ニュース

伊藤賢治氏、河津秋敏氏合同インタビューレポート

一番のお気に入りアレンジは「Asellus」。河津氏が「サガ」新作に改めて言及

1月18日開催

会場:新宿文化センター大ホール

 1月18日に行なわれた作曲家伊藤賢治氏が率いるバンドによる一夜限りのライブイベント「One Night Re:Birth Again supported by SQUARE ENIX」。本稿ではその終演後に行なわれた合同インタビューの模様をお届けしたい。ライブコンサートの模様はこちらで紹介しているので合わせてご覧頂きたい。

【伊藤賢治氏と河津秋敏氏】
ホッとした表情でインタビューに応じる伊藤賢治氏と河津秋敏氏。2人の話しぶりから親密さが伝わってきたが、ついに再び「サガ」で2人のコラボが見られそうだ

伊藤氏からは、自らの音楽制作への向き合い方について、非常に真摯な姿勢が伝わってきた
コンサートの最後はバトルサウンドではなくオープニングテーマでしめた
観客に手を振って来場者の歓声に応えた

――ライブの感想をお願いします

伊藤賢治氏:今回、勢いだけの部分だけではなく、テクニカルな部分、ミュージシャンにとっての技術的な部分も含めた選曲と演奏だったので、そういう意味でも玄人好みのライブに仕上がり、そういうところで満足して頂ける方もいらっしゃったのかなとという点も含めて、前回より1段階アップした意識でやりました。観客の反応もシンプルに楽しんで頂けたと感じたので、それはとても良かったかなと思っています。

河津秋敏氏:非常に盛り上がって、自分も楽しめましたし、演奏している方もノってやっているのがわかって非常に良かったです。前回よりハコ(会場)がだいぶ大きくなり、リアクションがどうなんだろうなというところがありましたが、とても良かったですし、バトル以外の曲も最後も含めて盛り上がっていたので、今後も引き続きイトケンのライブでは色んな曲が聴けるんではないかと改めて感じました。ハコもこれ以上大きくなるというと、次はNHKホールかな、国際フォーラムかなとというところなので、そういう点も期待してます(笑)

――最後はオーバーチュアでしめられましたが。

伊藤氏:あれは狙いですね(笑)。自分も事前にシミュレーションして、泣くかも知れないなと思っていたのですが、意外に、演奏の疲れと、あとみんなの楽しげな反応で、満足感が伝わってきたので、そういう意味で助けられたし、支えられたおかげで自分が泣くってことはありませんでした。非常に満足して演奏できました。

河津氏:前回、前々回は泣けたんですが、今回は意外と冷静に聞けて、なんでしょうね(笑)。「狙ってるなイトケン」と思ったのかも知れないな(笑)。途中で立てとか、アンコールを要求するとか、普通のコンサートでは考えられないから、アンコールやりますよとか普通言わないから(笑)。ただ、最後は泣かされてる人はいるだろうなと思いながら聞いてました。

――今回演奏されたバトルサウンドの中で、お気に入りのアレンジはありますか?

伊藤氏:んー、ラストバトルのアセルス(サガフロンティア)かな。やっぱり、今までのノリだけはなく、クラシックという自分の出発点も含めての盛り上げ方について、アレンジしながら研究していって、アレンジするのは結構ハードルが高くて難しかったんですが、ただそこを超えて完成した時は嬉しかったですし、「これは聴かせないともったいない!」というのが自分の中でありました。エンターテインメントという意味でのステージングをどうしようかなというそこまでイメージまでたてた曲作りだったので、その集合体としてあの曲が一番だったかなと思っています。

――やはりアレンジには時間が掛かるものなのですか?

伊藤氏:掛かります。ゲームボーイの「サ・ガ2 秘宝伝説」だったり、スーパーファミコンの楽曲だったり、基本的にはそこで完結しているんですよ。また改めてリアレンジするというのはまたの別の作業になるので、そういう意味での苦しみはあります。

――ステージの上から客席を見たときにどのような印象を持ちましたか。

伊藤氏:意外に冷静に。アニメ系のイベントで大晦日にここに立っているんです。そこで下調べのような感じでできたので、なんとなくイメージは付いていたので「うわっ」というのはなかったです。

――観客の年齢層についてどのように考えていますか?

伊藤氏:んー、今回は20歳代以上、30歳代という方が多かったので、さっきも招待した方が楽屋に来たときに、「小学生の時に『ロマサガ3』やってました」って言われて、「小学生で『ロマサガ3』?」って(笑)。とするとやはり30台前半あたりが一番多いのかなと思いました。

――今回「下水道」が遂に公開されて、ファンクっぽい要素も入って変わった感じのアレンジでしたが、今回のリアレンジの狙いは?

伊藤氏:まず、前回のアンケート結果というところで、また同じメンバーでやるんだろうなという、バンドサウンドというところで、私は結構ギターサウンドが好きなんです。だから、ギターの寺前君のプレイを活かすためにどうすればいいかなというところで、ああいったファンクっぽい要素は、意外にやってそうでやってなかったので、彼にとっての新しい要素として、きっと彼にとってもポジティブな部分として発表することができるし、僕のステージで彼のプレイも色んな形で枝分かれして極めていければという想いもあって、ああいう形になりました。

――「下水道」演奏直後のステージから見た客席の雰囲気はいかがでしたか?

