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大作もインディーもまとめて楽しめるPS4! SCEWWS・吉田修平氏インタビュー

Morpheusの製品化準備も万端。VRスポーツ「RIGS」は本当に面白い!

6月16日~18日開催(現地時間)



会場:Los Angeles Convention Center

SCEWWSプレジデント、吉田修平氏

 本当にたくさんの注目タイトルが紹介されたSony Computer Entertainment Americaプレスカンファレンスから一夜開けて、本誌ではSCEワールドワイドスタジオ(SCEWWS)プレジデントの吉田修平氏にインタビューを行なうことができた。

 SCEWWSプレジデントとしてファーストパーティのコンテンツを取り仕切りつつ、VRヘッドセット「Project Morpheus」の開発も主導する吉田氏。プレスカンファレンスの振り返りにはじまり、今回のSCEブースの大半を占めることになったMorpheusについて色々な質問をぶつけた。

 そこで見えてきたのは、PS4/Morpheusで遊べるたくさんのコンテンテンツを支える、SCEがトップスタジオとインディーに分け隔てなく向かい合っている非常にオープンなマインドと柔軟性溢れる姿勢だ。注目のVRタイトル「RIGS」の話も飛び出したインタビューの全容をお届けしよう。

大漁だったプレスカンファレンス振り返り。「シェンムーIII」実現の経緯とは?

インタビューに応える吉田氏

── 今回のプレスカンファレンスでは本当にたくさんのタイトルが紹介されましたね。そのコンセプトはどのようなものだったのでしょうか?

吉田修平氏:ご覧になっていただいたように、今回はゲームのコンテンツを見せていこうと。とにかくコンテンツがいっぱいありますから、ハードとかネットワークサービスとかは極力短くしていこうと。実はあれでもかなり厳選せざるを得なかったんですね。ファーストパーティの今年出るタイトルでも「Until Dawn」とか、「Teraway」とか、いろいろあるんですけれども、もう時間の都合でフィーチャーできないので、まとめトレイラーの中に混ぜたくらいでした(笑)。それくらいコンテンツ面の発表が充実していたことに限ると思いますね。

── インディーズやPS Vita関連は少なかったように思いますが、そのあたりは?

吉田氏:それも同じ理由ですね。やはりビッグタイトルとか、話題性のあるタイトルの発表がいっぱいある中で、どうしても選ばざるを得なかったものというのは出てきました。ですのでVitaもインディーズのタイトルも、いろいろなゲームを交えたトレイラーの中にこう、入れ込むしかなかったという感じですね。でも、スーパーインディーの「No Man's Sky」とかは、逆にAAAを超えているようなところもありますね。そういうところにインディーさんも進出してきているかなという気がしますね。

── 「シェンムー」について、プラットフォーマーのカンファレンスでKickStarterのアナウンスをするというのはかなり異例というか、前例がない光景ですよね。どういった経緯で、このような形に収まったんでしょうか?

吉田氏:そうですね、KickStarterを実際にやられているのは、鈴木裕さんのYS Netという会社ですよね。つまり、セガさんが直接やられているものではなくて、鈴木さんのところがセガさんと合意されてスタートされているというものですね。

 ウチの関係という意味では、ユーザーさんからの強いリクエストが、「シェンムーIII」だからだと思いますが、毎月3日の日にものすごいいっぱい来るんですよ。「#SaveShenmue」といって毎月3日になるとダダーッとツイートが来て、もうほかのツイートが読めないぞっていう(笑)。それくらいリクエストがあって、なんとかならないかっていう話を、サードパーティリレーションズのAdam Boyesのチームと、鈴木さんと、セガさんと、いろいろ相談されてきてたんですよね。

 その中で鈴木さんが、ではKickStarterでやってはどうかと提案されまして、であれば我々としてもサポートしますよということで、今回注目を集めるためにE3でドカンと打ち上げましょうと。いろいろな形でサポートするかわりに、コンソールはPS4で、という形での合意ができたと私は理解しています。

1日たたずに目標金額の1.5倍近くに到達するKickStarterキャンペーン

── もう金額目標を達成しちゃいましたね(笑)。

吉田氏:そうですね、もう、やっぱり「シェンムー」ですからね(笑)。やっぱりいろんなことができるコンセプトなので、金額は多ければ多いほどいいですよね。ですからもっともっと、突き抜けて行って欲しいなと思いますね。この間の五十嵐(孝司)さんの「Bloodstained」もよかったですよね。KickStarterに対するユーザーさんの信頼や期待も高まってきていたのかなと思いますが、やはり五十嵐さんや鈴木さんといった実績のある方が行くぞ、というと付いて来る昔からのファンの方が多いんだなと思います。

── 「シェンムーIII」の開発に対してSCEとして具体的なサポートを行なうことは考えてらっしゃいますか?

