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過酷な人類の未来を描く、スマホ向けRPG「末日之子」

独特のセンスを持ったゲームを! 台湾クリエイター刃氏の挑戦

1月30日収録

場所:台北市松山区

 劉哲魁氏は台湾の異色のクリエイターだ。日本でもサービスされているiOS/Android向け恋愛RPG「落桜散華抄(らくおうさんげしょう)」は見た目は完全な“ギャルゲー”だが、根底のストーリーは源義経と頼朝の因縁を描く伝奇ロマンなのである。この作品は台湾で高く評価され、劉氏はペンネームの“刃霧翔”と名前を改め、「神嵐遊戯」という会社を立ち上げ、次回作の開発をスタートしたという。

 刃氏は神嵐遊戯の共同設立者の1人であり、会社のリーダーとして作品のプロデュースを行なっていく。神嵐遊戯は「落桜散華抄」のアップデートを続けていくと共に、新作「末日之子(まつじつのこ)」を製作中だ。こちらはiOS/Android向けRPGで、2015年第3四半期に台湾でサービス予定だという。

 「末日之子」は人類のほとんどがゾンビに変わった社会で、生き残りの戦いを繰り広げる人類を描く。武侠ものや、人気パズルゲームをモチーフにした作品が多い台湾のゲームの中、自分が本当に好きなもの、作りたいゲームを実現させていく刃氏の姿勢は注目したい。今回、この「末日之子」のコンセプトを聞くことができた。

【神嵐遊戯】
神嵐遊戯は社員数は23名。右は開発の中心メンバー。オフィスは松山空港のある台湾松山区にある。会社の名前である“神嵐”は中国語で“シェンラン”と読み「ゲーム業界に嵐を巻き起こしたい」という想いが込められている。実は元ネタは、アルファベットの「CELAD(発音は同じ)」という名前で、「落桜散華抄」で歴史の影で暗躍する組織の名前である

過酷な世界を超能力で生き抜け! 刃氏の趣味炸裂のRPG「末日之子」

神嵐遊戯Co-Founder、「末日之子」プロデューサーの刃霧翔氏
「末日之子」のメイン画面。探索を行ない、パネルを開いていく
戦闘画面。戦略性の高い、駆け引きの楽しめる戦闘を目指しているという
中央が主人公、左が主人公の姉、右が主人公をサポートするロボット。デザイナーは「落桜散華抄」のメインスタッフで、かわいらしいデザインだ
刃氏の出世作となった「落桜散華抄」

 刃氏はゲーム開発者としても異色な経歴を持つ。彼は元々はChinese Gamerで日本向けのローカライズプロデューサーを担当していたが、どうしても自分が目指すゲームが作りたく、上層部と社内スタッフに働きかけ、「落桜散華抄」を制作した。

 「落桜散華抄」は台湾市場で大きなヒットとなり、日本でのサービスも行なわれた。台湾のゲームクリエイターとして様々な賞も受賞したという。この成功により、刃氏はゲームクリエイターとして認められ、「落桜散華抄」の中心スタッフと共に独立、新作である「末日之子」の制作を開始したのである。「自分の目指すゲームを作りたい」という想いを、実現させているのだ。

 「末日之子」はその名の通り、終末を迎えようとする人類の生き様を描く。ある日、地球に隕石が落ち、そこからもたらされたウィルスで人々はゾンビになってしまう。人類はゾンビを殲滅しようと対抗兵器を作り出すが、皮肉なことにその兵器がゾンビの進化を促し、強力にしてしまう。そしてウィルスが蔓延し人類はその数を減らしていく。

 その時を同じくして、“能力”に目覚める人達が生まれ始めた。彼らは念力や第六感、身体能力の強化など様々な力を発揮する。その中でも複数の強力な能力に目覚めた人がいて、彼らをリーダーとした管理社会が形成されることとなる。

 主人公はゾンビが蔓延するころに、ある事件で意識を失ってしまった。4年間の昏睡から彼が目覚めるところから物語は始まる。彼には“癒やしの力”に目覚めた姉がおり、混乱の時代の中、彼女に守られ、再び目覚めることができたのである。

 彼らが住む街は「希望城」という場所で、厳格な階級社会となっている。城主は複数の力を使う人物で、その配下に能力者、そして能力を持たない軍組織、そしてその下に能力に目覚めなかった一般市民がいる。そして最下層に、“外族”と呼ばれる人々が設定されていた。