伊藤氏:「おおぅ」みたいな(笑)。半ば驚き、半ばこうきたかみたいな。逆に「下水道」やるよ、アレンジやるよといったときに、皆さんはどういうものを頭に思い描いていたか、それを聞いてみたいですよね(笑)

――一番前に座っていた女性が肩をふるわせて笑っていたんですよ、その後で凄くノッてて、受け入れられる瞬間ってこうなんだなというのがわかっておもしろかったです。

伊藤氏:へー、それは貴重ですね。ありがとうございます。

河津氏:もともと苦し紛れに下水道にハメたっていうのがあるので(笑)、当時曲をハメていってあの曲だけがハメるところがなくて、下水道にハメることになったんですけど。下水道は設定的には下水道ですけど、見た目はスーパーファミコンの半透明処理を使った透明感のある、それこそ“飲める下水道”みたいなそんな感じだったんですけど(笑)、逆にそこにハメる曲がなくて、やむなくああした形になったんですけど、ステージでも言いましたが、最初からあれだったら当然下水道にはならないよねって(笑)

伊藤氏:完全に制作者の意図から外れて、ファンタジーとして楽しんでますよね(笑)。ある意味それは嬉しい部分です。

ボーカルの岸川恭子さんは、アンコール限定でのわずか2曲の参加だったが圧倒的な存在感を見せた

――アンコールでの「ロマサガ」のバトル2のアレンジ内容に驚かされたのですが、岸川さんに歌ってもらおうと思った理由は何ですか?

伊藤氏:もともとあの曲はバイオリンの掛け合いだったのですけど、今回はバイオリンがひとりというところで、マニピュレーターの打ち込みを流すことにしたのですけど、さすがにいないのに聞こえる音というのは僕もちょっと違和感があるので、じゃあせっかく今回ボイスパフォーマンスしていただくので、どうやってあの曲を歌わせるかというのがまずあって、結果がああなりました。彼女の音域の問題もありましたが、そこを違和感がでないように、オリジナリティも含めて、どれがベターなのかなというのを追求した結果があれでした。

――実際にチャレンジしてみて感想はいかがですか?

伊藤氏:盛り上がった分、これは外れてないんだなと。ベターといったのはこれはベストではないけど、ベストにもっとも近いベターにはできたかなと。あとはきっと好き嫌いもありますけど、嫌いだけどクセになるよなというところまでいければいいなと思っています。

――CDに収録されるバージョンはどのようなアレンジになるのですか?

伊藤氏:基本的にはボイスパフォーマンスが入らない、バイオリンの掛け合いによる演奏になります。

――河津さん質問です。サガ25周年に向けてのもろもろについて、新作についてはまだ発表できないということですが、移植やコラボなどについても言及されていましたが、こちらをもう少し具体的に

河津氏:コラボは相手さんがいる話なのでこの場で話すのは難しいですが、来月(2月)以降に順次発表していきますので、ゲーム同士のタイプもあれば、それ以外のタイプのコラボもあります。移植については、各プラットフォーマーさんが、たとえばバーチャルコンソールだったり、ダウンロードだったり、様々な形でやられていて、昔のゲームを遊ぶ環境がないわけではないんですが、もうこのハード持ってませんということもあると思うので、「ロマサガ」と「サガフロ」は同じハードでは遊べなかったことなどもありますので、そうした部分に対応した“何か”をやりたいと今準備しています。

河津氏が参加してのトークイベントでは、「サガ」の新展開について言及

――伊藤さんに具体的なオファーをするのはいつぐらいになりますか? それとももうされていますか?

河津氏:いやいや(笑)。まだ契約が終わってないので(笑)、これからまだ詰めなきゃいけないことがあります。

伊藤氏:この前ご飯食べました。そのレベルです。だからこれからが怖いんです(笑)。

――現在計画されている新作は、「ロマンシングサガ」の新作と考えて良いのですか?

河津氏:んー、まだタイトルをどうするかまでの具体的なところはまだ決めていませんが、「ロマサガ」って付けるからには、これまで1、2、3とあって、ユーザーが持っているイメージに合致しなければ「4」とは当然付けられませんし、別のタイトルにするとなると、タイトルを考えなければいけなくてそれは大変なのであまり考えたくないんですが(笑)。内容にふさわしい新しい「サガ」にするかもしれませんし、セールス的には「ロマンシング」って付けた方がいいのは話が早いんですが、結局はユーザーがどう楽しんで貰えるかというところが一番重要なので、それはもっと中身ができてから最後の最後まで取っておきたいと思います。

伊藤氏:アンケート取ってみますか? 何のタイトルがいいか。

河津氏:でも中身見てないのにアンケート取っても(笑)。出してからこれ何がいいですかってそんなん(笑)

伊藤氏:僕は「閃」って付けられちゃいましたし(笑)。

河津氏:「サガ(仮」でタイトル募集しますってのは聞いたことがない(笑)

「サガ」シリーズの原画に囲まれてのインタビューとなった

――今後「サガ」の新作があるとして、どういった曲、どういったバトル曲を作ってみたいと考えていますか?

伊藤氏:それはもうそのときになってみないとわからないですね。自分がどういうところで音楽に限らず影響を受けて、表現のひとつとしての音楽制作なので、それに向けてこうしていきますという予定は立てずに、その時々の自分の出したいもの、求められているものに合わせてという、意外に出たとこ勝負というところもあるんです。それもそれでいいんじゃないかと。その時々に出したものが、そのときの旬だったということでやっているという意識があるので、今回もそういう風にいけたらいいなと考えています。

――ありがとうございました。

(中村聖司)