吉田氏:いや、開発そのものはもう鈴木さんのところですよね。それに対して、インディーズサポート的な形で、うちのサードパーティリレーションチームがいろいろサポートしていくような形になると理解しています。

── 大枠では他と同じインディーに対する支援の一環ということですね。

吉田氏:そうです。以前からそういった形の、インディーさんがKickStarterをやります、というころを絡めたサポートというのはやってきているんですね。今回はそれをE3で発表するというのは特殊というか、新しい試みですけども、組み方としてはこれまでもやってきています。一般的には、インディーさんが作られているタイトルに対していろんな形でサポートし、PlayStationで出やすくするというのが基本ですが、最初になにもないところからスタートする場合は、ある程度自分たちでお金を集めてやる必要はあると。その1つの手法としてKickStarterがあって、それが成功したら我々からもサポートします、という感じになっていると思います。

── また、今回のカンファレンスでは「シェンムーIII」に加えて「人喰いの大鷲トリコ」や「ファイナルファンタジーVII」のリメイクといった国産のタイトルが大きな話題になりましたけれども、いずれも実際に遊べるのは2016年以降になりますよね。年内に国内向けで楽しめるタイトルのラインナップ、戦略についてはいかがでしょうか。

吉田氏:日本のユーザーさんにというところでいうと、まずは9月の「Metal Gear Solid V: THe Phantom Pain」ですよね。もうほんとに凄いタイトルだと思います。ウチでいうと、やっぱり海外のビッグタイトルが今年は凄いんですよ。「バットマン:アーカム・ナイト」ですとか、「Assassin's Creed Syndicate」とか、「Call of Duty Black Ops III」、「Destiny」、「Fallout 4」、「Uncharted Collection」ですとか、「Until Dawn」とか「Teraway」とか海外ものが多いんですよね。

 海外ゲームが好きな方にとっては凄いラインナップだと思っていただけると思いますが、あまり興味が無いという方にも、どれでもいいんでね、やってみて欲しいですね。やっぱり日本のユーザーさんに対しては、海外のゲームは十分にパブリシティがされてないところもあって、食わず嫌いの方もいっぱいいらっしゃるんじゃないかと思っています。少しずつ海外ゲームのファンは増えて生きていると思うのですが、1度楽しさがわかると、すごく奥深い世界がありますので。そこは、海外のインディーゲームを含めてSCEJAにもなんとかならないのかと言っているんですけれどもね。

 スパイク・チュンソフトさんとかは、海外のいいゲームを選んで紹介されていますね。今度出る「Hotline Miami: Collected Edition」ですとか、日本のユーザーさんがプレイしても絶対面白いようなゲームがいっぱいありますので、いろいろ試していただきたいですね。PlayStation Plusに入っていただくと、毎月毎月、良いゲームを選んでご提供していますので、そういうところから入っていただいてもいいかなと思います。日本のタイトルについては今後TGSもありますし、ご期待いただければと。

── 今春配信された「Rogue Legacy」は凄く良かったですね。

吉田氏:ああ、面白いですよね! 「Rogue Legacy」なんかはほんとに、昔スーパーファミコンとかの時代に続いていた2Dゲームの進化が、PlayStationとかでポリゴンになっちゃって止まってた時間が、また動き出したような気がしますね。あのゲームは多分スーパーファミコンの技術でできると思うんですけど、あのアイディアというのが出なかった。それが今の若い開発者さんが出してきているという。

 ほかにも、「Shovel Knight」とか、「Titan Souls」とかもそうですね。それはすごくゲームユーザーにとって嬉しいことだと思いますね。3Dの映画的な進化と、2Dのゲーム性とアイディアの進化と、2つの潮流が今同時に進んでいると。PS4ですとその両方が楽しめる、そういうマシンになっていると思いますね。

Morpheusは理想のローンチへ! VRスポーツタイトル「RIGS」も超オススメ!

吉田氏の傍らにMorpheusが
SCEAブースの大半を占めるMorpheusコーナー

── 今回のE3に先立って「Oculus Rift」の製品版の発表、Microsoftとのパートナーシップといった発表を行ないましたけれども、「Project Morpheus」のほうでは、今後の戦略、市場投入時期の具体的なところなど、現段階でコメントいただけることはありますか?

