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CCP Games、「EVE Online」と「DUST 514」のゲームデザインを講演

影響し合う世界。全く異質のゲームを1つに繋げる「One Universe」構想


4月23日 講演

会場:COEX


 韓国NEXONは、ゲームカンファレンス「NEXON DEVELOPERS CONFERENCE 2012」(NDC 12)を韓国ソウル江南地区のCOEXにて4月23日から25日まで開催している。

 「NDC 12」は、2007年から毎年開催されているゲーム開発者向けカンファレンス。当初はNEXONグループ内のみの情報交換の場として開催されてきたが、それがオープン化され、一般入場者も参加できるようになっている。

 この記事では、初日に行なわれたゲームデザイントラックのキーノートセッションの模様をお伝えする。このセッションでは、アイスランドCCP GamesのLead Game Designerを務めるKjartan Pierre Emilsson氏によって、「EVE Online」および「EVE Online」と世界を共有する「DUST 514」のゲームデザインが講演された。



■ 「1つの宇宙」として繋がる新作タイトル制作へのアプローチ

CCP GamesのLead Game Designerを務めるKjartan Pierre Emilsson氏。Lead Game Designerとして2001年から「EVE Online」に関わっており、現在は「DUST 514」を作っている
スライドは手書きの簡素な絵によって構成されていた。図は「EVE Online」と「DUST 514」がゲームシステムからプレイ時間、ビジネスモデルまでが全く異なっていることを表している
異なるゲームで1つの世界を共有するという革新的なアプローチ
その決断は「EVE Online」の原理を見つめ直す結果となった

 本セッションは、「One Universe, Many Games」と題して講演された。この講演名は、CCP Gamesの代表作「EVE Online」における、寸断されない1つの宇宙の中で全てのプレーヤーの行動がお互いに影響し交錯し合うという独特のコンセプトを、他のゲームタイトル(ここでは「DUST 514」を指す)にも活かそうという計画の内容を表している。

 「EVE Online」は、欧米では2003年よりサービスが開始され、現在では英語、ドイツ語、中国語、日本語に対応し、200以上の国や地域で展開されているSF MMORPG。日本では株式会社ネクソンの運営によって3月29日に正式サービスが開始されている。「EVE Online」は、大規模な宇宙戦争がリアルタイムに進行し、それがゲーム内の経済にも影響する所にも特徴がある。

 またCCPがプレイステーション 3で今夏にリリース予定のFPS「DUST 514」では、「EVE Online」と世界を共有し、プレーヤーの行動が他方のゲームの世界にさえ影響を与えるという革新的かつダイナミックな試みを実施しようとしている。

 これら2タイトルは、一方は宇宙空間をテーマにしたMMORPGで、もう一方は惑星を1人の戦士としてひた走るFPSだ。そのためゲームシステムから1回のプレイ時間までが大きく異なっている。しかしEmilsson氏はその制作について、「『DUST 514』を違うゲームとして出す考えもあったが、違う方法のアプローチがあるのではないか」と考えたという。

 そこでEmilsson氏が下した決断は、全く異なるゲームでありながら、知的財産を共有するというものだった。違う言い方をすれば、1つの確立された世界の下で、多数のゲーム、多数のプラットフォーム、多数のビジネスモデルが存在するという状態を目指すこととなる。今回のようなスタイルを成立させることは簡単なことではないが、Emilsson氏はこれを「価値のある仕事ではないか」と考え、今回の挑戦を決断したと話した。

 Emilsson氏は、これを実現するために、「EVE Online」のゲームの原理を改めて分析し、そこから新たな原理を作り出していったのだという。

 ここで紹介された原理とは、「サンドボックスの創造」、「人の相互作用の最大化」、そして「真実味の保持」の3つ。「サンドボックス」とはいわゆる“箱庭”のことで、例えばそこを歩いたり、地面を掘れば穴が開いたままデータが保存されるといったもので、そのことが他のプレーヤーに影響を与える仮想世界を表す。

