オンラインゲームレポート「ファンタシースターオンライン2」
正式サービス後のプレイの感触をレポート
今後はコンテンツ拡充に期待か


サービス提供中(Windows版)

プレイ料金:基本プレイ無料(一部有料アイテムあり)

C (15歳以上対象)


 7月4日より正式サービスがスタートしたWindows PC版「ファンタシースターオンライン2(以下、『PSO2』)」。正式サービスが始まり、プレイの感触はどのようなものになったのか? どのあたりが魅力なのか? そうしたところをレポートしていこう。



■ 正式サービスが始まり、「PSO2」はどんなゲームに仕上がったのか?

 正式サービス開始までに、α1テスト、α2テスト、クローズドβテスト、プレオープンβテスト、オープンβテストと、入念に段階を経て進められてきた「PSO2」。最終的にはオープンβテストから間を置かずに、7月4日より正式サービスが開始された。本レポートはその正式サービス開始から、約10日ほどプレイしてのレポートとなる。

クエストに繰り返し挑んでいくスタイルだが、クエスト中に「エマージェンシートライアル」というイベントがランダムで発生する

 本作について詳しくない方に改めて基本的なプレイの流れを紹介すると、「PSO2」はクエストクリア型のオンライン専用ゲーム。パーティーメンバーは最大4人で、複数のパーティーが参加できるマルチパーティーエリアがあるクエストだと最大12人になる。

 3種類の種族「ヒューマン」、「ニューマン」、「キャスト」からキャラクターをクリエイトし、現状では3種類のクラス(職業)「ハンター(近接武器メイン)」、「レンジャー(射撃武器メイン)」、「フォース(テクニックメイン)」から選択する。

 なお、今秋予定とされている大型アップデート「新たなる力/必滅の呼び声」では新クラス3種類の追加がアナウンスされているが、おそらくこれは複合クラス(基本3クラスの上位)ではないかと思われる。ベースのクラスは3種類だと思われるが、1つのクラスのレベルが40になっても、他のクラスも遊んでみる時間はありそうだ。

 「PSO2」ではアクション性がシリーズ作よりもさらに高まっているという印象があるが、あくまでも基本はアクションRPGであり、RPGの成長要素がバランスのカギとなっている。様々なクエストに挑んでクラスレベルを高め、時にクラスをチェンジしつつ、開放された新たなフィールドやクエストに挑んでいく。

謎の少女を保護したところから始まっていく「ストーリークエスト」。マターボードを進めることで新たなストーリークエストが出現

 ストーリー面では、マターボードという指定されたミッションをこなす要素から進展していく「ストーリークエスト」がある。また、NPCからは「クライアントオーダー」という依頼が受けられる。

 また、「マグ」の育成も実際のプレイ中に細かに意識する要素となっている。マグはアイテムを与えることで成長しレベルが上がって、その外見も変化していく。アイテムを与えるとエネルギーが充填されるが、時間経過と共にこのエネルギーは減っていくので、こまめにエサであるアイテムを与えるというわけだ。

 まとめると、マターボードの指定とクライアントオーダーの内容を見つつ、クエストに挑んでいき、定期的にマグにエネルギーを与えて育成していく。プレイはこのような流れになる。クラスレベル上げの面では、特にクライアントオーダーの報酬でもらえる経験値が大きなプラスになるので、丁寧にチェックしていきたいところだ。レベルが上がれば新たなフィールドのクエストが開放されていく。そうして、レア武器収集であったり、ストーリーを追いつつ、クラス育成、マグの育成をメインに、エンドレスに楽しんでいくというスタイルのゲームだ。


マターボードの指定品やクライアントオーダーの依頼を意識しつつ、クエストに挑んでいくというのが基本的な流れ。合間にはマグにアイテムを与えて育成をするのも忘れずに行なっていきたい

・プレイの本格化はレベル15~20あたりの「探索」系クエストから

本作の醍醐味であるエマージェンシートライアルの自由度が最も高いと感じたのが「フリークエスト」。ボスエネミーが連続出現するような事も多くみられ、激しい戦闘が楽しめる

