NVIDIA、新GPUフラッグシップモデル「GeForce GTX 480」を発表
圧倒的なジオメトリ性能でDirectX 11ゲームを完全サポート!
会場の様子 |
NVIDIAは3月27日、新GPUファミリーのフラッグシップモデル「GeForce GTX 480」および「GeForce GTX 470」を発表した。これらはFermiアーキテクチャーを採用したGPUとしては初となる製品で、NVIDIAのGPUとして初めてDirectX 11に完全対応する。
情報公開の前日に行なわれた記者説明会では、NVIDIAの日本代表兼米国本社バイスプレジデントのスティーブ・ファーニー・ハウ氏による挨拶にはじまり、エヌビディア・ジャパンのセールス本部長である斉藤道雄氏、コンテンツビジネスデベロップメントディレクターのショーン・ボナム氏らによる詳細説明が行なわれた。
まず価格についてまとめておくと、ハイエンドモデルとなる「GeForce GTX 480」は北米基準で499ドル、その廉価版となる「GeForce GTX 470」は349ドルとなることがそれぞれNVIDIAにより想定されている(実際の価格は製品を出荷する各ビデオカードメーカーにより異なる)。気になる発売時期については「日本国内では4月中旬頃より店頭販売がなされる」との見込みが説明された。
これまで各所で話題に登ってきたNVIDIAの新GPU「Geforce GTX 400」シリーズ。記者説明会で公開された各種情報から、その機能や性能について、まとめて本稿でお伝えしておこう。
■ DirectX 9世代のゲームは2~3倍速! DirectX 11世代のゲームを圧倒的パフォーマンスで実行する「GeForce GTX 480」
NVIDIA日本代表兼米国本社バイスプレジデントのスティーブ・ファーニー・ハウ氏 |
「GeForce GTX 480」搭載ビデオカードのイメージ |
記者説明会では、まずNVIDIAの日本代表兼米国本社副社長のスティーブ・ファーニー・ハウ氏が登壇し、「Fermiコアを使った世界最高峰の製品を紹介することを嬉しく思います。できればもう少し早く発売したかったが、製品化に時間が掛かってしまった。しかしその分満足いく製品に仕上がっている」と挨拶。
続いて登壇した斉藤道雄氏とショーン・ボナム氏は、4つのカテゴリーに分けて「GeForce GTX 480」の魅力を紹介した。その4つとは「処理速度」、「映像表現力」、「3D立体視」、「物理処理」だ。
それに先立って「GeForce GTX 480」および「GTX 470」の基本的なスペックをご紹介しておきたい。「GTX 480」では1世代前のハイエンドモデル「GeForce 285」に比べ、トランジスタ数にして約14億から約30憶へとおよそ倍のスケールアップを果たしている。これに伴いCUDAコアの数やキャッシュメモリの量などが強化されているほか、DirectX 11世代のテクノロジーに対応するジオメトリエンジンを搭載する。
具体的なCUDAコアの数は「GTX 480」で480基、「GTX 470」で448基。Fermiアーキテクチャでは最大512基のCUDAコアを搭載可能とされているが、今回出荷される2製品の実装ではコア数がやや抑えられており、今後さらなる上位版が登場することが予想される。
その他メモリのスペックや動作クロックで「GTX 480」が最上位版、「GTX 470」がそれに継ぐバージョンと位置づけられている。詳しい内容については下図を参照していただきたいが、いずれのGPUも消費電力が200Wを超えており、強力な電源を持つハイエンドゲーミングPC向けのソリューションと考えて間違いないだろう。
こういったスケールアップにより、「GTX 480」ではDirectX 9世代のゲームを1.5倍から2倍のパフォーマンスで実行できるという。しかし、そもそもアーキテクチャ自体が旧世代とは異なる物になっているため、ゲームでの実際のパフォーマンスを考える際に、DirectX 9世代ゲームの単純な速度比較にはあまり意味がない。真の魅力は、DirectX 11世代のテクノロジーへの万全の対応とそのパフォーマンスにある。
続いて、斉藤道雄氏とショーン・ボナム氏が説明した、「GTX 480」が持つ4つの魅力についてご紹介していこう。
「GeForce GTX 480」 | 「GeForce GTX 470」 |
・現時点で世界最速のゲーミングパフォーマンスを実現
エヌビディア・ジャパン セールス本部長である斉藤道雄氏 |
前世代の「GTX 285」との比較。多くのゲームで1.5倍~2倍程度のパフォーマンスアップとなっている |
