Electronic Entertainment Expo 2010現地レポート

「グランツーリスモ5」、ついに破壊表現と横転表現の導入へ

立体視にも対応し、レンダリングエンジンも進化!


6月15~17日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



「GT5」のプロデューサ、山内一典氏
ソニーブース内の様子

■ 「GT5」では標準車とプレミアムカー、2タイプの車両がある

 E3会期中、SCEAのプライベートミーティングルームにて、アジアパシフィック地域向けの「『グランツーリスモ5』メディアブリーフィング」が行なわれた。

 プロデューサ、山内一典氏が、まず公開したのは「グランツーリスモ5(以下「GT5」)」に登場する車種ラインナップについてだ。「GT5」では、合計1,000台以上の自動車が登場するが、これらは大別して2つの種類に分けられるという。

 1つはスタンダードカー(標準車)で、「GT5」では約800台。もう1つはプレミアムカーで「GT5」では約200台があり、800+200=1,000というわけだ。

 スタンダードカーとプレミアムカーとの違いは、GT5のゲーム内における仕様の違いを意味している。いわゆるプレミアムカーとは入手が難しい車……というような意味ではなく、「高精度に再現された車種」といような意味になっている。

 具体的にどういう仕様の違いがあるかというと、以下のようになっている。
 

 高精度標準
内装の高精度再現

物理ダメージ

ボディへの傷表現

外装の変形やズレ


 高精度車は底面(裏面)の再現も精巧に行なわれており、横転までが再現されるという。裏を返すと、標準車は横転は再現されないということになる。つまり、標準車と高精度車とでは、車両物理シミュレーションの適応具合も変わってくると言うことになる。

 おそらく、高精度車は現実世界の実際の走行シーンにおいても横転するような競技車が多く占められると思われる。山内氏はよく「実在の車の安全性に疑いがかかるような表現は避けたい」と述べてきていたので、たとえばラリー競技車などは高精度車種に多く含まれると思われる。

 高精度車は、材質再現のシェーディングにも本物の質感にこだわっているそうで、セッション内では、アウディR8のセラミックカーボンブレーキの質感が、実車写真と「GT5」のスクリーンショットとでほとんど違って見えない様などが披露された。

 日産GT-Rのフロントバンパーの一部は「なんちゃってカーボン」の樹脂製だったりするわけだが、プレゼンテーションを見る限りでは、そのあたりの再現性もかなり良好であった。

 GT500競技車両の内装は、床に這うハーネスやワンオフ・コンソールパネルのケーブルまでが再現されており、山内氏にして「これはちょっとやり過ぎたかもしれません。次世代機向けのモデルになってしまったかな」とのこと。

 この他、高精度車には、ナスカーレーシング登場車種などがある。ナスカーもクラッシュ時は壮絶なものになるので、横転までが再現される高精度車になったと言うことなのだろう。

「高精度車と標準車を分けたのは、登場車種の多さと、自動車シミュレーションのダイナミックさの両方をアピールするのによい落としどころになったと思っています」(山内氏)。

 これは、「GT5」でいうところの、高精度車種の方に重きを置いて、登場車種数が少ない、競合タイトルよりも優れた点としてアピールしたいのだろう。







■ 新コース搭載、フォトモードも進化

 「GT5」の製品版では、「GT5」プロローグから新たに6種類のコースが追加されている。

 スペイン・マドリッド市街コース、イタリア・トスカーナ郊外コース、イタリア・ローマ市街コース、イギリス・TOP GEAR特設コース、フランス・ル・マン・サルトコース、ドイツ・ニュルブルクリンク24時間レースコースがそれで、それぞれに山内氏の思い入れがあるようだ。

 マドリッドとローマの市街コースは現実世界の忠実の再現にこだわり、開発期間は2年にも及んだのだとか。ローマは「GT3」以来の復活という意味合いもあり気合いが入っているようだ。トスカーナコースは、GTシリーズ収録コースでは数少ないオープンスペースコース。