 外族は街にいられない人々である。彼らはある期間になるとわずかな水と食料だけ持って街から追い出され、ゾンビが徘徊する外の世界に“探索”に出される。彼らはゾンビのいる地域から資源を持って帰ってくれば、再び街に戻ることが許される。そうでなければ……待つのは死だけだ。この厳格な社会は城主が作り出した。城主は人類が生き残るためにこの制度を作り出し、冷酷な支配者へと変貌していった。

 主人公は、目覚めたものの、外族にされてしまう。彼は仲間と共に荒野に旅立ち、ゾンビと戦いながら、わずかな資源を探し出し、城に持ち帰ればならない。与えられた水と食料はわずかであり、行動する時間は限られている。その中で主人公や仲間は“能力”に目覚めていく。彼らの物語はどんな展開を見せるだろうか……。

 「末日之子」の基本画面は、パネルが敷き詰められたマップとなる。プレーヤーは主人公を動かし、このパネルを開いていく。パネルが開くと、アイテムが入手できたり、ゾンビが現われたりする。

 ゾンビと出会うと戦闘となる。戦闘はターン制で、プレーヤーが最初のコマンドを入れるとタイムが減る。タイムが0になるまで、ユーザーのスキルポイントがある限りスキルを使うことができる。キャラクターは最大で3つまでのスキルと1つの必殺技を使用でき、プレーヤーはストーリーが進んだり、ガチャなどで入手できる仲間を入れ替え、育成しながら戦っていく。

 戦闘には「前衛」と「後衛」の概念があり、前衛がタンク的役割を担う。しかしゾンビには飛行型のものもいて、前衛を飛び越して後衛に直接攻撃できるものもいる。スキルを使うタイミングや、どの敵を先に倒すかなどの戦略性が盛り込まれている。また、食料や水の消費を減らしたり、移動を助けたりと、探索系のスキルに目覚めるキャラクターもいる。パーティ編成も多彩な組み合わせが楽しめ、自分なりのゲームプレイを追求できる。

 キャラクターにもフォーカスしており、仲間になったキャラクターの絵を大きく表示させ、コミュニケーションする要素もある。本作は「LIVE2D」という技術でキャラクターを表現している。キャラクターは2Dグラフィックスでありながら様々なパーツにわかれており、それらを差し替えたり動かすことで、3Dモデルのキャラクターのような動きができるのだ。キャラクターイラストは「落桜散華抄」と同じスタッフが担当しており、目の大きく、かわいらしい女性キャラクターが多数登場する。

 「落桜散華抄」は女の子を前面に押し出しながらも、メインとなるストーリーは「源義経と、頼朝の子孫達、そして妖怪達との戦い」という“伝奇ロマン”の要素を持っていた。本作は過酷な社会で生き抜く少年少女の戦いを描く。本作も「落桜散華抄」同様プロデューサーの刃氏がシナリオを担当している。刃氏は「ソードアートオンライン」などの“ライトノベル”と呼ばれるジャンルの小説や、日本のコミックスにも詳しい。「末日之子」は、そんな刃氏の想いを注ぎ込んだ作品となる。

 システム的には「“軽さ”を追求しているところにも注目してほしい」と刃氏は語った。「落桜散華抄」はクライアントが1.4GB近くあり、回線速度の遅い台湾ではハードルが高かった部分があった。「末日之子」では200MB1程度までクライアントサイズを小さくし、快適で軽いゲームを目指していく。様々な点で、「落桜散華抄」の経験を活かした作品を作っていくという。

 刃氏は「『落桜散華抄』は成功しましたが、今の段階では、続編や同じ路線の作品を作ろうとは思いません。私たちは常に新しいチャレンジをしたいです。『末日之子』では特に戦闘描写と戦略性、探索の面白さにフォーカスします。シナリオの面白さ、キャラクター描写の楽しさは前作同様で、ゲームとしての楽しさをさらに追求した作品にします。現在台湾は、ソーシャルゲームでは他国のゲームのシェアが大きい。私は台湾ゲームクリエーターとしてオリジナリティのあるゲームを作り、台湾ゲームメーカーを盛り上げていきたいと思っています」と語った。

【「末日之子」PV第1弾】

【ゲームイメージ】
今回はあくまでゲームイメージで、今後ブラッシュアップをしていく。ゾンビには様々な種類があり、謎めいたキャラクターがたくさん登場する。ゲーム性、ストーリー性に注力した作品となるという

(勝田哲也)