「GTX 480」の魅力のひとつは、その実行パフォーマンスだ。まず、DirectX 9世代のゲームでは、前世代のハイエンドGPU「GTX 285」に比べて1.5倍~2倍のパフォーマンスアップを実現。特に「Crysis Warhead」のようにGPU負荷の高いゲームで高い伸び率を示しており、純粋にGPUの処理能力が向上したことが伺える。
しかし、それ以上に「GTX 480」の高い能力を示すのがDirectX 11対応ゲームだ。こちらは「GTX 285」がDirectX 11を用いたゲームを実行できないため、AMDのRadeon HD 5870との同世代での比較となる。斎藤氏が提示したスライドでは全てのゲームで「GTX 480」がより高いパフォーマンスを達成できることが示された。
特に、テッセレーションを活用したベンチマークソフト「Unigine Heaven」や、最新FPS「Metro 2033」で大きな差をつけていることが読み取れる。これは、Fermiアーキテクチャで新規に搭載したジオメトリーエンジンの能力が大きく影響しているという。
また「GTX 480」ではアンチエイリアシングの処理効率も向上し、従来の4xAAとほぼ同じパフォーマンスコストで8xAAを利用できるという。斎藤氏が提示したスライドでは、「GTX 285」で4xAAを利用した際のパフォーマンス比率を基準とし、「GTX 480」で8xAAを利用する再、大きなロスなくゲームが実行できることが示されている。
また「GTX 480」では、SLI利用時のパフォーマンスの伸びも良い。「S.T.A.L.K.E.R: Call of Pripyat」、「Unigine Heaven」、「Dirt 2」といったDirectX 11対応タイトルで軒並み1.8倍~2.1倍のパフォーマンス向上が見られている。
DirectX 11世代のゲームを高速に実行できることはもちろん、8xAAのパフォーマンスコスト低下、SLIの効率向上など「GTX 480」のメリットは多岐に渡る |
・DirectX 11のテッセレーションを高効率で実行。リアルタイムレイトレーシングも視野に
エヌビディア・ジャパン コンテンツビジネスデベロップメントディレクターのショーン・ボナム氏 |
テッセレーションによる効果 |
3Dモデルの頂点情報をGPU側で向上させるテッセレーションはDirectX 11の目玉のひとつで、3Dゲームの表現力を次の段階へ引き上げると目されている機能だ。従来は高詳細の3Dモデルを表示する際、大量の頂点データと法線マップによりそれを実現していたが、データ転送に必要なCPUとGPU間のバス幅がボトルネックとなり、これ以上のディティル向上は難しい段階にきていた。
そこでテッセレーションを活用すれば、基本的な形状を表す少々の頂点データと、表面の凹凸を表すディスプレースメントマップにより、従来手法より遥かに高詳細の3Dモデルを効率的に、しかもスケーラブルに表示することができる。「GTX 480」の真骨頂は、これを高効率で実行できることだ。
その秘密は、Fermiアーキテクチャで新搭載された「Plymorph Engine」と呼ばれるジオメトリ処理専用エンジンにある。これはCUDAコアとは別に置かれるテッセレーションのための機能で、複数コアを搭載し並列処理が可能。「GTX 285」比で最大8倍のジオメトリ処理能力を実現するという。
ショーン・ボナム氏が披露した「Unigine Engine」でのデモでは、テッセレーション機能を有効にした状態でも常時30fps以上、多くのシーンで60fps以上のパフォーマンスで動作する様子を見ることができた。
またボナム氏によれば、「GTX 480」ではCUDAの処理能力も拡張されているため、モーションブラー、被写界深度表現、ソフトシャドウ、ディファードシェーディングといったエフェクト表現も高効率で実行できるという。
そして極めつけはリアルタイムのレイトレーシングがついに視野に入ってきたことだ。会場で披露されたデモでは、CUDAとOptiXを用いたアプリケーションで、極めてリアリスティックなレイトレーシング映像を秒間3フレーム程度でレンダリングする様子をみることができた。まだ全面的にゲームに使うことは難しいが、従来のレンダリング手法に組み合わせてよりリアルなシェーディングを実現するアプローチは、既に実用可能な状態にあるようだ。
並列処理可能なジオメトリエンジンを搭載したことにより、テッセレーションを高速に実行できる。ライバルの「Radeon HD 5870」に対し、この点で明確なアドバンテージを見せている |
