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e-Sports大会「RAGE Vol.2 GRAND FINALS -STREET FIGHTER V-」観戦レポート
yukadon選手が「RAGE」2連勝を達成! 「ストII」生みの親・西谷氏のミニインタビューも
2016年8月2日 11:57
CyberZは、7月31日に「EBiS303」にて「RAGE Vol.2 GRAND FINALS -STREET FIGHTER V-」を開催した。
この「RAGE Vol.2」は、7月30日および31日に行なわれたe-Sportsの決勝大会で、1日目が「Vainglory」、2日目が「ストリートファイターV(以下、ストV)」となっていた。なお、1日目「Vainglory」についてはレポート記事をご参照いただきたい。
本大会は、予選を勝ち抜いてきた8名の選手によって2セット先取(決勝戦のみ3セット先取)のダブルイリミネーション方式で試合を進行。決勝というだけあってそうそうたるメンバーで争われた大会だったが、そんななかで前回の「RAGEマスターリーグ 玄武杯」において優勝したyukadon選手が連覇を達成する結果となった。本稿では、そのyukadon選手が優勝に至るまでの軌跡をお伝えしていこう。
プロプレーヤーと互角に渡り合える判断力が強さの秘訣!
5月開催の「RAGE」マスターリーグ「玄武杯」優勝のみならず、7月の「EVO 2016」でも世界3位という実績を残し、急速に頭角を現しつつあるyukadon選手(ナッシュ)は、今回も愛用のナッシュで参戦。初戦の相手は、「格ゲー5神」と謳われ、先日CyberZとプロ契約を結んだことでも話題になったオオヌキ選手。
プロになってからも高いランクを維持しているオオヌキ選手の春麗が相手ということもあって激戦を予想していたのだが、実際にはyukadon選手がこれを2セット中1度もラウンドを落とすことなく勝利するという圧倒的な展開となった。注目ポイントは、yukadon選手がVトリガーを駆使してオオヌキ選手の背後に移動し、そこからの連続技で大ダメージを奪うというシーン。試合中に何度かそういった場面があり、オオヌキ選手側はこれにうまく対応しきれていなかった印象だった。
2回戦では、「RAGEマスターリーグ 玄武杯」の準決勝にて名勝負を繰り広げたKazunoko選手(キャミィ)との戦いに。この試合においてはyukadon選手もKazunoko選手もお互いにやることは決まっている、といった感じで、どちらも相手の動きに対応する集中力と反応の速さに光る部分があった。
なかでも3セット目に見せたyukadon選手のジャッジメント・セイバーの使い方が絶妙で、前方ジャンプからのキャノンストライクを狙ったKazunoko選手の動きに合わせて見事に決めたときは会場も大きくどよめいた。そうして最後もyukadon選手が決めきり、Kazunoko選手をルーザーズに追い込んだ。
ウィナーズファイナルの相手はtokido選手(リュウ)。このtokido選手は、世界最強ナッシュとの呼び声高い韓国のInfiltration選手を想定した戦い方を修練していたということで、それに対してyukadon選手がどう対応していくのか、という部分に注目が集まった。
しかしいざ試合が始まるとyukadon選手のリュウ対策がすばらしく、tokido選手になかなか攻撃のチャンスを与えない守りの固さで1セット目をストレートに獲得。2セット目はtokido選手が1-1に持ち込みはしたが、終盤でyukadon選手のクリティカルアーツを食らい、反撃に出たyukadon選手がtokido選手を仕留め、決勝戦へと駒を進めた。
決勝戦では、ルーザーズから上がってきたKazunoko選手と再び対戦。これまでのトーナメントと異なり3セット先取側の勝利となるものの、Kazunoko選手はルーザーズのため、先に3セットを取ってなお、もう1セット取る必要がある。
そんな追い込まれた状況のKazunoko選手だったが、さすがにプロの意地を見せ、お互いが2セットずつ取る展開へと持ち込んでいく。さらに5セット目の最後はどちらも残り体力ギリギリという戦いになったが、最後にyukadon選手がEXソニックブームをキャンセルしたVトリガー(ソニックムーブ・ハイド)でKazunoko選手を仕留め、見事、優勝を手にした。
この決勝戦はお互いがセットを交互に取り合う激しい展開からも見えるように、状況判断やコンボ精度など両者譲らない戦いではあった。しかし、今回はどんな状況にあってもつねに冷静な立ち回りで試合を運んだyukadon選手が一歩先んじた、という形となったようだ。優勝したyukadon選手には、優勝カップと優勝賞金100万円が贈られ、大会はその幕を閉じた。
「RAGE」としては前回の「玄武杯」につづいて見事に2連覇を果たしたyukadon選手。今後まちがいなく世界でも活躍していく選手となるであろう新星に、いち観戦者としてもぜひ注目していきたいところだ。
【おまけインタビュー】「ストII」を作った男・西谷亮氏にe-Sportsについて聞いてみた!