 TOP GEAR特設コースはイギリスの自動車番組の特設コースで走行コースに対抗ラインが存在することから大事故が起きやすくスリリングなコースなのだとか。

 サルトコース、ニュルブルクリンク24時間レースコースは、コースのカラーリングや道の落書きなども忠実に再現しているが、2009年時の最新仕様になっているのだという。つまり、「GT5」内で確認できた落書きなどは現実世界にもある……ということだ。

トスカーナ
マドリード
ローマ
ニュルブルクリンク
トップギア:テストトラック

 GTシリーズではお馴染みのモードとなった写真モード(フォトモード)も、「GT5」製品版では順当な進化を見せている。

 新たなロケーションとして京都の祇園、イタリア・アビオ、オーストリアの飛行機格納庫などが追加され、現地の環境音、現地のリアルな天候の変化までを楽しめるようになっている。なお、フォトモードで撮影できる写真は800万画素相当のJPGとして出力できるという。





■ 「GT5」は立体視と顔面トラッキングに対応する

 ネット機能の新要素としては、「マイラウンジ」と呼ばれる「GT5」各ユーザー専用のポータルページがアナウンスされた。「GT5」では、この機能により、フレンド達とフリー走行を楽しんだり、会話を楽しんだりすることができるような、ソーシャルネットワーキングの機能を身につけたと言うことだ。


立体視でのプレイの様子。ステアリングの上付近にあるのがPlayStation Eye

 新テクノロジー面では、顔面トラッキングの機能と立体視の機能のサポートが大きくアピールされた。業界的には、立体視と顔面トラッキングの両サポートは「GT5」が業界初だとのことだ。

 顔面トラッキングとは、プレイ中のプレーヤーの顔面の位置と方向を検出してその視線の先をディスプレイにレンダリングして表示させる機能のこと。これにはPS3向け純正周辺機器のWebカメラ「PlayStation Eye」が必要になる。この顔面トラッキングは、コクピット内視点で最大の効果を発揮する。首を動かすとステアリングから見えるコンソールパネルの見え方が変わるし、デッドヒート時には、横を向けば、横に並んだ車の姿を見ることができる。ただ、これは実際にブースでプレイして体験してみたが、正面から視線がずれてしまい、まっすぐ走るのがとたんに困難になるため、意外に遊びにくかった。もう少し首の向きや位置の検出は制限してしまい、側面などの表現には、左右の追加ディスプレイにレンダリングするようにした「フォルツァ3」式、多画面レンダリングをした方が、没入感は上がるし、自然となる気がする。

 この他、レンダリング面の新フィーチャーとしては以下のような新フィーチャーが追加されている。

(1) 昼夜、天候の表現
(2) 車両の上向き、下向きライトの表現
(3 )煙へのライティング効果
(4) 衝突時のスパーク表現
(5) 道路上に残った多様なゴミパーツへのインタラクト

 (2)はR3ボタンの押し込みでオンオフが順次切り替わるという。(3)、(4)はパーティクル表現に関係したもので、特に(3)は視覚効果として美しい。

 (3)は車両が巻き上げた粉塵や、排気ガスの煙などに対して、ライティングが的確に再現されることを指している。本来、こうした表現はパーティクルを利用するので、実体は平面であるため、ライティングの適用が難しい。「GT5」では、これを擬似的なボリュメトリックオブジェクトとして、ライティングを施すようにしているようだ。デモ映像でも、自車が巻き上げた粉塵をこれまた自車のテールランプが赤く照らしている……というような表現が見られた。

 2D(非立体視)では、1080p/60fpsを維持することを心がけるが、立体視時(3D)は720p/60fpsとなるとのこと。この720p/60fpsとは、左右がそれぞれ60fpsではなく、左目用30fps、右目用30fpsを意味している。3DTVでの立体視は120Hz表示が基本となるので、左右それぞれの目には同一フレームを2回ずつ表示させ(通称「二度フリ」して)120Hz表示に対応させることになる。


発売日は2010年11月を予定! 8月のGAMES CONVENTIONではさらに他の新要素についても山内氏が言及していくとのこと

 「GT5」の発売は、2010年11月が予定されている。PS3究極のレーシング体験はすぐそこまで来ている!



【「GT5」ムービー】
プレスカンファレンスで公開された映像を収録したムービー

 

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(2010年 6月 18日)

[Reported by トライゼット西川善司]