サクセス、「英雄クロニクル」スタッフインタビュー
ブラウザでもコアでディープなゲーマー向け! こだわりの開発秘話


11月16日 収録

会場:サクセス本社


 株式会社サクセスは、創造WEBブラウザシミュレーションRPG「英雄クロニクル」の第2シーズンを12月1日からスタートした。

 「英雄クロニクル」はサクセスの公式サイト、ハンゲーム、mixiで9月29日から正式サービスを行なっているブラウザ用シミュレーションRPG。プレーヤーは5つの勢力に分かれて、世界の覇権を争って戦う。細かな能力から顔のイラスト、セリフに至るまで、圧倒的な幅広さを持つキャラクター作成機能が特徴で、それによりシンプルながら高い戦略性を持つシミュレーションRPGになっている。ゲームの見所についてはこちらの記事で紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。

 本作は通常、1シーズンは3カ月と決められており、シーズンごとにプレーヤーデータの一部を除いてリセットされる。第1シーズンは2カ月間の変則運用だったため、本来なら入る予定だったクエストが入らなかったりと、プレーヤーにとっても運営にとっても手探りのシーズンになった。逆に言えば、第2シーズンから本番が始まるというわけだ。

 今回、第2シーズンを間近に控えたサクセスにお邪魔して、運営、開発スタッフに「英雄クロニクル」の開発秘話や、来シーズンに実装される諸要素について聞くことができた。インタビューに応じてくれたのは、「英雄クロニクル」プロデューサーのオッド氏、ディレクターの稲川征史氏、企画の麓川智之氏、運営の横山和弘氏の4名。インタビュー中も企画会議のような雰囲気で意見がどんどん飛び出し、笑いの絶えないインタビューとなった。


自由度の高いキャラクタークリエイトを楽しめるシミュレーションRPG。12月1日から第2シーズンが始まる



■ 第2シーズンには、ユーザーの選択で歴史が変わっていくクエストを実装

プロデューサーのオッド氏
ディレクターの稲川征史氏
企画担当の麓川智之氏
運営担当の横山和弘氏

編: まもなく第1シーズンが終了しますね。3つあるプラットフォームのすべてが同時に進行しているのですか?

オッド氏: ハンゲーム版とサクセス版は同じサーバーに繋がっています。mixi版だけ、ミクシィさんの規定で別サービスという形をとっています。第1シーズンは2カ月で進みましたが、第2シーズンからは3カ月になります。シーズンのスケジュールはどちらも同じです。

編: 第1シーズンはどうして短かったのですか?

オッド氏: 正直に言うと、スタートが1カ月遅れたのです(笑)。

編: シーズンの切り替えには、どういったことが行なわれるのですか?

オッド氏: その前のシーズンのデータを一部引き継いで次のシーズンを初期から始めるということになります。ゲームの中に「刻碑歴」という暦があるのですが、997年にスタートして1000年になると必ず「英雄戦」が起こって終了するという形で、ループする世界になっています。一応ゲーム上の建前としては、前の歴史の話をされても「何を言っているんだお前は」となるわけです(笑)。

編: 来シーズンからは、歴史の流れに影響を与えるようなクエストが入るそうですが、ループする中で変化していくのですか?

麓川氏: イメージ的には架空戦記に近い感じです。もしあの時だれだれが生きてればという感じで、世界観が毎回シーズンごとに変わっていくという形です。

オッド氏: 今回は2カ月で進めていたために、ゲーム内の暦とシステムが合わず、ストーリー系のイベントがうまく動かない可能性があったので、無理に入れませんでした。ユーザーさんが思った以上にNPCやストーリーを気にしてくださっていたので、ちゃんとその部分を作りこんで第2シーズンから入れようと、途中で路線変更しました。ですので第1シーズンは歴史の動きがほとんどなく、最終的に5つの勢力がどうなったかという結果くらいしかなかったのですが、第2シーズンからはストーリーに関わるクエストが発生します。例えばその週に勢力が何位で、士気がいくつで、どこと1番争いが激しかったかとか、そういった状況がフラグになって、自分の国や相手の国も巻き込んだ歴史を動かすクエストが発生していきます。

編: シーズンの途中にストーリーが分岐していくのですか?

