「スペシャルフォース」の世界最強2チームが秋葉原で激突!
国内無敵のチーム「Racpy」はホームで勝利を得られたのか?

5月5日 開催

会場:ベルサール秋葉原

入場料:無料

 

 4月29日よりベルサール秋葉原にて開催されている「秋葉原PCゲームフェスタ」。会期7日目となった5月5日は、「『スペシャルフォース』スーパーエキシビジョン」と題する国際マッチが開催された。

 

 「スペシャルフォース(SF)」は、NHN Japanがゲームポータルサイト「ハンゲーム」にてサービスを提供しているオンラインFPS。今回「秋葉原PCゲームフェスタ」の会場で実現した国際マッチは、先に台湾で行なわれた同作の世界選手権にて優勝、準優勝を飾った世界最強2チームの対決という構図だ。

 その準優勝チームというのが、日本の「SF」ユーザーなら誰もが知る国内最強チーム「Racpy」だ。リーダー「Yuti」選手が率いるRacpyには、日本代表として国際大会に出場した経験豊富な強者が揃う。これに対するチームは、台湾・台北を本拠とするプロゲーマーチーム「Wayi-SPIDER」。現在、世界チャンピオンの座にある最強チームだ。

 飾りっけなしの一発勝負で行なわれたこの国際マッチには、会場をほぼ埋める数のファンが観戦と応援のために訪れた。日本代表チームであるRacpyは、世界大会の決勝で敗れた相手に対し、ホームアドバンテージを発揮して勝利を飾れるだろうか? その模様をお伝えしよう。

【会場風景】
秋葉原で実現した国際マッチを観戦するために集まった人々の数は、300名ほどにもなる。着席可能な席は早々に埋まり、立ち見客が大半を占めた。注目の中、ステージでは世界チャンピオンの力を証明する熱戦が繰り広げられた



■ 日本のアマ最強チームは、台湾のプロ最強チームに勝てるのか?

一同に会した世界トップ2チーム「Racpy」と「Wayi-SPIDER」
試合前、抱負を述べる「Wayi-SPIDER」のリーダーPolo選手
「Racpy」のリーダーYuti選手も勝ちに行く気持ちを述べた

 今回実現した2チームの対戦カードは、国内のFPSシーンではおそらく、最もレベルが高い。日本代表として出場するチーム「Racpy」は昨年、台湾で行なわれた「SF」の世界大会にて準優勝の座を勝ち取ったチームであり、その対戦相手として来日した台湾代表の「Wayi-SPIDER」は、その世界大会で優勝したチームである。秋葉原でその決勝カードが再現され、世界1、2位のチームが対決するわけだ。

 「Racpy」は国内で無敵の強さを誇るチームでもある。昨年、国内で行なわれた、世界大会に向けての予選会でも、「Racpy」は余裕の強さで2番手以下のチームを退け、日本代表権を獲得している(関連記事)。そして臨んだ世界大会でも、中国、台湾(第2チーム)、アメリカといった強豪を退けて決勝進出を果たしている通り、世界レベルの実力を証明した。

 対する「Wayi-SPIDER」は台湾の大手ゲームパブリッシャーWayiが擁するプロチームであり、職業としてゲームに取り組む集団だ。世界大会でチャンピオンに輝いた実績があり、それも「Racpy」を倒した結果だというのだから、プロではないアマチュアチームの「Racpy」としてはこの場で一泡吹かせてやりたい、という強い気持ちが出てきても不思議ではない。

 メインステージ上の進行はシンプルに、この両チームの対決だけをクローズアップして行なわれた。飾りっけなしの一発勝負だ。多くの日本の「SF」ファンが見守るという環境を考えれば、「Racpy」にとっては心強いホームゲームということになる。

 ゲームルールは、「SF」の公式クラン戦に則り、「爆破モード」にて7ラウンドハーフ制のマッチを行ない、ブルーチーム(攻撃側)、レッドチーム(守備側)を交代して前後半戦を戦う。総取得ラウンド数でどちらかが8を超えた時点で、勝敗が決する。今回はこのフォーマットで3戦を行ない、先に2勝したほうが勝者となる決勝戦用ルールだ。

 「Racpy」の活躍があれば会場は大きな拍手。「Wayi-SPIDER」がラウンドを取得すればどよめき。そのような雰囲気の中で、果たしてアマチュアチームである「Racpy」は、プロチームである「Wayi-SPIDER」を撃破できただろうか。

ゲームルールは3連戦の2勝先取制。先攻・後攻の選択権はジャンケンで決められた


■ 大声の喝入れ、常に声を出して戦う「Wayi-SPIDER」。スキルでは負けない「Racpy」

試合中の会場。「Racpy」の良いシーンでは拍手が起きた
「Wayi-SPIDER」の選手は試合中、常に大声で連絡を取り合う

 第1戦の使用マップは、通路など閉鎖空間の多い「サテライト」。ここでは「Racpy」が前半戦ブルーチームを選択し、守備側のプレイから入る形となった。基本的にこのようなマップでは接近戦が多くなるため、反射と射撃能力の差が結果に現われやすくなる。また一般論として、単純な撃ち合いでは攻撃側よりも守備側のほうが多くの場面で有利だ。

