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デル、Alienware記者説明会を開催。共同創業者のフランク・エイゾール氏が来日
Alienwareの過去から現在、そしてVRに至るまでの未来を語る
2016年7月27日 21:48
デルは7月27日、都内の会場で「Alienware記者説明会」を開催した。説明会にはAlienwareの共同創業者でジェネラルマネージャーのフランク・エイゾール氏が登場。Alienwareの過去から現在、そして未来のあり方について語ってくれた。
Alienwareは創業されてから今年で20年経つとのことだが、まずはその歴史を振り返る。「1996年のPCマーケットは今日の様相とはまったく違っていた」とエイゾール氏。「その当時のキーワードはマイクロソフトのMS-DOS、Windowsだが、ゲーム自体も16ビット、あるいは32ビットで、PCでゲームを遊ぼうとすると、なかなか思うようにパフォーマンスがでないといった問題が存在した」(エイゾール氏)。
このため、ゲームができるようなマシンが欲しいという声に応える形で、Alienwareが生まれたわけだ。「技術的なことは心配せず、サポートのことも心配せず、ひたすらゲームに集中できるようなPCを作りたいという思いから誕生した」(エイゾール氏)。
そして創業して4年間はデスクトップを中心に展開した同社。しかしもっと違うニーズがあるのでは、ということに気づいたという。「LANパーティーで協力プレイをしようとしたとき、デスクトップでは持ち運びが難しい。ここに注目して2002年には初のゲーミングノートPCを開発した。今ではノートPCは当たり前になっているが先見の明あったのだと思う。ノートブックにデュアルのグラフィックスチップを搭載したのもAlienwareだし、デスクトップで4.0GHzのオーバークロックを達成したのも、水冷タイプのマシンを出したのも我々が初めてだ」(エイゾール氏)。
引き続き、7月5日に発表された「ALIENWARE Auora」(以下、Aurora)についての紹介に移る。ミドルタワーのデスクトップPCだ。ビデオカードは2枚差しも可能で、NVIDIAのGeForce GTX 1080も搭載できる。メモリは32GBまで、ストレージは5台まで利用することができる。加えて工場出荷時にはオーバークロックを設定することもできるのだという。
「Auora」は一般的なパソコンとどこが違うのかというと、まず1つは「排熱について工夫がされていることだ」とエイゾール氏。吸気口は筐体の脇と前面に用意されており、上部に設けられている排気口から熱が逃げるようになっている。「優れた排気システムを持っているので、GeForce GTX 1080でもデュアル構成で組むこともできるし、オーバークロックでも十分にパフォーマンスを得られる」(エイゾール氏)。
加えて「Aurora」はVRにも対応しているので、今揃えることもできるし、後々にアップグレードも可能だとのこと。VRのシステムについてはOculus、HTC Vive両方に対応している。ちなみに筐体には工夫が施されており、ビデオカードやストレージはネジを使わずに固定されているので、簡単にシステムの入れ替えができるのも特徴の1つだ。筐体は、レバーを押すとサイドパネルが開くので、それを外して内部にアクセスが可能。電源部が回るようになっているので、これを動かしてビデオカードを取り外しができるようになっている。加えて電源を回していても、筐体が倒れたりと不安定にならないように設計されているそうだ。
なお筐体にはケーブルマネージメントが施されており、前面にまとめてケーブルが出せるようになっているとのこと。加えて6個のUSB2.0ポート、8個のUSB3.0ポートが用意されているが、これはOculus、HTC Viveを接続するにはたくさんのUSBポートが必要になるため。USB3.0ポートのうち2つはパワーシェア機能があり、本体がスリープ状態になっていても電源を供給してくれるようになっているので、コントローラーの充電に使える。
そして「ALIENWARE Area-51」の紹介へ。これにはハイエンド向けのインテルのBroadwell-E(開発コード)であるCore i7-6950X Extreme Editionが搭載されている。このCPUは最大10コア、20スレッドが利用できるだけでなく、Turbo Boost Max Technologyにより、最適なコアを見つけて、それをオーバークロック状態にできるので、最大のパフォーマンスを引き出せる。40レーンのPCI Express3.0が利用できるほか、4チャンネルのDDR4-2400メモリをサポートしており、最大で64GBまで搭載可能だ。
