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世界最大級のe-Sports大会「Intel Extreme Masters」の勝者が決定

「オーバーウォッチ」はペイロードの奪い合いが大白熱!

12月16日~18日 開催

会場:韓国高陽体育館

 ESLが主催する世界最大級のe-Sportsイベント「Intel Extreme Masters(以下、IEM)」キョンギ大会のファイナルマッチが、12月18日に韓国、高陽市にある高陽体育館で開催された。

 予選に勝ち残った4つのチームと2人の個人選手が、「オーバーウォッチ」、「StarCraft II」、「League of Legends(以下、LoL)」の頂上を目指して激突した。

 キョンギ大会は当初「StarCraft II」と「LoL」の2種目で開催される予定だったが、既報の通り大会が8年ぶりに韓国で開催されることを記念して、韓国内で大ヒットしている「オーバーウォッチ」が第3の種目として追加されることになった。

 16日、17日に開催されたセミファイナルでは、「オーバーウォッチ」には、4つの韓国チームと2つの英国チームが戦い、18日の決勝で勝ち残った韓国の2チームが激突した。このレポートでは白熱した試合の様子をお届けしたい。

攻守を入れ替えながら戦う「ハイブリッド」

「オーバーウォッチ」ファイナルマッチの様子

 最終日は、「オーバーウォッチ」のファイナルマッチから始まった。優勝賞金は、1位が5万ドル、2位が2万ドル、3位/4位が1万ドル、5位と6位には5,000ドルが贈られる。
各チーム6人の12人がステージに並んでお互いに握手を交わす開会式の後、それぞれがステージ後方の左右に作られたブースに入ってセッティングを行なう。

 今回「オーバーウォッチ」のトーナメントに出場したのは6チーム。4つの韓国チームと、2つの英国チームがセミファイナルを戦い、そのうち2つの韓国チームLunatic HaiとLuxury Watch Red(以下、LW Red)がファイナルに勝ち残った。

 1チームの人数は6人。Lunatic-Hai側はタンクにD.VAとウィンストンとロードホッグ、オフェンスにソルジャー76、サポートにルシオとアナという布陣。対するLW RedはタンクがD.VAとウィンストン、オフェンスにトレーサーとゲンジ、サポートにルシオとゼニヤッタを使用するキャラクターに選んでいる。Lunatic-Hai側はタンク3でオフェンスが1の防御寄り、LW Redは2人ずつのバランス構成だ。

 「オーバーウォッチ」にはBlizzard Entertainmentが定めたOverwatch Championship Seriesの公式ルールがあり、この大会でもそれに準拠したマップ選定が行なわれている。今回は、コントロールという制圧戦が行なわれる「Lijiang Tower」。移動する車の周辺で戦うペイロードというルールが適応される「Route 66」と「Watchpoint: Gibraltar」。ペイロードとポイントチャプチャーという2つのルールが混じった、ハイブリッドというルールで戦う「Hollywood」と「Eichenwalde」という、5つのマップが使われている。

 Game1のマップ「Hollywood」は、西部劇映画の撮影セットのような場所や、カリフォルニアの陽気な雰囲気の楽し気なマップだ。マップのルールは「ハイブリッド」。攻撃側は、制限時間内に拠点Aを制圧して、そこにあるペイロードを目標地点まで運ぶことができれば、防衛側は時間切れまでペイロードが目標地点にたどり着くのを阻止することができれば勝利となる。制限時間は最初は5分だが、拠点Aを制圧すると+3分、ペイロードをチェックポイントまで運べばさらに+2分が加算される。

 対戦は攻守を入れ替えて2回行なわれ、Lunatic-Haiが攻撃側、LW Redが防御側でスタートした。お互いのタンク役がシールドを張ったり、岩壁を発生させたり、チェーンで引っ張ったりして相手の行動を阻害している横でオフェンサーが切り込んでいく。拠点を占拠すると、そこに置かれている黒い車が移動を始める。

 この移動するオブジェクト「ペイロード」は、攻撃側が側にいると前進し、防御側がいると後退していく。そのため、なるべく多くの見方がペイロードの周りにいる必要があり、つねに車の周りで乱戦が起こる。第1戦目は、攻撃側のLunatic-Haiがペイロードを占拠して、動いている車の上でジャンプしながら、最終の目的地まで運び、勝利した。