取材の最中、会場にARIKA代表取締役社長の西谷亮氏がゲストとして訪れていたので、今回のイベントにからめていくつか気になる質問をぶつけてみることにした。
西谷氏は、対戦格闘ゲームブームの火付け役「ストリートファイターII(以下、ストII)」の生みの親として知られる人物。そんな氏が、昨今のe-Sportsブームについてどのような思いを持っているのか、ぜひご一読いただければと思う。
――本日は急な取材をお受けいただきありがとうございます。さっそくですが、本日の「RAGE」を観戦されて、どのような感想を持たれましたか?
西谷氏:私は最近EVOにも行ったんですけど、10年前と比較して、対戦格闘ゲームを取り巻く環境が全然違っていると感じましたね。個人的にe-Sportsが盛り上がるというのはすごくワクワクするし、期待もしていますので、ぜひこの方向で行ってほしい。やっぱりみんな喜んでるんですよね。選手も嬉しがっていますし、会場の観客も喜んでいる。すごくいいことだと思ってます。
――環境と言えば「ストII」が全国的にブームだった頃からもかなり変わっているわけですが、そのあたりについて何か思うところはありますか?
西谷氏:少しネガティブな話になりますけど、自分が現役プレーヤーの頃にああいう土壌ができていればよかったな、というのはありますね(笑)。
※西谷氏は有名な全国級のスコアラー(当時のゲームにおけるトッププレーヤー)でもあった
――そのお気持ち、とてもよくわかります(笑)。そんな思いも含めた上で、今、ご自身が何かe-Sportsに対してやりたいことというのはあるのでしょうか?
西谷氏:自分自身、対戦格闘ゲームを何度か作ったことがあるわけですが、こういったイベントを見ていて「また対戦格闘ゲームを作りたい!」という気持ちが再燃してきたんですね。それと同時に自分も選手として出たいなと(笑)。
――選手ですか!
西谷氏:今年で私は49歳になるのですが、来年ぐらいに「50歳対戦格闘ゲーマー」としてデビューしようかな、なんて思いましたね。シニアプレーヤーを舐めるなよと(笑)。
――確かに、年齢による反応速度の低下だ何だと言われていても、そういう部分と関係なく対戦格闘ゲームには年齢を問わず人を惹きつける魅力があります。自分の近所のゲームセンターでも、「いい感じのオジサン」的なサラリーマンが未だに「ストII」をプレイしていますし……。
西谷氏:そういう風に昔からのプレーヤーがプレイされていることは大変うれしく思っています。また、そんな話を聞くと、先ほどの話ともかぶりますが、e-Sportsを盛り上げていく側にもなりたいなと。
――いち西谷ファンとしても、西谷さんの作った新作をぜひプレイしてみたいです。
西谷氏:わかりました。やりましょう!
――えっ、OKなんですか!?
西谷氏:OKです。やります(笑)。
――ぜひ期待しております! 本日はどうもありがとうございました。
最後にとんでもない話が出たような気がするが、あの西谷氏のおっしゃることなので、何かしら考えているものがあるのだろう。いわゆる「西谷信者」である筆者としても非常に興味があるので、こちらについても期待して続報を待ちたいと思う。