時は戦国時代……。

織田信長は今川義元を討つべく、桶狭間で奇襲するが流れ矢で死亡した……はずだった。が、ギルデスタンと名乗った幻魔なる存在と契約する事で信長は復活を遂げ、義元を撃破する。その勢いで永禄4年（1561年）、信長は尾張一国を統一した。

信長の庇護により、幻魔は尾張を拠点に暗躍する。そして鬼の一族が残した過去と未来を繋ぐ「時のねじれ」の秘術を発見し、これを我がものにしようと研究をはじめる。

しかしその研究は、不慮の事故によって失敗に終わった。幻魔は日本中に散り、それに呼応するように鬼の一族の霊力も目覚め、数多くの不思議な現象が日本各地で起きた。さらに、その「時のねじれ」が戦国の過去と未来の武将たちを現世に召喚した。

ある武将は、契約によりその身に幻魔の血と力を得た。それが禍々しきものだと知りながら、己の信ずる道を進むための力を欲した。

ある武将は己が身体に流れる鬼の血を知り、一族の末裔としての使命に目覚めた。かつて鬼の一族を滅ぼし、またも世を騒乱に巻き込もうとする幻魔を残らず滅すべし。

ある武将は、「時のねじれ」の影響を受け、人の身なれど不思議な霊力を授かった。幻魔や鬼による支配ではなく、人による人のための太平を為すために立ち上がった。

こうして時を越えて、世代を超えて集いし戦国の武将たちは、「幻魔」、「鬼」、「人」と3つの勢力に分かれ、それぞれの夢へと動き出した。

凄烈を極めた桶狭間の戦いから、いくつかの月日が過ぎようとしていた。合戦場にあった倒木からは小さな命が芽吹き、轍（わだち）や蹄（ひづめ）のあとを緑が覆い始めている。

しかし時が経ってなお、今も人々の口の端に上るのは魔王・織田信長の名前であった。「今川義元を討ち取るために、信長は悪魔に魂を売ったらしい」そんな噂がどこからともなく聞こえ、まことしやかに囁かれている。

事実、桶狭間の合戦以降、信長は人々の前に姿を現さなくなっていた。そのことが噂の流布を助長し、信長の名声は魔王の二つ名を携えて、瞬く間に諸国へと広まっていった。

そんな折、尾張から東方の地――
かつて今川義元が治めていた三河の山奥に、1人の若い武将の姿があった。
名を松平元康――後の徳川家康である。