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「Unite Japan」で人気を集めた高性能ミドルウェアに注目

ゲームサウンドを大幅強化!マルチプレイゲーム開発を加速!

4月15日〜16日開催

会場:ベルサール汐留

会場内の企業出展ゾーンの様子。各種ミドルウェア企業が出展

 4月15日〜16日にかけて開催された「Unite Japan」では、各種の秀逸なミドルウェア製品を見つけることができた。

 Unityはゲーム開発のための機能をひととおり揃えた統合型のゲームエンジンで、汎用性が非常に高いがゆえに弱点もある。特定のゲームジャンルに特化した開発機能や、スマートフォン等のモバイルプラットフォームにおける限られた性能をギリギリまで使いこなすような部分については特に、Unity標準の機能だけではどうにもならない部分が多いというのも現実だ。

 そのため、企業による採用が600以上にも登るというUnityの急激な普及を受けて、Unityの弱点を補う各種のミドルウェアが続々登場している。その点、国内ミドルウェアメーカーも非常に活気づいているのが特徴だ。広く数万人のインディーズ開発者という、これまでのゲーム開発シーンにはなかった“ミドルウェア市場”が成立したことも大きく影響しており、各社ともインディーズ向けを強く意識したソリューションの提供を次々に開始している。

 本稿では「Unite Japan」で出展されたミドルウェア関連製品をピックアップ。関連セッションで高い人気を集めたサウンド関連、ネットワーク関連のミドルウェアを中心に、それによってモバイルプラットフォーム向けのゲーム開発がどう進化していくのかご紹介していこう。

セガネットワークス「デーモントライヴ」を支えた高性能サウンドミドルウェア

 セガネットワークスは、昨年設立されたばかりのモバイルプラットフォーム向けゲーム開発スタジオだ。AndroidやiOS向けのゲーム開発が中心となっているが、開発者の多くは元々セガにてコンソールゲーム開発を手がけてきたこともあり、「モバイルゲームにコンソールゲームなみのクオリティを」というのがひとつのスローガンになっている。

 その成果のひとつが、今年2月末にリリースされた基本プレイ無料のRPG/RTS「デーモントライブ」だ。モバイルゲームとしては珍しい「DotA」系のゲームシステムになっており、コアゲーマー向けのゲーム性と、ゲーム専用機なみの豪華な演出が実現されている。

【「デーモントライヴ」トレーラームービー第1弾】
セガネットワークスの秋葉晴樹氏
スタジオカリーブの杉山圭一氏
「デーモントライヴ」におけるサウンド演出の課題

 「『デーモントライヴ』にみるサウンドとムービーの活躍〜ADX2とSofdec2で実現する圧縮&リッチ演出〜」と題するセッションでその開発事例が紹介された。登壇したのは「デーモントライヴ」のプログラムリーダーを務めたセガネットワークスの秋葉晴樹氏と、サウンド制作を担当したスタジオカリーブの杉山圭一氏。

 セガネットワークスでは「デーモントライヴ」の開発にあたってUnityを採用。ターゲット機種のベースラインとなったのは、世界的に利用者の多いiPodTouch第4世代だという。そこで実際に高クオリティの演出を実装してみたところ、大きな問題となったのがサウンド機能だ。

 Unityのサウンド機能は、ひととおりの機能を揃えてはいるが、言ってしまえば“音が鳴るだけ”という水準の機能しか提供されていない。使用できるサウンドフォーマットは効果音向けにADPCMもしくはBGM用にMP3のみで、アプリケーションメモリが100MBしか使えないiPodTouch第4世代でリッチなサウンド演出を実装しようとすれば、容量と音質の厳しいトレードオフにさらされる。

 そこで採用が検討されたのが、CRI・ミドルウェアが開発するサウンドミドルウェア「ADX2」だ。これはゲーム専用機向けに長い歴史を誇るサウンドエンジン&オーサリングツールのセットで、昨年2月にUnityへ対応。プラグイン形式でUnityゲームに統合することができ、サウンド機能を大幅強化する。

 まず強力なメリットとなるのが独自のコーデックだ。非圧縮形式に対して20倍以上という高圧縮率を誇りつつ、高い音質を確保。複数同時再生時にもCPU負荷がほとんど上がらないという非常にゲーム向けの仕様になっている。

 これを活用して、「デーモントライヴ」では効果音等のデータを117MBから5.05MBに、BGM素材を234MBから10.6MBに圧縮成功。音質もほとんど下がらず、満足できる水準になったという。また、コーデックの低いCPU負荷により、バトルシーンではBGMを含めて同時に8音を無理なく(CPU負荷5%で)鳴らすことができた。

「デーモントライヴ」におけるオーディオのスペック。バトル中にはグラフィックス等にパワーを割きたいためサウンドに使えるメモリ容量・CPUパワーが限られてくる
「ADX2」導入前に存在した様々な問題が一挙に解決。その効果はデータ量削減だけにとどまらない
サウンドの実装に分業体制が整う
波形バリエーションもオーサリングツール上で設定可能
追加コンテンツのダウンロードを「ADX2」の機能で実現

 それに加えてメリットがあったのが、追加コンテンツをDL配信する際の自由度が向上したことだ。Unityではプログラム以外のデータ類をAssetBundleという特別なパッケージにまとめてWebサーバーから追加DLする仕組みがあり、AppStoreの50MB制限を超えるアプリケーションの配信を実現できる。しかしAsssetBundleに入れたMP3データはストリーミング再生できないという問題がある。全てメモリ上に展開しないと再生できなくなってしまうわけだ。

 そこで、外部データ化されたサウンドデータを「ADX2」のオンラインインストール機能を使って追加DLすることで問題を解決。3G回線の不安定さによるダウンロード中断、それによるプログラム実行上の不具合への対応については「CRI・ミドルウェアさんに頑張ってもらった」とセガネットワークスの秋葉晴樹氏。

 また、「ADX2」を使うことで、攻撃時に発声される声優の音声データのバリエーションを簡単に付加できた。「ADX2」ではオーサリングツール上で1つのサウンドデータに複数の波形バリエーションを持たせることができるためだ。ピッチのランダマイズなど各種のエフェクトもオーサリングツール上で設定しておけば、「ADX2」のランタイムエンジンが自動的にエフェクトを反映してくれるため、プログラム側はシンプルさを維持できる。

 また「デーモントライヴ」では、一部のモンスターが持つ特別なスキル発動エフェクトにCRIミドルウェアのムービーエンジン「Sofdec2」を使用している。このあたりは下記スライド写真でご紹介しよう。

 「デーモントライヴ」のサウンド演出に大きく貢献した「ADX2」。CRIミドルウェアでは「Unite Japan」の開催に先立ち、個人・インディーズが手軽に利用できるパッケージ「ADX2 LE」の公開をスタート。無償で利用でき、機能制限もない。年間の売り上げ1,000万円以下であれば商用利用も可能だという。Unityでのサウンド演出の実装にお困りの方はぜひ試してみてはいかがだろうか。

「デーモントライヴ」における動画使用パターン。Unityのムービー機能を使うと全画面が専有され、ゲーム機能も停止してしまうため実現が難しかった
「Sofdec2」ではゲームを実行しながら任意のテクスチャにムービーを展開できる。アルファチャンネルにも対応するためゲーム画面に違和感なく合成することも可能

(佐藤カフジ)