイアのオンラインゲームとして、ユーザーからの期待も高い。アクワイアブースでの「ZIPANG(仮)」の試遊台は2つ設置されており、ショートシナリオをプレイできた。プレーヤーは赤い鎧を着た武士で、目の前は土の道。かなりにぎやかな街の中らしく、道の両側には何軒もの家や店がある。塀の向こうから花を付けた木が顔を出していたり街の人々の豊かな生活を感じさせられる。

 グラフィックスは落ち着いた雰囲気ながらはっきりした色づかいで、木造の家の造り、住人達の服装、数人の人たちが道を歩いている感じなど、「侍道」を手掛けたアクワイアならではと思わせる美しくしっかりした「中世の日本の街」が目の前に広がっている。時代設定は戦国時代のようだが、平和な雰囲気だ。

 キャラクターの操作はキーボードとマウスで行ない、Wで前進AとDで左右に移動、Sで後退、視点移動はマウスの右をドラッグする形で行なう。Zで抜刀、CTRでガード、左クリックで刀を振るう。町中で剣を振っても町人に斬りつけることはできなかった。今回のバージョンは、シングルプレイのまったくの一本道で、街を前に進んでいくと頭の上に印が付いているNPCから話しかけられ、参道を上り、神社にいる忍者と対決するという展開だった。

 石畳が続く参道を上っていくときはカメラを上に向けると神社の鳥居が見えたり、視界深度フィルターが使われており、風景が距離によりぼやけたり、グラフィックスの雰囲気と技術の高さが感じられる。NPCとの会話時には上下が黒い画面で隠され選択肢が現れるなど、かなり「侍道」を意識した作品だと感じた。

 神社の上では待ち受ける忍者と戦うことになる。黒装束に身を包んだ忍者は剣を前にしてこちらの攻撃を受けようとする守りの姿勢だ。こちらは左クリックで剣を振ることができる。剣をフルモーションは腰が入っておりかっこいいのだが、現在のシステムではただ斬りかかるだけの単調なものになってしまっていた。今後はショートカットで必殺を使えるようだ。

 敵のガード~近づいて攻撃することで蹴りに変化しガードを崩すと言った方法もあり、必殺技なども含めて、アクションゲームのような駆け引きのある戦いを目指しているように感じた。ただ、今回の試遊台では、一本道のシナリオでグラフィックス以外、「ZIPANG(仮)」はどんなオンラインゲームになるかわからないというのが正直なところだ。

 ステージでは本作のプロデューサーを務める薬師寺健治氏より「ZIPANG(仮)」の特徴が語られた。それによると「ZIPANG(仮)」では4つの国が登場し、そのうち3つはプレーヤーが大名になれるとのこと。大名になり国を治め、他国と戦っていくことがゲームの大きな目的となるという。また、権力争いを離れ、1人の侍として剣の道を究めていくという遊び方も可能だという。

 権力争いの方向としては、ギルド同士が抗争を繰り返し、敗れたギルドが統合されていくことで1つの国になっていく。そしてギルドのリーダーが大名になっていくという。攻城戦のように大名の座を奪いあうイメージになるという。「ZIPANG(仮)」ではオンラインならではの要素の他に、シングルプレイ要素も強めていくという。

 今回の体験版では非常に短いシナリオだったが、アクションアドベンチャーのようなシナリオ要素にも期待できそうである。ちなみに、風景の雰囲気や会話ウインドウなどでは「侍道」の雰囲気を色濃く感じたが、直接には「侍道」スタッフは関わっていないとのことだ。

 今回、薬師寺氏はイベントで紹介しなかったが、資料によれば試遊台に登場した侍の他、遠距離攻撃に秀でた「忍者」、範囲攻撃や回復術を使う「僧侶」といった職業も登場予定だ。職業によりバトルスタイルが変化するという。大名の座を争う要素も、敵国への謀略や同盟関係といった国同士の駆け引き、国同士がぶつかり合う「合戦」、さらには「謀反」といった要素もあるという。

 薬師寺氏プロデューサーによれば試遊台のバージョンはオンラインゲームとしての到達点から見て完成度は30%。基礎的なシステムが固まってきたところだという。ここからオンラインゲームとしての要素を盛り込んでいくとのことで、現在正式サービスは未定だが、まだまだ時間はかかりそうである。試遊台でのグラフィックスのクオリティでMMORPGが求める広大なスペースを作り込めるかも気になる。「ZIPANG(仮)」の姿がはっきり見えてくるのはまだまだこれからという印象だ。

 「ZIPANG(仮)」は公式ページにてWEBラジオを配信しており、ゲームショウでは公開録音が行なわれた。パーソナリティーは編集者のトム関口氏と、アイドルの杏野はるなさん。薬師寺氏を含めた形で「ZIPANG(仮)」だけでなく、アクワイアブースの各タイトルをプレイするという展開となった。

 杏野はるなさんはイベントの前に試遊バージョンを触ったとのことで、「特に神社に上っていく階段の上で後ろに振り返ったときの風景がすばらしいので、ぜひ見てほしい」と語り、今後はより多くの人にプレイしてもらえるオンラインゲームを目指してほしいとエールを送った。「ZIPANG(仮)」のステージは26日に開発者トークショウ、27日には再びトム関口氏と杏野はるなさんが登場する公開録音が行なわれる予定だ。