吉田氏:今年はGDCで最終版のハードをお披露目しまして、発売時期は来年の前半ですよとお伝えしましたから、このE3ではもうゲームコンテンツをお見せする、体験していただくというふうに決めていました。

 今回はブースの方でファースト、サード合わせて20タイトルくらい(※正確には18タイトル)準備できまして、しかも「E3で出したい」と言って提出してもらったコンテンツは、ファーストもサードももっと多かったんですよ。用意できるブースの関係で選ばざるを得なかったわけですが、という感じでとても良い感じで進んできています。

 ハードの開発も順調ですし、制作していただいているコンテンツも増えてきていますので、もう少し経てば発売時期、価格ですとか、箱に何が入っているかですとか、OS的な部分がどうなるかとか、そういった情報をどこかの段階でお伝えできるようになると思っています。もうちょっと待ってください。

── 先日のプレスカンファレンスでお披露目されましたGuerilla Gamesの「RIGS」。あれは非常にコアゲーマー向けの空気があるなと思いました。あれだけ激しい動きをしても酔わないものでしょうか?

eスポーツ的なVRタイトル「RIGS」

吉田氏:「RIGS」はもう本当に面白いですよ(笑)。それは是非今回体験していただきたいと思っています。まさに、そこに(※激しい動きをしても酔わないこと)に挑戦したタイトルでもあるんですね。これまで「The Deep」ですとか、「The London Heist」とか「PlayRoom VR」など、楽しいコンテンツをお見せできていたと思うんですけれども、“じゃあゲームはどうなんだ、スピード感のあるシューターは遊べるのか”、というのに取り組んでいます。

 「RIGS」はそういった考えでずっと開発をしてきていまして、今回はわりと自信をもってオススメできるものになっています。メチャクチャ面白いですよ。3対3で、スポーツ的なルールなんですよね。敵を倒して、エナジーボールを集めて、一杯になったらゴールするという。ゴールしそうな奴が敵にいたらみんなで集中して狙って、周りの人間はそうされないように守るといった内容です。

── 球技に近いイメージですかね?

吉田氏:そうです、そんな感じですね。それでゴールする前のオーバードライブ状態の人を撃つと、いっぱいエナジーをこぼしますから、一発逆転も狙えるみたいな、そんな感じのゲームになっています。ですから今回はたくさんの人に体験していただきたいので、5分という短いセッションにはしていますけれども、それでも結構点数が入ってですね、逆転があったりとか、楽しい物になっています。

── マルチプレイで遊べるんですね。

吉田氏:ネットワークマルチプレイで遊ぶゲームですね。5分でも楽しいんですけれども、それこそ何度も何度も、オンラインシューターのような感じで長く遊んでいただけるゲームになっています。会場では6ブースをフルに使って、対戦をしていただけるようにしていますので、もうぜひぜひ体験していただきたいと。そこでこんなスピーディーなジャンルのものが遊べるのかとか、長く遊べそうな感じがするかどうかとか、そのへんの感触を見ていただきたいなと思います。

 あと今回のオススメはですね、Japan Studioの作品で「モンスターエスケープ」というものです。Morpheusをかぶっている人が1人と、かぶっていない人が4人と、合計5人まで一緒に遊べるんですね。Morpheusをかぶっている人の映像と、テレビに映す映像を別に出せるんですね。それはゲームのチームからのリクエストでPS4の開発チームが用意してくれたモードなんですけれども、そうすると「DUALSHOCK 4(ワイヤレスコントローラー)」を持っている4人はモンスターと戦う、そのモンスターはMorpheusをかぶっている人だと。かぶっている人は、足元に小さなロボットが4体、走り回って何かを投げつけてくるのが見えるんですね。それを避けたりするという遊びです。

── 「Evolve」みたいな(笑)

吉田氏:そういう感じですね、4対1で。ですから、VRは閉じこもって孤独な感じ、というのじゃないんですよと。友達や家族で集まって一緒に遊べるようなものなんですよ、というのを見せたくて、今回実際に遊べる形にしています。そこは是非見ていただきたいところです。

 あと20タイトルくらいあるなかで、カプコンさんの「Kitchen」という技術デモがとてもよくできていますね。「GDC」で見せてた「The London Heist」の前半部分にちょっと雰囲気が似ています。ストーリーがあって、自分がその参加メンバーのひとりになって、何かとても嫌なことが起こるみたいな(笑)、そういうやつです。とっても怖くて、楽しいですよ。

── ちなみに、E3の開幕直前に噂系の情報を扱うサイトで「PlayStation Move 2」なるものの存在が示唆されていましたが、あれは実際どうなんでしょうか?