 「人の相互作用の最大化」とは、簡単に言えば「EVE Online」が実現している1宇宙のこと。MMORPGでよく見られるパターンでは、前述の「サンドボックス」は作られていても、サーバーなどのデータベースが分断され、それぞれのチームがそれぞれの「サンドボックス」の中でしかやり取りできなかった。Emilsson氏は、「それではやることは限られてしまうし、創造にも限界がある」と話し、全てが1つの「サンドボックス」の中で起きることこそが最もダイナミックなことだと語った。

 そして最後が、「真実味の保持」。Emilsson氏は「ある世界をリアルだと感じるためには、それが本当にあると信じられる必要がある」として、個人的な行動が世界に影響を与えていき、それが幾重にも実行されることで、リアルさの保持に繋がっているという。これは、ある蝶の羽ばたきが遥か遠く離れた場所の気候に影響を与えるという理論「バタフライ効果」を基にしているのだという。

 これらの原則を総合することで「EVE Online」は、「1つの“サンドボックス”でリアルタイムに影響し合う現実味のある世界」が実現されているのだそうだ。


「1つの大きなサンドボックス」だからこそ味わえる「EVE Online」の醍醐味、勢力変化の図。プレーヤー1人1人の手によって蠢くようにゲームの状況が移り変わっていく
「バタフライ効果」を原理の1つに据えた「EVE Online」のトレーラーも会場で流された。船を救援したことである勢力に誘われ、それが他の勢力にも影響を与えるというプロセスが端的に表されている


■ データベースが刻々と変化。1つの世界をマルチに共有する挑戦

何層にもわたるデータベースはアクセスがある度に素早く書き換えられる。そうして行動が波及していき、いずれは大きな物語を紡ぎ出していく

 では、これらの原則を保持させたまま「DUST 514」も同じような世界に存在させるにはどうしたらいいのだろうか。Emilson氏は、1つ目の原則「サンドボックス」に立ち返り、この場合の“砂”は本質的に流動し変化するものだと話した。「EVE Online」および「DUST 514」では、その複雑さを取り込むために、データベースは砂の層をいくつも積み重ねたような構造にすることで、大きな「サンドボックス」を実現しているそうだ。

 ここでは、誰かがこのデータベースに世界を変化させるようなアクセスをする度に、その痕跡を素早く残せるようにしているという。そのため、それらの変化が相互的に作用し、結果的にプレーヤー同士の行動が互いのコネクションとなり、誰かが作り出す全てのものが世界に影響するようになる。

 この2つのゲームの関係は、「『DUST 514』の上に『EVE Online』がある」ような状況になるという。Emilsson氏は、既に公開されている「EVE Online」と「DUST 514」のトレーラーを改めて会場で流しながら、「EVE Online」での選択が「DUST 514」の戦場に与える影響をわかりやすく提示し、そして「DUST 514」における1発の弾丸でさえ「EVE Online」に影響を与えられることを強調した。

 Emilsson氏は、1つのオープンな世界で進むゲームについて、「生物が誕生と消滅を繰り返しながら成長していくように、プレーヤーはサンドボックスで経験を豊かに得ていく」と述べた。そしてゲームが進行していった結果、プレーヤーは多くの状況、多くの現象に対して現実の問題を解決するのと同じような真剣さを持つようになり、多くの人々が連動し合いながら同時に参加しているようになっていったのは、「とても興味深い」と話した。

 国境を越えた様々な人が、マルチゲーム、マルチプラットフォーム、マルチビジネスモデルで1つの世界を楽しむようになるには、確かに時間がかかる。Emilsson氏はそう認めながらも、「そのプロセスは始まっている」と力強く未来を見据えていた。


「プロセスは始まっている」と宣言したEmilsson氏。そのスライドにはサービスが始まったばかりの「日本」の文字も刻まれている
互いに影響し合うMMORPGとFPS。筆者は特に「DUST 514」の「1発の弾丸が歴史を変えられる」という旨のナレーションが印象に残った。これは比喩ではなく、他のプレーヤー達が脈々と築いてきた“歴史”への影響を意味している。戦士として「DUST 514」に参加することは、多大なプレーヤーからの期待を背負うこととなり、1発の弾丸で“歴史”を変えることほど格好いいことはない。このタイトルによって、FPSに新たな価値観が見出されるのではないだろうか

(2012年 4月 24日)

[Reported by 安田俊亮]