オッド氏: そうです。チュートリアルにあったような、アドベンチャーゲームっぽい形でストーリーを進めていきます。その勢力が何位なのかによっても発生率が変わりますし、クエストの達成率で話がどう転ぶかが変わります。すべてユーザーさんの動き次第です。例えばどこかの国でクエストが発生した時、ユーザーさんの行動次第では重要な人物が死んでしまうかもしれません。でも第3シーズンでは、同じクエストでも死ななかったりと歴史が変わっていきます。

編: 前のシーズンの歴史は完全にリセットされるのですか?

麓川氏: 今回は死なせてしまったけれど、もし死んでいなかったらどうなっていただろうと気になるじゃないですか。

オッド氏: ゲームに実装するかどうかはまだ未定ですが、世界観的には「刻碑石」という謎の石があって、そこに色々な歴史が刻まれていて、時には未来のことが書いてあったりするという設定があります。これは世界がループすることを示唆しています。ゲーム内で「こんな石が見つかった」という感じで、第1シーズンや第2シーズンの歴史が公式サイトにアップされるとか、そういった形でやろうと思っています。そこに何月何日誰それが死んだとか書いてあるわけです。

編: 勢力が5つもありますから、歴史の分岐にはかなりのバリエーションが生まれそうですね。その辺りはすでに開発は終わっているのですか?

オッド氏: こういうフラグでこのイベントが発生するというところまでは決まっていますが、テキストがちゃんと固まっていないものもあります。

編: 第2シーズンのスタートと同時に実装されるのではないのですか?

オッド氏: 歴史にかかわるクエストが発生するのはシーズンが半分くらい過ぎてからだと思います。

編: ストーリークエストは「英雄戦」とは、何か関係があるのですか?

オッド氏: ストーリーはあくまでも世界観のフレーバーとして存在しているので、システムに大きな影響は与えません。ただ、クエストの結果によって、参戦してくるNPCは変わってくるかもしれないですね。


オーラム共和王国の若き王「ルシルム」(左)とその双子の姉「アーマダ」(右)。国の主要人物が関わるようなクエストも発生する?




■ 「自分のキャラを再現したい」という思いが生んだキャラメイク

編: 「英雄クロニクル」はキャラクター作成の幅がとても広いですが、どうしてこういう形にしようと思ったのか、企画意図を教えてください。

オッド氏: 原案は僕が考えました。もともとここにいるメンバーは全員TRPGのプレーヤーなのですが、TRPGが好きな人というのはシミュレーションRPGで遊ぶ時に、雇ったユニットに名前を付けて自分がTRPGで作ったキャラクターを何とか再現しようとします。少なくとも僕はするんです(笑)。でもなかなか難しくて。仮に能力は再現できたとしても、顔がこれじゃないとか、顔は近いんだけど能力や性格がこうじゃないとか、どうも能力と外見が一致しなくて自分が持っているイメージに近づかないのです。だからそれなら自分の考えたキャラクターを再現できるゲームを作ろうと思ったのです。

 ユーザーさんごとに再現したいものがあるでしょうから、能力をたくさん作りました。たまたまTRPGの「GURPS(ガープス)」に近い、コストを使ってスキルを取っていくという感じのシステムになりました。

編: 遊んでみて感じたのですが、かなり本格的なシミュレーションRPGだと思うのです。でもmixiアプリなどで遊ぶ方は、基本的にライトなゲーマーが多いかなと思います。そこのバランスはどう考えていますか?

