世界の始まりは、千百年前に起きた「封神戦争」だった――――。

　「神の国」、それは歴史上にも記されていない遥か昔、天空の果てに浮かぶ巨大な浮遊大陸だった。「エデン」と呼ばれたその楽園で、人々は3人の女神が操る「運命」のもと、高度な文明と魔術を授けられて暮らしていた。やがて文明の発展とともに、運命の三女神が支配する力にも限界が見えはじめた頃、探究心と好奇心に満ち、自らの可能性を信じるようになった人間たちは、神の支配する運命の檻の中で生きることに次第に満足しなくなっていた。

　最初は人々の心に芽生えた小さな希望に過ぎなかったが、いつしか希望は期待へと変わり、ついには渇望へと膨らみはじめた――――。

　運命の三女神が司る永遠の「秩序」から逃れ、真の「自由」を手に入れるために、人々は本能の全てを駆使して神への反逆を決意する。さらには闇の世界に棲む「暗黒の魔族」の協力を受けるという禁忌を犯してまでも、「運命の三女神」に戦いを挑んだのである。

　壮絶な戦いの末に三女神を倒した人々と魔族の王は、溶岩の湧き上がる火山の奥深くへ女神と共にその身を投じ、自らと共にその力を封印した。これで運命の三女神は全て封印され、人類と魔族、神々の長きにわたる「封神戦争」は終わりを告げた。

　神々との戦いが終わった後、人々はこの戦いを―「封神戦争」―と呼び、後の世に語り継がれ、伝説となった。人々が勝利し、真の自由を手に入れた後……壮絶な戦いで見る影もなく破壊された「エデン」は、運命の三女神の力を失い、天空から落ちてしまう。

　生き残った人々は、戦火により無残に崩壊した神の国「エデン」を捨て、何にも支配されることのない新しい世界へと降り立った。ここから、新しい歴史が始まった――――――。

　「封神戦争」から数百年の月日が流れ、人々による世界の統治が始まった。人々の統治後も争いは絶えず、世界を揺るがすほどの大戦が繰り返された。世界を統べる王は、優秀な冒険者たちを集めて戦乱の鎮圧を依頼した。見事に戦いを制したこの10 人は後に「十字星の英雄」と呼ばれ人々に崇められる存在となった。

　「十字星の英雄」の奇跡が起きてからというもの、人々は「冒険者」たちを次第に「奇跡を起こす者」として捉えるようになっていく。彼らはもともと、1人だったり数人の小さなギルドで行動していたが、次第に大規模な「連盟」という体制へと変化していった。「連盟」は淘汰と合併が繰り返され、ついには2大勢力「クリムゾン・ルビー」と「アルカディア・ブルー」だけになり、両者の間の抗争が激化していく。

　しかしある日、遠く北の地方から奇妙な本を携えたひとりの冒険者が訪れ、どちらの連盟の門を叩くか迷っていた。この冒険者の出現が「世界」にとって大きな意味をもたらすことになろうとは、まだ誰もが……本人さえも気がついていない。