ニュース

【CEDEC2013】その作品に世界一の愛を! サイバーコネクトツーが取り組んだ

「ジョジョ」と「NARUTO」への愛あふれるゲームデザイン

8月21日〜23日 開催予定

場所:パシフィコ横浜

受講料:15,000円(デイリーパス)〜

 「キャラクター版権タイトルにおけるゲームデザイン論」ではサイバーコネクトツーが開発した「NARUTO -ナルト- ナルティメットシリーズ」と、「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」を題材に、原作ファンに向けた、ファンが楽しめるゲームデザインのアプローチが語られた。

 原作のあるゲームでは、ファンが納得するキャラクター表現をしなくてはならないし、版権元と細かい打ち合わせも必要となる。講演ではサイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏と、「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」のディレクターを務める中舎健永氏が登壇し、それぞれ取り組みを語った。特に「ジョジョ」は原作ファンでなければわからないような、非常に“濃い”講演となった。

原作の“コマ”を限りなく使用して作り上げた「オールスターバトル」

サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏
「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」のディレクターを務める中舎健永氏
それぞれのタイトルにおけるアプローチ

 プレイステーション 3用スタイリッシュ対戦格闘ジョジョアクション「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」は8月29日発売予定で、受注だけで50万本に届くほどの人気になっているという。荒木飛呂彦氏のコミック「ジョジョの奇妙な冒険」の1〜8部までキャラクターが登場し、これまでにない注目を集めている。

 「ジョジョの奇妙な冒険」は7部までは完結しているため、キャラクターに関してのコンセプトは開発1カ月で固まった。それから2カ月でキャラクターの仕様もおおよそFIXすることができた。これはストーリーとして完結し、明確なキャラクター像が構築されているからだ。

 仕様は短期間で固まったものの、作業量は膨大だった。膨大になった理由の1つは、キャラクターの動作を原作コミックの“コマ”から選出を行なうという形を取ったからだ。例えば第1部の主人公ジョナサンの場合、基本挙動1つに対して7〜15コマほど、モーションに対しては240〜250コマを選出し、そのコマを再現するような動き、技を設定していった。ゲーム全体では原作のコマを1万数千コマ選出しているという。ジョナサンの技のモーションは90%が原作のコマのポーズをしているとのことだ。

 「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」では「名ポーズ」、「名台詞」、「名擬音」というファンが高く評価する原作のポイントをどうゲームに盛り込むかを開発の鍵とした。「ジョジョの奇妙な冒険」ではコミックならではの“描き文字”も大きな魅力になっている。これらを様々システムと組み合わせゲームの様々な場面で盛り込んでいった。敵の技を避ける「スタイリッシュムーブ」では“ジョジョ立ち”と言われる独特のポーズを入れた。「挑発」では原作のシーン、台詞、カメラワークを盛り込むなど、随所にコミックでの印象的な要素を盛りこんだ。

 本作では挑発と勝利ポーズは複数用意されており、プレーヤーが自由にカスタマイズできる。対戦時に交換するプレーヤーカードにも好きな名台詞を添付することが可能で、原作の多彩な要素をプレーヤー自身で利用できるようになっている。

 この他にも様々な場面で原作のポーズを取り入れている。ワムウのコマンドを入れていないニュートラルの“立ちポーズ”はコミックでワムウが「柱の男」と呼ばれていた初登場時のポーズとなっている。ジョルノがスタンドで攻撃を行なっているときのポーズは、コミックスの表紙のポーズが元になっている。このようにコアな原作ファンならニヤリとさせられる仕掛けがたくさんあるという。

 また、原作で特に印象に残るのがキャラクター達の“死に様”だ。本作では特殊な条件で、キャラクターが倒されたとき、「シチュエーションフィニッシュ」が挿入される。花京院は「カイロ市街」で敗れると給水塔にめり込み息絶える。吉良吉影が杜王町で倒されると「振り向いてはいけない小道」で、無数の腕が迫ってくるシーンが展開する。

 ディオがジョナサンに空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)でとどめを刺されると、原作でのジョナサンの最期のシーンが再現される。シーザーは吹っ飛ばされない技で倒されたとき、力尽きる前に“鮮血のシャボン”を作る。このように原作ファンが驚き、感心させられるに違いない要素がふんだんに盛りこまれている。