稲川氏: カジュアルなプラットフォームに重いゲームを出してしまうのは、うちの社風ですね(笑)。

横山氏: 先例としては「METAL SAGA ニューフロンティア」というやはり重いブラウザゲームを出しているのですが、あれで収益があるのだから重いのを作っても大丈夫だろうと(笑)。

オッド氏: 「METAL SAGA ニューフロンティア」も最初は僕がプロデューサーをしていました。そもそもmixiのゲームはソーシャルゲームと名前がついているものが多いですが、僕はソーシャルアプリを作るつもりはこれっぽっちもないのです。普通にブラウザでディープなゲームが作りたくて、たまたまそれをmixiさんに出したというだけですね。

「いまさらカジュアルゲームにする気はないし、そうするのも無理」と断言

編: カジュアルゲームではないということですか?

麓川氏: かなり敷居の高いゲームです。だから遊ぶユーザーさんは限定されていますが、その代わり好きな人にはとことん遊んでもらっているという状況です。

オッド氏: ライトユーザーさん向けや万人受けするゲームは、ほかにたくさん作ってくださる方がいるので、僕が作る必要はないかなと。僕は自分が好きなタイプのコアゲームを作って、それでついてきてくれる方がいればいいのではないかなと思っています。

編: 現状では満足できる会員数がとれているのですか?

オッド氏: 「英雄クロニクル」に関してはまだまだですね。この記事を読んでいる皆さんにぜひ応援していただきたいと思っています。

編: それでも「英雄クロニクル」をカジュアルゲームにするつもりはない、というわけですね。

横山氏: いまとなっては無理ですね(笑)。

オッド氏: 「英雄クロニクル」はファンタジー世界的な設定や妄想をキャラクターとして実現できるゲームなので、本人が自分から言わない限りプレーヤーが誰かはわからないようになっています。普通のソーシャルゲームだと、誰が遊んでいるかをどこかに出してると思いますが、このゲームでは一切排除しています。でもその代わりになりきりで遊びやすいような環境を用意しているので、ゲーム内のソーシャルグラフはできているのかなと思います。

編: 遊んでいて感じたのですが、このゲームは強いキャラクターを「さん」づけする稀有なゲームですね。

オッド氏: プレーヤーの顔が見えないように作ってあるので、単にキャラクターとして見ている方が多いのかもしれませんね。ゲーム内の雰囲気もすごくよくて、皆さんが他のキャラクターに敬意を払ってくれているのがありありとわかります。

麓川氏: ゲーム内に階級というものがあって、戦闘で稼いだ功績だけでは「英雄」にはなれないんです。「絆」システムというものがあって、自分のキャラクターが傭兵として他人より多く雇われないと英雄にはなれません。英雄の人たちは、そういうコミュニケ―ション力が強いので、かなりの敬意を払われていますね。

オッド氏: 上位の人の中にも、キャラクターの性能で雇われてる人もいれば、ユニットとしては使われないけれどコミュニティを活性化させるように動いていることで絆がやたら多い人がいますね。絆リストを見るとその人が遠征部隊にいるのか防衛部隊にいるのかが一目でわかるのですが、マークが全然ついていないのに絆が多いキャラクターという人がいるのです。キャラクターのロールプレイが上手い人や、色々な人に話しかける人や、キャラクターが面白い人など。雇うと相手の命中と回避が上がるので、そのキャラが強くなるので、取り合えず雇ってその人の力になってあげようという感じのようです。

陣営掲示板では、活発なコミュニケーションが行なわれている

横山氏: 一言掲示板で話をしたら、会話の後で自分のキャラが相手に雇われていたりとか。

オッド氏: 雇われるとうれしいので、自分も相手を雇ってあげることがあるようです。「雇用返し」と呼ばれてます。

編: すごくソーシャルゲーム的な要素ですね。

横山氏: 内部は結構ソーシャルな構造になっているんですよね。

オッド氏: 自分がコメントした掲示板の履歴も見られるようになっています。アップデートで、新しいコメントが付いたらNEWマークがついて会話が進んでいることがわかるようになったので、コミュニティがかなり加速しました。

編: コミュニケーションは全体で行なうのですか?

