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「Distant Worlds: music from FINAL FANTASY JOURNEY OF 100」公演レポート
白鳥英美子さんの「いつか帰るところ」、FFバトルメドレーなど珠玉の全19曲を披露
(2015/1/23 00:30)
スクウェア・エニックスは1月22日、「ファイナルファンタジー」シリーズのオーケストラコンサートツアー「Distant Worlds: music from FINAL FANTASY」の100回目の公演となる「Distant Worlds: music from FINAL FANTASY JOURNEY OF 100」を開催した。
「Distant Worlds: music from FINAL FANTASY」は、グラミー賞受賞者 アーニー・ロス氏と、「ファイナルファンタジー」シリーズの主要な楽曲を手がけているコンポーザー植松伸夫氏が2007年のストックホルム公演を皮切りにスタートさせたオーケストラコンサートツアー。ヨーロッパ、北米、アジア、そして日本と文字通り世界中を回っており、100回目を記念しての日本での凱旋公演となった。オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団、コーラスはDWFF Tokyo Choir、主催はキョードー東京。
開幕に先駆けて前座として登場した植松氏は、軽妙なトークと、気に入った曲に対して「ブラボー!」と叫ばせるお得意の“ブラボー係を選任ネタ”を繰り出し、開幕前の張り詰めた空気を和らげ、さらに日本初演曲が8曲もあることを告知して場を盛り上げた。
コンサートは、「FF」シリーズを体現する代表曲「プレリュード」と「Liberi Fatali」の2曲からスタート。ロス氏の解説によれば、これは第1回コンサートと同じ選曲ということで、ロス氏が特にお気に入りの2曲のようだ。今年は、公演100回目を迎えると同時に、スクウェア・エニックスミュージックレーベルの10周年でもあるということで、お馴染みのファンファーレオーケストラバージョンで盛大に祝った。本日のセットリストは以下の通り。
【第1部】
1、プレリュード「ファイナルファンタジー」シリーズ
2、Liberi Fatali「ファイナルファンタジー VIII」
3、勝利のファンファーレ「ファイナルファンタジー」シリーズ
4、蘇る緑「ファイナルファンタジーVI」
5、F.F.VII メインテーマ「ファイナルファンタジーVII」
6、Kiss Me Good-Bye「ファイナルファンタジーXII」ソリスト:スーザン・キャロウェイ
7、ローズ・オブ・メイ「ファイナルファンタジーIX」
8、キャラクターテーマメドレー「ファイナルファンタジーVI」
9、Balanm GARDEN~Ami「ファイナルファンタジーVI」
10、ファブラ・ノヴァ・クリスタリス「ファイナルファンタジーXIII」
11、片翼の天使「ファイナルファンタジーVII」
【第2部】
12、祈りの歌~異界送り「ファイナルファンタジーX」
13、ザナルカンドにて「ファイナルファンタジーX」
14、天より降りし力「ファイナルファンタジーXIV」
15、いつか帰るところ - Melodies Of Life「ファイナルファンタジーIX」ソリスト:白鳥英美子
16、スウィング de チョコボ「ファイナルファンタジー」シリーズ
17、バトルメドレー2012「ファイナルファンタジー I~XIV」
18、FINAL FANTASY「ファイナルファンタジー」シリーズ
【アンコール】
19、???
1部、2部共に珠玉の名曲ばかりで、「FF」ファンにとって嬉しいのは演奏に合わせてゲームの名シーンを集めた映像が流れ、それが懐かしさを増幅させてくれるところだ。それと同時に、「FF」シリーズにおけるゲームグラフィックスの進化をまざまざと見せつけられる。
選曲はすべてアーニー・ロス氏が決めているということで、メインテーマやバトルといった誰もが知っている曲ばかりでなく、結構地味ながらタイトルを強く印象づける佳作も選んでおり、とりわけ今回は1月21日に発売したオーケストラアルバム「Distant Worlds III: music from FINAL FANTASY」の収録曲をメインに、「FFVI」以降の楽曲が多めにした比較的若い年齢層でも楽しめる曲目になっていた。
第1部の聴き所は、やはりスーザン・キャロウェイさんによる「Kiss Me Good-Bye」(ファイナルファンタジーXII)。「FFXIV」のメインテーマ「Answers」も担当するキャロウェイさんは、2012年の「FF」25周年記念公演でも来日し、「Answers」を熱唱してくれたが、今回も驚くほどの圧倒的な声量で、素晴らしい熱唱を聴かせてくれた。
第2部では、「祈りの歌~異界送り」と「ザナルカンドにて」という「FF」史上屈指の悲しい曲からスタート。クラシックで聴くと悲しい曲調がより一層引き立ち、荘厳な気持ちにさせられた。
続いてようやく「FF」シリーズ最新作となる「FFXIV」から祖堅正慶氏作曲の「天より降りし力」が、クラシックアレンジで演奏された。「新生FFXIV」の様々な名シーンを織り交ぜながら、DWFF Tokyo Choirによるバックコーラスを交えた豪華バージョンでたっぷり聴くことができた。
個人的にもっともグッときたのは、白鳥英美子さんをソリストに迎えての「いつか帰るところ - Melodies Of Life」だ。「FFIX」のメインテーマとしてオープニングをはじめ、主題歌を含め、様々なシーンで使われる名曲だが、ヒロインが決意を新たに長い髪を切るシーンや、クライマックスシーンなどの映像を見ながら、白鳥さんの思い入れたっぷりに歌声を聴いてると涙が出てしまった。
その後に演奏されたチョコボのテーマのクラシックアレンジ「スウィング de チョコボ」は、「FF」シリーズ歴代のチョコボの映像を見せながら、軽妙なジャズアレンジで来場者から手拍子も起こっていた。
フィナーレには、ライブでは初となる「FFバトルメドレー」を披露。やはりバトルミュージックが好きな人は多いようで、大きな拍手が起こっていた。これもまたシリーズのバトルシーンを映像で見せながら、「FF1」から順に演奏。通常バトルからのアレンジが多かったが、ボスのテーマを挟んだり、「FFXI」に至っては闇王のテーマを使うなど、多少のアレンジを加えながら1から13までのバトルミュージックを見事にシームレスに繋いでいた。アンコールは世界初の楽曲が使われていたが、23日、24日の公演もあるため、あえて伏せたい。
個人的にはスタートするや否やオールスタンディングになるようなイトケン(伊藤賢治氏)のバトル尽くしのコンサートも好きだが、今回のように畏まった感じのクラシックコンサートもとても良いと思った。ゲームミュージックファンの多い日本では様々なコンサートが行なわれているが、植松氏の「FF」14作と言う厚み、あらゆるタイプの曲を盛り込んだゲームミュージックとしての多様性は他の追随を許さないところがあり、あたかもそれそのものが一個の壮大な芸術作品のようで、大きな感動を覚えた。
音楽を通じてゲームを追体験する。それはかつてそのゲームをプレイしたもののみに許される珠玉の時間だ。名曲を聴きながら、当時苦労した記憶や感動が昨日のことのように蘇ってきて、あらためて自分は「FF」シリーズをプレイしていて本当に良かったと心から思った。今回のコンサートを逃してしまったというFFファンは、CDを通じて楽しむか、次回の凱旋講演の機会を逃さないようにしたい。