【特別企画】

EVO Japan 2024は「ストIII 3rd Strike」に大注目

25年前のゲームが大舞台に帰還! 2D格ゲー最高傑作の歩みを改めて振り返る

【EVO Japan 2024 presented by ROHTO】

会期:4月27日~4月29日

会場:有明 GYM-EX(ジメックス)

チケット:販売終了

 日本国内最大の対戦格闘ゲーム大会「EVO Japan 2024」(以下、EVOJ2024)の開催が間近に迫っている。今年のメインタイトル総エントリー人数は、延べ9,264人となり、EVO Japanにおいて過去最高のエントリー人数となっている。過去に類を見ない盛り上がりだ。

 EVOJ2024のメインタイトルは下記の7タイトルだ。

【EVO Japan 2024 メインタイトル】
Granblue Fantasy Versus: Rising
GUILTY GEAR - STRIVE -
THE KING OF FIGHTERS XV
ストリートファイター III 3rd STRIKE: Fight for the Future
ストリートファイター 6
TEKKEN 8
UNDER NIGHT IN-BIRTH II Sys:Celes

 順番に見ていこう。まず、今回特にエントリー人数が多いタイトルは「ストリートファイター6」と「TEKKEN 8(以下 鉄拳8)」である。2023年6月に発売された「ストリートファイター6(以下、スト6)」のエントリー人数は5,089人で、昨年の「ストリートファイターV」のエントリー人数と比べると+3,292人増の躍進である。

 スト6の躍進は2つの大きな要因がある。1つ目は、「スト6」が格闘ゲームとして優れていたことはもちろんだが、その上で多くのメディアに載せ、興味関心を持つきっかけを作った事だ。発売直後からストリートファイターのプロゲーマー達が全面的に協力して数々のストリーマー大会を盛り上げ、「スト6」とコミュニティーの面白さを、格ゲー界以外の一般大衆に届けた事で「ちょっと遊んでみようかな」と気軽にプレイしてくれるユーザーを開拓したことにある。

 2つ目は、「モダン」操作の追加だ。ストリートファイターを家庭用ゲーム機の標準コントローラーで遊ぶ為に最適化された「モダン」は、家庭用ゲーム機全盛の現代にマッチした。特に必殺技ボタンの実装は「ストリートファイター」の世界を変えた。初心者が練習無しに対戦しても、必殺技ボタンを押すだけで、派手な技が飛び交う戦いが可能で、スト6初心者に対する満足度が非常に高い。「ちょっと遊んでみようかな」と気軽に始めたライトユーザーを初期段階から満足させる事で、増加したユーザーのプレイ継続が、EVOJ2024の参加人数に繋がった。

 2024年1月に発売された「鉄拳8」のエントリー人数は、1,247人で、発売からおよそ2カ月半でこの人数は驚異的だ。「鉄拳8」は、初代鉄拳の発売から今まで、途切れることなく格ゲーコミュニティーを支えてきた格ゲー界の大黒柱である。

 新システムの「ヒートシステム」と前作から導入された「レイジアーツ」と共に、システム面で多数の変更を行っている。前作から大胆にシステム調整が行われ、SNS上では鉄拳の変化に戸惑うプレイヤーの声も上がっている。発売直後の大規模大会という事もあり、今回の大幅調整による有力選手の試合において波乱が起きる事も大いに予想される。

 そして7つメインタイトルの中、「Granblue Fantasy Versus: Rising」、「GUILTY GEAR -STRIVE-」、「UNDER NIGHT IN-BIRTH II Sys:Celes」の3タイトルは、いずれも開発元がアークシステムワークスである。大規模格ゲー大会のメインタイトル枠を3つを埋めてしまう同社の凄まじい格ゲー開発力に驚かされる。

 「THE KING OF FIGHTERS XV」は、1タイトルでプレイアブルキャラクターが59体存在する(DLCを含む)。プレイヤーは使用3キャラを選択し、チームバトルを行う。速い展開の対戦中に的確なコンボ選択行う必要があり、KoFをメインタイトルとして経験したプロゲーマーには強豪選手も多い。

