IGDA日本、第6回iPhone/iPod touchゲームセミナーを開催

バンダイナムコゲームスのクリエイターが登壇
「のびのびBOY」を始め4本の最新情報を公開


1月15日 開催

会場:アップルストア銀座



 国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)は1月15日、第6回iPhone/iPod Touch Game Devシリーズセミナーをアップルストア銀座で開催した。今回のテーマは「バンダイナムコゲームスナイト」で、株式会社バンダイナムコゲームスから、「塊魂」や「のびのびBOY」で知られる高橋慶太氏らが登壇し、新作を含む4本の最新情報が紹介された。本セミナーはこれまでメイキングやビジネス的な内容が多かったが、今回は新作ソフトのお披露目ということもあって、終始和やかなムードで、お祭り的な展開が印象的だった。




■ 音楽とレースの融合「7th deadly beats」

シンセサイザーで楽曲を演奏するユードーの南雲怜生氏
プロデューサーとして本作を統括した山田大輔氏
南雲怜生氏は作曲に加えて、実際の開発を担当した

 セミナーはiPhoneアプリで実績があり、第1回のセミナーにも登壇した、株式会社ユードー代表の南雲怜生氏によるシンセサイザーの生演奏で幕を開けた。続いて紹介された第1弾のタイトルは、そのユードーとバンダイナムコゲームスのコラボで開発された「7th deadly beats」だった。本作は音楽ゲームとレースゲームの融合的な内容で、バンダイナムコゲームスでは初のiPhone/iPod touch向けオリジナルタイトルだ。

 ゲームミュージックコンポーザー「dj nagureo」としても知られ、これまで数々の音楽ゲーム開発に携わってきたが、最近は社長業に忙しいという南雲氏。しかし本作では「14年ぶりに2カ月間かけて、音楽に専念した」と語った。タイトルにはキリスト教の「7つの大罪」の意味があり、それに合わせて7曲を書き下ろしたという。

 ゲームの舞台となるのは、新ウイルス「7th deadly Virus」の大流行に襲われた2035年の地球だ。プレーヤーは第2次ウイルス対策チームの一員として、ウイルスの拡大を防ぐのが目的。メイン画面はレースゲームのスタイルで、中央の自機を指で左右にスワイプ(画面上で指を滑らせる)して動かしながら、コース上のアイテムを回収していく。通常はベース音が流れており、自機がアイテムとぶつかった時に、タイミングよく画面をタップすると、メロディが流れる仕組みだ。音楽ゲームに世界観やストーリーを加えることで、より深みのある内容を目指しているという。

 プロデューサーの山田大輔氏は、「iPhone/iPod touch向けということで、音楽にシフトしたコンテンツを目指した」という。バンダイナムコゲームスはゲーム作りに慣れているため、普通に作っていたらゲームっぽくなってしまうため、あえてゲームではないものを目指したところ、最終的にいいバランスのものになると思ったそうだ。南雲氏も「ゲームミュージックコンポーザーはあらゆる音楽に対応できる器用さが求められるが、今作ではゲーム向けということは考えずに、完成度の高い楽曲作りを目指した」と述べた。配信は1月下旬~2月頃の予定で、現在インタラクティブ要素のあるティザームービーが115円で先行配信されている。


【7th deadly Virus】
ゲームは数名のキャラクターから1人を選び、スタートする。7本あるルートを左右に移動しながら、アイテムをタップして取得していく展開は、どこか映画「ミクロの決死圏」といった雰囲気だ。アイテムを取ると流れるメロディは体が奏でる音楽だろうか

【ムービー】



■ おなじみ「太鼓の達人」もiPhoneアプリで登場

「和田どん」のぬいぐるみを抱えて登壇した下岡聡吉氏

 続いてのゲームは「太鼓の達人 For iPhone/iPod touch」で、こちらもバンダイナムコゲームスとユードーのコラボによる開発だ。プロデューサーの下岡聡吉氏は、開発の理由に「元が音楽プレーヤーなので、イヤフォンの装着率が高い」、「タッチによる操作が元となるゲームのプレイ感にマッチする」、「ハードの特性が、短時間のプレイを繰り返し行なう点に適している」という3点をあげた。