 ハイブリッドは攻撃側が有利なルールなので、2戦目は同じマップで攻守を入れ替えて戦う。今度は攻撃側に回ったLW Redが有利に戦いを進め、防御側の反撃を許さないままペイロードを目的地まで運んだ。

【Hollywood】
住宅地の屋上や屋根も使って戦う入り組んだマップ

 2セット目の「Eichenwalde」も同じハイブリッドルールのマップ。今度は廃墟となったヨーロッパの古い街並みの中に、中二魂を感じる巨大砲台が置かれている。ここでも最初は攻撃側のLunatic-Haiが拠点を占拠し、砲台のペイロードを動かし始めるなど、攻撃側がイニシアチブをとる展開となった。

 しかし、ペイロードが中間地点を超えて、2分間の時間延長になったあたりからLW Redが少しずつ盛り返していき、到達地点を前にペイロードは後退を始めた。そのまま、砲台はどんどん交代していき、タイムアップでLW Redが2セット目の最初の戦いを制した。これでLW Redは2勝となり、優勝にリーチがかかる。

 4戦目も同じ「Eichenwalde」の戦い。攻撃側のLW Redは素早いエイムでLunatic-Haiに反撃の糸口を掴ませず、そのままペイロードを目的地にねじ込んで勝利した。

【Eichenwalde】
ヨーロッパ風の城や、石垣を巡って戦う

 観戦していると余裕があるようにも見えた圧勝劇だったが、やはり緊張感は相当なものだったようで、表彰式ではチームメンバーが嬉しさのあまり号泣し、袖で何度も涙をぬぐっていた。

 試合後は、選手が会場外にあるファンとのコミュニケーションゾーンで、プレゼント片手に集まった大勢の女性ファンからのサインに応じていた。優勝チームだけではなく、セミファイナルに残った他のチームのサイン会にも大勢の行列ができており、大きな差し入れのケーキを英国チームに渡している女の子もいた。

 「オーバーウォッチ」の試合だけは、他2つのゲームと比べて明らかに女性ファンが多かった。筆者の想像に過ぎないが、キャラクターがかわいいからなのか、明るい雰囲気やわかりやすさが女性を引き付けているのかもしれない。アイドルを応援するように、詰めかける女性ファンは、日本ではなかなかお目にかかれない光景だけに、女の子だらけのE-Sports会場という風景はとても印象に残った。

【試合終了後のサイン会】
試合終了後に行なわれた、会場ロビーでのサイン会

「StarCraft II」と「LoL」でも名勝負が続出!

「StarCraft II」ファイナルマッチの様子
優勝したINnoVation選手

 「StarCraft II」は、16人の選手が4つのグループに分かれてセミファイナルを戦った。出場選手は、1人の中国人を除いて、全員が韓国人選手で、韓国の「StarCraft II」人気を実感する。4グループそれぞれの上位2人の8人が、プレーオフに進出する。そんな強豪ぞろいの中を勝ち進んで、INnoVation選手とStats選手がファイナルマッチを戦った。

 優勝賞金は15,000ドル。以降は、2位6,000ドル、3位/4位は2,500ドル、5位から8位は1,500ドル、9位から12位は500ドル、13位から16位は250ドルとなっている。

 「StarCraft II」は、ユニットや建造物を作って資源を集め、人口を増やして、新たな武器を作りつつ相手の建物をすべて破壊すると勝利となる。将棋のように戦略性が高く、長期戦になることもあるが、今大会のファイナルマッチでは、INnoVation選手が少数のユニットで開幕に相手の拠点を攻めるという速攻を見せ、最終的な勝利を決めた。その予測外の奇策に、観客からも笑いがこぼれ、勝利が付いた瞬間には大歓声に変わった。

 「StarCraft II」も終了後にサイン会が開催されていたが、先ほどの「オーバーウォッチ」と好対照にこちらの長蛇の列に並んでいるのは全員男性ファン。SFだからなのか、萌えキャラが出ないからなのか、韓国での「StarCraft IIはシブい男の通向けゲームのようだ。

【「StarCraft II」ファイナルマッチの様子】

「LoL」ファイナルマッチの様子
優勝したSamsung Galaxyのチームメンバー

 最後の種目「LoL」には、各国の混成チームを含む8チームがエントリーし、ファイナルマッチはSamsung GalaxyとKongdoo Monsterの2チームで争った。どちらのチームも大勢の応援団が駆けつけており、チーム名が紹介されると、声を合わせて声援を送っていた。