 そんな中、今回注目したいメインタイトルは、「ストリートファイターIII 3rd STRIKE: Fight for the Future(以下、3rd Strike)」だ。「3rd Strike」は、EVOJ2024の7つのメインタイトルの中でも特別なタイトルだ。他のメインタイトルが2021年から2024年に発売された比較的新しいPS5向けのタイトルであるのに対し、「3rd Strike」は25年前に稼働を開始した平成初期のタイトルで、当時のままゲームセンターで使用されるCRT筐体で運営される。

 EVOJ2024に、ゲームセンターが主戦場となっている「3rd Strike」がメインタイトルに選出された理由は、梅原大吾選手が2016年にギネス世界記録「最も視聴されたビデオゲームの試合」に認定された「背水の逆転劇」の存在にある。多くのチャンネルに別アングルや解説付きなどの改変動画が投稿され、ゲーム界隈の枠を超えて話題になり視聴された「背水の逆転劇」は、EVO 2004の出来事で、EVOJ2024では、20周年記念タイトルとして選出されたのである。

 本稿では、EVO 2004の「背水の逆転劇」から20周年記念タイトルとして選出された3rd Strikeの歴史や、EVOJ2024の3rd Strike大会の見所を紹介する。

EVOを象徴するシーン「背水の逆転劇」

 「背水の逆転劇」は、EVO 2004の3rd Strikeのルーザーズファイナルで起きた奇跡の瞬間を編集したもので、左サイドの梅原大吾(以下、ウメハラ)選手のケンと、右サイドのジャスティン・ウォン選手の春麗の戦いである。もうすでに何十回と見たよという格闘ゲームファンも、未見のゲームファンも、まずはこの動画を見て欲しい。

【Official Evo Moment #37, Daigo vs Justin Evo 2004 in HD】

 このシーンは、ウメハラ選手とジャスティン・ウォン選手がお互い1ラウンドずつ取った状態のファイナルラウンドで、ウメハラ選手は、すでに体力が極限まで消耗し、必殺技をガードしても負ける状態まで追い込まれている。勝利のチャンスと判断したジャスティン・ウォン選手は春麗の15連続攻撃を繰り出すスーパーアーツである鳳翼扇を使ってウメハラ選手のケンに襲い掛かる。ジャスティン・ウォン選手の行動を読んだウメハラ選手は、「3rd Strike」の基本システムである、攻撃ダメージをすべて無効可できる「ブロッキング」を試みる。ウメハラ選手は、鳳翼扇の15回連続攻撃をすべて「ブロッキング」で無効化した後、反撃からジャスティン・ウォン選手の春麗の体力をすべて奪って大逆転に成功する。当時は大会中の試合で鳳翼扇を全てブロッキングするプレイは偉業であり、その上で最大コンボを決めるケンの姿は、観戦者達の想像を遥かに超える出来事で、ウメハラ選手がEVOの大舞台で起こしたこの奇跡に会場内は大歓声に包まれる。

 「背水の逆転劇(EVO moment #37)」の影響は、EVOの規模拡大や、対戦格闘ゲームコミュニティー(FGC)の発展にも貢献したという証言がいくつも存在する。ウメハラ選手と対戦したジャスティン・ウォン選手は、2014年11月22日のEvent Hubsに掲載されたインタビューにて「今振り返ると、最高の瞬間でした。当時の多くの(格ゲー)タイトルが瀕死状態にある中、新しい伊吹を対戦格闘ゲームコミュニティーに吹き込んで救った可能性がある」と述べている。

 また、「背水の逆転劇(EVO moment #37)」を機に、EVOの開催規模も大きく拡大した。2004年当時のEVOは、大学の体育館が会場とした中規模イベントであった。「EVO moment #37」の映像に写り込んだ会場の様子からも、当時のイベント規模を伺い知ることが出来る。EVOは翌年の2005年から会場をホテルに変更すると、年々規模を拡大。今年のEVO 2024の会場は「ラスベガス・コンベンション・センター」になるまでに成長している。

