ヤフーとグリーが業務提携。宮坂氏「シンプルにYahoo!で探してGREEで遊ぶ!」
ゆくゆくは共にゲームを作っていきたい
ヤフーとグリーは11月8日、包括的業務提携に関する契約を締結したと発表した。あわせて都内では発表会を開催。ヤフーの宮坂 学代表取締役社長とグリーの田中良和代表取締役社長が出席し、意気込みを語った。
提携内容としては、大きく3つに分かれており、1つめは「ソーシャルゲーム領域における連携」、2つめは「コンテンツの相互活用や共同支援における連携」、3つめが「CSR活動における連携」となっている。
「ソーシャルゲーム領域における連携」は、スマートフォン版「Yahoo! JAPAN」トップページ等から「GREE」上のソーシャルゲームへの誘導や、「GREE Platform」における決済手段のひとつとして「Yahoo!ウォレット」を採用する事などが挙げられる。「コンテンツの相互活用や共同支援における連携」では、グリーの持つIPをYahoo! JAPANグループでの利用や、Yahoo! JAPANのエンターテイメントコンテンツと「GREE」のSNSとの連携など。「CSR活動における連携」は、インターネット技術の発展やそれを支えるエンジニア、クリエイターの育成を目的とした各種活動の共同支援などとしている。
ヤフーの宮坂 学代表取締役社長 |
発表会では、まずはヤフーの宮坂氏が登壇し、同社の現状について説明。現状、1番に取り組んでいるのは「スマートフォン」とし、グラフを指し示しながら「利用者は増えている。PVも同じように伸びている。検索、ショッピングも伸びている」と語り、スマートフォンを「究極のインターネットマシン、サーチマシン、Eコマースマシン」と言い切った。
そして、スマートフォンにおけるエンターテイメントの可能性についても触れ、動画や電子書籍など親和性が高いことを示した。スマートフォンがエンターテイメントマシンとしての可能性秘めているとし、そのプラットフォームに対して、宮坂氏は「我々がほとんど手を出していなかったのがゲームの領域。なので今回の話が持ち上がった。スマートフォンユーザーにもゲームの喜びを」と続けた。
この問いかけに対して実現する方法としてはいくつかあるが、同社の方針としてポータルであることを実現するためには「1番良いところにリンクを張っていく」ということで、必ずしも自社ですべてをまかなう必要は無く、優れたところと組むことで伸ばしていく方針を強調。Yahoo! JAPANのユーザーに対して「すぐに、いつもの使い方で、ナンバーワンのサービスを利用できる」ことを実現するためにどのパートナーと組むかと考えファーストパートナーとしてグリーとやる決断に至ったのだという。
スマートフォンのPVの伸びなどを示し、うなぎ登りと表現した | 一方で、スマートフォンにおけるYahoo! Japanとしてはゲームに取り組めていなかったと反省点を示した |
PC分野では他社とアライアンスを組むことでトップに立ったと説明 | 同社によればスマートフォンのユーザーの8割近くがYahoo! Japanを利用していると説明した |
グリーの田中良和代表取締役社長 |
次に登壇したグリーの田中氏は、「ソーシャルゲームを開拓した自負がある」と自社が優秀なゲームパブリッシャであるという自身をうかがわせる発言からスタート。現状の方針として、自社でのゲーム制作だけでなく、プラットフォーム展開、有力IPと組むことでよりよいゲームの提供、グローバル化などの方針を矢継ぎ早に示した。
そんな中、スマートフォンに注力しているとし、iPhoneのランキングにおいて上位35本中、同社タイトルが9本も入っており、高いシェアを獲得しているとしている。その上でもう一歩新しい展開として、ゲームをベースにエンターテイメントの枠を広げていっている現状を説明。アニメの制作やグッズの展開を通じてより広いシェアを獲得しているとしている。田中氏は「単なるゲームの枠に囚われずエンターテイメント全体が我々の領域」と自社を表現し、「パートナーシップが重要。そこからこの提携に繋がった」とグリー側からの提案で提携へと繋がっていったことを明かした。
有力IPや大手ゲーム会社ともゲームの制作を進めていると説明 | スマートフォンの分野で圧倒的シェアを持つとするスライド | 現在1,000タイトルを提供中としている |
同社の事業拡大イメージ | 自社ソーシャルゲームをベースに、映像コンテンツの作成やグッズ展開など、総合的なエンターテイメント企業へと成長していきたいとした |
最後のスライドで「もう始めました!」と説明 |
今回の提携についてより具体的な話として、宮坂氏は「Yahoo!で探してGREEで遊ぶ。シンプルなビジネスモデル」ときっぱりと言い切った。GREEはいろいろなゲームを提供できるのが強みで、日本最大のユーザーのいるYahoo! Japanにゲームを提供できるのは有益な話だ。田中氏は「ソーシャルゲームを知らなかった人にも楽しんで欲しい」とし、IDなどの連携を計ることで間口を広くしたい考えだ。
そして、Yahoo! JapanのトップページからGREE Platformへの誘導だけでなく、Yahoo! Japanと一緒にゲームを作りたいと田中氏は語った。「ヤフーにもゲームを作りたい人はいると思う」と田中氏は切り出し、「Yahoo! Japanのエンジニアのアイディアとコラボレートしてどこにもないゲーム作りたい」と今後の展開を広げた。
また、「映像コンテンツは大きい。映像に対して出資し作品を作っていく」と宮坂氏。映像コンテンツを制作することで、キャラクターを作りだし展開する中でソーシャルゲームに転嫁していく収益構造を作っていく。宮坂氏は「IPをマネタイズする最もホットなコンテンツがソーシャル。我々は未知数だが、こういった取り組みでやっていく」と展望を語った。
最後に田中氏は「単に両社でやっていくだけでなく、日本のコンテンツ産業に貢献していきたい。より大きな枠組みにしていきたい。そういった意気込みがある」と語り、CSR活動を両社でやることでインターネット産業へ価値を還元していきたいと希望を語った。
そして両社の説明の最後に宮坂氏は「では、いつから始めるのか? (我々は)爆速がもっとうなので、もう始めました!」と言い、プレゼンテーションのスクリーンにはスマートフォンのYahoo! Japanのトップページが映し出され、そこにはすでにゲームの項目が盛り込まれていた。
質疑応答では「Yahoo!ウォレット」の採用時期などの質問が飛んだが、「爆速で決まったのでまだお話しできない」や、「決まっていない」との返答が多く、まだまだ端緒についたといった印象だ。ただヤフーの宮坂氏はソーシャルゲームを取り込むことの事業的リスクについて問われ「リスクはどこにでもある。ソーシャルゲームは比較的新しいビジネスモデル。新しい事業なので光と影がある、それに対して怯んでいても仕方ない。リスク少なくして進めていきたい」と答えた。
今後の取り組みについてスライドを使って説明 |
(2012年 11月 8日)