ニュース
【PS Plusフリープレイレビュー】「影牢 ~もう1人のプリンセス~」
2人の“姫”が激突! 謎めいたストーリーが展開するシリーズ最新作
2017年3月29日 12:00
2017年3月の「PS Plusフリープレイレビュー」として、「影牢 ~もう1人のプリンセス~」を取り上げたい。「影牢」シリーズは、筆者にとって強い思い入れがあるゲームである。筆者が本シリーズを最初に触れたのは、シリーズ2作品目にあたる「影牢~刻命館 真章~」からだ。ネットも普及していなかった当時、予備知識もなくパッケージのかっこよさに惹かれて手に取ったのが始まりだった。プレイした瞬間、かつて体感したことのないゲーム性に衝撃を受け、本シリーズの魅力に取り憑かれてしまった。それからというものシリーズが出るたびに歓喜し購入、プレイしていた。
「影牢」シリーズは主人公が可愛い美少女だとか、衣装の露出度が高いなど、魅力を挙げだしたらキリがないのだが、1つ……いや、2つ上げるとするのならば、「救いようのないダークな世界観」と「他のゲームでは味わえない残虐かつ爽快なトラップアクション」である。シリーズの魅力は最新作である本作でさらに輝いている。魅力を語っていきたい。
本作の主人公は長い眠りから目覚めた闇の姫「ヴェルギリエ」。彼女は魔神の作り出した機械人形「エフェメラ」とともに、世界を滅ぼす力を持つ魔神復活を目論む。魔神復活に必要なのは人間の魂。その魂を集めるため、ダークサイドヘブンと呼ばれる悪夢の空間に生贄となる人間を呼び出し、殺戮の限りを尽くす……。このダークな設定だけでもはやラスボス級の凶悪さだが、これが影牢の世界では"影牢らしい正統派な主人公"なのである。「影牢 ~もう1人のプリンセス~」はこのダークさを満喫できるゲームなのである!
どのトラップで料理するか……、この思考する瞬間こそが至高
「影牢」シリーズの特徴は、「敵を直接的に攻撃をする術がない」ところにある。本シリーズは、ステージ内で敵を意図的に誘導し、仕掛けたトラップで倒していく。罠を設置して待ち構えるのではなく、プレーヤーキャラクターが敵の注意を引き、追いかけてくる敵に対してトラップを踏ませていくというところに独得な駆け引きがある。シミュレーションゲームではなく、アクションゲームであるところに本作の面白さを引き立てている。トラバサミやギロチンなどの様々な罠を仕掛けて、敵をハメて倒していくというシリーズならではのゲーム性に魅入られたプレーヤーは筆者も含めて多いだろう。
そして最もプレーヤーを夢中にさせるのは、トラップに次ぐトラップの応酬で発動する「コンボ」である。このコンボが決まった時がとにかく気持ちいいのだ。例えば床にセットしてあるトラバサミで敵の動きを封じて、飛び出す壁で敵を押し出し、その頭上から巨大岩石を落とすといった、「ピタゴラスイッチ」のような面白さと爽快感が同時に味わえるのである。
そして最新作である「影牢 ~もう1人のプリンセス~」の大きな特徴はシリーズの集大成といえるべく、歴代シリーズの主人公たちがゲストキャラクターとして登場するのだ。さらに条件を満たせばプレイアブルキャラクターとして操作することができるという、最高のファンサービスが用意されている。
ゲームのメインとなるモードは2つ。シリーズ初登場となる「クエストモード」と、シリーズおなじみの「ストーリーモード」だ。「クエストモード」はステージごとにクリア条件が設定されている。「敵を全滅させろ」といったオーソドックスな条件から「敵を同時に倒せ」や「特定のトラップで倒せ」など、指定されるさまざまな条件を達成することで物語が進んでいく。クリア条件とは別に、「報酬獲得条件」も存在し、これを達成できれば使用できるトラップが増えていく。クリアとは直接関係はないができる限り狙っていきたい。そしてなんといっても驚きなのはそのクエストの数。その数はなんと全部で100種類。お前に全部クリアできるか? といわれているような、プレーヤーへの挑戦状とも取れるボリューム感だ。
ゲームの実際の流れを紹介していこう。「クエストモード」でステージを攻略するにはクリア条件に合わせて持っていくトラップを考える必要がある。全ての敵を倒すだけのシンプルな条件ならば、とにかく火力の高いトラップ。一定数のコンボを決める条件ならば、トラップから次のトラップへ繋がりやすいものを選ぶのがベターだ。カードゲームのデッキを組む感覚で、「これとこれの組み合わせならとてつもないダメージが出せそう」など自分なりの強力なコンボを考え、食らわせたビジョンを想像しながらトラップを選んでいくのもたまらなく楽しい。
準備が整ったら、いよいよ“人間狩り”の始まりだ。悪夢の空間に生贄となる人間を呼び出す。「ここはどこだ!?」と狼狽している人間に近づくと、彼らはこちらに猛然と襲いかかってくる。距離を取ってまずはトラップを設置だ。トラップ設置メニューを開くと、ステージ全体を見下ろした画面になり、どこにどのトラップを設置するかを選択することができる。トラップは「壁」、「天井」、「床」にセットすることができる。トラップの射程範囲や、トラップを食らった際に敵が吹っ飛んでいく位置の予測も表示されるので、吹っ飛んだ先に次なるトラップを仕掛けて追撃できるようにするのが戦いのセオリーだ。
序盤の敵は剣を持っている戦士だ。攻撃は接近戦オンリーなので、罠にはめやすい。ステージが進むと弓や魔法を使う遠距離攻撃をしてくる敵が現われる。距離が大事になるので難易度が上がる。射程距囲外に出て誘っていくことを心がけなくてはならない。敵から逃げる際、うまく設置した罠の直線上に逃げるのがコツだ。
