グラスホッパー・マニファクチュア、チャリティライブイベント
「GRASSTREAM2 TRAVIS VS. GARCIA」にて新作アプリと新規タイトルを発表
日本科学未来館館長の毛利衛氏と共同でゲームを開発!
「FROG MINUTES」デザインとディレクションを担当した能丸氏 |
株式会社グラスホッパー・マニファクチュアは、トーク&ライブイベント「GRASSTREAM2 TRAVIS VS. GARCIA」を3月30日に新宿ロフトプラスワンにて開催した。本イベントは当初“同社設立13年記念”として行なわれる予定だったが、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震をうけ、チャリティイベントとして開催されることとなった。イベントがUstreamで中継されていたこともあり、ここでは当日公開されたチャリティアプリ「FROG MINUTES(フロッグミニッツ)」と未発表の新作情報にフォーカスしたイベントレポートをお届けする。
「FROG MINUTES」は、カエルの生態をモチーフにしたiPhone/iPod touch/iPad用ゲームアプリ。対応端末はiPhone 4/iPhone 3GS/iPod touch第3世代、第4世代/iPadで、対応iOSは4.2以降。言語は全世界(日・英)対応。価格は115円で、グラスホッパー・マニファクチュア側の全収益は東北地方太平洋沖地震により被災された方々への義援金として日本赤十字社を通して寄付されるとしている。
プレゼンテーションには、本アプリのデザインとディレクションを担当した能丸氏が出席。ジャンルを聞かれると「どこに振り分けていいいか、凄く悩んだ。作っているほうもよくわからないゲームになっちゃった。ファミリー、教育にも入ってくるんですけど……シミュレーション、とかですかね。やってもらえれば簡単。わかりやすい作りにはなっている」と説明。アプリを起動するとタイトルが表示され、タッチすると「はじめる」と「遊び方(チュートリアル)」の各メニューが表示される。
鳥のさえずりがきこえてくる草原(フィールド)は、しばらく経つと草むらなどが揺れ始める。そこをタッチすると、カエルおよびその餌となる虫が出現。虫はタッチして画面下にストックしていく。カエルをタッチすると、カエルをつかまえるモードに移行。つかまえた虫をドラッグ&ドロップで食べさせる。満腹になるとカエルが動かなくなり、タッチすると捕獲。こうしてカエルを集めていくゲームとなっており、達成度により特定の図柄が完成するなど、コレクション要素も用意されている。日本語版のナレーションは、声優の坂本真綾さんが担当。チュートリアルやカエルの解説など、ゲーム中の随所で優しいナレーションを聞くことができる。
初めて捕まえたカエルは、解説が表示される。アイコンをタッチすると坂本さんがフルボイスでナレーションを音読してくれるほか、カエルをタッチすると鳴き声が再生される。これらの機能は、画面左下の「ずかん」でいつでも再生可能。ゲーム中に登場するカエルは、すべて実在するもの。「本来ほとんど鳴かないカエルもいるんですが、これらは静岡県にある無人島水族館『あわしまマリンパーク』にお願いして、本物のカエルから24時間体制で直接収録した(能丸氏)」といい、非常にこだわった作りとなっている。
タイトル画面など。上画像は店内モニタとCCDの併用なので非常に荒いが、実際のゲーム画面はとても美しく精細で、風情あるものに仕上げられている | ||||
アシスタントの佐藤かよさん(上画像・左)とゲストのアイドルユニット「バニラビーンズ」のおふたり(同・中央)が「FROG MINUTES」をプレイ |
アプリケーション関連では、飯田和敏氏が災害復興祈願サウンドゲームソフト「なぎ -nagi-」を紹介。対応プラットフォームはWindows XP/7、Mac OS X 10.6.6以降。開発者は「バーチャファイター」シリーズなどを手がけたサウンドクリエイターの中村隆之氏。PCのマイクが拾った音を、サインウェーブに変換して再生する。ジャケットデザインを内川たくや氏、ユーザーインターフェイスのイラストを納口龍司氏がそれぞれ担当。飯田氏と犬飼博士氏が開発に協力。利用料は無料。
飯田氏は「たとえば、起動して放置しておくと、色々な生活の環境音を取り込んでフィードバックを発信する。おびえた赤ちゃんが泣き出したら、泣き声を全部拾って、こんなふうに穏やかなものに変わるよ? って見せていくと、遊びだすんですね。これはゲームだなって。さらに可能性ということでいえば、音が鳴るということは実際の空気の振動。地震に対抗できる力があるかどうかわからないけど、空気を微量な音で揺らし静かな“なぎの状態”を作り出すことで、なんとか怖い災害をなだめられないか。もちろん自然の力のほうが強いんだけど……。ひとりの力では何もできないけど、今3,000ダウンロードくらい。これが5,000人、10,000人と鳴らしだすと、もしかしたら奇跡が起こるかもしれない。ぼくはゲームクリエイターだから、バカみたいな、夢みたいなことを一生懸命やっていきたい。それを(震災による自宅待機中の)1週間、考えていた」とコメントした。
これまた店内モニタをアップで撮影した画像につき、荒さはご容赦願いたい。実際の画面は美しく、フィードバックされる音の独特な響きが印象的。ダウンロードは無料なので、ぜひ公式サイトにアクセスしていただきたい |
