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【CEDEC2013】PS4とPlayStaion Cameraが実現する「THE PLAYROOM」

強化されたコントローラーとカメラが叶える、遊びの可能性と技術を開発者が披露!

9月21日~23日開催

会場:パシフィコ横浜

 CEDEC 2013初日に行なわれた2つのプレイステーション 4関連セッションのうち、「PlayStation 4の新UIから生まれた THE PLAYROOM」と題されたセッションでは、PS4とDualShock 4、そしてPlayStation Cameraを組み合わせた新感覚のゲーム「THE PLAYROOM」の開発経緯および技術的なポイントの披露が行なわれた。

 「THE PLAYROOM」は体感型AR(強化現実)のミニゲームを複数パッケージ化したコンテンツで、流通形態などはまだ明らかになっていないが、PS4のローンチ時期に向けて製品の開発が進められているタイトルのひとつだ。本講演では本作の開発担当者が登壇し、DualShock 4とPlayStation Cameraを組み合わせたゲーム開発の実際的なエピソードを聞くことができた。

【The PlayRoom I PS4 Trailer】

多彩なインタラクションを可能にする PlayStation Cameraと「THE PLAYROOM」

SCEワールドワイド・スタジオ JAPANスタジオの横川裕氏
PS4ならではの遊びを作り出すため大量のプロトタイプを厳選
AR感が溢れる AR Hockeyのプレイシーン
PlayStation Camera。高解像度・高FPS、そして高視野角も特徴の2眼式カメラだ
独立制御されたカメラの1つがDualShock 4のライトバーを追跡する。

 登壇したSCEワールドワイド・スタジオのJAPANスタジオから横川裕氏と吉田匠氏はそれぞれ「THE PLAYROOM」の開発に深く関わってきた人物。PS3の「THE EYE OF JUDGEMENT」、PS VITAの「Gravity Daze」と、以前からAR機能を盛り込んだ作品に主要スタッフとして関わってきた技術者・ゲームデザイナーだ。

 横川氏によれば、本作「THE PLAYROOM」はPS4そのものの開発初期からプロジェクトが立ち上がっており、プラットフォーム機能の開発と二人三脚の関係でゲーム開発が進められてきたという。PS4とPlayStation Cameraが持つポテンシャルを広くユーザーに伝えるための、肝いりプロジェクトというわけだ。

 プロジェクトはPS4のために50ものプロトタイプを検証し、4つのゲームを厳選してブラッシュアップする形で全体がまとめられている。ゲームの案内役となる“ASOBI”というボール型ロボットと戯れつつ、ひとりで、または複数人で、AR Bots、AR HockeyなどのAR技術を駆使した体感型の遊びが楽しめるという構成だ。

 基本の仕組みとしては、PlayStation Cameraが捉えたプレーヤー自身の映像に、PS4で生成されたCGが合成されることで、あたかも現実世界にゲームキャラが存在するかのような風景が現れ、プレーヤーの体の動きによってそれらのキャラクターに物理的・直感的なインタラクションができる、というものになっている。

 例えばAR Botsというミニゲームでは、周囲にウジャウジャと現れる小さなロボットたちをなでたり、叩いたり、蹴ったり、手を振るといったアクションで、多彩な反応を楽しむことができる。AR Hockeyでは、現実の風景が一転、デジタルチックなエアホッケー場と化し、2人のプレーヤーでDualShock 4をパドル代わりにボールの撃ち合いができるというものだ。

 こういった仕組みを実現するための核となっているのが PlayStation Cameraだ。PS2時代のEye Toy、PS3のPlayStation Eyeの後継となるこのカメラは、2つのレンズを搭載する2眼式となっているのが大きな特徴で、プレーヤーの姿を立体的に捉えることができる。また、2つのカメラを別々に制御することで、異なる情報を組み合わせることも可能だ。解像度は1,280×800ドットで、60fpsでの撮影が可能。

 例えば「THE PLAYROOM」では、プレーヤーが手に持つDualShock 4を追跡して、そこに様々なエフェクトを発生させる機能がある。これは、カメラの1つの絞りを調整して、DualShock 4のライトバーだけを撮影・トラッキングすることで高精度な追跡を可能としているわけだ。DualShock 4にはモーションセンサーも付いているので、画面内の位置だけでなく、傾きや動きも緻密に検出でき、「THE PLAYROOM」ではこれらの情報を組み合わせて様々な演出を自然と現実の風景に合成することに成功している。

 さらにPlayStation Cameraでは、標準のライブラリ機能で顔認識もできる。顔の位置だけでなく、目の位置、顔の角度、動きなど高性能なヘッドトラッキングが可能。「THE PLAYROOM」ではこの顔認識機能が全面的に使われており、プレーヤーの頭を燃やしてしまったり、骸骨にしてしまったりといった、様々な楽しいエフェクトを実現し、遊びの幅を広げている。

