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「Horizon Zero Dawn」、「Spider-Man」などのクリエイターに聞く「PS 4 Pro」

「HDRはより自然な質感を実現できる。SDR画像には帰りたくない」

【プレイステーション 4 Pro】

11月10日 発売予定

価格:44,980円(税別)

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントが9月7日に発表したプレイステーション 4のハイエンド機種「プレイステーション 4 Pro」。その発表会場となった「PlayStation Meeting 2016」会場では出展タイトルのクリエイター陣も来場しており、短い時間ながら話を聞くことができた。

 当記事では「Horizon Zero Dawn」などのクリエイターから聞くことができた4K・HDRについてお伝えしていく。

「Horizon Zero Dawn」。4K・HDRバージョンで、より現実の世界に近づいている

 「Horizon Zero Dawn」は、大自然の中を闊歩する機械の生物を狩るアクションアドベンチャーだ。6月に開催されたE3 2016でも最新の映像が公開され、そのグラフィックスの美しさは注目を集めた。

 まず舞台となる自然が美しく表現されている。草原の草木がそよぐ様から、巨大な体躯を揺らしながら生命体が大木を押しのけて移動する場面など、迫力だけでなく、繊細に描かれており、そのグラフィックス的な変化が生命体との戦いの中で重要な情報の人綱もなっている。

 制作を手がけるGuerrillaの開発チームによると、「4K・HDRバージョンにより、ますます細かなディテールを表現することができるようになった」と語り、注目ポイントとして2つの要素を挙げた。1つは「空」。「Horizon」では特に“空の鮮明さ”の表現を重要視しているのだという。HDRの技術を採用することでその効果はすさまじく、より自然な空を描くことができるようになったという。もう1つは草原の緑の美しさで、実際に草木が細かく揺れる風景は実写に迫るものとなっている。

 さらに表現ディテールが細かくなったことで、敵となる機械生物の質感もわかりやすくなったという。これにより、機械生命体に攻撃を与えたときのダメージ表現を見て、どれほどの効果を与えているかなどを知ることができるという。また、より遠くまで鮮明に描かれることから、より遠くの敵の視認性がアップすることで、ゲーム体験に有利に働く可能性もある。

 PS4 Proでは4K・HDR対応で絵がきれいなだけでなく、キャラクターの動きがスムースに描かれるようになった。ただこれはフレームレートが上がるという意味ではない。発表会のプレゼンテーションでアンドリュー・ハウス氏が説明したとおり、「ゲームプレイに優劣がつかない」ことが重要だからだ。PS4でプレイする人も、PS4 Proでプレイする人も同じようにプレイできることが重要と考えている。こういった中でPS4 Proではプログラム処理中の落ち込みが減り、安定してグラフィックスの描画が行われ、よりなめらかな動きを実現する。

 開発チーム的には「より実物の世界に近づいている」といい、前述の「空」の表現については現行PS4のSDRによる表現とはだいぶ違っており、「もうSDRに帰りたくない程だ」と笑いながらコメントしてくれた。

 何度も言うようにPS4 Proの4K・HDR表現によってストーリーが変わることはないし、ゲーム体験も変化しない。ただグラフィックスが美しくなることで得られる情報量が格段に増加するため、敵と戦う中で感じるストレスは減少する。

 PS4 ProのグラフィックスにおいてGuerrillaは「E3 2016で公開された映像を見て『美しい』と褒め称えてくれた人たちの想像を凌ぐグラフィックスに仕上がっているし、より喜んでもらえると思う」と自信を見せる。自然の映像表現はPS4 Proにとっては得意分野の1つといえるのかもしれない。

ゾンビわらわら「Days Gone」、4Kで制作することで2Kバージョンも美しく

inFAMOUS

 ゾンビが雲霞のごとく押し寄せる映像を「E3 2016」で公開したことでゲームファンの度肝を抜いた「Days Gone」、そして超能力を駆使しての空中戦などが楽しかった「inFAMOUS」に関しても4K・HDR化が進んでいる。

 両タイトルともに、もともと4Kをターゲットとした素材をベースに制作されたという。テクスチャなどのデータに関しては4Kバージョンと2Kバージョンで別々のものが用意されるわけではなく、素材は1つだという。「Days Gone」開発チームによれば、素材は1つだが、4Kバージョンと2Kバージョンで文字やHPゲージなどの部分の素材はそれぞれ変えるようにしているという。

 素材が(高解像度の)1つであることは、現行機種における2Kバージョンでもよい効果を上げているという。元の素材が高度なものであるため、ダウングレードして出力したときに、より美しく出力されるのだという。

 「inFAMOUS」のPS4 Proバージョンの制作を手がけるスタッフは、HDRとSDRの切り替えをユーザー側が切り替えられるようにしたいとしている。切り替えられる方が、その違いを知ることができるので、制作者側としては入れたいという。

 最後に、HDRのゲームを制作するに当たって注意していることを聞いてみると、「inFAMOUS」制作チームは「プレーヤーはテレビ(を見て)でプレイするのだから、テレビで1番きれいに見えるようにHDR出力を行なう。光源のコントラストをきれいに出力することが重要」とコメントしてくれた。たとえばSDRであれば光源となる電球などの周りは光のデータが過多となって白つぶれして表現されることなどもあるが、HDR化により光源は明るく、周辺は徐々に光量が落ちていく様などを美しく描くことが重要と言うことだろう。

 一方で、「Days Gone」制作チームは制作環境に言及。現在はsRGBで制作されているが、今後は4K/8K放送で採用される色域規格「BT.2020」に対応したディスプレイで制作し、クオリティを上げたいとしている。

【Days Gone】

4K・HDRバージョンへのアップデートパッチのファイルサイズは数百MB!

 今回の「PlayStation Meeting 2016」でも映像が流され大きく目を引いたInsomniac Gamesのアクションゲーム「Spider-Man」。実は制作開始時、グラフィックス素材は2Kで制作されていたのだという。制作の途中段階でPS4 Proの話が舞い込み、制作途中ながらベースの素材を2Kから4Kへと切り替えることにした。この変更は大きな決断となったようだが、制作チームによれば「きちんとテクスチャの素材が4Kで出力され、きれいに表現されるようになった」という。

 また、「アンチャーテッド」シリーズや「The Last of Us」を手がけるNaughty Dogのスタッフによれば、4K・HDRバージョンへのアップグレードはパッチを当てることで行なわれるが、このパッチのファイルサイズが、なんと100MB程度なのだという。これは前述の通り、すでに発売済みのタイトルであっても基本の素材は比較的高解像度のものが使用されており、パッチ自体はそれほど容量を必要としていないことがわかる。

 これは伊藤氏へのインタビューで「現行機種とPS4 Proバージョンは1枚のディスクに収められる」という答えからもわかるが、もし高解像度用の素材を別途収録した場合ディスク容量的にも厳しいものとなるだろう。そういった意味では4K・HDRのパッチのダウンロード、アップグレードは比較的手軽にできることだ。

【Spider-Man】