 ちなみに米国のFGCにおいても「背水の逆転劇(EVO moment #37)」は大事にされている。「背水の逆転劇(EVO moment #37)」の10周年の記念イベント「MOMENT 37 RELOADED」が当時と同じ会場で開催され、ジャスティン・ウォン選手とウメハラ選手のエキシビジョンマッチを行い「EVO moment #37」の再現に成功している。

【Daigo's FULL PARRY vs Justin Wong @ Moment 37 Reloaded】

格ゲー戦国時代に生まれた「スト3」。リリース直後は格ゲーコミュニティから厳しい評価を受ける

 格闘ゲームコミュニティにとって特別なタイトルといえる「3rd Strike」だが、その道程は決して平坦なものではなかった。ベースとなっている「ストリートファイターIII(以下、スト3)」は、大ヒットとなった「ストリートファイターII」シリーズの最終バージョンとなる「スーパーストリートファイターII X -Grand Master Challenge-」(以下、スパ2X)」の正統後継として開発がスタートしている。

 並行して開発されていた「ストリートファイターZERO(以下 ZERO)」が先行する中、1996年2月に「ストリートファイターIII -NEW GENERATION-(以下 スト3)」が、新マザーボード「CP-SYSTEM III(以下 CPS3)」の第2弾としてリリースされる。

 「スト3」は、目玉の新システム「ブロッキング」を引っ提げてゲームセンターで稼働を開始した。稼働当初は「スト3」のリリースを熱望していたファン達が筐体の周りを取り囲んで大盛況であったが、その光景も長くは続かなかった。

 その理由の1つとして、「スト2」時代に戻された基本システムがある。

 当時のゲームセンターで主に稼働していたカプコン製の2D格ゲーは、空中ガードが可能なものが多かった。空中ガードがある格ゲーは、積極的に飛びによる攻撃を行うことができ、アグレッシブな展開になることが多い。

 しかし、「スト3」では空中ガードが削除され、地上戦をメインに戦うシンプルなものに戻ってしまった。また、「ストリートファイター」シリーズにおいて伝統的に強力な攻撃である「投げ」に対する防御手段として、「スパ2X」や「ZERO」に実装された「投げ受け身」も削除された。

 対戦相手が仕掛ける「投げ」に対する対応方法が極端に少なく、対応する立場のプレイヤーは「強過ぎる投げ」に、強いストレスを感じることになった。「スト3」はシンプルな対戦の駆け引きを行える半面、「スト2」時代と同様の「投げ」の強いストレスをプレイヤーに与えてしまい、初中級者が取っつきにくいゲームとなってしまったのだ。

 次に大きな理由として、「スト3」の目玉となる新システム「ブロッキング」が、実戦で運用するには操作が難し過ぎたことだ。

 「ブロッキング」は、格ゲーの初中級者が使うにはタイミングがシビアで、ブロッキング成功後も技を当てる為に素早く操作する必要があり、上級者との差が広がるシステムとなっていた。

 「ブロッキング」に対する対抗手段は「投げ」となる。メーカーは調整の為に上記で指摘した「投げ受け身削除」を行い「ブロッキング」による対処は「投げ」としたことが容易に想像出来る。結果的に「ブロッキング」が難しく「投げ」の対処も難しいゲームとなってしまい、この大味なバトルバランスが新規の定着に大きな障壁となった。

 そして、「スト3」が受け入れられなかったもう1つの要因は、当時のゲームセンターには「ストリートファイター」以外の格闘ゲームのコミュニティーが形成されていたことだ。

 3D格ゲーでは「バーチャファイター3」、「鉄拳3」、「デッド オア アライブ」、2D格ゲーは「ヴァンパイアハンター」、「エックスメン VS. ストリートファイター」、「サムライスピリッツ 天草降臨」、「ザ・キング・オブ・ファイターズ '96」そして「スパ2X」等、格闘ゲームは群雄割拠の時代に突入しており、「スト2」シリーズの続編というだけで受け容れられるような状態ではなくなっていた。