 しかし超定番タイトルを移植する上でのプレッシャーは相当なものがあったという。とはいえ、ユードーとの最初の打ち合わせで、社内のスタッフが2台のiPhoneを両手で操作し、音楽ゲームをクリアしていく様を見て、「彼らなら大丈夫だ」と不安は吹き飛んだそうだ。その後オリジナル版の「太鼓の達人」開発チームから協力も得て、開発が進んでいった。

 ゲームはおなじみの「太鼓の達人」の移植版で、収録楽曲は5曲。右から音符が流れてくるので、タイミングよく画面中央の太鼓をタップしていくというものだ。デモプレイで感じられたのは、「太鼓の達人」らしく大量のキャラクターやオブジェクトが画面に表示され、細かくアニメーションして、楽しさを表現しているところ。キャラクターの動きがよく見えるように、太鼓を半透明に表示することもできる。南雲氏は「絵や曲のクオリティを落とさずに、容量を圧縮するのが大変」と苦労を語っていた。

 ゲームの難易度は4段階で、クリアごとに上位の難易度が開放されていく仕組みだ。iPhoneアプリということでネットランキング機能があり、Twitterと連動して、最高得点を取ると自動でトゥイート(つぶやき)してくれる機能もある。楽曲の追加配信についても、時期や形式は未定ながら対応予定だという。ちなみにユードーでは全員が何らかの楽器ができ、ドラムを叩けるプログラマーも2名いるという。そのため譜面の表示を始めとした、気持ちよさの演出や調整が上手くいったと自信を見せていた。こちらも配信は1月下旬~2月頃を予定している。

 なお本作はiPhoneアプリには珍しく、日本国内限定配信となる。下岡氏によると、これは「太鼓の達人」の海外における知名度の問題と、版権曲を使用する上での権利関係の問題からだという。もっともアジア地域など、タイトルの知名度の高い市場向けには、現地の楽曲を使用するなどして、地域に合わせた対応をしていきたいと抱負が述べられた。


【太鼓の達人 For iPhone/iPod touch】
ゲームモードは3種類で、収録曲は「クラシックメドレー(ロック編)」、「タッチ」、「キセキ」、「夏祭り」、「残酷な天使のテーゼ」だ。それぞれ難易度は4種類あり、得点が上がるにつれて、後ろで踊るキャラクターの数が増えていく



■ 「Ace Combat Xi」では原点回帰の新モードが追加

プランナー出身で、長く「Ace Combat」シリーズの開発に携わってきた加藤正規氏

 3作目は昨年12月より配信が始まっているフライトシューティング「Ace Combat Xi」で、追加ミッション「AIR COMBAT CHALLENGE」の配信が発表された。「AIR COMBAT」は1993年に旧ナムコからリリースされた業務用ゲームで、制限時間以内にできるだけ多くの敵機を撃墜していき、ミッションルートを進めていく内容。詳細は伏せられたが、本追加ミッションでも同様のものになりそうだ。本体を傾けて操作するというコントロール部分も、原点に戻って、より快適に遊べるように調整が加えられているという。

 登壇したのはシリーズの全作品を手がけてきたプロデューサーの加藤正規氏。App Storeのユーザーレビューは毎日チェックしており、賛辞から酷評まで大変励みになっていると述べた。もっとも当初はカジュアルユーザーを想定していたが、実際は「ガッツンガッツン」に遊びたいという、コアユーザーが多かったのが予想外だったという。それだけに、本追加ミッションは、短時間で骨太のゲームプレイが楽しめるものになりそうだ。こちらも数週間以内のアップデートが予定されている。

 加藤氏は「初めてオファーを受けたときは、PSP版の『X』も大変だったのに、iPhone版なんて絶対に無理だ」と思ったという。画面が小さく、そのままでは敵機が見づらくなることと、ボタン類が存在しないUIであること、などが主な理由だ。それでもiPhoneの加速度センサーとタッチセンサーを使って、何か新しい遊びが提供できるかもしれないと考え、この2点に徹底的にこだわったと話した。その上で「短時間でテンポよく遊べて、毎回異なる展開が楽しめる」ものが心がけられた。

