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CESA Developers Conference 2010(CEDEC 2010)レポート

ゲームメーカー8社のサウンド担当が語るゲームオーディオの未来
パネルディスカッション「ゲームオーディオ 〜未来への提言」


8月31日〜9月2日開催

会場:パシフィコ横浜



 CEDECにはいくつかの毎年恒例のセッションかあるが、サウンド部門でお馴染みなのがパネルディスカッションである。毎年大手メーカーのサウンド担当が勢揃いし、共通の課題を語り合う。受講者もゲームメーカーのサウンド担当が多く、頷きや苦笑が同時多発的に広がるという、講師と受講者の一体感が楽しい人気セッションである。

パネルディスカッションの司会進行を務めたカプコン制作部サウンド制作室シニアサウンドエンジニアの瀧本和也氏

 昨年は残念ながら関係者の都合が付かなかったためか開催されなかったが、今年は2年ぶりに「ゲームオーディオ 〜未来への提言」と題してゲームサウンドに特化したパネルディスカッションが実施された。セッションリーダーは、一昨年の「カプコンが考えるサウンド制作方法」、昨年の「同2」に続いて3年連続の登壇となるカプコン制作部サウンド制作室シニアサウンドエンジニアの瀧本和也氏。パネラーは一昨年の5名から増えに増えて総勢8名が登壇した。瀧本氏以外の登壇者は以下の通り。

    ・コーエーテクモゲームス ソフトウェア開発本部サウンド制作部マネージャー 中條謙自氏
    ・セガ 第1研究開発部サウンドセクションチーフサウンドデザイナー 光吉猛修氏
    ・コナミデジタルエンタテインメント スタジオサウンドセンターセンター長 鈴木英之氏
    ・スクウェア・エニックス 開発部サウンドグループサウンドデザイナー 矢島友宏氏
    ・マーベラスエンターテインメント コンテンツ制作グループコンシューマチームマネージャー 高木謙一郎氏
    ・バンダイナムコゲームス サウンド部マネージャー 中西哲一氏
    ・ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオテクノロジー部サウンド&・ビデオグループシニアサウンドマネージャー 山口晋平氏
    ・カプコン 制作部サウンド制作室室長 信山斉之氏
    (名前はステージでの並び順)

 セッションは、8名のパネラーによる各5分間のプレゼンテーションの後、20分のディスカッションが行なわれた。プレゼンのテーマは「バジェットとコストから見る現在」ということで、限られたバジェットの中で、いかにコストを抑えながらゲームサウンド作成を行なっていくかという興味深いテーマで、各社各様の取り組みが紹介された。2年ぶりの開催と言うことでたっぷり紹介したい。




■ ゲームメーカー8社の“ゲームサウンド予算の削り方”

コーエーテクモ中條謙自氏: 8月からコーエーとテクモが一緒になったが、コーエー側の人間なので今回はコーエーでの取り組みを紹介する。バジェットといっても色々あるが、音楽に絞って話をすると、インハウスで作るのか、外の作家さんを頼むのかという2つのアプローチがある。コーエーは歴史シミュレーションゲームを作ってきて、古くは菅野よう子さん、服部隆之さん、最近だと川井憲次さん、山下康介さんなどとコラボレーションしてきた。その一方で、「無双」シリーズでは、社内のスキルを活かして内製で楽曲制作を行なっている。

 外部と仕事をする時に、クオリティや作風はもちろんあるが、それ以外に得るものがあるのではないか。そこを強く意識して仕事をしていこうというスタンスで活動している。映画やドラマの第一線で活躍されている方の、ミーティングでの発言やデモやプリプロの段階で直接聴ける、スコアも見れる、そんな良い勉強の機会はない。ゲーム業界は外の世界を知らないゼネラリストが多いと思うが、こういったスペシャリストとふれあって学ぶ機会は大きな財産になるのではないかと思う。

