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【GDC 2014】身の回りの風景が3Dゲーム空間に?!新手のHMD「Cortex」を試した
レーザーセンサー搭載で実現する驚愕の“強化現実ゲーミングヘッドセット”
(2014/3/22 16:15)
VRゲーミングを実現する新型HMD各種が大注目となったGDC 2014。PS4「Project Morpheus」を発表したSCEAや、開発機の強化版を出展したOculus VRの他にも面白い新型デバイスを見つけたのでレポートしよう。
それはKickstarterプロジェクトとして現在開発中の、Sulon TechnologiesによるAR(Augmented Reality:強化現実)ヘッドセット、「Cortex」。装着するなり、自分の身の回りにある環境がそのまま3Dゲーミング空間に早変わりするという、全くあたらしいアプローチの製品なのだ。
説明が難しいので、まずは以下のビデオを見て欲しい。これは「Cortex」が実現する理想の体験を紹介するイメージビデオだが、まるでSF小説か映画の世界のようだ。これはマジですか?
頭部センサーが周辺環境をスキャン、眼前のリアルが3Dゲーミング空間と化す!
Oculus VRの「RIFT」がVRゲーミングの決定版ヘッドセットになるとすれば、こちらのSulon Technologiesによる「Cortex」はARゲーミングの決定版になるかもしれない。
本製品の説明をしてくれたSulonのCEO、Dhan Balachand氏は、筆者に壁をドンと叩いて見せながらその違いをこう語る。「VRは触れないだろ?Cortexなら、バーチャルの映像に実際に触れることができるんだ」。
その秘密は、HMDの頭頂部に搭載されたレーザーセンサー。このセンサーはリアルタイムに全周囲をスキャニングしていて、HMDに搭載されたコンピューターにデータを送信する。コンピューターはスキャンデータをもとに、ディスプレイ内に立体映像を構築する。この手法により、実際の風景がリアルタイムCG化されるのだ。
通常のARデバイスのように現実の風景をそのまま映し出すのではなく、完全にCGに置き換えるのがポイント。壁や床、天井は全く別のテクスチャーに置き換えられ、目の前に立っている人はバーチャルキャラクターに置き換えられる……。そして眼前に広がるのは、まさしくSF系FPSのようなゲームワールド!
さらに「Cortex」に搭載されたセンサーにより、プレーヤーの移動や腕の動きがトラッキングされる。AR空間でバーチャルな銃を持ち、完全なる主観視点で歩き回り、完全なる体感操作で敵を銃撃!ARとしてだけでなく、VR体験としても完璧なものとなるのだ。
……というのは「Cortex」が目指す理想。現時点で実際に試せるのは、なにやらゴテゴテと既成品をくっつけたプロトタイプだ。
頭頂部にはレーザーセンサー。前頭部にはボール型の見慣れぬ装置、これはPC用モーションコントローラー「Razer Hydra」の磁気センサーだ。HMD部は「RIFT」の外装を削ったような形で、横から5インチのスマートフォンをスライドインさせることでディスプレイ代わりにする仕組み。レンズを通した見え方は「RIFT」の初期版とよく似ていて、きちんと両眼立体視だ。そして後頭部には何やら重々しいユニットがある。多分何かの処理装置が入っているのだろう。
という、いかにもダーティなプロトタイプ機だが、理想とする機能はほぼ実現されていた。ヘッドセットを装着すると、いま自分がいるデモルームの壁面・床・天井がバーチャルなテクスチャーに置き換えられる。ちょっとSFが入った作風で、真四角な部屋だったこともあり空間全体が「DOOM」っぽい雰囲気に。
部屋の隅に置いた荷物類も弾薬ボックス的な風貌に変化。全てがCGに置き換えられているのでVRっぽいが、実際は現実の風景を元にしたAR空間となっているので、映像で見える壁に触れれば、ちゃんと手がぶつかるし、地面のオブジェクトも実際に触れる。感触はリアルのものだけども、段違いの実在感だ。実在しているのだから。
そして装着を手伝ってくれたデモスタッフを振り返ると、ギャー!!ゾンビだあああああ!!
両手に持った「Razer Hydra」コントローラーを掲げると、自分の手には銃が握られている。迷わずトリガーを引く。ゾンビは死んだ。 でも大丈夫、それはAR空間内の出来事で、ゾンビの元になったスタッフたちは無事だ。
このほか、AR空間内に純粋なVRオブジェクトが飛び出してくる演出もあり、体全体を使って避けたり、自分の脚で歩きまわって移動することも自由自在。現実の壁などの地形はCG化されて「見えて」いるので、VRヘッドセットのように、見えない壁にぶつかってしまう心配もない。ただし、HMDを通して見た際の距離感の違いというのはあるため、最初は恐る恐る壁に触ってみるという感じになる。
これはもう完全にSFの世界だ。現状のプロトタイプ機はフレームレートが非常に低く、(10~15fps程度)、それにともなって大きめのラグもあるためまだまだ快適とはいえないが、コンセプトは完全に実証されていることを確認できた。
課題も多い。プロトタイプ機は性能が足りないだけでなく重く、かさばり、取り回しは最悪に近い。製品版に向けては技術的に解決すべき点が山ほどありそうで、今年末の発売という目標は、おそらく達成できないのではないだろうか。「Oculus RIFT」や「Project Morpheus」等のVRヘッドセットに比べるとさらに開発難度の高いデバイスになりそうだが、実現すればまさに、SFを超えた世界がやってくる。長い目で注目だ!