 正式サービスでのレベルアップの速度など、バランスのほうはどのようになっているのかというと、序盤はチュートリアル的なオーダーによる経験値報酬が多いこともあって、レベル15あたりまではすぐに上がるという印象だ。同時に、レベル15~20ぐらいから適正になるクエストからが、本作の本番と言える印象がある。

 その印象の大きな理由がフリークエストの「探索」系クエストの存在。シリーズ作だと、「PSO」ではフリークエストが基本で、PSUではフリーではないクエストで構成されていた。本作ではクエスト中にランダムに様々なイベントが発生する「エマージェンシートライアル」という要素がある。これが1番豊富に発生するのがフリークエストというわけで、目的が決まっているアークスクエストよりも、フリークエストのほうが本作の魅力が楽しみやすいと感じられる。

 フリークエストでのエマージェンシートライアルではボスエネミーの出現傾向が高くて、ボスラッシュのような状態になることもしばしば。そうした時には激しい戦闘が楽しめるのが大きな魅力だ。

 また、フリークエストはマルチパーティーエリアが多めで、プレーヤーの数が多いほどトライアル発生が頻繁でボス出現も多くなるという印象がある。エマージェンシートライアルが複数同時に発生するなんていうこともあり、プレーヤー12人が多数のエネミーと入り乱れて交戦する激しさは本作の醍醐味といえるだろう。

 フリークエスト以外だと、定期的にイベントとして発令される「緊急クエスト」がプレイのアクセントになっている。アークスシップに侵入してきたダーカーを撃退する「市街地」フィールドのクエストで、普段はできないクエストだけに、これが発令されると多くのプレーヤーがこのクエストに集中する。それだけにマルチパーティーエリアの人数も自然と多くなり、エマージェンシートライアルも激しくなるという流れがあって、プレイの面白さに繋がっているという印象だ。


特定の任務が定められている「アークスクエスト」ももちろんたくさんあるのだが、最深部にボスがいる以外はエマージェンシートライアル次第というフリークエストの魅力が高いという印象。また、画像の下2枚のように、「市街地」のクエストが緊急で発令されることもある。マターボードやオーダー達成にアークスクエスト、レベル上げはフリークエストや緊急クエストという印象になっている

PSEバーストがあまり見られなくなってしまったのが寂しいところ。PSEによる経験値ボーナスとともにエネミーのラッシュが起きるという爽快な要素だけに、もう少し発生チャンスが目立って欲しいところだ

 一方で、新フィールドやクエストが開放されていく間隔についてだが、ここはちょっと惜しいところを感じる。レベル15~20あたりまでで、「森林」、「火山洞窟」、「砂漠」と開放されていくのだが、その次の「凍土」がハードのみ参加資格レベル30以上と、ちょっと間が空いてしまっていて、プレイの本格化と同時に、出現済みのフィールドに繰り返し挑む傾向が強まってしまっている。ここでちょっと中だるみがちなところがあるだろうか。「凍土」のノーマルを設けて、レベル25~30からのハード突入の前に入っていたらより良かったように感じる。

 繰り返しクエストに挑むという本作のスタイルの中で、PSEバーストによる激しさは単調さをぶち破るようないいアクセントになっていたので、もう少し頻繁に見られるような要素にしてもらえたら、と思う。

・スキルやフォトンアーツでアクションの魅力が高まっていく

スキルを取得すれば、アクションの幅が広がっていく。画像は「ステップアタック」で、ソードを装備している時ならステップから蹴りが出せるようになる

 プレイの本格化がレベル15~20あたりからと書いたのは、スキルやフォトンアーツ・テクニックが揃ってきて、アクション操作にも面白さが高まってくるから、という理由もある。スキルはレベルアップごとに1ポイントもらえるスキルポイントで、フォトンアーツやテクニックはエネミーからドロップするいわゆる特殊技だ。

 スキルによる動きの広がりについてハンターの例で言うと、

タイミング良く攻撃を出す「ジャストアタック」
相手の攻撃をタイミングよくガードする「ジャストガード」
ジャストガード後の攻撃がジャストアタックになる「ジャストカウンター」
ステップ後に専用アクションの攻撃が出せるようになる「ステップアタック」