 私たちもそれをノウハウとして吸収して、たとえばナレーション、サウンドミックス等、様々なことを自分たちでやり始めている。これが蓄積されることで未来のゲームオーディオに繋がっていくのではないかと考えている。


セガ光吉猛修氏: 私はずっとアーケードゲームの開発に携わってきていて、ローコストでいかにクオリティを保つか、ハイクオリティを実現するかについて試みとして行なっていることがある。アーケードもコンシューマーと同じように日本だけではなく世界を相手にしている関係で、音声は英語、歌を入れるときも英語圏を意識しなければならないところがある。

 そんな中で、ここをいかに安く仕上げるかということで、アジアの中で英語圏として知られるフィリピンのマニラで、音声や楽曲の収録をなるべく安い金額で、クオリティはキープもしくは日本以上のものを、という試みを行なっている。基本的にはセガも外作志向にあるが、それだけでは作り方が偏ってしまうと言うことで、自分の仕事の中で新たなルートを取り込んでやっている。

 具体的な成果としては、スタジオ使用料が1時間1,800円、ギタリスト等のプレーヤーは1曲6,000円、音声収録に関しては、声優さんを8人呼んで、10キャラ分、400ワードで、オーディション、収録、音声収録等々込み込みで約165,000円。

カプコン瀧本和也氏: 凄いですね。値段を聞くとビクッとしますね(笑)


コナミデジタルエンタテインメント鈴木英之氏: 私は立場上、予算を決めるときに色んな人と話しをしながら決めていくことが多いが、その予算を決めることに関する話をしたい。どちらかというと私の失敗談。昨今景気も非常に悪くて、予算圧縮の圧力が強くなっている。サウンドも適正な予算を考えていかなければならないとしみじみ思っているが、私の過去の失敗談としては、曲数、操作直結音、ボイスの3つがある。

 曲数はよく間違える。このキャラにこういう曲を付けよう、喜怒哀楽を付けようとやってるとどんどん曲数が増えて、結果として「こんなに曲必要だったの?」ということになったり、だんたんゲームができあがってくると、「この辺、曲がいるんじゃないか」というところが良く出てくる。企画書、仕様書を決めるときにゲームの流れを考えて意識して作っていかないと、結果として予算を大きく読み間違えてしまう。これは今でも良くある。

 操作直結音は、プレーヤーの操作に直結する音。たとえば、エンジン音だったり、剣で叩ききる音。この辺は本当に神経を使うべき。それなりの音ができるとそれなりに満足してしまって誰からも文句言われなかったりするが、後になって考えるともうちょっとこういう音にしておけば、ゲームがもっとおもしろく感じられたのではないかと思うことがある。

 ボイスは未だに心痛むところがあって、声優さんをケチって、雑魚キャラのボイスを社内でまかなったところ、収録しているときはこれで十分いけるかなと思っていたが、実際にゲームに組み込んでみたら、声優さんの演技力との差が目立って、「これはちょっと不味かったかな」と未だに思っている。


スクウェア・エニックス矢島友宏氏: 近年発表等をさせていただいている内製のツールを使ったコストダウンを紹介したい。なぜサウンド部門でツールを使ったり、プログラマがいたりするかというと、作業の手間の短縮が狙い。RPGは音数が多く、音の接続シーンも多くなるため、作っている時間より当て込んでいる時間の方が想像より膨大に掛かるという現状がある。お話も長く、カットシーンも増えるという状況可で、そのすべてを1つずつ当てていたら、人件費だけでも相当掛かってしまう。

 ツールを共通化するということは当然アセットの共有も簡単になる。スクウェア・エニックスにはサウンド部門に30人以上いて、曲も効果音もプログラマもいるという状態。多数の社内の開発を引き受けているが、開発スケジュールの影響で変更があったときに、簡単にタスクフォースを組むことができる。ツール、アセットが共通化されているため、高いクオリティを維持することができる。