 ゲームセンターでプレイヤーから厳しい評価を受けた「スト3」は、コミュニティーも形成されず稼働後しばらくしてプレイヤーが激減した。カプコンもゲームセンターにおける「スト3」の稼働状況が思わしくない事懸念してか、「スト3」発売から早期である8カ月後の1996年10月に続編「ストリートファイターIII 2nd IMPACT -GIANT ATTACK-(以下 2nd Impact)」を投入する。

 「2nd Impact」では、削除した「投げ受け身」に変わるシステムとして「グラップルディフェンス」、SAゲージを使用して強化必殺技が使用可能になる「EX必殺技」を実装し、細部の調整を行ったものの、プレイヤーの評価は再び厳しいものだった。

 「スト3」で低評価の要因だった「空中ガード無し」と「ブロッキングが難し過ぎる」点には手は加えられず、「投げ受け身」の代替システムである「グラップルディフェンス」の受付け時間も短かった為に難しいゲーム性のままだったからだ。

 当時の私が生活していた地方都市では、格ゲー全盛期でありながら、「2nd Impact」が稼働していないゲーセンもあった程だ。後に発売される「ジョジョの奇妙な冒険(1998年12月)」が登場するまでCPS3のゲームを見る事は希であった。

 「スト3」と「2nd Impact」は、「ストリートファイター」の正統続編であっても厳しい評価を受けたのである。

通常必殺技とEX必殺技
通常の上段足刀蹴りだと
吹っ飛ぶだけ
EXの上段足刀蹴りだと
手前に跳ね返り
昇龍拳などで追撃可能

「3rd Strike」で徐々にプレイヤーに評価されるタイトルに

 「スト3」と「2nd Impact」は苦難の時期を過ごす中、次々と新しい格ゲーがゲームセンター内に登場する。「スト3」シリーズで苦戦中のカプコンも新タイトル「ポケットファイター」や、他シリーズのバージョンアップである「ストリートファイターZERO 3」「ヴァンパイアセイバー」「マーヴル VS. カプコン クラッシュ オブ スーパーヒーローズ」を輩出し、ゲームセンターを賑わしていた。

 そんな中、1999年5月に「ストリートファイターIII 3rd STRIKE: Fight for the Future」が発売される。

 「3rd Strike」は、「スト3」と「2nd Impact」も影響もあってだろうか、発売後しばらくは苦戦していた。

 そんな中、対戦格闘ゲームの火付け役でもあるゲームセンター専門情報誌「ゲーメスト」が、出版元の新声社倒産のあおりを受けて、1999年9月30日号を最後に急遽廃刊となる。毎年開催される「ゲーメスト杯」は、当時の格ゲーマーの目標となっており、ゲーメスト廃刊は「3rd Strike」を含め、日本の格ゲーコミュニティーは落胆する。

 そんな不運な立ち上がりとなった「3rd Strike」だが、時間がたつに連れて良い対戦ゲームであると評価を受け始め、ゆっくりとではあるがプレイヤー人口が増え続けていた。プレイヤーの好評を受ける対戦ゲームになっていたのである。

 まず注目すべきは、投げ周りのシステム調整である。

 「2nd Impact」までのカプコン格ゲーの登場投げの操作は、横方向+強パンチ等で、操作直後に投げの成立判定が行われる仕様だった。投げが成立しない場合には通常技が出る仕組みで、投げを試みるリスクが少なかった。

 一方で、「3rd Strike」では、通常投げの専用操作として「弱パンチ+弱キック」が導入された。発生が2fで打撃重ねに負けるようになり、投げ失敗モーションの隙が21フレームほど発生するという大きなリスクを背負わされるようになった。

 さらに、投げを無効化する「グラップルディフェンス」についても受付時間が「2nd Impact」よりも長く設定され、通常投げが弱体化された。

立状態から弱パンチ+弱キックで通常投げを試みる
投げ動作が入りスカりモーションが出る

 一方で強化された部分がある。投げダメージの増加だ。積極的に攻める側が「投げ」を使用すると、前作の2nd Impactよりもリターンが得られる強化となっている。「投げ」システム周りの調整は絶妙のバランスになっており、格ゲーが面白くなると言われる定説「格ゲーは攻め側が評価されるべき」に合致する調整となっている。

