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【特別企画】650万DL突破アプリの秘密に迫る

人気アプリ「にゃんこ大戦争」を支える「Tapjoy」とは

8月5日 収録

会場:Tapjoy Japan本社

Tapjoyは世界190カ国、SDK(ソフトウェアの開発キット)搭載端末累計10億台という世界最大規模の、スマートフォンに特化したリワード広告(広告にアクセス、アクションを起こした訪問者に報酬の一部を還元する仕組みを持った広告)会社である

 先日、650万ダウンロードを突破したiOS/Android用人気アプリ「にゃんこ大戦争」。このアプリ内で使用する「ネコカン」(ゲーム内マネー)を手に入れるために、スマートフォンに表示された広告をタップしたことはないだろうか?

 広告に対するアクションを行なうだけで「ネコカン」が手に入り、ユーザーは実際のお金を使うことなくゲームを進められる。開発者も、課金者/非課金者を想定したアプリをつくるといった従来の枠組みとは異なる制作体制が可能となる。まさによいことづくめのシステムを構築しているのが、Tapjoyという会社だ。「にゃんこ大戦争」が650万ダウンロードという偉業を成し遂げ、その収益を上げるうえで同社のシステムが寄与している。

 8月21日~23日の間、神奈川県横浜市「パシフィコ横浜」にて開催されるコンピュータエンターテイメント開発者向けカンファレンス「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2013」(CEDEC2013)。同社の日本支社もセッションで参加する「CEDEC 2013」を目前に、同社の主要メンバーにお話を伺った。

【にゃんこ大戦争】
ポノスの人気アプリ「にゃんこ大戦争」。600万ダウンロードを突破し、さまざまなグッズも登場している

【神田裕介氏】
【村上雅一氏】
【只隈茂朗氏】
Tapjoy Japan代表取締役。CEDECでは、8月23日の11時20分~12時20分でセッションを行なう
Tapjoy Japanデベロッパービジネス推進部 部長
Tapjoy Japanデベロッパービジネス推進部 シニアマネージャー

日本でもバンダイナムコゲームスが採用

赤く塗られているのがTapjoyのオファーウォール(広告一覧)が導入されている190カ国。比較としては、国連承認国は193カ国、日本が国として承認しているのは195カ国

 Tapjoyの創業は2007年、アメリカ・サンフランシスコ。日本の現地法人ができたのは2012年4月というからつい最近のことである。それがわずか1年余りで「以前から家庭用ゲーム機をやってらっしゃるようなパブリッシャーさんには、一通りどころか2巡3巡といった具合にTapjoyの仕組みをご利用いただいている」という。日本ではバンダイナムコゲームスも「ウィザードリィ ~戦乱の魔塔~」(iOS)といったタイトルで同社のシステムを採用している。

TapjoyのサイトからSDKのダウンロードができる。アカウントを開設する必要があるが、メールアドレスさえあればすぐに開設可能だ

 Tapjoyのシステムは「WebベースでSDKをダウンロードしたり、クレジットカードで決済できるので、現地法人がある必要はない(神田氏)」という。「とはいえ、Webの問い合わせ先などもすべて英語でしたし、SDKの実装ガイドを日本語化したり日本語の資料を作ると喜んでもらえることが多かった。また、日本でサービスを利用できることを知らない人も多かった(村上氏)」のだという。つまり、より日本にTapjoyのシステムを根づかせるために、日本に現地法人をつくった形だ。

 映画「怪盗グルーのミニオン危機一髪」(ユニバーサル・スタジオ)をモチーフにし、ゲームロフトが運営中のアプリでは、一見すると日本のアプリだが、海外に本社を持つ会社(ゲームロフト)がサービスしている。アプリは日本で遊ぶわけだし、オファーウォール(広告一覧)には海外の広告が表示されるわけではなく、日本のユーザーに見てもらいたい広告が出るという。

 これは「この端末が日本で使われているというのをTapjoyのプラットホームが自動的に判別している(村上氏)」。こういった端末や使用エリア・設定言語については、後述のターゲティング広告にもつながってくる。