 このあたりのアクション系スキルが揃ってくると、プレイの様相がだいぶ変わってくる。

 ステップアタックで遠目からエネミーに飛び込み、ジャストアタックで攻撃、エネミーの攻撃をジャストガードし、カウンターを当てつつ、フォトンアーツでトドメ。さらにステップで他のエネミーの攻撃を避けつつ、ステップアタックしていく、というような連続した動きができるようになっていく。ハンターなら特に、ジャストガードを起点に攻撃し続けることを意識すると、ボス戦もアクション面の面白さが広がる。

 フォトンアーツやテクニックはレベルの高いものやレアなものになればなるほど、派手で威力も高いものになっていくので、これも新しいものを手に入れる度に試してみる面白さがある。ひとつの武器に3種類が組み込めるので、フォトンアーツなら自分のよくする攻撃の中にどう入れていくのかを考えると面白みが増していくというところだ。

 こうしたスキル・フォトンアーツ・テクニックもまた、プレイ序盤は基本的な物以外は揃っていない。RPG的に、ある程度育成して技が揃ってきてからが本番というものになっている。


ハンターのスキルでの例なら、ジャストガードでエネミーの攻撃をガードしつつ絶え間なく攻撃し続けるのがポイント。フォトンアーツや手に入れた武器によっても攻撃スタイルは変わってくるので、ある程度レベルが高まってからが本番と言える

・「シップ(サーバー)」、「ブロック」にも正式サービスから工夫が

シップ(サーバー)の表示順が正式サービスからは逆になり、「上に表示されているサーバーが過密になる」という状況を回避している
ブロックも画像のようにプレイスタイルやレベル帯で棲み分けができるようになった

 βテスト時点から通信トラブルやプレーヤー数の集中による負荷の高さなど、いわゆる“ラグ”に悩まされてきた本作だが、正式サービス開始後にもそれは多少あったものの、10日ほど経った今では、だいぶ解消されたという印象だ。

 それにはいくつかの工夫がある。まず、本作ではシップ(サーバー)を選んでそこでプレイするためのキャラクターをクリエイトするわけだが、このシップのリストが縦に並んでいることから、どうしても上に表示されているシップへの過密が避けられないという状況だった。

 だが、正式サービス開始時にシップの表示順を変更。オープンβテスト時点から人気が高かった1~5のシップあたりは人が人を呼ぶ状態で過密はあったものの、正式サービス後はだいぶ分散したという印象だ。定期的なタイミング(大型アップデートやPS Vita版リリースなど)ごとにシップの表示順を入れ替えるようにすれば、今後も集中的な過密は避けられるのではないだろうか。

 また、シップ内でのプレイエリアである「ブロック」にも、プレイ目的別に棲み分けがついた。これまではブロック1~30といったように数字のみの表記だったが、今は「B-01~02 ソロプレイ推奨」、「B-03~04 パーティー推奨」といったように、プレイスタイルやレベルに合わせて使うようになった。棲み分けがついたことでより遊びやすく、同じ目的のプレーヤーが集まりやすくなってコミュニケーションもしやすくなっている。負荷の分散に役立っているし、プレイもしやすい、上手い配慮だ。


・課金要素はやはり控えめ。実際のプレイではほぼ無料でプレイしていける

アークスキャッシュ(AC)は1AC=1円。画像のように公式サイトから購入する方式だ

 正式サービス後ということで、やはり気になるのは課金の度合いだろう。ゲーム内仮想通貨である1AC(アークスキャッシュ)が1円という換算となり、アイテムトレードやマイルームマイショップなどの基本的な機能がセットになっている「プレミアムセット30日」が、1,300 AC。プラスアルファなコスチュームアイテムなどがランダムでもらえるクジ「ACスクラッチ」は1回200ACとなった。

 基本機能がフルに使えるという意味では、やはり「プレミアムセット30日」が基準と思えるが、この1,300 AC(1,300円)が、いわば月額料金的なものと考えてもいいかもしれない。このほかのAC関連のものはプラスアルファ的な要素と言っていい。