マーベラスエンターテインメント高木謙一郎氏: 私はプロデューサーというところで、皆さんとは若干役割が違うが、プロジェクト全体を見る立場から予算におけるサウンドとの関わり方をお話ししたい。

 予算≒人件費。ここをどう削って効率を上げていくか。会社には3日でやることを2日でやれみたいなことを良く言われるわけだが、それは無理をしているのであまり良くない。それ以外に何かできるかという点で、重要なのはチームでイメージを共有すること。これができてないと迷いや間違いが生じてムダが発生する。イメージボードを作って共有するというアプローチに加えて、サウンドによるイメージ共有はできないか。

 2009年にリリースした「勇者30」では、外部の様々な作家さんに、「こういうゲームを作りたいのでこういうイメージの曲を作って欲しい」と早期の段階でお願いして、現場のスタッフへの説明に使った。イメージボードだとグラフィッカーの精度は上がるが、プランナーの精度が上がらない。サウンドだとリズムが伝わるのでそこで間違いや迷いが減って、より短い期間でクオリティの高いゲームが作れたのではないかと考えている。


バンダイナムコゲームス中西哲一氏: 厳しい時代だからこそ、何に重きを置いて何を選ぶかは変わってくる。ウチは30人程度の組織だが、組織効率化のためにいかにやり方を揃えるかという観点で悩むことが多いが、最近では「あえて標準を作らない」、「個々は我を追及せよ」でいいのではないかと考えている。

 重要視するのは、組織の柔軟さ、内容の差別化の2つで、これこそが価値を生むのではないかと思っている。とりあえず前に進んで開拓する回数を増やして、多様な進化の可能性の経験をため込むことを優先したい。クリエイターはこだわりを持って欲しい。多少荒いところがあっても良いので、凄く良いところ、おもしろいところを確保してもらいたい。

 これだけでは効率化とまったく逆行しているので、クリエイターの自由度の部分は技術でカバーしていくという考え方で、今後サウンドはさらに技術者の支援が必要になっていくので、もっとも投資したいところだと思う。ただ、技術者が介入する際に注意する点もある。技術者は開発の仕切りを優位に決められる立場にあるので、つい合理性を優先して判断しがちだが、クリエイターの個性発揮の機会を奪ってしまうこともある。どうバランスを取るのかは難しい問題だが、極端になりすぎないようにバランスを取っていきたい。


ソニー・コンピュータエンタテインメント山口晋平氏: すべてのタイトルが適合するわけではないが、マネージャーはどこにお願いするか、細かい条件交渉、人月数の調整など、ゲームの表現とはあまり関係のない細かい交渉ごとを担当している。デザイナーは表現に対すること全部。どのような音が良いか、どういうユニークな特徴を出すかを担当する。予算の割り振りは、マネージャーとデザイナーで相談しながら進行していく。


カプコン信山斉之氏: 組織を運営する立場として、カプコンサウンドのコスト意識についてお話ししたい。カプコンサウンドは、新人、ベテラン、クリエイター、マネージャーまで年代職種関係なく、全員にコスト意識を持って貰っている。大きな理由は3つ。

 1つはカプコン開発全体で、「早くて安くてうまい」ことがキーワードになっている。うまいだけではダメで、そこに早くて安いという部分を付加していかなければならない。そうなると全員がコスト意識を持っていないと達成できない。2つ目は、組織運営にも関わるが、カプコンサウンドは、プロダクション方式、独立採算制になっている。自分たちのお金は自分たちで稼ぐという意識を持つこと。

 3つ目は一番重要。コストを身近に感じられるかは人の成長に大きな差があると考えている。現場に対して安くしろと言っているわけではなく、コストの最適化をしっかり考えて欲しいということを伝えている。最適化とは何なのかというと、お金の有効的な使い方と、後は効率的な使い方だと考えている。




■ 「北米のゲームオーディオへの対応」をテーマにしたパネルディスカッション

パネルディスカッションでは実に様々な意見が出された
ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオテクノロジー部サウンド&・ビデオグループシニアサウンドマネージャー 山口晋平氏
マーベラスエンターテインメント コンテンツ制作グループコンシューマチームマネージャー 高木謙一郎氏