ユーザー、開発者、広告主の三方にメリットのある仕組み

 Tapjoyのシステムを説明するうえで必要な「リワード広告」というキーワードをご存知だろうか。イメージとしては「ポイントサイトなどでアプリをダウンロードしたり、資料請求するとポイントがもらえる仕組み」というのが一般的なイメージだろう。

 よく言われる「リワード広告」は、あらかじめ設定したアクションをユーザーが行なうと、報酬としてユーザーにゲーム内仮想通貨などのリワードが贈られる。広告を出した側(パブリッシャー)は、アクション数に応じて広告費が発生する仕組みとなっている。

 ユーザーの立場からリワードを利用したことがないという方、それはなぜだろうか? 筆者も経験があるが、ゲーム内仮想通貨が欲しいと思ってリワードリストを見たところ、あまり興味を覚えないものが多かったため、これならば普通に課金したほうがいいかな、と思った記憶がある。

 広告を出すパブリッシャーの立場からすると「リワードとしてもらった仮想通貨を使い切ったら、そのユーザーはもうアプリで遊ばない」というイメージがあり、リワード利用ユーザー=優良ではないユーザーという認識なのではないだろうか。実際、ストアのランキングを一時的に上げることにより注目度を高めてユーザーの獲得をねらう、いわゆる「ブースト」は、懸賞サイトなどからの導入が多いため、瞬間的な新規流入数は増えるものの、すぐに離脱するユーザーが多いのも特徴だ。ランキングを見かけた興味を持った自然検索してきた(オーガニック)ユーザーの獲得が真の狙いであるため、離脱が多いのは想定の範囲内ではあるが。

 しかし、Tapjoyには日本国内をメインに展開するほかのリワード広告会社とは大きく異なる点がある。読者のなかには、買い物をする時にはポイントがより多くもらえるようなインターネット上のショッピングモールを利用している方も少なくないだろう。大手のネットショッピングモールでは、日用品からパソコン、航空券まで、ありとあらゆるものを購入することができる。しかも購入額に応じたポイントがついて、だ。

 前述の通りTapjoyは世界190カ国、SDK搭載端末累計10億台というワールドワイドに展開するリワード広告会社だ。今年6月にはカカオトークとの提携も発表している。つまり、Tapjoyが提供するゲーム内仮想通貨をもらえる方法がいく通りもあるというわけだ。

広告メニューや成果報酬設定地点はアプリによって、さまざまな方法がある
広告の手法も多種多彩に用意されている

 Tapjoyの「オファーウォール」(広告一覧)と呼ばれる広告メニューリストから、ユーザーはこの中から自分の興味のあるものをタップし、それぞれ指定されたアクションを実施することでゲーム内仮想通貨などを手にすることができる。あるゲームアプリのアクションは「インストール」、あるゲームアプリは「動画の視聴」といったオファーウォールには多数の広告が表示されているので、「どうせなら普段使うアプリを選んでポイントをもらおう」ということになる。もともと興味のあるアプリやサービスを選んでいるので、リワードをもらっても、それっきりアプリを利用しないということは生じない。

 また、スマホアプリを利用していて、本来広告が表示されるべきところに何も掲載されておらず、白いスペースが広がっているのを目にしたことはないだろうか。TapjoyはAndroidで414、iOSで377以上(2013年5月現在)の広告在庫があるため、常にユーザーが興味を覚えるような広告が表示されているのだ。

 ちなみにTapjoyは、Androidで米国市場向けに800以上、日本市場向けに380以上、iOSでは米国市場向けに1,300以上、日本市場向けには330以上(2013年7月現在)の広告在庫があるため、常にユーザーが興味を覚えるような広告が表示される。

Tapjoyのオファーウォール。ゲームアプリが多く、他にも日常おなじみの企業のサービスなどが見受けられる
最近主流のビデオ視聴でリワードが得られる広告も

(ツキヨノアサミ)