 これらの料金が高いと考えるか安いと考えるかは人それぞれと思うが、重要なのは「プレミアムセット30日」ですらも無くても問題なくプレイできるなぁと感じたところだ。筆者は本レビューのために実際に購入して試しもしたが、「これは快適にプレイする上で絶対に必要だ! 」と感じたものはない。

 強いて言うなら、“マイショップにアイテムを出品する権利(購入は課金なしでできる)”がたまに欲しくなったぐらいだろうか。それも「プレミアムセット30日」に含まれているので、迷うのは「プレミアムセット30日」を購入するかどうかぐらいだろうか。でもこれもしなくても問題なくプレイできてしまう。


マイショップにはAC関連で手に入るアイテムも出品され、メセタで他のプレーヤーが購入できる。さすがに高額だが、課金アイテムでもやり取りが自由になっているのは嬉しい

 プラスアルファな課金入手系のアイテムについては、“他のプレーヤーがマイショップに出品しているものをメセタで購入する”という入手ルートがあるのも大きくて、もちろんその価格はいずれも高額になっているが、マイショップの出品アイテムを定期的にチェックするモチベーションにもなっている。

 筆者だってもちろんアイテム課金要素には不安を感じていたし、それこそ、これだけのユーザー数のゲームを維持するためなのだから、えぐく課金を強いられるのではとも考えていた。誰だってそう考えるだろう。だが、これがまぁ実際にプレイしてみると、課金を意識させられることがほとんどない。逆に、こんなに控えめで大丈夫なのだろうかと妙な心配をしてしまうことすらある始末だ。

 まぁ、ここについては趣味的なアイテムがどうしても欲しいかによって、ACスクラッチへの印象も変わると思うので、人それぞれに思うところはあると思う。ひとまず、ゲームプレイにおいてはAC課金をあまり意識せずに遊べるということをお伝えしたい次第だ。



■ 気軽に楽しめる敷居の低さは好印象。今後はアップデートでの充実に期待

クライアント、プレイともに基本無料で楽しめるゲームとしては、驚くほどにクオリティが高い。さすがにまだコンテンツ不足は少し感じられるが、定期的なアップデートが既にロードマップとして公開されているので、期待したい

 ついに正式サービスがスタートした本作。通信トラブルやセキュリティ面など、まだこれから対策を続けるべき事案はあるものの、手軽に遊びやすく、チャットも気軽に楽しめるシーンができあがっているところは好印象だ。

 ただ、正式サービスからのバランスだと、多少、遊びはじめの頃のアクセントが不足していて、ちょっと中だるみが起きがちだろうか。レベル15~20を越えてくると「PSO」らしさ、ひいては「PSO2」らしさが出てくるところがあるので、早めに見切られないような何かがあればいいのだが……。

 その先の段階でもコンテンツ不足感は否めないところはある。そこで注目していきたいのが、今後の「アップデート予定のロードマップ」。ここには来春のPS Vita版サービスインまでの予定が記されているのだが、見ると今年では7月18日実装のものを含めて4回が予定されている。だいたい毎月1回ペースを期待できる。

 本レビューが掲載されている頃には7月18日のアップデート「目覚めし大機艦」が導入され、新フィールドの「地下坑道」や新ボスが登場しているだろう。今後はそれと同じように、アップデートによる拡充を楽しみにしつつプレイしていくようになるだろう。魅力がさらに増していくかどうかはそれ次第と言えるが、個人的にはやはり「PSO」らしく、レア武器集めの魅力をより高めて欲しいところだ。

 基本無料で課金要素も強く目立ってはおらず、これだけのクオリティで遊べるゲームというのはなかなか無い。気軽に楽しめる良さや、パーティープレイの敷居の低さも優れているので、「ファンタシースター」シリーズファンはもとより、オンラインゲーム初心者にも勧められるタイトルだ。

(C)SEGA

Amazonで購入

(2012年7月20日)

[Reported by 山村智美]