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NVIDIA、ゲーミングノートPCの新たなデザイン「Max-Q」デザインについての説明会を開催

薄くてハイパフォーマンスなゲーミングノートPCを実現

6月9日 発表

 NVIDIAは、先日台湾で開催されていた「COMPUTEX 2017」に合わせて発表した、ゲーミングノートPCの新たなデザインとなる「Max-Q」について、改めて都内の会場にて説明会を開催した。説明会には同社のアジア太平洋地域担当 テクニカルマーケティング・ディレクターであるジェフ・イェン氏が登壇し、Max-Qについての解説を行なった。

 「ゲーミングノートPCについては、薄くて高解像度のゲームPCで、静かにプレイするというのが夢だった」と語るイェン氏。実際に2年ほど前のノートPCは、搭載するGPUはGeForce GTX 880M程度のものであっても、5センチ近くの厚みがあり、重量もとても重いものだった。加えて現在の最新GPUであるGeForce GTX 1080を使おうとすると、消費電力は180W程度もあり、90W程度の電力で動作するノートPCでは、とても使うことができなかった。イェン氏は「薄くて軽いノートPCはいいが、パフォーマンスに納得がいくものはなかった。Flashのゲームですら、かなりうるさくなってしまう」と振り返った。

NVIDIA アジア太平洋地域担当 テクニカルマーケティング・ディレクター ジェフ・イェン氏
2年前と現在のゲーミングノートPCの比較

 そこで登場したのが「Max-Q」というデザインだ。これを導入することで、GeForce GTX 1080を搭載しても、薄くて重量も軽い上、静かで、2年前の製品よりも3倍近くのパフォーマンスを持つノートPCを作ることができたという。

 ちなみにMax-Qという考え方は、ロケットを作るときに生まれたもので、地上において最大の重力がかかった状態で、推進力が0というポイントと、宇宙空間における最小の重力状態での最大推進力というポイントの中間点を「Max-Q」と名付けたことに由来する。

 その哲学をゲーミングノートPCの設計に適用し、前世代の製品と比較して厚さは3分の1、パフォーマンスは最大3倍のノートPCを作れるようにした。「パスカルアーキテクチャのGPUを使い、GeForceの最大のエクスペリエンスを提供するためのセッティングを施し、パートナーと協調しての最先端の冷却技術を導入して、次世代のレギュレーターを使うことで最高の効率を実現できた」(イェン氏)。

 ゲーミングノートPCでは、最大のパフォーマンスを得ることにこれまで注力してきたわけだが、それを得られるポイントは、必ずしも最高の効率状態とは言えないとイェン氏は語る。

 「パワーが増えれば増えるほどパフォーマンスは上昇するが、あるポイントを超えると、期待できるようなパフォーマンスのポイントが下がってくる。同様にピーク効率を考えた場合、パワーを向上させても、ある点から下がっていってしまう。デザインの最適解は、ピーク効率のポイントにある」とイェン氏。

 この点を考えて設計すれば、ハイエンドのGPUを使いながらも薄く、静かなPCを作れるというわけだ。実際にGeForce GTX 1060と、Max-QデザインによるGeForce GTX 1080を利用したPCのパフォーマンスを測定すると、倍近い差が出ることとなったほか、静粛性についてもかなり抑えられる結果となったという。

パフォーマンスとパワーの関係
最適なバランスは緑のゾーン
GeForce GTX 1060と、Max-QデザインによるGeForce GTX 1080を利用したPCのパフォーマンスの差
Max-Qを利用すれば静粛なPCを作ることができる

 このほか、最新のドライバには「ウィスパーモード」というものが搭載される。これを利用することで、パフォーマンスを落とすことなく、ノイズのレベルを下げることができるとのこと。「『オーバーウォッチ』のようなゲームではより高い、60fps程度の能力が必要となるが、先ほどと同じく、ゲームセッティングを上げると、ある点を過ぎると必要以上の消費電力を要求するにもかかわらず、利得が少なくなる。最も効率のいいセッティングを見つけることが大事だ」(イェン氏)。

 また、「オーバーウォッチ」ではハイパフォーマンスを要求したとしても、「ウィッチャー」であればそれほどのフレームレートを要求するわけではない。「60fpsは必要なく、30fps程度で十分だろう。ウィスパーモードにシフトすることでより静かにゲームを楽しめるし、消費電力も下げることができ、バッテリーの寿命も長くすることができる」(イェン氏)。なおウィスパーモードについては、クロックを下げて対応しているのではなく、セッティングを調整して静音性を実現するとのことだ。

次期ドライバに搭載される予定の「ウィスパーモード」
消費電力とセッティングの関係

 今回の説明会に合わせて、Max-Qデザインを導入したノートPCが3台展示されていたが、ASUSの「ROG ZEPHYRUS」についてはGeForce GTX 1080を搭載しながら、厚さ17.9ミリ、39dBAという静粛性に加え、G-SYNCによるリフレッシュレート120KHzのディスプレイを搭載するというハイスペックなゲーミングノートPCだ。このほかにはClevoの「P950」、MSIの「GS63VR STEALTH PRO」が展示されていた。

Max-Qデザインを採用したノートPC
展示されていた実機。手前からP950、GS63VR STEALTH PRO、ROG ZEPHYRUS

 なおMax-Qだが、「特にこの仕様がMax-Qにあたる」ということではなく、OEMと協業して、それぞれのノートPCについてチューニングを施すことでシステムを構築していくとのこと。このためメーカーが異なると、同じGeForce GTX 1080を使っていたとしても、そのピークパフォーマンスもそれぞれ異なるということになる。

 今後はMax-Qを採用するOEMも増えていくとのことなので、薄型でハイパフォーマンスを誇るゲーミングノートPCが続々と出てくることを期待したい。