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「Detroit Become Human」実機プレイによるプレゼンを開催、その模様をレポート

エグゼクティブプロデューサーGuillaume氏へのミニインタビューも収録

9月21日~24日 開催

会場:幕張メッセ

 東京ゲームショウ2017にて、「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」や「BEYOND: Two Souls」を手がけたフランスの開発スタジオ、Quantic Dreamの最新作「Detroit Become Human」のメディア向けプレゼンテーションが行なわれた。

 デモプレイを交えながらゲームの紹介および解説をして頂いたのは、エグゼクティブプロデューサーを務めるGuillaume de Fondaumiere氏。また、デモプレイの後にはGuillaume氏への質疑応答も行なわれたので、そちらの模様も合わせてお伝えしよう。

プレーヤーの選択によって変化する物語。主人公の1人マーカスの平和主義なプレイを実演

 「Detroit Become Human」は、人型アンドロイドの普及が一般化した近未来、アメリカはミシガン州にあるデトロイトの街が舞台となる。

 人間と同等の作業をこなせる便利な「道具」としてさまざまな労働を担い、社会に不可欠な存在となったアンドロイドだが、それが生み出した豊かさや便利さの一方で、職を奪われた人々による反アンドロイド感情が高まるなど、社会には新たな軋轢も生まれている。

 そんななか、自らの意志を持つかのように行動しはじめるアンドロイドが現われ始めていた。失踪するもの、感情を持ちはじめるもの。彼らは「変異体」と呼ばれた。

 本作の主人公は3人のアンドロイドだ。「コナー」はそうした変異体となったアンドロイドを追うハンターであり、特別な目的のために制作されたモデルのプロトタイプであり、変異体がなぜそのような挙動をするのかを調査するために製造されている。

 なお、女性型のカーラはこの物語の源と言える存在であり、2012年に公開した「"Kara" by Quantic Dream」という映像作品に登場している。

  もう1人の主人公であるマーカスは、自らの所有者から逃亡し、その後に変異体のグループに身を寄せたアンドロイドだ。その変異体のグループは、人類に対して「アンドロイドは物ではなく生命である」というメッセージを送ろうとしている。

 この日は、そんなマーカスが変異体グループのノースという女性アンドロイドと共に、店で売られているアンドロイドの解放を目指すというシーンのプレイが行なわれた。このシーン自体は、今年のE3でも同じように実演プレイが行なわれた場面なので、本作の情報を追っているゲームファンの人ならご存じかもしれない。

 だが、本作の最大の特徴は、たくさんの選択が物語中にあり、どれを選ぶかはプレーヤーにゆだねられていること、そしてその選択によってその後の物語が変化し、その変化は他の主人公にまで影響を及ぼしていくというところにある。

 この日はこの場面を2度プレイして、その特徴を見せるとともに、そしてこれまで見せたことのない“より平和的な選択”を選んだプレイが披露された。

 雪の降りしきる夜のデトロイトの街。マンホールから現われたマーカスとノース。そのままアンドロイドショップの前に来るも、店内には警報システムがあり、監視カメラも設置されている。R2ボタンを押して周囲のインタラクト(操作)できるものを探っていき、まずは警報システムを無効化することに成功。続いて監視カメラの動力をたどっていき、工事中のアンドロイドが作業している配管からその動力を切る。

 これでいよいよアンドロイドショップに侵入できる……と思いきや、周辺を飛び回っていたドローンが2人の姿を見つけ、その通知を受けたパトカーがやってきてしまった。逃げるか、一般人のふりをするか、選択肢を選ぶわずかな時間のカウントダウンが発生する。このときはGuillaume氏は逃げる行動を選択したのだが、その結果、このシーンの目的は失敗という結果になった。だが、物語が終わるわけではなく、その結果を踏まえての物語は続いていく。

警報装置に監視カメラを止め、いよいよアンドロイドショップに侵入というところで、ドローンに見つかってしまった! 駆けつけてきたパトカーから、このときは逃げる選択をして、目的は失敗となってしまった

 ここでプレイを途中まで巻き戻して、警報装置と監視カメラを排除したところから再プレイ。アンドロイドならではのシミュレーション能力で、ドローンの航路を探り、それに対してどの場所からアプローチすると排除できるのかを予測していく。その結果、工事現場の足場の2階から飛びつけば破壊できることがわかり、それを実行。ドローンを見事に破壊した。

 次に周辺の使えそうなトラックを探す。それに乗り込み、アクセルを踏み込んでいく。アンドロイドショップのガラスを突き破り、ダイナミックに中へと侵入した。これは他のセキュリティを全て排除したからこその大胆なアプローチだが、それらの選択もプレーヤーの自由であり、セキュリティを切らないままにトラックで特攻すれば、それはそれでそれなりの結果があり、やはり物語が続いていく。

 アンドロイドショップにいたアンドロイドに触れて、次々と意識を与えていくマーカス。ショップにいたアンドロイド全員に意識を与え終わったところで、その前に立ち、自由を取り戻そうと演説していく。

2度目のプレイではドローンもしっかり排除し、トラックに乗り込んでアンドロイドショップにダイナミック入店! たくさんのアンドロイドを解放して、街へと繰り出していく

 ここからは解放したアンドロイドたちとともに街中へと出て、人間に対してメッセージを残すという場面になるのだが、ここではマーカスの行動にPACIFIST(平和主義者)とVIOLENT(暴力的)という概念が加わり、その選択によって青い平和主義と赤い暴力的のゲージが変化していく。