稲川氏: 1番活性化しているのが「陣営一言掲示板」という短い文章が書けるものです。他の陣営の掲示板も見られますが、書き込みはできません。どの陣営でも常連がいて、その常連同士が部隊掲示板でやり取りをして国を挙げてのイベントを開催したり、下をまとめてひっぱってくれる感じになっています。

オッド氏: mixi版では、ユーザーさんが「だれそれの部隊掲示板でパーティーをやろう」とか呼びかけてくれて、それを見た人がワーッと集まる感じです。こちらから敢えて言ってはいませんが、そういう遊び方をして欲しいと思っていたので、動いてくれるユーザーさんには本当に感謝しています。

麓川氏: 今のところ毎週なにかお祭り的なイベントが発生していますね。

オッド氏: こういうとすごく語弊があるのですが、シミュレーションRPG部分はある種オマケなのです(笑)。1番遊んで欲しいのは、mixiなどで盛り上がっている部分です。だからと言ってシミュレーション部分に手を抜いているわけではありません。手を抜いているからバグが多いのではありません。……すみません。

編: 詰め込みすぎたのですね(笑)。

オッド氏: そう、詰め込みすぎたのです。システムが複雑で、この組み合わせとこの組み合わせの時に、この条件下でバグが発生するとか、ものすごいバリエーションがあるので、専門のデバッグ会社を作っているのですが全然取り切れないくらいあるのです。これは今も鋭意対応しています。




■ 特殊能力と武器に使う「転生秘技」で戦闘がさらに深くなる

編: 間もなく第2シーズンが始まりますが、システム面でのリニューアルで注目点はどこですか?

稲川氏: 1番の注目点は、各武器ごとに特別な技が使えるというシステムが入ることです。「転生秘技」という名前で、最初から使うことはできず、転生した時のスキル枠にのみ取得できるという特別なものになります。

編: 武器ごとに必殺技が入るのですか?

稲川氏: 例えば、剣を装備していないと使えないコマンド技のようなものが入ります。今は単純に武器の命中力と威力の数字を見て選んでいると思いますが、それに加えて剣ならこんな特殊攻撃ができる、斧ならこんな攻撃ができるという形になります。必殺技は1つの武器に1種類ずつで、ここぞという時に選んで使っていただく大技になります。

オッド氏: ほかにも割と高コストな特殊能力が改めて入ります。

編: 高コストというと、一発逆転的なものですか?

オッド氏: そういったことができるかもしれないものもあります。パズル的ですごくトリッキーな特殊能力です。

編: 特殊能力は全部でいくつくらい入るのですか?

オッド氏: 今のところ予定しているのは5個です。現状、特殊能力はある程度バランスが取れているので、あまり入れるとせっかくのバランスが崩れてしまうので、そこに注意して控えめにしています。




■ オークションには運営からお宝が出品されるかも?

オークションの出品画面。イベントなどに利用できるよう、かなり大きなコメント欄がある

編: 新たに実装されるギルドについても教えてください。

麓川氏: コミュニティの活性化にはやはりギルドが必要だろうということです。安全にアイテムをやり取りしたいとか、そういった色々な要望に応えられるのがギルドになると思います。乱立を防ぐために、小隊長以上の称号を持っている人だけが設立できるようになっています。ですので設立できるのは2週目以降になります。

編: ギルドは1シーズンのみなのですか?

オッド氏: シーズンが終わると解散になりますが、それ以外でもギルドマスターがさぼったり、ギルドメンバーがさぼったりすると自動解散になります。

麓川氏: ギルドの目玉としては、内部にギルド倉庫やギルド金庫があって、そこを使ってアイテムやお金のやり取りができるようになります。後はギルド対抗戦というものがあります。1週間単位で、マッチングされたギルドとどちらが功績ポイントを多く稼げるかの勝負をすることで活性化につなげようと思っています。勝ったギルドには「黄金の雫」などの割といい報酬がもらえるので、ギルドを組んで頑張って欲しいです。

編: マッチングには条件があるのですか?

