Game Developers Conference 2012レポート

【GDC 2012】「Diablo III」のハイクオリティなアートワークの世界
背景からボスモンスターまで進化の過程を絵で見る


3月5日~9日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center



 「Diablo III」はBlizzard Entertainmentが開発しているハックアンドスラッシュのオンラインアクションゲーム。2008年に発表されて以来、世界中で発売が待ち望まれながら延期に延期を重ねてきた。発売日はまだ決定しておらず、このセッションでもゲーム紹介には「When It's done(そのときが来たら)」とジョーク混じりで書かれていた。しかし噂では2012年第二四半期辺りと言われておりファンの期待が高まっている。

 そんな「Diablo III」のアートワークを紹介する「The Art of Diablo 3」は開演前から会場内を1周するほどの大行列ができて、「Diablo」シリーズ期待度の高さを証明した。セッションではBlizzard EntertainmentのアートディレクターChristian Lichtner氏が開発初期と現在のアートワークを比べてその進化を紹介した。




■ 原色使いから、しっとりした大人の雰囲気への変更

Blizzard EntertainmentのアートディレクターChristian Lichtner氏

 Lichtner氏は「アートワークはゲームのテーマをサポートしなければならない」と語り、初期のアートワークがいかに進化していったかを説明した。全体の印象としては初期のアートワークは、「World of Warcraft」シリーズにも通じる原色を使ったBlizzardらしい色使いで、それが最新のバージョンでは色遣いをぐっと押さえて大人っぽい雰囲気に仕上がっている。

 アートワークは背景となる背後のレイヤー、その手前におくキャラクターのレイヤー、最前面に置くUIのレイヤーに分かれている。一番後ろの背景は一枚絵で描かれている。この背景はゲーム画面では背景のコントラストを落として全体的にぼんやりさせた上で周囲の明るさを落として薄暗くして、中央のキャラクターを目立たせている。

 背景を作るときに重視するのは、そこに使う色だ。いくつかの背景を並べてみると、シーンごとに赤や青といったイメージカラーでまとめられていることがわかる。

 背景に置かれる「2.5D Assets」と呼ばれるローポリゴンの背景オブジェクトは、ちょうどお面のように半立体的な構造をしており、カメラの動きに合わせて3Dの立体に見えるよう工夫されている。


効果を付ける前の背景。全体が良く見える周囲を薄暗くして、シェーダーでコントラストを落としたカラーイメージが違う4つの背景
「2.5D Assets」のオブジェクト背景の木は表から見ると立体的だが、半分より後ろは作られていない他にも回り込むことで立体的に見せているオブジェクトが複数ある


 中間のレイヤーに表示するヒーローは、背景よりはコントラストが強めになっている。モンスターのデザインはかなり大きく変わった。初期のデザインでは鎧を付けた青いヤギ頭のモンスターだが、現在は鎧を脱いで黒を基調にしたよりリアルな雰囲気になった。また初期のものは立体感に欠けたが、現在のバージョンでは上からの光を意識したコントラストが付けられて、より邪悪そうな姿に進化している。攻撃のエフェクトは、キャラクターよりもさらにコントラストを激しくつけて、ハイライト的に輝かせている。


ヒーローのデザインモンスターデザインの進化ターゲットしたモンスターには赤いラインがつく

 一番手前にレイヤーには、スキルアイコンのショートカットや体力バーなどのUIを表示する。これはプレーヤーのためのレイヤーなので、UIは見やすくわかりやすいように作らなくてはならない。そのため、コントラストも色使いも強めにしてある。UIには「Diablo 3」のゴシックな世界観を表現するための装飾が施されている。


UIのデザインはスチールっぽいものからゴシックな雰囲気になった「Highland」の初期バージョン。背景がごちゃごちゃしていて、キャラクターを見失いやすい「Highland」修正バージョン。色を付けてイメージを出し、キャラクターを目立たせた
「Cathedral」の初期バージョン。レンガのテクスチャーが目立ちすぎて、キャラクターが見づらい「Cathedral」の修正バージョン。まるで違う場所のように進化した




■ 緻密さを増したキャラクター&モンスターデザイン

 モンスターやキャラクターのデザインは、ラフ画の段階から完成形までがどのように進化したのかが紹介された。「SIEGE BRAKER」というモンスターは腕が4本ある鎖をまとったいかつい外見をしている。現在の造形を初期の造形と比べると、テクスチャーの書き込みが非常に細かくなっているのがわかる。初期には書き込まれていなかった細かい鱗まで緻密に表現されている。完成形では武器が追加され、ハイライトを付けで立体感が増し、全体にまとまりがよくなっている。そのほかにもモンスターやキャラクターの比較があるので、じっくり見てその進化を楽しんで欲しい。


「SIEGE BRAKER」のラフスケッチ初期バージョン。テクスチャーが伸びている修正バージョン。テクスチャーの描き込みが緻密さを増した
決定稿。ハイライトで立体感を付けて、全体をなじませたモンスターデザインの変遷「Wizard」のデザインの変遷
「Barbarian」の進化。筋肉の表現がかなり変わっているプレーヤーが使用する武器「Barbarian」の装備
5つのクラスの装備「Witch Doctor」の装備デザインその1「Witch Doctor」の装備デザインその2
「Witch Doctor」の装備バリエーションその1「Witch Doctor」の装備バリエーションその2「Witch Doctor」のカラーバリエーション
「Barbarian」のスキル「Earthquake」。地面を殴って周囲に火柱を燃えたたせる「Monk」のスキル「Wave of Light」。梵鐘をつくと、その音が槍のように背後の敵を貫通していく「Wizard」のスキル「Giant Toad」。その名の通り巨大ガマを召喚する。ガマは舌を伸ばして敵を食べてしまう


 また、2体のボスキャラ「ASMODAN」と「Diablo」のキャラクター造形過程も紹介された。「ASMODAN」はクモのような足を持つ悪魔。「Diablo III Black Soulstone Cinematic Trailer」にも登場している。製作の過程で、デザインが何度も見直されているのがわかる。途中で一度体に布をまとったバージョンも作られたが、最終的には足を出したものが採用された。

 もう1つのモンスター「Diablo」はタイトルにもなったラスボス級の敵。最初のアイデアスケッチでは「Diablo II」の「Diablo」に似た体つきに、肩に顔らしいものがついた悪魔がデザインされた。この肩の顔を特徴にすることが決まり、次に作られたバージョンでは肩の顔がさらに強調されている。だが、ここで「II」との差別化の意味で、少しクレバーでスリムなデザインが提案され、最終的にはこの2つを合わせる形で「III」の「Diablo」がデザインされた。


「ASMODAN」と「Diablo」のデザインの変遷


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(2012年 3月 12日)

[Reported by 石井聡]