東芝、液晶テレビ「REGZA」春夏モデルを発表

「何でも、綺麗で、低遅延」でゲーマーに訴求


5月上旬より 順次発売予定



 株式会社東芝は、液晶テレビ「REGZA(レグザ)」ブランドの2010年上期モデルを4月14日に発表した。今回発表されたのは、「Z1」55/47/42/37型、「RE1」55/47/42/37/32/26/22/19型、「HE1」26/22/19型の計3シリーズ15モデル(色違いも含めると26モデル)で、「RE1」42型を皮切りに5月上旬より順次発売される。

 今回発表されたモデルは「LED REGZA」と銘打たれ、全機種でLEDバックライト搭載のIPS液晶パネルを採用している。それぞれの詳細な仕様は僚誌AV Watchをご覧いただくとして、本稿では同社の従来製品よりもさらに強化されたゲーム向けの機能を紹介する。

 まず最初に宣言しておくべきこととして、今回発表されたゲーム向けの機能は、「Z1」、「RE1」、「HE1」の全モデルに搭載される。これまでゲーム向けの機能は上位機種の「ZX」、「Z」シリーズのみに搭載されていたが、これらは現行機種では37型以上の製品しかない。より小さなサイズの機種でもゲーム向けの機能が利用できることは、ゲームユーザーにとってはかなり嬉しい点といえるだろう。




■ あらゆる接続の映像を低遅延で高画質化

「ゲームダイレクト2」の概要

 最近の液晶テレビでは、入力された映像を高画質化する処理がいくつも用意されている。これらの処理には僅かながら時間がかかるため、映像信号が入力されてから画面に表示されるまでに時間差が発生する。これはテレビ番組やDVDなど、ただ見るだけのコンテンツでは問題にならないが、ゲームの場合はゲーム機から送られた映像がやや遅れてテレビに表示されることになるため、処理に時間がかかるほどゲームの操作と画面表示にズレが生じる。

 「REGZA」の従来機種に搭載されていたゲーム向け機能「ゲームダイレクト」では、高画質化処理を一部省略することで処理時間を減らし、映像表示の遅延を少なくしていた。しかし今回発表された機種に搭載される「ゲームダイレクト2」では、高画質化処理を生かしたまま、遅延を少なくすることに成功した「ダイレクトモード2」を用意した。

 具体的には大きく2つの処理が加わっている。1つは入力映像を拡大して画面全体に表示するスケーラー。480pや720pといった解像度の入力では、従来はドットバイドットで黒枠付き表示にされていたが、これを画面いっぱいに表示できる。もう1つは映像を高解像度化する超解像処理で、従来は処理に時間がかかるため「ゲームダイレクト」からは外されていた。このほか、映像の合間に補間フレームを生成して、映像をより滑らかに見せる倍速処理が従来機種同様に行なわれる。

 これらの処理を加えた上で「ダイレクトモード2」では、遅延時間を約19ミリ秒(約1.2フレーム)に抑えている(映像処理にかかる時間で、パネルによる遅延を除く)。「ダイレクトモード2」未使用時には約33.3ミリ秒(約2フレーム)とされており、1フレーム近い遅延短縮をしながらも、かなりの高画質化処理を行なっている。

 この「ダイレクトモード2」は、HDMI接続だけでなく、D端子やS端子、PC接続にも対応する。なおD端子はD5入力(1080p)にも対応する。


Xbox 360「DARKSIDERS ~審判の時~」を720p出力したところ。従来機種でプレイする際「ダイレクトモード」をオンにすると、スケーラーが省略されるので画面が小さくなり、黒枠ありの表示になる
新機種では「ダイレクトモード」をオンにしてもスケーラーが生きているので拡大表示を保つWiiは480pの出力となるため、従来機種さらに黒枠が大きくなる。新機種ではこれも拡大表示できる



■ PSP接続専用の拡大モードを搭載

 PSPはD端子出力ケーブルを使ってテレビに出力できるが、D2出力が720×480ドットなのに対して、PSPのゲーム画面の解像度は480×272ドットなので、黒枠がついた映像が出力されている。今回の「REGZA」には、この黒枠を埋めて拡大表示するPSP専用の表示モード「ポータブルズーム」が搭載されている。

 拡大モードは4倍と3倍の2種類が用意されている。4倍の場合、PSPの出力映像の上下1ラインずつをカットして1,920×1,080ドットに拡大(そのまま4倍すると、272×4=1,088となり、表示できない部分が発生するため)し、画面全体に表示する。3倍の場合は1,440×816ドットに拡大するため、映像はカットされないが周囲に黒枠が残った状態の表示となる。

 映像を4倍にまで拡大して大きなテレビに映すと、そのままでは映像がかなり荒く見えてしまう。「REGZA」では「ポータブルズーム」においても超解像などの高画質処理が加えられ、滑らかな表示を低遅延で実現している。


左が「ポータブルズーム」4倍、右は3倍。このモードでも「ダイレクトモード2」をオンにして低遅延に表示できる従来機種(右)で「ダイレクトモード」をオンにすると、スケーラー処理が省かれ画面中央にドットバイドット表示となっていた

PSP「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER」の体験版で、従来機種(左)と新機種(右)の画質を比較した。キャラクターの鼻の部分や、マップの斜め部分などが滑らかに補間されているのがわかる



■ 小型モデルでゲームユーザーのコア層に訴求できる「REGZA」

「RE1」19型(カッパーローズ)にも「ゲームダイレクト2」を搭載。こちらは6月上旬発売予定

 ゲーム関連機能としてはこのほか、映像の高画質処理をあえて加えず、昔の2Dゲームの“ドット感”を損なわず鮮明な映像で表示する「レトロゲームファイン」を、「Z1」シリーズにのみ搭載する。D1/D2/S端子にも対応し、16:9の画面全体に拡大表示する「フル」と、4:3のアスペクト比を維持したまま拡大する「ノーマル」の切り替えも可能になった。

 色々と説明してきたが、今回の「REGZA」におけるゲーム機能を一言でまとめると、「あらゆるゲームを低遅延で高画質化する」ということだ。前述のとおり、高画質化と低遅延はトレードオフの存在であるにも関わらず、それらを非常に高いレベルで両立させている。

 もう1つ注目すべき点は、これらのゲーム向け機能が19型から始まる小型モデルにも搭載されることだ。ゲームユーザーの中心は20代前後の若年層だが、その層に「ゲームモードが欲しければ37型以上の上位機種を選べ」というのはターゲットがずれている。今回、小型モデルにもゲームモードが搭載されたことで、学生や新社会人の1人暮らしや、子供部屋でのパーソナルユースなど、ゲームユーザーのコア層に強く訴求できる商品となったのは間違いないだろう。


(2010年 4月 14日)

[Reported by 石田賀津男]