吉田氏:ええ、あれはまったく偽物ですね(笑)。パンフレットとか作った奴ですよね。よく見るとかなり無茶苦茶なことが書いてあるらしいですね。学生さんとかが自分の授業の発表かなにかで作られたのかわかりませんが、まったくの偽物です。

── 本当のところでは、PlayStation Moveの次世代版を出すといったようなことは計画されていたりするんでしょうか?

吉田氏:今は計画はないですね。やはりPlayStation Cameraと、DUALSHOCK 4とMove、ヘッドセットで、LEDのトラッキングで1度に扱うという設計をしていますので。将来にわたって何も作らないかというと、全然そんなことはないのですが、まず来年「Morpheus」を発売するときにはその構成になりますね。

「Morpheus」はハード的にはほぼ完成している。Moveも同様だ

── では「Morpheus」を心待ちにしている人は、Moveを先に買っちゃっても良いと。

吉田氏:そうですね、MoveはPS3時代に全世界で1,000万個以上出ていますので、既に持ってる方も多数いらっしゃると思います。それを使えなくするというのはちょっと良くないなと思っています。

── VRのコンテンツで言うとインディーの力というのは大きくて、今はPC向けの「Oculus Rift」用にたくさんのインディースタジオが開発を行なっていますが、その中でMorpheusに来るようなインディーもあるんでしょうか?

吉田氏:もういっぱいありますよ。技術的には似ているんですね。スペック的にも「Oculus Rift」さんと似ていますし、PS4のアーキテクチャもPCアーキテクチャですし、UnityとかUnrealとかのエンジンを使われている場合は、「Oculus Rift」で動いているゲームを「Morpheus」で動かすのに、2日間とかでできちゃうんですよ。そのあとに最適化の作業は必要ですけれども、とりあえずPS4に載せ替えようとしたら1週間もかからずできた、という話はものすごく多いですね。

 VR市場はまだこれからですので、「Morpheus」や「Oculus Rift」さんのファーストパーティタイトルが出ない限りは、できるだけ多くのプラットフォームで出していきたいというのが普通じゃないですか。それは非常にやりやすい状況にあると思いますね。逆にPS4のデベロッパーさんが、「Morpheus」でスタートしたあとに「Oculus Rift」に持っていくというのも同じように簡単だと思います。

 今回遊べるタイトルでも、「Wayward Sky」というタイトルは「GearVR」向けに「Ikarus」という名前で出てるゲームのコンセプトを広げたような作品になっています。「GearVR」でも楽しいんですけども、それをもっと広くしたような、ポジショントラッキングを使って色々覗き込めるようにしたりとか、すごくいい感じですね。

インディーの動きも重視している吉田氏。無理に囲い込むことなく、Oculus VR等のPC陣営とともにVR市場を盛り上げていこうという意思が感じられた

── では「Morpheus」はローンチ時点で相当のコンテンツが載ることになりそうですね。

吉田氏:ええ、もっと増えると思いますね。やっぱりインディーさんの動きって速いですよね。しかもVRはグラフィックスのものすごい作り込みとかをしなくても、アイディアで楽しい物ができますから。例えば今回めっちゃ楽しいのが「Headmaster」というサッカーのゲームなんですよ。ボールが飛んでくるのを頭で撃ち返すだけっていう、何の説明もないんですけど、だれでも遊べるんですよね(笑)。すごく燃えますよ、点数を競ったりとか。開発費とかきっと低いと思うんですけど(笑)、でもすごく楽しい。

 弊社は「The London Heist」とか「RIGS」のようにお金をかけてゲームを作りがちなんですけれども、そうしなくてもですね、いいVRのゲームができますね。アイディア次第です。

── 理想的なローンチを迎えられそうですね。

吉田氏:そうですね、そうありたいですね。ハードの開発も順調ですし、OS関係も今一生懸命作っています。ユーザーさんが買ってきていかに迷わずに使えるか、というところをこれから本当にがんばってやっていかなきゃならないところですね。

── これからも楽しみにしております。ありがとうございました。

吉田氏:ありがとうございました。

(佐藤カフジ)