オッド氏: 完全にランダムです。

編: ギルド戦も陣営単位になるのですか?

麓川氏: 同じ陣営ともマッチングされる可能性があります。完全ランダムなので。ただ負けても悔しいだけで、何か損をするわけではありません。

編: もう1つの新要素、オークションはどんなものですか?

麓川氏: 今はバザールというものがあるのですが、これは販売側が値段を決める仕組みです。オークションは、出品者は期間を決めて品物を出して、その間に1番高い値段をつけた人が落札するというシステムです。今は相場がかなり不安定で、アイテムの値段がわからないという声が多く聞こえています。そういう時に物を売るのに便利になると思います。ただ売れるまでには一定時間が必要で、即金にはなりません。今すぐお金が必要だという人はバザールに出していただいて、できるだけ高く売りたい方はオークションへと、使い分けていただくといい感じになると思います。ただしオークションでは、期間が過ぎても誰も入札しなかった場合には、システム側が安く買ってしまいます。確実に売りたいならバザールを使った方がいいですね。

オッド氏: オークションの1番のキモになるかもしれないのは、階級がお金で買えることです。小隊長から将軍までのそれぞれの階級を毎週オークションに出します。落札した人は、その次の週に1週間だけその階級になれます。

編: どうしてそういったシステムを入れたのですか?

オッド氏: 例えば、あまり頻繁にプレイできない方や、普通に遊んでいてもあまり功績がたまらない方でも、コミュニケーションが得意だったり絵が上手だったりすると、雇われてすごくお金がたまったりするのです。絆による補正は最初は30人が上限なのですが、階級が上がれば40、50と上がっていくので、そういった方は絆を生かしてお金で階級を買っていただければ、その週は強いキャラクターになれるかなと思いまして。それに世界観的にもお金で買えたほうが面白いかなと(笑)。

稲川氏: 政治力でのし上がる、みたいな気持ちになれるじゃないですか。

オッド氏: NPCにもそういうキャラがいるので、あった方が面白そうだなと思っています。

麓川氏: まだ実際にやるかどうかはわかりませんが、運営側からオークションにちょっといいアイテムを放出してみるとか、そういったイベント的なこともやるかもしれません。

編: こまめにオークションをチェックしていると、いいことがあるかもしれないのですね。

麓川氏: バザールでは商品が買われるとそれで終わりですが、オークションは一定期間出品したままにしておけるので、そういったイベントにも使いやすいですね。




■ 「探索」に戦略的な要素を加えた新ダンジョンシステム

編: ダンジョン的なものも入るそうですね。

オッド氏: これは「探索」の強化版です。簡易ステータスみたいなものが下に並んで、上にテキストで状況が流れます。奥へ進むと簡易的な戦闘もあります。そこで勝てば経験値が入りますし、進んでいるうちにアイテムを発見することもあります。簡単な選択肢もあります。シミュレーションバトルをやるほどの時間はないけれど、行動ポイントを使ってちょっと経験値とお金を稼ぎたいという場合に遊べる箸休め的なものになります。

編: 「探索」の場合はボタンを押すとすぐに結果が出ますが、こちらは間にワンクッション入る感じですか?

稲川氏: ワンクッションよりもっと多い手続きが入ります。「探索」と大きく違うのは、部隊を6人で組むのですが、ある程度構成を考えなくては先に進めないようになっています。深く潜ればそれだけ高い経験値やいいアイテムが手に入りますが、HPはどんどん減っていきますので、戦略性はあるといえます。おそらくは現在のシミュレーションゲーム形式のモードとは異なるキャラクターの強さの差が出ると思います。

編: 回復手段はあるのですか?

オッド氏: 元のキャラクターの能力を簡易的に使うので、魔法や回復スキルを持っているキャラを入れれば回復してくれます。

編: ではHPが高くて防御力が高いキャラが有利になるのでしょうか?