 8人のプレゼンの後に実施されたパネルディスカッションでは、ハリウッドスタイルの北米市場のゲームオーディオを「黒船到来!」と見立て、それらに対して日本のメーカーはどのように取り組んでいくかが語られた。質疑応答ナシで、すべてガチという潔さ。会場は受講者も巻き込んで大いに盛り上がった。

カプコン瀧本氏: 北米のゲームがいまとても熱い。来航どころではない。ゲームオーディオという部分でもハリウッドスタイルというものがゲームにどんどん入ってきて、日本としてはどうするのか、我々は知ってるようでよく知らない。皆さんいろんなご経験をされているのでいろいろな意見が出てくるのではないかと思います。まずはワールドワイドに展開されているSCEというところで、きっかけ作りとして山口さんにお願いします。

SCE山口氏: SCEAという北米のグループ会社と仕事をすることが多くなっている。彼らは凄く言語を大事にする。サウンドデザイナーのミーティングでも、この作品はこういうことで、オーケストラはこうで、ダイアログはこうでということをすべて書面化する。書面化すると凄く時間が掛かるが、バーンと音を鳴らして「こういうことだよね?」とイメージの共有を図ろうとしても、音の感じ方がサウンドデザイナーによって違うためうまくいかない。北米では多国籍文化ということもあって、なるべく書面に残して仕事を進めているというのは凄く勉強になりました。

カプコン瀧本氏: これ凄いですよね。全部書面化するというのは凄まじい。どう思いますか?

バンダイナムコ中西氏: 我々も書面化は多少しますが、後付けが多い。そんなに細かくやっているというのはびっくり。

コーエーテクモ中條氏: アメリカの契約社会を端的に示したエピソードだと思うんですけど(笑)、ちょうど作曲家さんと話していて、北米で映画やゲームをやるときに、しっかり契約をしておかないと、作曲家さんが仕事の途中で逃げてしまうということもあるみたいです。

SCE山口氏: 補足しておくと、SCEAは事務所がLA、サンディエゴ、サンフランシスコの3拠点あって、それ以外に開発スタジオが方々に散らばっている。1,000キロとか離れているわけで、なので文書にしてメールでシェアするというのが日本より凄く進んでいるんだろうなという気がします。

セガ光吉氏: 僕は北米での開発経験はありませんが、日本以外でということで言うと、日本だと言わなくてもわかっているようなことが、海外ではちゃんと書面化しないと伝わらないことは結構ありました。近々だとオーディションで声優を指定したにも関わらず違う人が来ていたとか(笑)。

カプコン瀧本氏: 僕も向こうで仕事したときに常にコミュニケーションとってるという印象がありました。高橋さんは作曲家にイメージを伝えるときにどうやっていますか?

マーベラス高木氏: 基本的には枠だけ説明します。各クリエイターが自由にできるプレイルールはこっからここまでですということを伝えて、その枠内であれば何をされても構いませんという感じ。




■ 日本は状況、海外に心境に対して音を付ける!? 音楽はゲーム世界のどこから鳴っている?

バンダイナムコゲームス サウンド部マネージャー 中西哲一氏
コナミデジタルエンタテインメント スタジオサウンドセンターセンター長 鈴木英之氏

カプコン瀧本氏: 海外のゲームの要素についてほかに何かありますか?

