三井ホーム、新技術を盛り込んだ実証実験住宅「MIDEAS」見学会を開催

Kinectで部屋を制御、街と連動したエネルギー管理など、街の未来像を提示


9月10日開催

会場:千葉県・柏の葉アーバンデザインセンター



 三井ホーム株式会社は9月10日、日本マイクロソフト株式会社の「Kinect」に代表される“ナチュラルユーザーインターフェイス”などの様々な新技術を活用した新しい住宅「次世代スマート2×4 MIDEAS(ミディアス)」の見学会を、千葉県・柏の葉(かしわのは)アーバンデザインセンターで開催した。

 実証実験住宅「MIDEAS」とは、三井ホームの木造建築「2X4工法の木の家造り 暮らし継がれる家」に様々な次世代システムを盛り込んでいくプロジェクトとなる。CO2を蓄積する木造建築に、クリーンなエネルギーシステムや、エネルギー蓄積システム、さらに様々なセンサーにより家を自動的に快適にするシステムなど、様々な最新技術を盛り込んで行く。見学会はこの「MIDEAS」の実証実験住宅完成を記念して開催された。

 「MIDEAS」の実証実験そのものは、11月からスタート予定で、来年の9月まで基礎実験を行なっていく。そこからさらにモデルハウスとして家族を住まわせた形で1年間の入居実験を行ない、販売していく。価格は土地を含まない形で8,000万円を予定しているという。本稿では見学会の模様や、三井ホーム、日本マイクロソフトの各担当者から聞くことができたインターフェイスの可能性も伝えていきたい。





■ 電力の安定供給や、環境の自動調節、Kinectでの制御など、未来の住宅を体験

三井ホーム専務取締役の長谷裕氏
三井ホーム技術企画部技術開発グループの池澤仁志氏
日本マイクロソフトKinect開発担当の千葉慎二氏

 見学会では、最初に三井ホーム専務取締役の長谷裕氏が挨拶を行なった。長谷氏は「東日本震災以降、防災・省エネルギーの住宅が求められています。三井ホームの実験棟『MIDEAS』は、三井のMにアイデア・イデアといった意味を持たせ、安全・安心・サステイナブル(持続可能)を目指し、世界最先端の知と技術で実現させていきます」と語った。

 三井不動産柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部長の河合淳也氏は、柏の葉キャンパスシティプロジェクトの概要を語った。このプロジェクトはつくばエキスプレス「柏の葉キャンパス駅」を中心とし、「柏の葉スマートシティ」のコンセプトのもと、ショッピングセンターやマンション、学校施設を展開していくという。「MIDEAS」はこの柏の葉キャンパスシティプロジェクトの一翼を担うシステムだ。

 これらの施設はネットワークで繋がり、情報のやりとりを「AEMS」というシステムで集中管理し、エネルギーの相互補完、エネルギー効率利用、防災対策など、ネットワークにより連携する街作りを目指していく。このシステムは公・民・学の連携でのプロジェクトとして進められており、次世代交通システムなども含めた「世界の未来像を作る街」を目標に開発を進めている。

 次に三井ホーム技術研究所所長の坂部芳平氏は、「MIDEAS」の概要を説明した。「MIDEAS」はエネルギーの“自給自足”を目指し、太陽光発電、蓄電池、電気自動車、そして街全体のAEMSからのエネルギーを得ることができ、反対に電力消費が少ないときは供給源としても活動する。

 気温や明るさなど様々なセンサーの情報からを収集・管理することで、窓やカーテンなども自動で動かし、省エネルギーで快適な住環境を実現する。そしてKinectを使ったナチュラルユーザーインターフェイスにより、リモコン無しで様々な窓やカーテン、ブラインド、テレビの操作を可能とする。さらにスマートフォン、タブレットPCでもこれらの機能を使うことができる。

 また、充電器無しでスマートフォンの充電ができる「置くだけ充電」や、車庫の電気自動車もコネクター無しで駐車スペースに車を置くだけで充電もできる。これらの機能は「HEMS」というシステムで統合されており、街全体の管理を行なう「AEMS」とも連携し、時には街からエネルギーをもらい、ある時は供給源となる。情報も共有でき、まさにSF映画の未来の住宅のようなシステムなのだ。

 この後、実際に「MIDEAS」を見学することができた。今回デモンストレーションで最も力が入っていたのが、Kinect を使ったナチュラルユーザーインターフェイスだった。今回は、Kinect を使って、ブラインドと、証明、テレビの切り換えができた。ブラインドの場合は右手でスライドすることでブラインドの開閉ができる。上下にスライドすれば、天井の吹き抜けになっている空間のシャッターを動かすことができ、左右で窓のブラインドが操作できる。