「Metro 2033」ではテッセレーションを用いてカクツキを感じない3D表現を実現。DirectX 9でのレンダリングに比べて明確な画質の差を感じられる |
「GTX 480」の演算能力とCUDA+OptiXにより、リアルタイムレイトレーシングのゲーム利用が現実味を帯びてきた |
・処理性能を生かし、「NVIDIA 3D Vision」による立体視を3画面に拡張
最新ドライバーで3画面を利用した3D立体視をサポートする |
次に紹介されたのが「NVIDIA 3D Vision」による3D立体視のさらなる拡張だ。NVIDIAでは最近のドライバーアップデートにより、3画面マルチモニターでの立体視をサポート。この機能は「GTX 200」シリーズおよび「GTX 400」シリーズでのSLIで利用できるという。
これについては実際のゲームを使ったデモンストレーションも行われた。題材となったのは、なんと本邦初公開という開発中のタイトル「ロストプラネット2」(カプコン)。前作PC版と同じく「NVIDIA 3D Vision」への対応を前提として製作されているそうで、3画面表示にも対応する。
筆者も実際に「ロストプラネット2」の3画面立体視を体験してみた。1画面での立体視に比べ、横方向の視野が幅広く確保される3画面では、ゲーム空間の奥行き、広がりがより強く感じられる。視点はあくまで中央画面に釘付けなのだが、横目に入ってくる風景の立体情報が、まるでその場にいるかのような空間定位を与えてくれるのだ。
3画面での3D立体視を利用するためにはSLI(2枚刺し)環境が必須となるため少々敷居は高いが、この迫力はPCゲーマーなら是非いちどは体験して欲しいと思えるほど。ヘビーゲーマーなら実際に導入を考える人も多くなりそうだ。現時点で発売済みのタイトルとしては「METRO 2033」(THQ)、「Battlefield Bad Company 2」(Electronic Arts)、「Just Cause 2」(Eidos)が3画面立体視に対応しているという。
NVIDIAではこの他、3D立体視関連のコンテンツを充実させるべく各方面に働きかけているようで、今回の発表では動画共有サイトYouTubeでの3Dコンテンツに「NVIDIA 3D Vision」が対応することが紹介された。より手軽に3Dコンテンツが利用できるようになれば、ますます立体視環境が一般的なものになっていくだろう。
会場で披露された「ロストプラネット2」による3画面3D立体視のデモ。視野角が大幅に広がった状態でオブジェクトの奥行きが強調され、いまだかつてない迫力を感じることができた |
・「GTX 285」比で2.5倍の物理処理能力。100万個の破片をリアルタイム処理!
100万個の破片が物理処理され、しかも現実的なフレームレートを達成する |
4つの魅力のうち最後に紹介されたのが物理処理のスケールアップについて。「GTX 480」では引き続きPhysXのCUDAアクセラレーションをサポートするが、「GTX 285」比で2.5倍の処理速度向上を実現している。
これを説明するため会場では、高速フーリエ変換を用いた水面シミュレーション、PCゲーム「Dark Void」における噴煙のシミュレーションといったものが紹介されたが、いずれも「GTX 285」比で2倍~2.5倍程度のパフォーマンス向上が見られることが紹介されている。
また圧巻だったのが破壊シミュレーションのデモ。物理オブジェクトで構成された橋を破壊する際、処理能力に応じてスケーラブルに破片の数をコントロールするものだが、ここでは最大で100万個の破片が飛び散る様子がデモンストレーションされた。
100万個の破片のそれぞれはきちんと3Dの形状を持ち、地形や他の破片と物理的なインタラクションが行なわれる。その上で、このデモでは30fps近辺の現実的なフレームレートで画面が描画されている。
従来は高詳細な映像を表示することと、大量の物理を処理することがGPUコアの処理時間的にトレードオフの関係にもあったが、DirectX 11世代のゲームではグラフィックスの高詳細化に独立したテッセレーターを用いることができるため、必ずしも高詳細な映像=高いGPUコア負荷とはならない。そうなればより多くの演算能力を物理に使えることとなるため、「GTX 480」が強力なジオメトリエンジンを備えることは、さらにゲームの次世代化を促進しそうだ。
CUDAコアそのものの数的向上、メモリキャッシュの拡大と効率化により、「GTX 285」比で2.5倍のPhysX処理効率を達成。ますますゲームの「物理化」に拍車がかかりそうだ |
http://www.nvidia.co.jp/
(2010年 3月 27日)