頓智ドット、「セカイカメラ」新ビジョン発表会開催

現実世界を冒険の場にする「セカイユウシャ」などARゲームを発表


7月30日 開催



頓智ドットCEOの井口尊仁氏
「セカイアプリ」第1弾「ばくはつカブーン!」。爆弾の設置と解除をAR世界で行なう
ソーシャルとロケーションとARを足した「SoLAR」がコンセプト

 頓智ドット株式会社は7月30日、AR(拡張現実)カメラアプリケーション「セカイカメラ」の新ビジョン発表会「Sekai Camera New Vision 2010」を、同社オフィスにて開催した。

 「セカイカメラ」は、携帯端末のカメラに写った画面上に、「エアタグ」と呼ばれる文字や映像、音声の情報が、吹き出しのように表示されるARアプリケーション。「エアタグ」の投稿も可能で、GPSによる位置情報をもとに、その場所に「エアタグ」が置かれる。他のユーザーが「セカイカメラ」でその場所を見ると、投稿された「エアタグ」が見えるという仕組みだ。iPhoneアプリとして誕生し、現在はAndroid向けにも配信。KDDIの携帯電話では「セカイカメラZOOM」として展開されている。iPhoneでは約120万ダウンロードを記録しているという。

 発表会では、頓智ドットCEOの井口尊仁氏がプレゼンテーションを行なった。井口氏は「セカイカメラ」の最新版であるバージョン2.4xで追加された機能について紹介し、その目玉機能として「セカイアプリ」を挙げた。

 「セカイアプリ」とは、「セカイカメラ」の機能を用いたARアプリケーションのことで、例として「セカイアプリ」第1弾として展開されている「ばくはつカブーン!」が紹介された。このアプリは「セカイカメラ」上で、「エアタグ」ではなく爆弾を置くというもの。置かれた爆弾は、他のユーザーがその場所にやってきて解除できるが、解除に失敗すると爆発してその場所に墓が置かれることになる。

 このほかにも、開発中の「セカイアプリ」が動画を交えながら紹介された。井口氏は「セカイカメラ」のコンセプトについて、「デジタルコンテンツは、どうしても画面の上で体験するものになる。『セカイアプリ』は現実空間で自然に遊ぶという体験を開拓したい」と述べ、ソーシャルとロケーションとARを足した「SoLAR」という造語で説明した。


開発中の「セカイアプリ」として、街中のあちこちに花を咲かせる「Flower The City」、道の上を泳ぐ魚を釣り上げる「Fish In The Streets」、AR世界でペットを連れて歩ける「Pets In AR」、Twitterのつぶやきに応じてハトがいろいろなコミュニケーションを見せるTwitterクライアント「Coo Koo」などが紹介された

アンビション経営戦略部部長の奥村大輔氏
AR世界で冒険に出ることは、すなわち現実世界では外で遊ぶゲーム

 そして「セカイアプリ」の目玉コンテンツとして、株式会社アンビションが開発している「セカイユウシャ」が紹介された。「セカイユウシャ」は、AR空間に現われるモンスターと戦うRPG。アンビション経営戦略部部長の奥村大輔氏は本作について、「リアルで冒険に出かけられるゲーム。勇者になりたい願望を持っている方にお届けしたい」と述べた。

 ゲームでは、プレーヤーは1人の勇者となって、現実空間に現われたモンスターを、他の勇者(プレーヤー)達と協力して倒す。モンスターには位置情報が設定されているので、プレーヤーがモンスターの元へ移動して戦うことになる。奥村氏は「子供の頃、家でゲームをやっていると、外で遊びなさいと言われた人も多いと思うが、『セカイユウシャ』は外に出て遊ぶゲームになっている」と説明した。

 モンスターと戦ってレベルを上げるだけでなく、日本中に散らばっているさまざまな要素を発見・攻略することも重要になる。例えば、「岐阜にある封印を解く」、「北海道が襲われているので助けに行く」、「隠されているお宝が見つかるとショップに新しい装備が現われる」など、まさに現実世界で冒険するかのような内容になっている。最終目的は、勇者たちが協力してこれらの要素をクリアし、魔王を一斉に攻撃して倒すこと。ちなみに魔王に出会うと「世界の半分をやろうと言われる。YESと答えるとちょっと面白いことになる」のだそうだ。

 位置情報を使った要素は他にもある。「セカイユウシャ」を開始すると、その時にいた場所が、勇者の出身地として登録される。活躍度合いによって、出身地ごとのMVP勇者を選出するという要素もあるという。また日本各地には、勇者が集まってコミュニケーションを取れる酒場が505カ所ある。さらにご当地アイテムとして、メダルが用意されている。こちらも505カ所にあり、全て集めると「いいことがあるかもしれない」という。

 今後の追加機能としては、「エアタグ」のような形で、ゲーム内アイテムを販売できる露天機能を搭載する。露天を出すにはゲーム内通貨で出店料を支払うが、この金額は現実世界の地価を反映したものにするという。またゲーム内で転職機能を用意して、転職する場所をハローワークの所在地に設定する、歩くとダメージを受ける毒の沼地を設定し、Googleマップと連携してそういった場所が見えるようにするといった機能も語られた。

 サービス開始時期は未定だが、近日中にα版を公開するとしている。ビジネスモデルは、プレイ料金が基本無料のアイテム課金制を採用予定。そのほか、勇者達が休む宿を現実の宿泊施設とリンクさせるなど、リアル店舗とのタイアップを進めたいとしている。


「セカイユウシャ」のデモプレイでは、会場に井口氏を模したモンスター「セカイのイグチ」が登場。タイアップの一例といったところだ。その店に行かないと買えない限定アイテムを置くショップをAR世界に用意するといったことも可能なようだ。Twitterとも連携し、他の勇者とコミュニケーションが取れる

【スクリーンショット】

 井口氏は「セカイアプリ」の今後について、「APIをさらに開発拡充し、サードパーティーにどんどん参画してもらう。今は『セカイカメラ』のメニューからアプリを起動する形だが、今後は『エアタグ』やノーティフィケーション(アプリへの通知)など、アクセスルートを拡張する」と説明。続けて同社の新たなスローガンとして「BEYOND REALITY」を掲げ、「仮想空間を現実空間に繋ぎたい。ただ繋ぐだけだとカーナビみたいになるので、もっと楽しい見せ方にする。ゲームは非常にわかりやすい体験の提案。遊び心で見え方も変わってくる」と述べた。

 なお「セカイアプリ」は現在のところiPhoneのみでの展開だが、Androidについても「当初からやるつもりで動いている。かなり早い時期に提供できる」という。また「セカイカメラ」本体のプラットフォーム展開についても、「今はまだお話しできないが、考えてはいる。iPhoneとAndroidに閉じることはない」としている。


(2010年 7月 30日)

[Reported by 石田賀津男]