コーエー中條氏: この間の打ち合わせの雑談で出てきた話ですが、「日本のゲームはずっと音楽が鳴り続けてないか?」という話があって、欧米と何が違うのかということを考えたら、日本のゲームは状況に対して音楽を付ける。海外のゲームは心情、心境に対して音楽を付ける。状況に対して音楽を付けると音楽を止めるところがなくなってしまう。心境に付けると、盛り上げたり、落ち着いたりを表現することができる。ここが大きな違いじゃないかなと。

SCE山口氏: プロジェクト名は明かせませんが、いま外国の作曲家さんと仕事を始めるための仕込みをやっていて、ゲームのプロトタイプと音を見せたところ、「このゲームはいつ静かになるんだ?」と聞くんです。「僕は静かなところを表現したいから、最高潮なところともっとも静かなシーンを教えて欲しい」というから、「一応、このゲーム、ずっと鳴っているんですけど……」と応えたら、「よくわからない」みたいなやりとりがありました。

コーエー中條氏: もうひとつの話題として、「じゃあ音楽はゲーム世界のどっから流れているの?」と言い出す人がいて、「じゃあ森の中のスピーカーから流れてるの?」とかそういう話になってしまうんですが、そんなこともあって「Fallout 3」や「Grand Theft Auto」はラジオから音が鳴るようなシステムを作って違和感のないように音楽を溶け込ませているのではないのかなと。

カプコン信山氏 北米の人たちはゲームに対する没入感を大事にしています。最近北米のオーディオデベロッパーにカプコンサウンドってどういう風に見えているかという質問をしたところ、そのときに言われたのは、「1つ1つのミュージックやSEやボイスのクオリティは高いが、入り込めないんだよね」と。その理由は何かと聞いたところ、「ダイアログがチープだ」と。どういうことかというと、カットシーンとインゲームのシーンが交互に展開されるが、カットシーンではあれだけシリアスな演技をしているのに、インゲームになると派手な台詞が多くて興ざめしてしまうと。

 彼らが一番大事にしているのはダイアログ、次にミュージック、武器の音、爆発音、その後にプレーヤーやモンスターの音が来る。カプコンはアクションゲームが多いので、プレーヤーやモンスターの声を凝って作っていたのですが、そうではなかったんだなということに気づかされました。

バンダイナムコ中西氏: この間も求められている音が日本と北米では違うんじゃないかという話になりましたね。中條さんの話だったかと思いますが、北米では物質がわかるような響きの音が好まれるのに対して、日本ではちょっと想像が入った“斬る音”みたいないかにも斬られているという音を好む。そんなんだったら、いっそのこと効果音もローカライズしちゃってもいいんじゃなかなと思いました。日本向けSE、海外向けSEみたいな。効率化と真逆なことを言うようですけど(笑)

コナミ鈴木氏: 北米のゲームの礎を気づいたのは彼らの持つ感覚だと思いますが、日本のゲームも少なからず影響を与えていると思います。自分たちがこうだと行く部分と、現地の感覚を取り入れないと理解して貰えないという部分の両方があるような気がして、それがなんなのかということを考えていく必要があるのではないか。

 たとえば弊社はスポーツゲームが得意ですが、このへんは凄くわかりやすくて彼らはゲームがやりたいんではなくて、スポーツの感覚に浸りたい。その世界観を引っ張ってこなければ北米ではまず受け入れられない。ただアクションゲームのように日本が得意としている分野は、日本人がこうだっていうところを望んでいるところもあるんじゃないかという気がして、その当たりを見極めて自分たちの強みというものを考えて行く必要があるのではないか。

セガ光吉氏: 日本のゲームサウンドが没入感がないかというとそんなことは無いと思う。アプローチが違うだけで、アプローチを変えれば解決する問題かも知れないし、向こうのゲームが日本のゲームの影響を受けているというのは僕もそう思うし、実際に自分の作品でそういう話も聞いた。彼らは我々のゲームをよく研究していて、その上で自分たちの文化だったり、表現したいものをプラスアルファして出しているということを考えると、僕らもさらにその上を行って模倣するとか。たぶん僕らの方がうまくできるんじゃないか(笑)。




■ 北米ユーザーが求める“没入感”とクリエイターとして持つべき“誇り”

