LGエレクトロニクスジャパン、スルーモード搭載のゲーマー向けPCモニターを発表
「ゼロディレイ」を謳う抜群のゲーミング性能でシェア獲得を狙う

【W2363V】

9月中旬より順次出荷予定

価格:オープンプライス(予想市場価格3万円台)


W2363V-WF

 LGエレクトロクスジャパン株式会社は、9月1日、高速応答性能に特化したゲーマー向けの液晶モニター「W2363V」を発表した。本製品はLGエレクトロニクスの液晶モニターとしては初の「スルーモード」を搭載し、応答速度2ms(GtG)の高レスポンスパネルを採用することで、激しいアクションゲームなどに適した表示環境を提供する製品だ。

 

 8月27日に行なわれたプレス向けの製品発表会では、LGエレクトロニクスジャパンのセールススタッフより本製品の紹介が行なわれ、本製品が提供する低遅延のゲーミング環境のほか、マルチメディアモニターとしても活用できる各種機能についての情報が提供された。

 現時点の情報では、本製品「W2363V」は9月中旬頃の出荷開始を予定しており、価格は3万円台になる模様だ。「スルーモード」を搭載するフルHDの液晶モニターとしては低価格に位置し、多くのゲーマーにとって見逃せない製品となるのは間違いない。本稿では発表会の模様を交えつつ、本製品「W2363V」の機能・性能についてご紹介しよう。



■ ゲーマー熱望の「スルーモード」搭載のフルHD液晶モニターが3万円台で登場

コンシューマーエレクトロニクスセールスグループ課長の道山涼司氏と、マーケティング担当の宇佐美夕佳氏
道山氏がOSDの操作方法を解説し、その中で「スルーモード」への切り替えを実演した
スルーモード利用時は必要最低限の映像処理だけが行なわれ、最速のタイミングで映像が表示される。LGではこの機能を「ゼロディレイ」と呼称している
映像端子はマルチメディアモニターとして最低限必要なものを一通り装備。PC、ゲーム機の同時接続を難なくこなせる

 プレス向け発表会では、LGエレクトロニクスジャパンのマーケティングおよびセールス部門のスタッフによる本製品「W2363V」の紹介が行なわれた。マーケティング担当の宇佐美夕佳氏、およびコンシューマーエレクトロニクスセールスグループ課長の道山涼司氏は、本製品を「ゲーマー向けのモニター」と明確に定義した上で、様々な機能について解説を加えてくれた。

 まずは基本スペックをご紹介しよう。画面サイズは23インチで、アスペクト比16:9のフルHD解像度、ドットピッチ0.265mmのTNパネルを装備。視野角は垂直160度、水平170度。輝度は300cd/m2。コントラスト比はDFC(デジタルファインコントラスト)機能ON時で70,000:1、OFF時で1,000:1となっている。

 映像入力端子はHDMIが2系統のほか、DVI-D、D-Sub 15pin、コンポーネント、S-Video、コンポジットが各1系統ずつあり、PCとゲーム機の同時接続に不足のない端子数を備えている。音声入力端子はステレオミニジャックを1系統装備。音声出力端子としてはヘッドフォン端子が1つだけで、HDMIからの音声信号をスルーアウトするデジタル出力端子は備えていない。

 基本スペックだけ見るとごく普通のマルチメディアモニターに見える本製品だが、最大の特徴はゲーマー熱望の「スルーモード」を搭載することにある。スルーモードとは、パネルに映像を表示する際に必要となる各種の映像処理を文字通り「スルー」して、映像信号そのままの映像を最速のタイミングで表示する機能だ。

 一般的な液晶モニターでは、映像の解像度やアスペクト比の調整、あるいは映像ソース由来のノイズ低減などの処理のため、数フレーム分のバッファを取ってから表示する製品が多い。このため映像信号を受けてから実際に表示するまでに数十ミリ秒の遅延が発生する。特にこの傾向は「高性能」なマルチメディアモニターであるほど顕著だ。遅延が大きくなると、ゲームでは問題が発生する。特に大きな遅延を持つモニターでは、操作と表示の間に体感できるほどの遅れが発生し、正確なコントロールが難しくなるのだ。

 当然のことながら、ゲーマーにとってこれは大きな問題だ。そこで多くのゲーマーは、液晶モニターが持つ機能のうち、スルーモードの有無に注目する。スルーモードをONにした状態では映像信号がほぼダイレクトにパネル上に表示されることになるため、遅延は最小限だ。これによりゲーマーの求める高レスポンスの表示環境が約束されることになる。

 現時点でスルーモードを搭載するマルチメディアモニターとしてはナナオの「FlexScan HD2452」、「FX2431」、三菱の「MDT242WG」などが挙げられるが、いずれも実売価格で10万円前後の価格帯となっており、一般的なモニターより高めの価格帯に位置する。それに対して、本製品「W2363V」は予想市場価格3万円台とされており、ゲーマー向きのモニターとして優れたコストパフォーマンスを持っている。