 PlayStation Cameraでは奥行き情報を取得することも可能だ。空中を漂う案内役のロボット“ASOBI”をプレーヤーが押したり、パンチしたりといったアクションでは、PlayStation Cameraの機能であるデプス検出を適用。デプス情報は解像度こそ高くないようだが、腕や足といった、人体の大きなパーツ単位の動きを捉えるには充分なもののようだ。“ASOBI”との衝突判定ににはこの機能がふんだんに活用されている。

 また体感型のゲームを実現する上で重要な要素となっているのが、DualShock 4に搭載されているスピーカーの存在だ。小さなコントローラーとは思えないほど大きな音が出せ、デュアルモーターによる振動機能と組み合わせられることで、映像だけでは得られない“手触り”を再現できる。例えば「THE PLAYROOM」では、コントローラーを掃除機をみなしてゲームキャラを吸い込んでいく遊びの際、シュゴーという効果音をコントローラーから発生し振動も加えることで、リアルな体感が得られるようになっているのだ。

 「THE PLAYROOM」はこのように、PlayStation CameraだけでなくDualShock 4の機能も上手に組み合わせることでインタラクションの幅を広げており、PS4における体感型ゲームのお手本といえる内容に仕上がっている。これを参考に新たなゲーム制作を模索する開発者も大いに出てきそうだ。

単体で多彩な機能を持つDualShock 4。PlayStation Cameraと組み合わせることでさらにポテンシャルが上がる
高性能な顔認識で顔パーツの位置、顔の向きなども検出する
2眼式のカメラで奥行き情報の検出も。
動き検出はフレームごとの差分を取ることで実現
意外に当たり判定は2D処理で行なっているが、なかなかの精度がでているようだ

PS4のパワーと新規フィーチャーで体感型ゲームは1ランク先の品質へ

技術面の解説を行なった吉田匠氏
PS4と連動するモバイル用コンパニオンアプリ
「THE PLAYROOM」の開発はハード側の開発と連動し、互いの質を高める方向に作用

 DualShock 4のトラッキング、動き検出、顔認識、奥行き情報の取得といった様々なセンシングに使われる PlayStation Cameraだが、そのパワーの源泉は2眼のカメラだけでなく、PS4そのものの演算能力にある。

 技術面の解説を行なった吉田匠氏によれば、これらのセンシング処理には膨大な画像処理が必要。しかしそれは、PS4のGPU機能を活用したGPGPU実装によって高速化されており、1080p/60fpsでの実行が可能であるそうだ。映像認識エンジンの遅延は1フレーム以内だとのことで、標準コントローラーと同等のレベルにまで応答性が高められていることがポイントとなっている。

 従来のEyeToyやPlayStation Eyeで実現されていたARゲームではここまでの低遅延が実現されていなかったそうで、そのために違和感や、イライラ感に繋がっていたという。しかしPS4のパワーで遅延が最小限となり、高フレームレートも確保できたけっか、「まるで鏡の世界」と言える水準にインタラクションの質が向上したと自信たっぷりだ。

 またPS4は、iOS/Androidのスマホやタブレットで動作するPlayStation Appを使い、本体と連動するコンパニオンアプリとして機能を拡張できる。「THE PLAYROOM」ではコンパニオンアプリをゲームのサブ画面として使い、ちょっと新しい遊びを実装した。スマホやタブレット側でお絵かきをして、それを画面外にフリックアウトすると、即座に「THE PLAYROOM」側の画面にそのイラストが飛び出してくるというものだ。

 スマホ/タブレット側のプログラムはHTML5で構成されているとのことで、アプリ単体の機能としてはシンプルだ。それがPS4側では質感たっぷりの3Dモデルとなってリアルにレンダリングされ、あたかも現実の風景に溶け込んで存在するように表現されるのだから面白い。

 PS4ではこのように贅沢なプラットフォーム機能を活かしてARゲームの可能性もさらに広がっており、これまでとは違った新鮮で質の高い遊びがさらに展開していくことになりそうだ。この辺りの可能性に興味を持った方は、PS4のローンチ後、ぜひ「THE PLAYROOM」を触ってみてほしい。

 またもうひとつ、「THE PLAYROOM」での活用によって明らかになった PlayStation Cameraの能力は、より普通なゲームでも使い道が見つかるかもしれない。例えばPS3の「グランツーリスモ 5」で実現された、PlayStation Eyeによるヘッドトラッキングシステムも、PS4ならさらに高精度になることが期待できそうだ。注目のデバイスである。

コンパニオンアプリの応用例。スマホに描いたイラストをスナップアウトすると現実世界に飛び出してくる!
セッションの終盤では、本作品の開発過程で得られた知見が披露された。認識技術は完璧でなく、それを織り込んだゲームデザインが重要とのことだ

(佐藤カフジ)