 次に注目すべきは「ブロッキング」の簡易化である。

 「2nd Impact」までのブロッキングは成立後の硬直時間が短く、素早い判断と操作が必要となり、使いこなすのが難しかった。「3rd Strike」のブロッキングは、成立直後の硬直が若干長くなり、判断、操作する余裕が生まれた。これにより格闘ゲーム初級者でも判断は可能となり、ある程度ゲームに慣れてくれば、ブロッキング後の操作も問題なく行なえ、上級者との差が開きにくい仕様となる。

 ブロッキングの使い勝手が良くなり、上級者との差が狭まる調整は、上級者側の不満要素となるが、追加のシステムとして、ガード中にブロッキングが可能な「ガードブロッキング(以下 赤ブロ)」が導入され、上級者も喜ぶシステム追加でバランスを取った。

 赤ブロを成立させるには、ガード後に3f以内に入力する必要が有る。これは上級者でも難易度が高く、リスクも大きいことから、使えるからといって中級者と上級者の差が大きく離れる事はないが、赤ブロ成功時は通常のブロッキングよりも高い満足感が得られるという、使い手を満足させる絶妙なシステムとなっている。

 空中ブロッキングにも調整が入った。「2nd Impact」の空中ブロッキングは、下方向と前方向でブロッキング成功後のキャラの挙動が変化していたが、「3rd Strike」では、空中ブロッキング成功時の一定時間硬直後、そのままジャンプの軌道を取る。プレイヤーは飛び込みから空中ブロッキングを成功させることで、相手の対空技を無効化し、ジャンプ攻撃を確定させる場面を作りだせる。

 他にも、技が相打ちになる場合の強弱で優先順位が決まる「技レベル」、コンボの繋がり易さ、リープアタックの入力の簡易化、ゲームスピードを若干遅めに調整等々、「2nd Impact」から2年半の時間を要する調整は、「ストリートファイター」シリーズの1つの完成形とも言える仕上がりになっていた。

 こうした改良により「3rd Strike」は、ゆっくりではあるが着実にプレイヤー人口が増え、各地のゲームセンターでは、「3rd Strike」のゲームコミュニティーが開催する大会が開かれるようになる。2002年には、日本の最大規模の格ゲー団体戦大会「Cooperation Cup」が開催されるまでに成長する。

「Cooperation Cup」「闘劇」そして「EVO」。「3rd Strike」は格ゲーシーンに欠かせない存在に

Cooperation Cup

 「Cooperation Cup」は、ゲームセンター「GAME-NEWTON」主催で開催される、日本最大規模の「3rd Strike」の5on5団体戦である。

 「Cooperation Cup」は「3rd Strike」プレイヤーが集結する世界大会の1つであり、2002年から昨年の2023年まで18回を数え、現在の大会会場は「幕張メッセ 国際展示場」になる程、規模が拡大している。2024年に開催された「第18回 Cooperation Cup」では、参加人数は425人を超える日本の最大規模の格ゲー団体戦大会である。

 「Cooperation Cup」はゲームセンターコミュニティーの大会という事もあり、大会運営は業務用ビデオゲーム筐体(以下 筐体)で行われる。「3rd Strike」は、沢山の家庭用ゲーム機に移植され、Playstation 5、Xbox Serise X|S、Nintendo Switch、PC(Steam)でプレイ可能だが、3rd Strikeコミュニティの主戦場は、2024年現在でもゲームセンターでありCRT筐体である。

 大会中はゲームセンターと同じく2台の筐体を背中合わせに配置した「対戦専用台」スタイルで行われ、筐体の両サイドに5人のチームメンバーが集結する。試合中にみられる各チーム作戦会議中は、独特の緊張感を有し、仲間の勝敗に一喜一憂する様は個人戦の大会と異なり独特の興奮がある。

第18回 Cooperation Cup (アーカイブより)
会場の雰囲気
チームが向かい合わせの筐体を境に分かれる
ゲームセンターで稼働するCRT筐体が彼らの主戦場