オッド氏: 確かにそれは長生きできますが、ただ死ににくいだけでは実入りが少ないようになっています。ただ、このダンジョンの特徴として、通常のシミュレーションでは部隊編制で使えるコストは1,000までと決まっているのですが、その制限がないので好きなキャラで編成することができます。コスト800のキャラを6人とかいった部隊を組めますが、そういう部隊は燃費が悪く、それはそれであまり奥まではいけないかもしれません。




■ 倒せないキャラクターはいない。対抗手段を考える楽しさ

スキルの中には特化すれば非常に強力な威力を発揮するものがある

編: ユーザーからこの系統の技がもっと欲しいという要望はありますか?

オッド氏: 色々なものが来ますが、8割から9割くらいは自分のキャラクターを強くして欲しいという要望です(笑)。他には「あのキャラが強すぎる」というものも来ますが、時間とお金をたくさんかけて何度も転生したキャラが強くなるのはゲームデザイン的に正しいと思うのです。全く苦労せずに、転生もせずに最初からコストも低くて強力なキャラが作れてしまうなら、それは確かにバランスが悪いと思います。以前にそういった部分を修正したこともあります。

 それと、ダメージだけで強さを図る方が多いです。例えばターンを早く終われば経験値が多くもらえるとか、攻撃チャンスとか、ダメージの数値によらない強さをあまり評価していない方が多いのではないかと思います。

横山氏: 強すぎるといわれたスキルに関しても、対抗策が見つかってそれが広まればまた変わってくると思います。

オッド氏: 今はちょうどユーザーさんが慣れてきて、このスキルはこう使えば強いと、ほかのユーザーさんと情報交換してくれる状況になったので助かっています。ゲーム内の陣営掲示板で、戦い方の指南を初心者向けに書いてくれる方がいますが、それがまたすごく上手に書かれているのです。「倒せないキャラクターはいない。倒せないように見えてもちゃんと対抗手段がある」と書かれていた時には「ありがとう! そうなんだよ」と感動しました(笑)。

横山氏: そういうオピニオンリーダーが育ってきているので、第2シーズンから入るユーザーさんはすごく助かると思います。絶対に倒せないキャラは、今のところ発生していません。絶対に攻略法がありますし、逆に言うと特定のキャラには全く弱いというキャラもいます。自分が対抗できるキャラを持っていなかったとしても、このキャラを雇えば勝てるということでバランスは取れていると思っています。

オッド氏: 流行の戦術みたいなものがあって、ある能力に対抗手段が出ると、今度はその能力に対抗する手段が出てきたりと、どんどん変わっていくのです。1番顕著な例が、オープンβテストのときには回避特化が非常に強くて「やる気が失せる」というご意見をいただいたのですが、いざ正式サービスが始まってみたら回避特化に対する意見はほとんどなくなりました。今は成熟期に入っていて、こちらでも驚くような組み合わせの使い方をしてくるユーザーさんもいます。




■ 自作イラストを使える場所はこれからも増やしていきたい

公式アップローダーの顔アイコン。ここに希望のグラフィックスがない場合は、自分でアップロードして使うことができる

編: pixivのイラストコンテストは最終的にどのくらいの応募があったのですか?

横山氏: 最終的には617作品が送られてきました。締め切り日とその前日くらいに全体の3分の1くらいの数が一気に送られてきました。最後にたくさん来るだろうと思ってはいましたが、想定を上回る応募があって驚きました。

編: 今後もこういったコンテストは開催していく予定なのですか?

横山氏: 今回が割といい感じだったので、何らかの形で継続できるといいと思っています。

編: 画像アップローダーの使われ具合はどうですか?

オッド氏: 相当進みが激しいですね。特にmixi版が。

横山氏: ユーザーさん独自のイベントでアップローダーを活用していただいています。この間もユーザーさん主催の水着祭りがあって、一時期アップローダーが水着だらけになったりしました。

オッド氏: 戦闘のセリフまで変えている方もいました。掲示板のログはアイコンを変えると反映されるのですが、戦闘のログはその時のものが残るのです。だから今は戻していても戦闘ログで見ることができます。

編: アップローダーには2次創作の絵も上がっていますが、どういった扱いになっているのですか?