 また、本製品ではグレー・トゥ・グレーで2msの応答速度を持つTNパネルを採用している。ハイグレードの液晶モニター製品では残像感を低減するオーバードライブ回路を搭載するものもあるが、本製品では高速な応答速度を持つパネルを採用することで残像感を最小限に抑えるという方法を取っているようだ。

 この点については、会場に展示されていた実機での印象を元に述べるが、デモ映像(プレイステーション 3の『リッジレーサー 7』)を見る限りではほとんど残像感を感じることがなく、ゲーミングモニタとして良い感触を得ることができた。応答性については実際にゲームをプレイして手触りを確認したいところだが、今回それは適わなかったので、いずれ機会を見つけて詳しくお伝えしたいと思う。


「W2363V」の外観。会場ではHDMI入力されたフルHDのゲーム映像がデモンストレーションされていた。スルーモード利用時にも特にコントラストの低下など画質の変化は感じられず、残像感の少なさも好印象だった。ただ、スルーモード利用時にネイティブ解像度以外の映像を入力した際、どのような表示になるかは未確認。筆者が触った範囲では、スルーモード時にアスペクト比等の映像調整メニューが使用できなくなったことを確認した。この点は他社のスルーモード搭載液晶モニターと同様のように見える


■ ゲーマー向けの機能を必要十分なレベルで装備。
 「The Tower of AION」推奨を得てオンラインゲーマー層へ訴求

PIP機能仕様時の表示状態
PIP機能はコンポーネント/RGB、HDMI1/HDMI2以外の全ての組み合わせで利用できる
サウンド出力端子はアナログ1系統のみ
「トゥルーライト」機能。サウンドにあわせて白いLEDが光る

 このほか、本製品にはマルチメディアモニターとして必要な機能がサポートされている。ひとつは、PIP(Picture In Picture)機能。複数の映像ソースを接続している際に、画面全体にメインの映像を表示しつつ、子画面に別ソースの映像を表示する機能だ。本製品の特徴として、親画面、子画面の組み合わせがかなり自由になっているほか、音声ソースの切り替えも可能。組み合わせについては右の画像を参照していただきたい。

 また、ゲーマー向きの特徴として、音声入力されたオーディオ信号をコンテンツにあわせてダイナミックにイコライズする「SRS WOW HD」機能を搭載する。これによる音声出力は、画面左側にあるステレオジャックから、スピーカーあるいはヘッドフォンで利用できる。

 デザイン上の特色としては、音声の入力レベルに応じて画面下部のLEDライトが光る「トゥルーライト機能」を搭載する。これは音声に視覚効果を加えることで、純粋に気分を盛り上げるためのものだ。コンテンツに応じて映画、ゲーム、音楽の3モードを選択して光り具合を調整できるほか、目障りな場合はOFFにすることもできる。

 

 こういったゲーマー向けの機能性とデザインを持つ本製品は、LGエレクトロニクスジャパンとしても力を入れて販売していきたい意向のようだ。本製品はそのことを反映してNCジャパンのMMORPG最新作「The Tower of AION」の推奨モニターとしてタイアップしており、初期出荷分の1,000台には特典として「AION」マウスパッドやカードケースなどのスペシャルグッズが同梱される。

 コンシューマーエレクトロニクスセールスグループ課長の道山涼司氏によれば、PCオンラインゲームを楽しむユーザー層から、コンシューマーゲーム機でゲームを楽しむユーザー層まで幅広く本製品を訴求していきたい意向で、ゲーム大会などのイベントなどでも積極的に本製品を提供していきたいと話していた。

 「W2363V」の特徴をまとめよう。まず、ゲーマーが熱望する「スルーモード」を搭載し、ゲーミングモニターとして必要十分な機能を備えながら予想市場価格3万円台と、低価格を実現している点が本製品の存在意義そのものだといえる。それに加えて、応答速度2ms秒という高レスポンスの液晶パネルでさらなる低遅延、残像感の少なさを実現しており、その上で、入力端子はHDMI×2、DVI-D、コンポーネントと、一般的なマルチメディアモニター用途も満足できる機能を有している。

 「W2363V」はなんでもありのリッチな製品ではないが、ゲーム用途に特化したマルチメディアモニターとして必要十分な機能を備え、手に入れやすい価格帯で市場に供給されることは、多くのゲーマーにとって貴重な選択肢を提供することになるだろう。特にアクションゲーム、レースゲーム、リズムゲームなど、反応速度が重要なゲームを日々プレイされている方ならば、注目して損はない製品だ。


(2009年 9月 1日)

[Reported by 佐藤カフジ]