ステージ自体にギミックが備わっている場合もある。「製鉄所」のステージならば巨大な溶鉱炉が設置されている。敵をここに落とせば、「ターミネーター2」よろしく溶鉱炉で溶けてしまう。そのためには、溶鉱炉に向けて敵を吹っ飛ばさなければならない。
様々なトラップの中で、筆者のオススメは「ウォッシュトイレ」だ。何ともふざけたトラップである。ちなみに見た目もそのまま洋式の便器だ。実はトラップは敵をかなりの長距離吹っ飛ばすことができ、特に製鉄所では有効なのだ。敵をトイレのところまで誘い込むと、敵は便器の中にお尻がハマってしまう。お尻がハマってバタバタ暴れている姿だけでマヌケなのだが、次の瞬間水が勢いよく吹き出し敵が空高く飛んでいくのである! 不意打ちの演出に笑わされたが、敵はそのまま溶鉱炉にドボン。かなり有効なトラップであるのが確認できた。
「影牢 ~もう1人のプリンセス~」では、トイレのほかにも、「巨大注射器」や「巨大ヨーヨー」などのダークな世界観にミスマッチなトラップも多い。敵に喰らわせたらどうなるのかというワクワクと好奇心を掻き立てられる。どのトラップを使おうか、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら考えている時間は、本作でたまらなく楽しい瞬間である。
もう1人の主人公との戦い、謎が深まるストーリー
「ストーリーモード」で展開される物語はのめり込む魅力がある。筆者的に盛り上がったのは、もう1人の闇の姫「レグリナ」が姿を現わすところ。レグリナは前作「影牢~ダークサイドプリンセス~」の主人公で、筆者も思い入れのあるキャラクターだ。ヴェルギリエと同じくレグリナも魔神復活のため人間を狩っているのだが、お互いに「お前が“もう1人の姫だ”」と、自分が“正当な姫”だと主張。売り言葉に買い言葉。どちらが真の闇の姫かを決めるため、2人はぶつかり合う。新主人公VS旧主人公。こういう少年漫画のような熱い展開が筆者は大好物である。
レグリナ戦はいままでの戦いとは全くの別物となり、「トラップ対トラップの戦い」となる。こちらが遠くまで離れれば、弓使いや魔法使いでさえ多少はこちらを追いかけてきてトラップの方向に誘い込むことができるのだが、レグリナはどんな遠くからでもトラップを設置して発動させてくる。今までと全く勝手が違い、トラップを仕掛ける存在が敵にするといかに厄介かということを痛感した。レグリナはこちらを追うことはせず、無軌道に動きまわるので、なかなかこちらのトラップで捕らえることができない。苦戦しているうちに時間が経過しタイムオーバーに……。
そこでこれまでのようにコンボを叩き込むことに執着せず、攻撃の範囲が広いトラップを中心に持って再戦を挑んだ。今度はステージのいたるところに広範囲のトラップをバラ撒き、コンボは狙わず単発のダメージでジワジワ減らしていく作戦に変更した。どこかしらの射程範囲に入る。振り子状の巨大なハンマーがレグリナを捉えた。かなりの長期戦となったが、強敵レグリナを撃破することに成功したのだ。
しかし、ここからが本作の本当の始まりだったのだ。中世ファンタジーの世界から、一変して戦いの舞台が現代の日本になったのである。ヴェルギリエはこの世界にどこか既視感を感じながらも、人間狩りを続行することにしたのだが、敵として現われたのは、どこにでもいるようなジャージ姿の少年少女。今まで魔法使いや騎士などと戦っていたせいもあり、この普通すぎる人間は不気味さと違和感を感じさせた。何より筆者を驚かせたのは、少年少女がヴェルギリエのことを知っているかのような反応を見せたのだ。
いぶかしがりながら筆者はいつもの通りトラップにはめて少年少女達を倒していく。ジャージ姿の少女は絶命する間際にヴェルギリエに懺悔のような言葉を言い残す。「ごめんなさい。脅されて、仕方なかった」のだと。間違いなく、この世界の人間はヴェルギリエのことを知っている。そして少女が残した言葉の意味とは……ここから先は、ぜひプレイして確かめてほしい。なかなか衝撃の展開だった。
「影牢 ~もう1人のプリンセス~」はこれまで以上に楽しい作品だった。正直、規制の厳しい昨今、「無害な人間を仕留めていく」という本シリーズならではのダークな要素が変わってしまうかもしれないと心配していたのだが、昔のままの「影牢」で1ファンとしては嬉しい限りである。
今回紹介した以外にも、好きなステージや敵キャラクター、そして勝利条件などを自由に設定して自分だけのクエストが作れるモード「影牢スタジオ」や、今まで遭遇した敵の3Dモデリングやキャラクター設定、さらには全世界のプレイ記録がランキングで見られる「ミュージアムモード」などが用意されている。しかも、前作の「影牢~ダークサイドプリンセス~」のストーリーモードまで丸々収録されているのである。今作で敵として登場するレグリナの物語までたっぷり楽しめるのだ。プレイバリューはとても高い。
遊びごたえが有りすぎるほどある今作は間違いなくお得なゲームである。「影牢 ~もう1人のプリンセス~」は4月4日までにPS Plusに加入すれば無料で遊ぶことができる。ダークな世界にどっぷりハマりたい、今回のレビューで、ヴェルギリエの物語の続きが気になる方はぜひプレイして、自身の目で結末を見届けてほしい。
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.