■ PS3/Xbox 360「Shadows of The Damned」吹き替え役を一部発表。日本科学未来館館長の毛利衛氏とコラボレートしたゲームを開発
イベントでは、同社CEOの須田剛一氏とサウンド担当の山岡晃氏が2011年発売予定のプレイステーション 3/Xbox 360「Shadows of The Damned」を紹介。ジャンルはサイコロジカルアクションスリラー。「サイコロジカルアクションスリラーって、わかりづらいじゃないですか。日本のみなさんに伝えるとすれば、“ど・パンクホラー”、もしくは“ど・パンク地獄ホラー”(会場笑)。地獄のロードムービー。いわゆる冒険活劇なんですけど、普通は現実世界、戦争、未来、色々いくじゃないですか。でも主人公のガルシア・ホットスパーは地獄に大好きな彼女ポーラを助けにいく。ストーリー構成自体は、『スーパーマリオ』なんとかに凄く似てる(会場爆笑)。ぼくがシナリオを書いたときに1番意識したのが“スーパー~”なんです。やはり、愛する女を助けにいくっていう根源的なところをストーリーのテーマにしようと思っている」と説明する。
続けて、GDCで公開されたトレーラームービーを上映。これには山岡晃氏のサウンドが加わっていないといい、後日新たに公開される新トレーラーを楽しみにして欲しいとコメント。ゲーム本編の開発はほぼ終了しており、北米は6月7日に発売予定。国内は「だいたい8月くらい? ですよね。8月か、9月か……8月末ですよね。それくらいのイメージ。ちょうど夏休みの終わりに地獄の体験をしてもらって。そこから9月に気合を入れてもらいたいな、と(須田氏)」という。
Ustreamタイムラインの質問「ホットスパー(Hotspur)は温泉ですか?」との質問が取り上げられると、須田氏は「Hotspurって元々“騎士”という意味なんですね。勇敢なる騎士というイメージがありまして。ぼくはイングランド・プレミアリーグの『トッテナム・ホットスパー』の大ファンで、そこからつけました。あの、すいません、それだけです(会場笑)」と説明。昨年イギリスに渡航し、ライジングスターゲームズ社長に「トッテナム・ホットスパー×マンチェスター・シティ」に招待された際、観客が暴動寸前の盛り上がりを見せた2-1の大逆転劇があまりにも鮮烈だったため「それでHotspurとつけようと思った。本当。(今まで)誰にもいったことない」とコメント。
また「何もお土産がないとつまらないので(山岡氏)」と前置きしつつ、日本語吹き替え役を一部発表。主人公ガルシアの相棒で武器にもなるドクロのジョンソン役に、我修院達也さんを起用。「(収録は)楽しかったです! もう、あのままの方で! ずっと笑いが絶えなかった(山岡氏)」、「普段のトーンといつものハイトーンを使い分けられていた。役者魂が凄くある方。みなさんぜひ期待してください(須田氏)」といい、非常に存在感のある演技を披露されているようだ。
今後の活動について質問されると、年内リリース予定の未公開作のディレクションを担当するという飯田氏が登場。「ぼくらは震災以降、大きく考えが変わった。こう変わったとはまだ言えない、考え中なんですけど。これからゲームを作るって、どういうことなのか。ひとりひとり、凄く意識せざるをえない。で、何を考えているかというと、ぼくらは日本の会社なので、日本のこと……未来について考えます。ということで、日本の未来を考えるゲームを作っています。それはまったく新しいハードウェアで、お台場にあります。日本の未来を考える方とコラボレートしているわけですが、誰とそれをやったらベストか。日本の未来は、地球の未来。地球の姿を見たことがある、生身の人間がいるんですよ。ぼくらはGoogle Earthとか画像でしか見たことがない。それを本当の眼(まなこ)で見た、毛利(衛)さんっていう元アストロノーツがいらっしゃる。毛利さんのチームとグラスホッパーで、凄いゲームを作ります。どうですか?」と説明。これには会場から割れんばかりの拍手が沸き起こる。
震災の影響で未来館の工事も再開されていないが「8月にはご来館いただけるよう、がんばっている(飯田氏)」といい、現在鋭意開発が進められているようだ。山岡氏も、ウッディ・ジャクソンさんや植松伸夫氏など著名なサウンドクリエイターが多数参加されるチャリティアルバムを制作中。販売窓口はiTunesを予定しているといい、こちらもファンならずとも期待大。「できることは何でもやるべきだし。今やらなきゃ、いつやるんだ!? っていう(須田氏)」、「そういうことをマイケルから教わったもんね。その役を、我々が引き受けてみようかな、というね(飯田氏)」と力強く語る氏らの瞳には、明確な“意志”が感じられた。ファンはもちろん、ゲームに興味がある方々はしばらくグラスホッパー・マニファクチュアから目が離せそうにない。
須田剛一氏 | 山岡晃氏 | 飯田和敏氏 |
(C)2011 GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.
□グラスホッパー・マニファクチュアのホームページ
http://www.grasshopper.co.jp/
□「FROG MINUTES」公式サイト
http://www.grasshopper.co.jp/frogminutes/
(2011年 3月 31日)