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届け、この愛! 「FIRE PRO WRESTLING WORLD」松本朋幸氏インタビュー

「俺はぜったい応えるから、大丈夫だから!」ファンが望む「ファイプロ」を実現!

3月2日発表(現地時間)

 3月2日にサンフランシスコで電撃的に発表された「FIRE PRO WRESTLING WORLD」。「ファイプロ」が現代に復活するのである。本作を制作するのは「『ファイプロ』を復活させるのが夢だった」と熱く語るディレクターの松本朋幸氏である。彼の想いは、こだわりはどこなのだろうか。今回はその“気持ち”にフォーカスしてインタビューを行なった。

「ファイヤープロレスリング ワールド」のディレクター、松本朋幸氏
まずは「かみつき」から。ファンならうなずいてしまう試合展開だ
今回特に力の入っているエディットモード。理想のレスラーを目指せ
最大のセールスポイントオンライン対戦。松本氏自身も腕には自信を持っており、ぜひオンライン対戦をしていきたいという

 「いやー、やっと言えましたよ、もう言いたくていいたくて仕方がなかった。そう、『ファイプロ』は復活するんです。ついに復活します」。インタビューを始めた瞬間、まるでためていた息を吐き出すかのように、熱を込めて松本氏は語り始めた。

 「やっと言えました。でもいきなりアメリカで発表でしょう? 英語がしゃべれないからびびりましたよ。自分の意図がちゃんと伝わるか、そもそも『ファイプロ』は日本発のコンテンツだし、不安はありましたけどね。それでも本当に発表できたのは良かった。『ファイプロ』は復活するんです!」

 実は「ファイプロ」は日本よりも海外で数倍の売り上げがある人気タイトルだったという。スパイク・チュンソフト自身海外ではきちんとファンを獲得しているメーカーであり、やはりきちんと海外のユーザーにアピールするために、情報の初出をGDCの期間中、サンフランシスコに日本タイトルを北米で展開するパブリッシャーを集めて行なったとのことだ。

 これは非常に面白い話だ。日本のプレーヤーにとって「テレビのプロレスラーがゲームで活躍する」というのが「ファイプロ」の大きな魅力だ。まず組んで、小さな技をこつこつつなげてから大技を見せて勝つ。場外乱闘や、凶器攻撃の竹刀などまさに、「古き良き日本のプロレス」を再現したようなゲームと言えるのに、海外でファンが多いというのは興味深い。

 「それでも海外には『ファイプロ』が好きな方がいっぱいいるんです」と松本氏は語った。海外ファンはやはりエディットを楽しんでいるという声が大きいという。プロレスが好きなユーザーがエディットモードでひたすらちくちく作り込んで自分の理想のレスラーを作る。そしてそのレスラーになりきって戦ったり、何人ものエディットレスラー同士を戦わせる、そういった「ファイプロ」ならではの要素が海外ファンの心をつかんでいるのではないかと松本氏は考えている。

 今回の「FIRE PRO WRESTLING WORLD」はまさにそのエディットに特化した作品になる。エディットデータはオンラインで共有できるようにしたいという。Steam版ではコミュニティ機能を使ってデータのやりとりができるが、PS4版でどうしていくかは現在模索中だ。「『復活の呪文』みたいな、パスワード式も良いかもしれないですね」と松本氏は冗談も交えてコメントした。

 松本氏自身は「ファイプロ」シリーズとの直接の関わりは1999年にPS向けに発売された「ファイヤープロレスリングG」だが、松本氏自身、「『ファイプロ』が作りたくてゲーム業界に入った」とのこと。「ファイプロ」に感動して開発会社であったヒューマンに入社し、「ファイプロ」開発チームに参加、「ファイヤープロレスリングG」以外にもシリーズ数作には関わっていたが、今回、ついに、松本氏の手によってシリーズの復活を果たしたのだ。

 「本物の『ファイプロ』はこうだ、それを見せたいです。めちゃくちゃそういうこだわりは盛り込んでいます。むしろ、こだわりと愛しかないです」と松本氏は語った。インタビューの前、関係者のファンが松本氏に情熱的に語っていたのだが、「ファイプロ」の戦いの最初は“かみつき”にある。かみついて、相手が流血したところから小さな技をつなげ相手のスタミナを奪い、クライマックスに大技を決める。これが「ファイプロ」のセオリーである。

 今回の発表会でのデモ映像でもその流れそのままなのだ。このデモ映像で選んでいるシーン、AI同士の対戦プレイの風景からだけでも、松本氏がどれだけ「ファイプロ」を愛しているか伝わってくる。それがわかったからこそ、ファンである関係者は、松本氏に「よくぞやってくれた」と声をかけたのである。