NPCと会話をしながら街を進み、石段を上って忍者と対決。今回のバージョンではオンラインゲームとしての姿は全く見えなかったと言っていい。今後、ゲームの具体像が伝わる情報公開を期待したい
薬師寺氏と、WEBラジオのパーソナリティーを務める編集者のトム関口氏と、杏野はるなさん。杏野さんは石段を上りきった風景がおすすめだという



■ 「フラゴリア」日本サービスのの課題は通信環境強化。今後はハウジングシステムや攻城戦も

ディレクターを務めるアクワイアのアンナ・ドンベルグ氏。ロシアの民話を紹介する場面も
試遊台では用意されたキャラクターでプレイできるが、キャラクターが強すぎるためゲームの実際のプレイ感覚はいまいち伝わりにくかった

 「フラゴリア」はWEBブラウザでプレイできるロシア産MMORPG。ロシアの開発者のセンスを活かした強い異国情緒を感じさせる作品だ。世界設定はロシアの民話を題材にしたファンタジーで、世界から隔絶されてしまったフラゴリアという地域が舞台となる。他国があった場所は全て青い海に覆われてしまい、さらに魔物が現われ人々の生活を脅かし始めた。フラゴリアの人々は武器を手に生き残るために戦うことになる。

 会場では、レベルの高い強力なキャラクターを使用し、マップを自由に歩き回れるという試遊台を設置していた。「フラゴリア」は本誌でもαテストに先駆け体験レポートを行なっている。基本システムとしてはマウスで移動し、ショートカットでスキルを使うというなじみやすいインターフェイスで、戦士系、魔法系からさらに細かく専門職に分化していく。最大10人のパーティープレイが可能で、ダンジョンでは強力な敵が多く、パーティーでの協力プレイが必要になるという。

 「フラゴリア」の最大の魅力はその2Dグラフィックスだろう。建物や木々、キャラクターなど細かく書き込まれており、初期の「ウルティマオンライン」のような独特のファンタジー世界を作り出している。熊が狙うカブを守るクエストや、ロシアの総菜パン「ピロシキ」が知恵を持ち森の中でプレーヤーに助けを求めるといった、ロシアの民話やロシアの生活様式を取り入れた要素も面白い。闘技場で戦うPvPシステムや、モンスターを捕獲し調教できるペットシステムなど、システムも充実している。

 イベントでは本作のディレクターを務めるアクワイアのアンナ・ドンベルグ氏が今後の実装予定を語った。「フラゴリア」はロシアでは3年前からサービスが行なわれているが、ほぼ最新バージョンのものがサービスされるという。サービス時のレベルキャップはレベル60で、広大な地域が冒険可能になる。

 先日行なわれたαテストでは4万人近いユーザーが参加登録を行なったものの、希望登録者の約60%~90%に登録メールの遅延・不達が発生した。4日間で4,600人を超えるユーザーがログインし、最高同時接続者数は1,859名だった。ドンベルグ氏は「ユーザーに満足なテスト環境を用意できなかったのは本当に申し訳なかったです」と語る。今後の課題は今回のテストで発生した問題点を慎重に調査し、快適にプレイできる環境を整えることだという。

 現在ロシアでもまだ未実装だが、素材を集め、強いアイテムや武器を作る「クラフトシステム」、自分たちの家がもてる「ハウジングシステム」、さらに「領土戦」や「攻城戦」といった要素を実装予定だという。現在の「フラゴリア」はパーティープレイ重視のバランスだが、日本でのサービスにあたり、ソロプレイ要素なども考えていく予定だ。

 「フラゴリア」のαテストは9月10日から3日間、毎日20時から24時という限られたテストにもかかわらず、4万人の希望者が集まったというのは盛況といえる状況だが、60%~90%に登録メールの遅延・不達が発生というのは、運営側にノウハウの不足を感じさせられる。今後強く改善を望みたい部分である。また、攻城戦やハウジング要素などは他のMMORPGである要素だが、ロシアで3年のサービス中にも実現していないこれらのシステムがいつ実現するかも注目したいところだ。

 「フラゴリア」はブラウザでプレイできる間口の広さと、たっぷりモンスターと戦えるMMORPGとしてのコンテンツの厚みを持った作品である。味のある2Dグラフィックス、ロシアならではの雰囲気も他のゲームでは味わえないものだ。近日サービス予定とのことで、多くのプレーヤーが思う存分プレイできる環境をできるだけ早く望みたい。

 なお、「フラゴリア」では登場する女神のキャラクターボイスに声優の日笠陽子さんを起用することを発表した。アクワイアブースでは、9月27日に彼女が登場するスペシャルステージが開催されるという。これから会場を訪れる人は、チェックしてほしい。


先日行なわれた体験会からのスクリーンショット。緻密な2Dグラフィックスはとても魅力的だ



ZIPANG(仮)
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フラゴリア
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(2009年 9月 25日)

[Reported by 勝田哲也]