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Valve講演で「Steam VR」のスペックが明らかに!
視野角110度・90Hz。APIレベルでの最適化も進行中
(2015/3/5 18:13)
現地時間の3月3日、ValveはGDCの開催に合わせて3つの新製品「Steam VR」、「Steam Machines」、「Steam Link」をアナウンスした。これに続く3月4日はGDC通常セッションでValveの開発スタッフ自ら「Steam VR」の解説が行なわれたので、その模様をお伝えしよう。
“Advanced VR Rendering”と題されたこのセッションでは、ValveのエンジニアであるAlex Vlachos氏が登壇。その存在が先日アナウンスされたばかりの「Steam VR」について、その技術仕様やAPIレベルで行なわれているという最適化ノウハウをつまびらかに披露している。
ちなみに同日より開催されているGDC Expo会場では、Valveブースにて「Steam VR」を始めとする各新製品が招待者にデモンストレーションされているのだが、人気が高すぎるのか、予約枠が少ないのか、おそらくはその両方の原因で、筆者の知る限り日本からのメディアは1人もアポイントメントをとれていない状況だった。そういうわけもあって「Steam VR」がどのようなVRソリューションであるかがようやく明らかになったのは、このセッションがはじめてのことだ。
2,160×1,200@90Hz、視野角110度。今年末に製品版を出荷予定!
セッションの冒頭、“話すことが多すぎて2時間あっても足りないくらい”と切り出したVlachos氏は、ValveにおけるVR研究の経緯と「Steam VR」の概要を駆け足で紹介していった。
ValveでVR研究が始まったのは3年以上前だとのことで、いくつものプロトタイプを経て独自の光学系やディスプレイ技術を磨いてきたいという。これに加えて基準マーカーを使ったポジショナルトラッキング、トラッキングコントローラー、独自のVRプログラミングAPIなどの技術を合わせて設計されたのが謹製のVRヘッドセット「Steam VR」だ。
「Steam VR」の設計はValveだが、製造はHTCが受け持つ。この春には開発者向けバージョンの「Steam VR HTC Vive Developer Edition」を出荷開始。そして今年2015年の末には製品版の出荷を開始する予定だという。本当に予定通りなら2016年上半期の製品版リリースを予定している「Project Morpheus」よりも半年は早く市場投入されることになるわけだ。
その際には「Steam VR」向けのVRデモ「Aperture Science VR Demo」がSteamで無料配信されるという。まずはその映像を動画でお届けしておこう。デモの中ではPS MoveやRazer Hydraじみたモーションセンシングコントローラーの存在も示唆されており、これも製品に含まれることになりそうだ。
引き続き明らかにされた「Steam VR HTC Vive Developer Edition」のスペックは以下の通りだ。
・リフレッシュレート:90Hz
・低残像、グローバルディスプレイ
・解像度:2,160×1,200(片目あたり1,080×1,200)
・オフスクリーン解像度:上記の1.4倍(片目あたり1,512×1,680)
・視野角:およそ110度
・トラッキング機能:360度、ルームスケール
・入力デバイス:複数のトラッキング型コントローラーなど
上記のとおり、数字で表現できる範囲の基本的なスペックは高い。特に視野角110度というのは、Oculus、SCE、Razerといったライバル各社が開発する各ヘッドセット(90度~100度)よりも一回り広い。
解像度は両眼で2160×1200という変則的なものとなっており、詳細は明らかではないが、スマホなどでは使用されないようなアスペクト比の特注ディスプレイパネルを使用している可能性がある。そのディスプレイ自体は講演内で“global display”と表現されているが、ちょっとよく意味が掴めなかったことを正直に告白しておく。
もうひとつ特徴的なのはルームスケールのトラッキング機能を持つという部分だ。講演で示されたイメージでは部屋の角に2つのセンサーを設置した模様が示されており、これにより部屋全体を動き回れるほどのトラッキング自由度を実現しているようだ。原理上はマルチユーザーのトラッキングも可能となる。
映像の投影方式は「Oculus Rift」や「Project Morpheus」などと同じで、予め大きめにレンダリングした映像を、レンズ越しに正しく見えるよう樽型に歪ませる方式。レンダリング自体は両眼で3,024×1,680という高解像度、しかもリフレッシュレート90Hzで行なわれるため、秒辺りの描画ピクセル数は4億5,700万にものぼる。4K解像度・60fpsのレンダリングに匹敵する負荷だ。
Valveでは本製品用のAPIとして「Steam VR API」を用意する。これを通じて描画負荷を軽減する様々な最適化技法を提供するという。それを基板に、対応ゲームが常時90fps動作できる開発環境を整えていくもくろみのようだ。本セッションではそのことが強く現われていて、講演の後半は遅延の削減や描画負荷の軽減といった実践的なノウハウが次々と紹介されていくという内容だった。
いずれにしても、このスペックのVRヘッドセットが今春には開発者に出荷され、年末には製品化を予定しているというのは大きなニュースだ。PCゲーム市場に強力な基板を持つValve(実際のところ流通をほとんど牛耳っている)によることもあり、プラットフォーマーとしての潜在力は巨大である。Oculus Riftに最大のライバルが登場したと見ていい。さらなる情報が明らかになれば引き続き続報をお届けしていきたい。