 しかしファーストラウンドを制したのは、レッドチームをプレイした「Wayi-SPIDER」だった。「Wayi-SPIDER」の基本戦術は「常に数的優位を作ること」に見えた。ルート別に分散した後、数で負けているようなら時間を稼ぐ、じらしてタイミングをずらすといった動きで仲間と連携する。それを可能とするため、「Wayi-SPIDER」の選手は常に大声で状況を報告しあった。会場の歓声よりも大きな声で、途切れることがない。

 しかし「Racpy」も負けてはいない。撃ち合いの要所ではそれぞれのプレーヤーが高い技量を見せ、相手チームに対応する間を与えずヘッドショットで戦力の削減を図っていく。これには「Wayi-SPIDER」側にもいささか混乱した動きが見られ、前半戦は4-3と「Wayi-SPIDER」が僅差でリードするに留まった。

 しかし後半戦、防衛側に回った「Wayi-SPIDER」は、持ち前のチーム力を遺憾なく発揮した。「Racpy」側のラッシュを的確に各個撃破し、爆弾設置の隙すら与えない。爆弾設置までいったラウンドでは「Racpy」が勝利したものの、反撃はそれだけだった。結果、第1戦はトータルで8-4というラウンド取得数で「Wayi-SPIDER」が貫禄勝ちを見せた。

 第2戦のマップは「Racpy」が得意とするマップ、「デザートキャンプ」。ロングレンジの撃ち合いが多くなるマップで、精密射撃の能力を持つ選手にもってこいの場面だ。しかし、「Wayi-SPIDER」はそれだけで勝てるゲームではないことを証明してくれた。

 中でも印象的だったのは「Racpy」が攻撃側チームで、爆弾設置までいったシーン。残る戦力は「Racpy」2人、「Wayi-SPIDER」1人と数的にも優位。爆弾設置場所につながるルートは3つある。「Racpy」の2人は、爆弾設置後即座に2つのルートを押さえに行き、残り1人の相手の頭を抑えようとしていた。

 しかし、口頭で綿密な情報共有ができている「Wayi-SPIDER」側は、どのルートが危険か分かっていた。そして、監視されていないルートを巧妙に使い、爆弾の場所まで到達。「Racpy」の2人がもはや無意味なルートを監視している間、その背後で悠々と爆弾を解除してみせたのだ。決定的な力の差が現われたラウンドだった。こうして、第2戦も8-4というスコアで「Wayi-SPIDER」が勝利。これで決着がついた。

第2戦まで激しくぶつかりあった両チーム。連携力で上回った「Wayi-SPIDER」に軍配が上がった



第3戦「トレイン」での典型的な状況。4人が主攻撃、1人が裏を固める。崩れた際のフォローも速かった
防衛側ではそれほど大きな動きをせず、堅実に守っていた

 第2戦で勝敗が決定してしまった今回の対決だが、第3戦も行なわれた。マップは「Racpy」が苦手とする「トレイン」。細かい障害物が多く、動きの多い試合になりやすいマップだ。

 「Racpy」は最後の力を振り絞り、ブルーチーム側で挑んだファーストラウンドを勝利。しかしすぐに動きを修正した「Wayi-SPIDER」がその後は圧倒した。そして結果的には8-1という大差で「Wayi-SPIDER」勝利している。少々、その内容について見てみよう。

 攻撃側チームにとり、大別して2つの進行ルートと1つの予備ルートがある「トレイン」では、「Wayi-SPIDER」のチーム内の役割分担が非常にわかりやすく示された。まず、最も動き回るのがチームリーダーであるPolo選手。FPSのチームでは一番うまい選手がリーダーを勤めることが多いが、こういう選手は同時に、「ひとりで何とかする」状況を任されることも多い。そこで、Polo選手はチームが2手に分かれる際、かなりの割合でWiz選手とともに裏手のルートを担当していた。

 こうして、メインの進行ルートでは3人、4人のメンバーが揃って戦えることになる。裏手を任されるPolo、Wizの2選手は、射撃を一瞬だけ見せて引っ込んだり、タイミングをずらして顔を出すといった按配で、別ルート上に「Racpy」の選手を拘束。こうしてメイン側の数的優位を確保。仮にPolo、Wiz選手のどちらかが倒された場合、すぐさまいずれかの選手が該当ルートの確保に回るという形で、フォロー体制も完璧だった。

 あるラウンドでは、4人が倒され、裏ルートのフォローに回ったPolo選手だけが残されるという状況もあった。「Racpy」側は3人が残っている。このとき、Polo選手は臆することなく前進し、的確に1対1に持ち込んでひとり、ふたりとスナイパーライフルで仕留め、最後のひとりは接近戦に持ち込んで、素早く動き回りながらナイフで撃破し、ラウンドを勝利。後に話を聞いてわかったことだが、Polo選手は「相手の位置はだいたい分かっていた」という。これも大声で情報共有を続けたことの成果だろう。