 E3のデモプレイではここで街に火炎瓶で火を付けたりなど街を破壊していったが、この日は逆に平和的な行動を取り続けていた。せいぜい、ベンチをひっくり返したり、車をずらして道路をふさいだり。革命のシンボルを掲げ、意思表示はするも破壊活動はしなかった。

 ただ、この選択はマーカスと共に行動している女性アンドロイドのノースとしては気に入らない行動なようだ。彼女はより破壊的な行動を望んでいるという。

街に人類へのメッセージを残していくのだが、ここではプレーヤーの選択でPACIFIST(平和主義者)にもVIOLENT(暴力的)にもできる。今回はE3のデモプレイとは逆の平和主義な選択を披露。あまり破壊活動はせず、フラッグやメッセージを残すのみにとどまった。だがパートナーのノースは不満だったようだ

 ここでこの日のデモは終了となった。こうした行動の選択、そして結果はこのあとの物語に、そしてコナーやカーラの物語にも影響を及ぼすという。彼ら3人のアンドロイドが出会うかどうかも変わり、出会わないかもしれないのだという。また、ゲーム内には全部で250人以上のキャラクターが登場するが、1度のプレイでその何人かとは会うかとは思うが、他のキャラクターの存在すら知らないままになるかもしれないのだという。

 絡み合う複雑な物語の行方は全てプレーヤー次第だ。

エグゼクティブプロデューサーGuillaume氏へインタビュー

 ここからはデモプレイ後に行なわれたGuillaume氏への質疑応答の模様をお伝えしよう。

――なぜデトロイト市を舞台にしようと思ったのですか?

Guillaume氏:まずアメリカを舞台にしたいというのは決まっていました。その中で大規模な製造業が成立する街を求めていたのです。そこでデトロイト市の歴史に興味を惹かれました。過去に製造業で栄光を築いた都市であり、自動車産業が発展してモーターシティと呼ばれました。ですが、その後に衰退しています。

 ですので、このような都市にアンドロイド産業が生まれるというのは非常に面白いと思いました。熟練の労働者がいて、市そのものも再生の道を探しています。例えばこれから数カ月、あるいは数年のうちに小さなスタートアップ企業が誕生し、それをきっかけにアンドロイド産業が始まっていくとう可能性は十分にあると思います。

――コナーには「状況を再現する能力」があり、マーカスには「未来を予測する能力」がありますよね。カーラにも何か特別な能力があるのでしょうか?

Guillaume氏:あります。その3体の主人公のアンドロイドは、それぞれ違った目的のために製造されており、アンドロイドが置かれている状況を象徴するような存在でもあります。ですが、カーラのそれがどんなものなのかは、まだ話すことはできません。

――主人公の人数を3人にしたのはなぜでしょうか?

Guillaume氏:過去に「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」という作品では主人公は4人でした。そのあとに作った「BEYOND: Two Souls」では、主人公とエイデンという存在がいたので、主人公は1.5人ぐらいの作品になっていました。そして今作では、まずいろいろな物語を描きたいということ、そして誰かが死んでしまっても物語は続くので、あまり主人公の人数が少ないとゲームが短くなってしまう可能性がありました。そうしたところから2人よりも多くして、3人にしました。

 クリエイティブディレクターであるDavid Cageの制作スタイルなのですが、最初はもっと人数を想定して物語を書き始めているのです。ただそこから絞っていき、より特徴的なアンドロイドを残していって、最終的に3人になったのです。

 ゲーム制作の話ですが、最終的な製品の姿をご覧になってもあまり気づかれないのですが、実際にはゲームになっていない多くのシーンを作成していて、それらを15%~20%ほど削っています。というのも、開発の初期段階でもだいたいの道筋は見えていますが、それでも脚本や開発を進めていくなかで変化したり、キャラクターに感情移入できるような物語を試行錯誤するなかで、絞られていき、最終的にベストと思える形になります。

――プレーヤーの選択によって物語が変化するということですが、無限に変わるものではないと思います。だいたい大筋としてはどれぐらいのパターンがあるものなのでしょうか?

Guillaume氏:あーうん、そうですね……だいたい70ぐらい? あるかな? そんなことないかな?(笑)。

 全ての分岐をテストして確実に機能しているかを試すために、特別なシステムを用意しなければならなくなった……それぐらいには分岐が多いと思ってもらえればいいと思います。

 エンディングだけでなく中身の分岐がありますので詳しくは言えないのですが、目安としてテキストの分量は「BEYOND: Two Souls」の2倍以上ありました。

 エンディングそのものもかなりの数はあるのですが、ただエンディングが違うというだけでなく、そこにたどり着くまでにどのキャラクターに会うか、どんな関係になって、どんな体験をするのか、そうした分岐がたくさんあります。実際に体験するストーリー違いというものはさらに多いはずです。東京ゲームショウ2017の試遊のシーンですと、コナーを操作し少女を救って誇らしい気持ちになったという結末でも、救った結末は同じだけど罪悪感を抱くような過程を経ることもあるのです。

 同じエンディングを迎えたとしても、その過程によっては違った気持ちになることがあり得ます。そのため、エンディングの数以上の体験の種類があると思います。実際、その分岐は非常に激しいものになっているので、同じストーリーとは思えないほどに違いを感じられると思います。

――楽しみにしています。ありがとうございました。