 「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」は開発機関はおよそ1年半だったと中舎は語った。スタンドのON/OFFなども含むため、キャラクターのモーションは、通常の格闘ゲームの倍以上で、しかも登場キャラクター数も多い。加えてチェックによる修正作業が入るため、開発現場は常に大忙しだったという。

 そんな中、現在連載中の「第8部 ジョジョリオン」に関しては、粘れるだけ粘り、ウルトラジャンプ連載での“5月号”の内容まで盛り込まれているという。ただ、ストーリーに関しては、ゲームオリジナルとなる。

 短い時間の中、それでもできる限りの「原作への愛」を盛り込んだ本作は、たくさんの問題もあった。しかし、中舎氏達開発スタッフは原作でブチャラティが言う「覚悟」を持ってこのゲームに取り組んでいったという。

【キャラクター版権タイトルにおけるゲームデザイン論】
原作への開発スタッフの強い思いでタイトルが作られている

※掲載当初、「予約50万本」と書いておりましたが、「受注50万本」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

3人のディレクターが大揉めで構築していく「ナルティメットシリーズ」

松山氏のまとめの言葉。“世界一の愛”というのは強い言葉だ

 岸本斉史氏の「NARUTO−ナルト−」及びアニメ番組を原作とした「NARUTO−ナルト− ナルティメットシリーズ」はこれまでPS2、PSP、PS3、Xbox 360といったハードで14タイトルが発売されている。本作は海外の人気が高く、全体のうち日本での売り上げは10%、北米が50%、欧米が40%という割合になっているという。

 「ナルティメットシリーズ」では、原作要素をどこまで表現するかを版権元と確認する。まず原作のどこまでを再現するか決める。その上でバトル要素の“役割”を意識して、アクション性を重視した「コンボ」、ゲーム性を重視した「忍術」、派手さととどめを刺す感覚を重視した「奥義」、キャラクター性を強調する「覚醒」といった要素からドのキャラクターをゲームに出すかを設定し、「コンセプトシート」を作成する。これがキャラクターの「設計図」となるという。

 コンセプトを決めた上で、そのコンセプトを元にできるだけ自由にアイディアを盛り込んでいく。「ナルティメットシリーズ」には「ゲームデザイナー」、「アートディレクター」、「バトルディレクター」がそれぞれの視点でキャラクターをアプローチしていくという特殊な開発姿勢を取っている。

 3人は同格であり、キャラクターの作成はいつも揉めに揉める。そこからとことん話し合い、そしてキャラクターを作って行くという「泥臭い」方式をとっていると松山氏は語った。

 開発側で仕様や絵コンテを作ってから、版元の“監修”が入る。時には原作者が「このシチュエーションこれからやる予定があるから」ということでNGになる事もある。この時の監修は非常に細かいものになる。「ナルティメットシリーズ」ではこの工程を12年繰り返し、信頼関係を構築していったという。

 原作の印象的なシーンはストーリーモードではムービーでそのまま再現しているものもあるが、バトルでもコンボのテンポを重視し、戦っているなかでプレーヤーに「これはあのシーンだ」と気づかせる感触を重視している。また、カットシーンが挿入される「奥義」では、6〜12秒ほどのデモが入る。最新作である「NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム3」では特定の条件で技を当てると「シークレットアクション」が発生し、原作のシーンを思わせる演出が入る。

 「ナルティメットシリーズ」では、表現に関してはレーティングも問題になる。本シリーズは日本では“全年齢”となっている。このため、原作では吐血するようなシーンでは血の表現をなくすなどアレンジを行なっている。一方で海外版はプレーヤーの年齢層が高いため血が描かれる。海外版はユーザー側で表現を選択できるオプションも用意されている。

 松山氏は、「『ジョジョ』と『ナルト』はファンが大きく異なり、求められるものも違う。しかしどちらもファンが何を求めているかが一番大事であり、我々は入念な調査を行なっています。様々なイベントに足を運び、版元・原作者ともしっかり話し合います。そして世界で一番、原作者以上に原作を最大限に活かしたゲームデザインを考え抜く。これが一番大事だと思っています」。

 そして最後に「キャラクター版権のあるタイトルは、ゲームの前にすでにファンがいらっしゃいます。私達はそのことを誰よりも自覚しておく必要がある」と語り、“その作品に世界一の愛を!”という言葉で公演を締めくくった。

【キャラクター版権タイトルにおけるゲームデザイン論】
原作のあるゲームの場合、ゲームの前にファンがいる。クリエイターにとっては、彼らへのアプローチが重要な課題となる

(勝田哲也)