 「この発表の前に『謎の動画』を公開しましたが、最初のレスラーが組み合う動画を見ただけで、日本も海外のプレーヤーさんも騒いでくれた。『絶対2Dじゃないといやだ』、『スマホじゃなくてモニターでやりたい』という声には励まされました。僕はそれを見て、言えなかったですけど、『大丈夫、俺はわかってるから、俺の想いも同じだから! 俺はぜったい応えるから、大丈夫だから!』と思っていました。今回それがようやく言えます。信じていただきたいですね」と松本氏は語った。

 コンシューマー版(今回はPC版も)で、大画面のテレビで、みんなで戦う。Steam版ではコントローラーを用意することで8人でのオフライン対戦をフォローする予定だ。PS4版の仕様は未定だという。一方オンラインはまず4人、ラグなどの問題を解決できれば8人まで戦えるようにしていきたいとのこと。タッグマッチ、チームバトルだけでなく、バトルロイヤルも考えている。ファンの思いには応えたい、そのことを第一に開発を進めているとのこと。

 一方で、「○○人のレスラーを収録」という言葉は、今回は強くアピールしない。それよりもエディットのパーツを増やし、できるだけ多くのパターンを提供して、こだわりのオリジナルレスラーを作ってもらいたいと松本氏は語った。パーツは本当にシリーズ最大となる。ステータスもいじれるのでめちゃくちゃ強いレスラーも作れる。

 ただ、オンライン対戦ではステータスまで自由なのは難しい。ここに上限を持たせるかは、現在検討中だという。そしてレスラーのデータだけで勝てないのが「ファイプロ」のおもしろさだ。組んで、技を入れる。このタイミングがうまい人は本当にうまい。オンライン対戦でどこまでうまい人が出てくるかも松本氏は期待しているという。

 「でも、一番面白いのは“ロジック戦”じゃないかと思うんです。作り込んだレスラー同士をAIが操作して戦う。タイミングがうまい人は本当にどこまでもうまいんで、そういう人には『ロジック戦で勝負だ!』と挑んでほしいですね」と松本氏は語った。

 現在はゲームの基本部分ができたくらいのところだという。ここからより作り込み、仕様を固めていく段階となる。「何をやったら面白いだろう」、「どうすればもっと『ファイプロ』らしくなるだろう」ということをどんどん盛り込んでいくとのこと。

 松本氏は「FIRE PRO WRESTLING WORLD」は、「ファイプロ」ファンに向けての作品だと強調する。もちろん新たに本作を手に取ってくれるユーザーにも期待はしているが、まず何よりもファンにもう1度「ファイプロ」を届けたい。彼らに喜んでもらうためにこそ「FIRE PRO WRESTLING WORLD」を作り込んでいくと、松本氏は強調した。

 松本氏にとって「ファイプロ」はゲームの原点であり、自身の中で最高のゲームだ。「ファイプロ」への愛が高まりすぎて、レスラーになりたいと思ったことまであったという。「ファイプロ」の戦いをそのまま現実で再現するようなレスラーになりたかったとのこと。だからこそ、松本氏は自分自身を「世界一のファン」と思っており、その愛を「FIRE PRO WRESTLING WORLD」に活かしていきたいという。

 「何よりも、僕にとってはプロレスよりも『ファイプロ』なんです。だからこそファンに喜んでもらいたい。僕自身もこれを作りたいです。僕は『喧嘩番長』シリーズのディレクターですが、僕にとって『喧嘩番長』の『ファイプロ』への愛の形の1つなんです。『喧嘩番長』の着替え要素や、技の出し方などは『ファイプロ』から自分なりに考えたものです。だからこそ今回は、『ファイプロ』への愛を全面に出したい。その愛をきちんと表現することができれば、ファンの方はわかってくれて手に取ってくれる。そう信じています」と松本氏は語った。

 今回の発表会では数台の試遊台が出展された。開発スタッフ以外の人が松本氏の「FIRE PRO WRESTLING WORLD」を遊んでいる姿は感慨深いという。今後、東京ゲームショウなど、大きなイベントでたくさんのユーザーが遊んでる姿はぜひ見たいし、オフラインイベントもしてみたいとのこと。現在、ゲームでは実況文化が花盛りだ。オールドファンも含めて、「FIRE PRO WRESTLING WORLD」は実況映えするゲームと言えるだろう。「もう、チャンピオンベルト作っちゃおうかな、『スパチュンベルト』いいかもしれない」と松本氏はノリノリだ。

 最後にユーザーへのメッセージとして、「待ってくれていてありがとうというのはまず伝えたいです。その期待には絶対に応えます。『俺を信じろ、絶対面白いモノ出すから!』という約束はしたいです。夢であった『ファイプロ』を作れた僕は幸せ者です。それと、僕は強いですからね、『ファイプロ』。ぜひオンラインで戦いましょう」と語った。

 話を聞いているだけでこちらがうれしくなるようなインタビューだった。この愛はユーザーに伝わり、大きな動きを見せると思う。今後の展開を期待して待ちたいところだ。