スクウェア・エニックス 開発部サウンドグループサウンドデザイナー 矢島友宏氏
セガ 第1研究開発部サウンドセクションチーフサウンドデザイナー 光吉猛修氏
コーエーテクモゲームス ソフトウェア開発本部サウンド制作部マネージャー 中條謙自氏

カプコン瀧本氏: 日本の音作りのありかたにおいて、真似だけしてもしょうがないというところはありますよね(笑)。でも、向こうで認められるためにはどうすればいいのかということは考えなければいけない。どうなんでしょう? 矢島さん。

スクエニ矢島氏: もの凄い爆弾を投げつけられた気分です(笑)。海外ではこうだとか日本ではこうだとか当然あると思います。文化の違いもある。そういうことは大事なんですが、クリエイターとして思うのは欲張りであるべきだと思います。みんなが喜ぶものを作るのがクリエイティブかなと。海外ではダイアログ、リップシンク大事です。それぞれでカスタマイズするというのもいいかもしれない。そういうのも取り入れた上で、日本でも海外でも両方受けるものを目指していくべきなのかなと考えています。まとまってませんね(笑)

バンダイナムコ中西氏: 一度とにかく北米流なりの感覚を自分たちの中で取り込んで、納得した上で真似をするなり、一部を取り入れたり否定した上で外に出すということが必要なんじゃないか。自分が納得せずに誰かが欲しがるものを作るというのはちょっとありえないんじゃないかなと。

コーエー中條氏: そこら辺に関しては、GDCに参加して感じたことは、向こうのオーディオディレクター達が口を揃えて言うのは“イマーシブ、没入感”という言葉なんです。とにかくどんなオーディオ系セッションでも没入感ということが話題になる。それは彼らの出発点なんだろうなと、テクニックや表現手法は違えども、まず没入感があるかどうかがゲームで大事だというスタンスは我々が学ぶべきことかなと思います。これは真似ではなくて出発点ですね。

 それから現在私は英語を習っていて、英語の先生はゲームの素人なんですが、海外ではそういうことを言っているんだよということを伝えたら、「日本のゲームは好きだけど、日本のゲームってエスケープ(逃避)だよね」という話でした。小さな少年が大きな剣を振り回してありえない魔法を撃つ、みたいな(笑)。そういうことは彼らにとって没入感ではないんですね。むしろムキムキの傷だらけのオッサンがガンを撃ちまくる「ランボー」のような世界のほうが非現実的な気もしなくもないですが、あれは没入感みたいなんですよね。それは制作上のヒントになるのかなと思いました。

SCE山口氏: 皆さん凄い問題意識を持って、僕も持っていますが、ゲームって実はもの凄い輸出産業だと思いませんか? ほかのエンターテインメントと比較すると。だから割と誇りが持てる分野だと思います。音楽にたとえて言えば日本で活動しているアーティストが海外で数百万枚売れるかというとなかなか難しいと思います。それから考えるとゲームは、まだまだ我々が作った音を多くの人に聞いて貰えると思っているので、全然まとまっていませんが、誇りを持って行きたいよねと。

カプコン瀧本氏: 最後は励まし合うみたいな(笑)。今回はあえて北米にターゲットを絞って話をしましたが、まだマーケットはヨーロッパやアジアにも広がっています。ゲームというエンターテインメントは、本日出てきた“没入感”などのキーワードだけですべて語れるものではない。これから先僕らが目指すべきなのはもっと広いところにあるんじゃないか。自分たちがやってることに対して自信と誇りを持ってやっていきたい。

 今回は「提言」ということで、一言ぐらい上から目線で何か言ってやろうと思っていたんですけど(笑)、こうやって議論を続けていくだけでも凄く有意義なディスカッションができている。日本人はあまりディスカッションが得意ではないと思うのですが、世代、職種、立場を超えて多くの議論を積み重ねることが、色んな意識を共有する上で最高の近道なのではないかと思えました。今日は始まりの日なので、これからディスカッションを色んな形で続けていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。


(2010年 9月 3日)

[Reported by 中村聖司 ]