オッド氏: これに関しては結構難しいですね。はっきりと著作権的に黒とわかるものは消しています。ただ難しい問題がありまして、例えばどこかの同人作家さんの絵にそっくりだった場合、本人が描いているという可能性もあるわけです。それにアイコンは小さいので、一部のパーツだけでそのキャラと特定するのが難しい場合もあります。もちろん著作権を持っている方からお知らせをいただいたものに関しては削除しますし、通報があったものに関しても本当にそうかどうか確認はとっています。

編: 今は顔のアイコンとカットインが変更できますが、今後ほかの使われ方をする可能性はありますか?

稲川氏: キャラクターシートの上に立ち柄が乗っかる形にして、マウスオーバーした時だけ消えてデータが見えるようにするというアイデアはあります。今は大きなイラストは自由記入欄に貼ってもらっていますが、その機能が入れば格好いいじゃないですか。

オッド氏: シミュレーションRPGでデータが見えづらくなるのはどうなんだろうというのがあって。

稲川氏: でもキャラを見せることが、シミュレーションゲームということより上に来ているゲームですから。

オッド氏: そのあたりは葛藤ですね。同じように、スキル名や特殊能力名を無料で変えさせてくれという要望も多いのです。おっしゃる通りなのですが、ただシミュレーションRPGとして考えると、そこを自由にしてしまうと訳がわからなくなってしまうんです。全員が技の名前を変えてしまうと、技の名前で効果がわからなくなってしまいますし、中には既にある別の名前をつけてフェイクに使う方もいます。ですからそこはせめぎあいで、敢えて有料の形にして、どうしても変えたいという方だけということにさせてもらいました。

ユーザーに自由なキャラ作りの場を提供するためには葛藤も多いとオッド氏

編: 皆さん色々と考えますね。ユーザーの裁量に任せる部分が多いと、それだけ苦労がありそうですね。

オッド氏: そうですね。ただスタート地点が自分の想像したキャラクターで遊びたいというところで、そこを外さないようにしなければなりませんから、色々と悩みは多いですね。例えばなるべくイメージを阻害しないようにマップはプレーンな形で作っているのですが、そうすると他のゲームに比べてビジュアル的に見劣りして、そこを重視する方に遊んでもらえないという懸念もあります。

麓川氏: 一時期、見栄えをよくするためにクォータービューにしてみたらどうかという話もあったのですが、見づらいという話になって採用されませんでした。

編:アイコンやカットインをアニメーションさせている方はいますね。

オッド氏: カットインで剣をヒュッとふったり、目がキラーンと輝いたりしてますね。それを狙ってGifを使えるようにしたのです。そういったものが増えてきたら、データ量やサーバーと相談の上、カットインの容量を増やそうかと思っています。

編: 最後にファンへのメッセージをお願いします。

横山氏: 私は運営の担当で、日々ユーザーさんの動向を見させていただいています。今のところ皆さん楽しく遊んでいただいているので、このまま継続していければいいと思っています。

麓川氏: 主にNPC周りを開発しています。ユーザーさんの方がきっと楽しいキャラを作れると思いますので、ぜひゲームを盛り上げていっていただきたいです。

稲川氏: 勝ち負けにこだわる遊び方もいいと思いますが、それ以外の部分も充実していけるゲームなので、そういうところも楽しんでいただけたらいいなと思っています。

オッド氏: 何度も言いますが、このゲームの主役はユーザーさんのキャラクターなのです。自分の作ったキャラクターを愛していただければ、そういう風に作ったゲームなので、僕はそれで満足です。後はその先にご飯を食べられるくらいの売り上げがあれば更にうれしいです。よろしくお願いします。

編:ありがとうございました!


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(2011年 12月 5日)

[Reported by 石井聡]