 画面に映るアイコンに3秒手を置いていれば照明を消すことも可能だ。左手を突き出すと操作する機器を選ぶことができ、テレビに切り替えると、左右でチャンネル、上下で音量が変えられる。今回は3つの機能だけだが、すぐに他の機能を増やすこともできるという。

 このシステムはタブレットPCとの連動もでき、その場合はメニューを呼び出して操作できる。さらにタブレットPCは、例えば風呂のある方向にカメラを向けると、風呂の使い方の説明や、機能の解説を呼び出す「電子マニュアル」として使うこともできる。様々な機能を持つこの住宅の見学にぴったりの機能だと感じた。

 この他にも室内の温度差を利用し、窓に水を循環させ温度を一定に保つ「ウォーターウォール」や窓の自動開閉などとも連動した「次世代トータル空調システム」。庭の草木に状況に合わせて水をやるシステムや、室内で野菜を作ることができる「おやさい工房」といったシステムもある。

 使用電気状況などはグラフ表示ができるほか、熱帯魚の浮かぶ「水槽」という形で表示できる。外部から供給される電気の使用量が多いと水槽にクラゲが登場するし、使用電気の種別でも水槽の様子が変わる。「赤い魚が多いから、寝室の電気はこまめに消そう」、「クラゲが出たから、今月は電気代がいつもよりかかるみたいだ」、といったようにシンボルでの状況把握もできるようになるという。

 今回、三井ホームと、マイクロソフトそれぞれの担当者に話を聞く事ができた。三井ホーム技術企画部技術開発グループの池澤仁志氏は、この「MIDEAS」を作っていくときに、ブラインドなど様々な機器を操作しようとすると、多くのリモコンが必要となり、これをどうするかを考えていた。その時、ちょうど「Kinect for Windows」の存在を知り、これを活用すべく日本マイクロソフトに連絡を取ったという。

 現在のシステムではKinect fo Windowsを使っているため、Windows PCが必須となる。このシステムのためだけにPCを用意するかどうかは、現在の検討課題だという。また、インターフェイスも含め、改良していきたいとのこと。Kinectを使った家の制御システムは、各場所で分散するより、リビングのみに絞った方が良いのではないかとも考えている。将来的には、ネットからの映画をダウンロードして見るときなど、ブラインドなどが下がり暗くなり、映画用の環境になるなど、さらに機能を組み合わせたシステムも考えているとのこと。

 日本マイクロソフトKinect開発担当の千葉慎二氏は、今回の提案が住宅業界では世界初であり、北米ではこういった提案が未だにないという部分に日本人らしい新しいものに対する意欲を感じたという。医療分野では、手術中でのレントゲン写真の閲覧などにも利用されており、ゲームとしてのインターフェイスの可能性はまだまだ他の分野に広がっていくとも感じている。日本マイクロソフトは要望に対して、積極的にいきたいとのこと。

 今回のシステムは全て三井ホーム側が作っている。千葉氏は実際のゲームの事例などから有効な使い方や、より良いインターフェイスの提案も行なっている。面白さの部分ではゲームの連動で、「極寒のステージをプレイしてるときは、クーラーが強めになるのはどうか」といった話もしている。千葉氏自身はゲームのインターフェイスであるKinectを使う“シンプルな楽しさ”にゲームの可能性を感じており、ゲームのインターフェイスがもたらすエンターテイメント性は、もっと広げられると千葉氏は感じている。今後もさらにKinectの活用の場を広げていく予定だという。


【MIDEAS ナチュラルユーザーインターフェイス】


三井不動産柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部長の河合淳也氏、三井ホーム技術研究所所長の坂部芳平氏
街全体が連動する、柏の葉キャンパスシティプロジェクト。MIDEASもこのシステムの一翼を担う
エネルギーを創りだし、省エネルギーにこだわる。HEMSによるシステム制御……MIDEASは未来の住宅像を提示する
リビングは、MIDEASのシステムの中心となる。現在のKinectでの制御は限定されているが、機能を増やすのは容易だ。課題は煩雑にならないインターフェイスだ
住宅には様々な新技術が投入されている。現在は実現していないものもあるが、2~3年で、実際の住宅販売まで行なう予定だという

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(2012年 9月 10日)

[Reported by 勝田哲也]