次に有機ELパネルを搭載するノートPC「ALIENWARE 13」についての紹介があった。こちらは残念だが日本では未発売のもの。ただし性能についてはこだわっており、100,000:1のコントラスト比を持つだけでなく、レスポンスタイムも通常は1ミリ秒、最大で2ミリ秒となっている。「レスポンスがいいと、対戦相手よりも優位にゲームを進めることができる」(エイゾール氏)。
最近話題になっているVRについて、Alienwareがどのような取り組みをしているのかについても紹介された。「AlienwareについてはOculusおよびHTC ViveからVR対応の認定を受けているが、これだけ幅広いポートフォリオで認定を取得しているのはAlienwareだけ」と語るエイゾール氏。「創業以来より快適にゲームをプレイしてもらうことを目標に取り組んできた。それと同じくVRについては、これが主流となっていくということを見据えて、VR選任のチームを作った」(エイゾール氏)。
またAlienwareとしては、より幅広い人にVRを楽しんでもらうために、200ドルものディスカウント・プロモーションを展開したり、VRのニーズを意識した製品ロードマップを描いているという。
「ノートブックについてはGraphics Amplifierに対応するものであればアップグレード可能だ。こういう取り組みをしているのはAlienwareが初めてだろう。Graphics Amplifierについては他社も取り組みを始めているようだが、Alienwareにはかなわない。Alienwareについては専用のPCIレーンを設けてGraphics Amplifierに対応させているので、非常に高速で快適にVRを楽しむことができる」(エイゾール氏)。
VRのコンテンツについては、「Loneli Whale」、「Moon Golf」といったコンテンツを独自に作成しているとのこと。VRを手がけている会社とも協業しているほか、バックパック型のPCを使ったソリューションといった新しいコンセプトも追求しているそうだ。
なおノートPCにおけるVR対応だが、エイゾール氏によると、現行のノートPC向けグラフィックスチップを使うよりもGraphics Amplifierを使ってシステムをアップグレードするほうが安価に構成できるので、それを推奨しているとのことだ。
最後にエイゾール氏はe-Sportsについての取り組みについて紹介した。「e-Sportsの領域においてAlienwareはスポンサーになっているし、業界に対していい方向に向かうように働きかけている。プロゲーマーと組んでe-Sportsに最適なマシンを開発するだけでなく、実際の競技やチームに対してもサポートを行っている」とエイゾール氏。「ノートブック用のキーボードであったり、「Alienware Alpha」のような小さなマシンなどは、eスポーツからのフィードバックを受けて開発されたもの」(エイゾール氏)。それだけでなく、e-Sportsの認識をあげていく取り組みを、ゲーマーと共に行なっているという。
エイゾール氏は「Alienwareはデルの中における1つの製品シリーズという位置づけではない。ゲームが伸びているからやってみようという気まぐれでやっているわけでもないし、粗利がたくさん取れるからという計算でやっているわけでもない。Alienwareは特異な存在であり、ほかの製品とはまったく異なる。いろいろな意味でNo,1、そして唯一無二の存在だ。これほどゲームにコミットしたブランドはない。そしてゲーマーの人たちを年頭に日々開発している。こういった意味で、他社とは違うということを理解していただきたい」と語り、説明を締めくくった。
最後の質疑応答で、「これまで数多くのゲーミングPCブランドがあったのに、Alienwareだけがなぜ生き残れたのか」という問いに対してエイゾール氏は「買収したデルも理解があったし、両方の経営陣がAlienwareをもっと伸ばしていこうという機運があったことが大きかった。『Voodoo PC』などほかのブランドは、買収した側も投資をしなくなったり、経営陣がゲーミングPCについて理解がなく、結局ブランドとして消滅してしまうに至った事例が多い。両社の経営陣の温度感が違ったのだろう」と答えた。