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「アイマス プラチナスターズ」表現のキモ「ヴァリアブルトゥーン」大公開!
アイドルをどこから見てもかわいくする! VAチームが制作方針を語る
2016年8月24日 15:30
アーケード版の稼働以来、今年で11周年を迎える「アイドルマスター」シリーズ。その最新作であるプレイステーション 4「アイドルマスター プラチナスターズ」(プラチナスターズ)に関する講演が、CEDEC 2016初日に開催された。
講演に登壇したのは、バンダイナムコスタジオ ビジュアルアーティストの阿部貴之氏、本作リード背景アーチストの富田智子氏、本作リードプログラマの前澤圭一氏。
シリーズ初のPS4版であり、発表当初からアイドルたちのビジュアル表現が高く評価されている本作だが、今回の講演ではこのビジュアル表現について、制作に際して「目指したこと」というテーマで語られていった。
「プラチナスターズ」最大の進化点「ヴァリアブルトゥーン」
まず簡単に「アイドルマスター」について振り返っておくと、最初に登場したのはアーケード用に“アイドルプロデュース体験ゲーム”として2005年に稼働した「アイドルマスター」がすべての発端となる。
反響を受ける形で2007年にはXbox 360版の「アイドルマスター」が発売されると、PSP版やニンテンドーDS版などにも展開。ナンバリングタイトルのPS3/Xbox 360「アイドルマスター2」(2011年)発売をはじめとして、それ以外も各プラットフォームで様々な派生作品が生み出されている。
「プラチナスターズ」はシリーズ初のPS4用タイトルであり、トレンドの変化や過去作のモデルが完成形に達していることなどを鑑みて、3Dモデルを一新して制作が進められることとなった。
その表現の大きなポイントとなっているのが、「ヴァリアブルトゥーン」と呼ばれる新たなレンダリング技法。「アイドルマスター2」では「センシティブトゥーン」と呼ばれる独特のレンダリングが採用されていたが、「ヴァリアブルトゥーン」はこれをさらに発展させたものとなる。
「ヴァリアブルトゥーン」は、時間的、空間的な要因によって変化する光と影を、イラストタッチの3Dモデルに違和感なく乗せる技法のこと。単にトゥーン調のシェーディングを乗せてしまうと、大事な情報まで削ぎ落とされて「どことなくチープ」な印象になってしまう問題点を解決するための技法であり、「ヴァリアブルトゥーン」を使用することで、アイドルたちの肌の艶やかさや溌剌とした雰囲気を表現することが可能になっている。
「ヴァリアブルトゥーン」の構成要素はいくつかあり、くすんだ色味にならず、かつ予期しない色味が出ない影色の算出、アイドルの動きから算出される影ディテールの上乗せ、さらに髪、目、頬、そして舌や瞳といったパーツごとに固有の処理をかけること、などがある。これらを組み合わせることで、アイドルを「どの角度から見てもかわいくする」ことが可能になった。
なお具体的にどのような処理がなされているかは本講演では語られなかったが、その「ヒント」として前澤氏は、「3Dモデルに光源が当たるとき、ライトから遠い方に影ができることになる。そこで全部を同じ処理にはしておらず、光源に近い側と遠い側で計算式を変えている」と述べた。
1つの背景演出で楽曲、ステージごとの「活きたステージシーン」を実現
富田氏からは、アイドルが立つステージの演出表現について述べられていった。
背景アーチストの富田氏の仕事は、背景となるステージの作成だけでなく、キャラクターを魅力的に映し出すライティングやエフェクトを総合的に演出し、「活きたステージシーン」を生み出すのもその1つとなっている。
「プラチナスターズ」で取り組んだ新要素は、キャラクターに近い長いライトシャフトと、客席のサイリウムの使用。どちらも会場の空気感や臨場感を出すのに効果的であり、特にサイリウムは会場内を歩けるようになったアリーナステージもあることから、「1本でも多く入れたかった」という。
各楽曲の演出は、「ステージ付き・曲付き」という考え方で制作されている。これはライトの配置は各ステージでだいたい同じようになるようにし、各ライトや大型モニターの変化、演出は曲ごとに設定してしまうというもので、これによって1曲に対する演出シートは1つだけで済んでいる。
特にポイントとなるのはステージのライトで、例えばライブハウス、武道館、アリーナでもグループ化されたライトの位置関係はほぼ同じ。ただし光の向きや強さなどは各ステージで異なっているため、同じ演出シートでも様々な効果が生み出されている。ステージごとに演出を変えてしまうと1曲増えるごとに膨大な作業量が生まれてしまうが、この「ステージ付き・曲付き」という方針で進めることで、「だいぶ気持ちが楽になった」とした。
最後に阿部氏は開発当時を振り返り、開発チーム全体がとにかくユーザーに「驚いてもらうこと」が念頭にあったのだとした。「アイドルマスター」シリーズは早くからアニメ調の3DCG表現に着手し、当時からグラフィックス面が評価されており、PS4タイトルということであればなおさら「クオリティで妥協できない」となったのだという。
講演では前澤氏がヴァリアブルトゥーンで表現された我那覇響を差して「私のワイフです」と自信を持って紹介する一幕もあり、開発陣の並々ならぬ「アイマス愛」が感じられた講演だった。今回の講演内容を知った上で「プラチナスターズ」の表現を見直すとさらに感慨深いので、ぜひ再度チェックしていただきたい。