 実際の開発では、メンバー全員がiPhoneの少ないメモリ上で、いかに「Xi」を作り上げるか、大変苦労したという。プログラマーは少ないメモリをいかに効率的に使うか。デザイナーは「X」のグラフィックデータをもとに、いかに少ない容量で見栄えの良いものにするか。そしてプランナーは、いかに仕様変更をしないようにするかが問われた。「途中で仕様変更が入ると、メモリ配分のやり直しが必要になり、開発期間がどんどん延びてしまう」(加藤氏談)。一方で開発を通して、シリーズの魅力を再発見したというスタッフも多く、目に見えない効果がもたらされたと述べた。今後は機体の追加配信に加えて、通信機能を生かしたアップデートも検討中だという。


【AIR COMBAT CHALLENGEモード】
ミッションはM1~M8と、最高ランクのエキストラがあり、それぞれ難易度が3段階で選べる印象。制限時間以内に敵機を撃墜していき、内容に応じてミサイルが補充されていく展開もあるようだ。通信機能に対応したアップデートも企画されているとか



■ 「のびのびBOY」はビジネスマン向け?

長年のMacユーザーで、アップルストアで講演できて嬉しいという高橋慶太氏
高橋氏が現在係わっている、ノッティンガム市の公園全景

 最後に登壇した高橋慶太氏は、持ち前のゆるい語り口で、「のびのびBOY」のiPhone版についてプレゼンテーションを始めた。そもそも「のびのびBOY」自体が一筋縄ではいかないエンターテイメントソフトだが、iPhone版はそれに輪をかけてラジカル。高橋氏の話もあちこちに脱線し、会場の笑いを誘っていた。ちなみに高橋氏は現在、イギリスのノッティンガム市で公園を作るプロジェクトに係わっているという。地元の小学生らとも交流し、言葉を超えたふれあいがあったそうだ。

 話を「のびのびBOY」に戻すと、プレイステーション 3版はさまざまな操作を通して「BOY」の体を伸ばしていくというゲームだ。BOYを伸ばした距離はインターネットを通して全世界で集計され、その距離に応じてBOYは太陽系の彼方へと進んでいく。一方で宇宙には「GIRL」もいて、BOYに合わせてGIRLも伸びていくのだ。いわば全世界のゲーマーを巻き込んだインタラクティブ・アートであり、ゲームの皮を被った壮大なネタ、もとい実験だと言ってもいいだろう。高橋氏も「ゲームの体裁をとっている必要はない、楽しければいい」と、何度も念を押していた。

 iPhone版はこの「伸ばす」アクションが、実にさまざまな行為によって行なえる予定だ。BOYをいじる、BOYに字を書くなどから、GPSに対応し、iPhoneを持ち歩いた距離によってもBOYを伸ばせる。高橋氏も「指先で伸ばすと数センチだけど、毎日通勤で持ち歩くと、それだけで数十キロ伸びる」と語っていた。このほかカメラでバックに風景を写しながら遊んだり、スクリーンショットを撮ってメールする機能もあるという。「iPhoneの機能を全て使う」がコンセプトで、iPodに入れた音楽を聴きながら遊ぶこともできる。

 このほかブラウザ機能とも連動し、ブックマークにはTwitter、Flicker、Facebookがあらかじめ入れられているという。さらにFacebookアプリの開発にも意欲を見せた。今後は電卓やToDoリストなども盛り込みたいそうで、高橋氏も「ターゲットはビジネスマンで、第2のOSにしたい」と抱負を語り、会場は笑いで答えていた。配信は2月~3月を予定している。


【のびのびBOY】
画面をタップするなどしてBOYを伸ばせるほか、GPSやカメラ機能などにも対応している。画面下のボタンアイコンは順次追加予定で、電卓などの機能も持たせたいとか。伸びた距離に応じて出現するハートを食べさせれば「GIRL」の距離も伸びる仕組みだ



 次回のセミナーは2月22日で、iPhoneアプリのニュースサイト「AppBank」のスタッフが登壇し、iPhoneアプリ市場の現状について語られる予定。


NOBY NOBY BOY TM & (C) 2010 NAMCO BANDAI Games Inc.

(2010年 1月 18日)

[Reported by 小野憲史]