 こうして、世界最強2チームによる国際マッチは、現チャンピオン「Wayi-SPIDER」の勝利に終わった。敗北した「Racpy」のチームリーダー、Yuki選手は捲土重来を期し、「国内にはもう敵はいません。少なくとも今年いっぱいはこのメンバーで続けて、また世界大会で彼らと対戦したい」と語っていた。

勝利した「Wayi-SPIDER」には、サードウェーブの代表取締役社長の尾崎健介氏より、記念の盾が授与された。また、両チームの対戦を記念して両チームリーダーがユニフォームを交換した



■ プロゲーマーに接近。「Wayi-SPIDER」選手インタビュー

「Wayi-SPIDER」の選手達。ホテルに戻り、リラックスした状態でインタビューに答えてくれた
Polo選手が単独で3人を撃破しラウンドを勝利したシーンの初期状態。ここから1対1の連続に持ち込んで勝つ
最後は接近戦に持ち込んで撃破
秋葉に来るのがとても楽しみだったという選手達。観光も楽しめただろうか

 大会終了後、弊誌では勝利チーム「Wayi-SPIDER」のリーダーであるPolo選手にインタビューを行なった。プロゲーマーという職業に愛着をもち、日々努力を続けるPolo選手の姿勢には、少なからず刺激を受ける。その内容を最後にご紹介して、本稿を終えよう。

──今回、秋葉原という場所で対戦した感想はいかがですか?

Polo選手:日本に来てこのようなイベントに参加することをとても楽しみにしていました。特に秋葉原はゲームやハードウェアのメッカですので、皆ここに来て楽しんでいます。

──対戦した「Racpy」の強さはどう感じましたか?

Polo選手:「Racpy」は去年の世界大会の準優勝チームですので、非常に強敵であると認識しています。今回来る前にも、「Racpy」を想定した作戦を考え、練習をして準備してきました。

──試合を見ていて、チームの役割分担がとてもハッキリしていると思いました。実際はどのようなシステムになっているのでしょう?

Polo選手:バスケットボールのように、前衛、中盤、後衛といった役割分担をしています。具体的には、Bolt選手とRay選手は前線に先行して敵の状況を探るフォワードの役割で、Liz選手は2番手でその後ろを固めます。Wiz選手と私Poloは後衛で、逆ルートを守ったり、背後をとるような動きを担当しています。

──Polo選手はひとりで戦うことが多かったですね。特に最後に3対1となったラウンドで勝利したとき、どのように考えて動いたのですか?

Polo選手:あのような状況では、常に冷静さが重要です。相手のほうが人数が多いということは、油断が生じる可能性が高いということです。私には、敵の数と位置がだいたい分かっていましたので、落ち着いて対処することができました。

──大声を出しあってプレイするところも印象的でした。どんなことを言い合っているのでしょうか?

Polo選手:声を出して、敵の位置や動きを全員で共有しています。これは、「SF」のようなゲームでの基本中の基本です。

──プロゲーマーとして、皆さん一緒に練習されているんですよね。どのような生活なのでしょうか?

Polo選手:はい。一般のプロスポーツ選手と同じように、会社の管理下でずっと一緒に練習しています。女性のLiz選手だけは別ですが、生活の場も同じです。専属のコーチがいて、ランニングなどのフィジカルトレーニング、動体視力、反射神経向上のための訓練を行ない、全体で1日10時間ほどの練習をしています。ただ、激しい運動はしません。手を怪我したら大事ですからね(笑)。

──プロ選手であることのメリットとはなんでしょうか?

Polo選手:まず、得意なゲームでプロであること自体が嬉しいことです。そして、常にライバルとの競争がありますから、常にチャレンジし、自分を鍛えるために努力を続ける必要があり、そのために成長できることに魅力を感じています。そして、このようなチームメンバーとともに苦労と成果を分かち合えることも大きな喜びです。

──プロゲーマーとしての現役を終えたあとのライフプランはあるのでしょうか?

Polo選手:いろいろな道があると思います。台湾には5つの大きなプロチームがあり、「SF」ともうひとつの台湾のゲームで活動しています。しかしプロリーグはまだできたばかりで、コーチや審判といった人材、イベントの企画者などが不足していますので、様々な形で関わり続けることができると思います。また、ゲーム経験やスキルを活かしてゲーム会社に入り、企画などの仕事をやるという人もいると思います。

──その前にまた日本に来て、「Racpy」と戦うことになるかもしれませんね。

Polo選手:そうですね。今回、日本に来ることができて、とても楽しい経験ができました。もちろん、また日本で戦えるチャンスが得られたら素晴らしいことです。もっと「Racpy」の方々と交流したいとも考えていますので、そうなることを楽しみにしています。

──ありがとうございました。


(2010年 5月 6日)

[Reported by 佐藤カフジ ]