 「StarCraft II」が将棋なら、「LoL」はサッカーに似ている。最高潮に盛り上がるのは、拠点のそばで繰り広げられる水際の接戦であり、そこにたどり着くためには幾多の戦略が必要になる。

 「LoL」の勝利条件は、相手の拠点にある「Nexus」というクリスタルのような構造物をすべて破壊することだけだ。制限時間もキル数もポイント制もなく、味方がどれだけ殺されようが、最後に相手のNexusを破壊すれば勝利できる。そのため、試合時間は1試合が約30分強と、今回の3タイトルの中ではもっとも長い。3戦選手の戦いだが、5時から始まった試合は決着が着くまでに3時間以上を要した。

 マップは5対5用のサモナーズリフト。正方形のマップの右上と左下にある拠点を、3本の道がつないでいる。途中はジャングルになっており、暗がりには待ち伏せや回復に使える小道が点在している。

 プレーヤーは100体以上のチャンピオンの中からキャラクターを選択する。片方のチームが最初に1人を選び、そこから交互に使用するチャンピオンを選んでいく。最後は先行側は4人目と5人目を同時に選び、後攻側が最後の1人を選択する。こうすることで、相手のチャンピオンとの相性を見ながらメンバーを決めることができる。

 最初の2戦は、Samsung Galaxyがじわじわと攻め込んで、手堅く勝利した。だが、3戦目にはKongdoo Monsterも底力を見せた。20分以上中央でもみ合いが続いた後、Samsung Galaxyの拠点にたどり着き、一気に攻勢を仕掛けた。Samsung Galaxyも全力で防衛し、ミニオンとチャンピオンと、Nexusの攻撃が入り乱れる乱戦になった。両陣営のチャンピオンが次々と倒されていく中、Kongdoo Monsterが何度も何度もアタックを繰り返して、ついに最後のNexusを破壊、勝利した。

 休憩をはさんで第5戦目が開催された。再びSamsung Galaxyが攻勢に転じ、Kongdoo Monsterはジワジワと押されていった。ついに拠点にたどり着かれ、再び先ほどのような攻防が始まるのかと思ったが、そこから一気に崩されてあっさりと勝負がついてしまった。最終的に、3戦先取でSamsung Galaxyが勝利の栄冠を手にした。

【「LoL」試合の様子】
「LoL」ファイナルマッチの様子。Nexus付近で熱い攻防が繰り広げられた

選手と同じ空間で、時間を共有する楽しさを満喫

観戦者は、LEDが入ったスチロール棒を振って選手を応援した

 3日間に及ぶ戦いは21時過ぎにようやく終了した。電車の時間が危なかったのか、表彰式が始まると同時に会場を飛び出していく人も多かった。朝、「オーバーウォッチ」の試合が始まった時間には、まだ座席に空席が目立っていたが、「LoL」が終わる頃にはほとんどの座席が埋まっていた。

 配信を見ている人数に比べると、会場に直接来られる人ははるかに少ない。それでも、選手と同じ空間を共有し、直接届く声で声援を送るという経験は、会場に来なければ決して味わえない。これはどんなスポーツでも同様だ。

 e-Sportsは、野球やサッカーに比べるとまだまだマイナーな存在だ。だが、そこで繰り広げられる真剣勝負は、メジャースポーツと同じようにスーパープレイがあり、大逆転があり、ぎりぎりの攻防ありで、見ているものの心を沸き立たせる。

 世界の選手が勢ぞろいして戦う場に、ゲーム大国の1つである日本の姿がないのは寂しい。「LoL」や「オーバーウォッチ」が日本語に対応し、日本でもe-Sportsが盛り上がる素地は整いつつある。これからも一層日本のe-Sportsシーンが盛り上がることを期待したい。

【大会の様子】
「オーバーウォッチ」のコスプレーヤーが会場を盛り上げた
「LoL」の期間限定スキン「スターガーディアン」のコスプレ
「オーバーウォッチ」終了後の2位チームのサイン会
スマホを入れて使うVRゴーグルや、マウスパッド、メモ帳からSSDまではずれなしのインテルブースの抽選会
フィギュア入りのPC版「オーバーウォッチ コレクターズエディション」