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中国上海でChinaJoy 2016が開幕
VRデバイス百花繚乱。プレミアムVR「PS VR」に高まる期待
2016年7月29日 00:14
中国上海で7月28日、中国最大規模のゲームショウChinaJoy 2016が開幕した。こちらは連日40度に達する猛暑と、滝のように降り注ぐスコールが交互に襲ってくるような悪天候が続いているが、会場となったShanghai New International Expo Centerには大勢のゲームファンが詰めかけた。
ChinaJoyは、中国のデジタルコンテンツを監督する新聞出版総署と文化部が主催するゲームショウ。国家主催ということもあり、NeteaseやShandaなど中国大手ゲームメーカーはもれなく参加し、会社の規模に応じて順番にブースを並べ、新作の紹介というよりは、新規ユーザーの獲得や既存のファン向けにコンパニオンやコスプレイヤーを集めて、ファンサービスに勤しむイベントだ。
2015年にコンソールゲームが解禁されてからは徐々に海外メーカーの出展も増え、海外からは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海(SIE上海)、Microsoftという2大プラットフォーマーをはじめ、Electronic ArtsやUbisoft、バンダイナムコゲームスなどが出展している。そのほか、中国の新興メーカーの出展も近年目立っている。
これらのメーカーはゲームショウとしてしっかり新作を準備してステージやブースでの出展を通じて、新作をアピールしていく。近年は徐々に後者の勢いが増しつつあり、良い意味で普通のゲームショウに近づきつつある。
そして今年、もっとも印象的だったのは、会場中、至る所でVRデバイスだらけだったことだ。昨年も幾つか見られたが、今年はその比ではなく、今年のトレンドはVRといっても過言ではない印象だった。
各社ブースでは中国独自のVRデバイスが数多く出展され、デバイスの種類の豊富さという点では、すでに世界一の規模に達していると思われるが、その一方で肝心VRコンテンツはまだまだで、まともなVRタイトルを誰も作らないままデバイス先行で全力で走り出しているところがいかにも中国らしい。
中国のVRデバイスは、HTC ViveやOculus Riftのようなフルスクラッチのデバイスはほとんどなく、ヘッドセットにスマートフォンをはめ込んで使うGEAR VRスタイルのモバイルVRが主流となっている。価格的にも数百元(数千円)で買えるものが中心で、GoogleのCardboardの延長線上にあるような簡易的なレベルに留まる。
実際にいくつか体験してみたが、「おお、これは!」と思われるクオリティを備えているものはひとつもなく、中国のゲームファンは相変わらずクオリティの低いVRコンテンツを遊ばされて可愛そうだと思わざるを得なかった。
具体的には、調整機能がなく、焦点が全然合わなかったり、コンテンツそのものが「スーパーマリオ3D」を模したような質の悪い海賊版だったり、はたまたUIがVRに最適化しておらず、1秒で酔うようなものまで、ダメな例を徹底的に集めた感じで、このままでは遊んだ人の多くが嫌気が差し、一過性のブームで終わってしまうのではないかという懸念がある。
そうした中で、比較的面白いと思ったのは、通常のPCゲームコンテンツをVRっぽくみせる擬似的なVRデバイス「GLYPH」だ。Avegantという北米のメーカーが開発したヘッドセットで、CESで集めたデバイスである。中国では聯絡(Lianluo)が販売を担当するが、ChinaJoy会場では、e-Sportsを楽しむためのギアや、簡易的にVRを楽しむためのギアとして出展していたのがユニークだった。
メインステージではGLYPHを被った選手たちが「オーバーウォッチ」を楽しんでおり、サイバー感たっぷりだった。あの遊び方ではさぞかし酔うのではないかと思って、びくびくしながらバックヤードで体験させてもらったところ、VRヘッドセットではなかった。GLYPHは、頭部に装着すると、目の前に巨大なバーチャルモニターが表示されるタイプの“ヘッドマウントディスプレイ”で、もともと「GLYPH」は、ヘッドフォンとメディアビューアの機能を兼ね備えたウェアラブルデバイスで、OculusやHTC、PSVRのように完全に視界を覆う広く深い視野角を備え、圧倒的な没入感を提供するデバイスではない。
GLYPHは意図的に左右上下から外が見えるようになっていて、外を意識しながらコンテンツが楽しめるようになっている。没入感が削がれるVRとは相性が悪いように感じられるが、聯絡はGLYPHをあくまでVRデバイスとしてVRコンテンツを試遊させていた。筆者も遊んでみたが、外とのコミュニケーションを保ちながらVRコンテンツの見え方をチェックするためのビューアとしてなら最適だなと思ったが、これでVRコンテンツを楽しむ気にはならない。繰り返すが、もともとVRデバイスではないため、頭部の動きと視点の動きが1対1でリンクしておらず、たとえば左に顔を向けると、顔が真横を向くまでに、視点が何回転もするイメージで、これで没入するのは無理だ。逆に言えば、これをVRデバイスとして売りたいぐらい、中国ではVRデバイスに対する需要が大きいのだろう。
そうした中「やはり、クオリティが高いな」と思わせてくれたのは、PS VRだ。SIESHのスタッフに頼んで、中国北京で開発されているPS VRタイトル「Ace Banana」を試遊させてもらった。初のVR作品ということで、まだ開発に慣れていないということだが、しっかり安心して、没入感たっぷりでゲームを楽しむことができた。
具体的なゲーム内容は、カートゥーンタッチで描かれた森林地帯を舞台に、バナナを奪おうとやってくるサルたちを弓矢で撃退していくゲーム。自身はその場から動かず
2本のPS Moveコントローラーを使って次から次に弓矢をつがえてサルに当てていく。サルはなかなかすばしっこく、動きも不規則でうまく命中させるのは難しいが、慣れてくると動きを予測して撃つ感じが楽しい。
守るべき拠点は数カ所有り、その都度、PS Moveのボタンを押して、ワープ移動を行なう。このあたりも、実際に歩かせると酔ってしまうためこういう処理を行なっており、SIEがこれまでのVRコンテンツ開発で蓄積したノウハウが共有されているなという印象を受けた。
個人的には中国のVR市場は、すでに中折れ状態にある印象で、そうした中で、クオリティの高いハード、コンテンツを引っさげてプレミアムVRとしてやってくるPS VRは、中国VR市場の牽引役として機能する可能性が高い。センサーシップでラインナップがなかなか揃わず苦しんでいるPS4の救世主になる可能性もあり、中国ゲーム市場がどのような反応を見せるのか10月13日の発売が楽しみだ。