 「Cooperation Cup」は「3rd Strike」に向き合ってきたプレイヤー達がチーム優勝の為に全力で戦いに挑む。大会もLIVE配信が行われ、アーカイブも残っているので、予習を兼ねて鑑賞するのもいいだろう。3rd Strikeの雰囲気やEVOJ2024に参加するであろう数々のプレイヤーを解説込みで鑑賞できる。ストリーマー大会を楽しめた読者であれば「Cooperation Cup」を楽しめるはずだ。

【STREET FIGHTER III 3rd STRIKE「The 18th Cooperation Cup」】

 「ゲーメスト」廃刊で「ゲーメスト杯」も消滅するも、1999年12月に元ゲーメスト編集者をコアメンバーとしたアーケードゲーム専門雑誌「アルカディア」が創刊されていた。格ゲー情報は「アルカディア」に集まっており、FGCの情報を再び得られるようになる。その後、2003年に「ゲーメスト杯」の規模を超える格ゲー全国大会となる「闘劇」がエンターブレン主催で開催される事となる。

 「闘劇」は全10回開催され、その内 3rd Strikeは、2011年の東京ゲームショウで行われた「闘劇'11」以外の9回全てに「3rd Strike」が選出される。

第1回 闘劇 DVD

 また、同時期に開催されているEVOも2003年から2008年まで連続でメインタイトルに「3rd Strike」が選出され、2009年に家庭用ゲーム機に「ストリートファイターIV」が発売されるまで、EVOにおける「ストリートファイター」シリーズの枠を維持し続けたのである。

注目のEVOJ2024では「3rd Strike」は個人戦。レジェンドのオオヌキ選手が本格始動

 EVOJ2024の「3rd Strike」は個人戦で、エントリー人数も「459人」に登り、「Cooperation Cup」と同規模の大会となる。そんな中、「3rd Strike」のレジェンドプレイヤーとして知られるオオヌキ選手が、YouTubeでユニークな配信を開始した

【「【ストリートファイターIII 3rdゲーセン配信】獣道以来のEVOJapan優勝への道!】

 オオヌキ選手は、「ストリートファイター6」のストリーマー大会にも参加し、新規の格ゲー視聴者にも認知される「ストリートファイター」プレイヤーだ。ウメハラ氏主催のワンマッチイベント「獣道」で見せた「3rd Strike」のパフォーマンスが記憶に新しい。「3rd Strike」最強クラスの弟子犬(ケン)氏の挑戦者としてオオヌキ氏(春麗)の名が上がった。

【Daigo Presents "Kemonomichi" - Nuki Joins the Battle!!】

 獣道イベントのPVにおいて、弟子犬氏とオオヌキ氏の印象を、複数の「3rd Strike」プレイヤーに対してインタビューを行っているが、弟子犬氏の強さに対する圧倒的評価に対して、当時、「3rd Strike」から若干離れ気味だったオオヌキ氏には、実力よりもポテンシャルに対する「期待」のコメントが集中しており、対戦前の他プレイヤーの評価から、弟子犬氏とオオヌキ氏との間には、ある程度の差を感じる内容だった。

 しかし、当日のオオヌキ氏のプレイは圧巻だった。大会会場に訪れた関係者や、大会視聴者等は、予想を超えるオオヌキ氏の「仕上がり」に驚愕した。

【KEMONOMICHI - Deshiken VS Nuki】

 2018年に開催されたカナダカップにおいても、カプコンUSA公式大会であるPS4版「Street Fighter 30th Anniversary Collection」の3rd Strike部門で優勝を果たしている。対戦環境がアーケード筐体でなくとも優勝しており、本番に向けて仕上げる力は、大会形式に左右されない実力を持つ。EVOJ2024も非常に楽しみである。

EVO Japan 2024 3rd Strike 観戦情報

 「3rd Strike」の試合は、4月27日(土)と4月28日(日)の2日間で開催される。EVOJ2024の大会会場に訪れる方は、EVOJ2024のトーナメント表 start.ggを参照して観戦して欲しい。

start.gg STREET FIGHTER III 3rd STRIKE

4月27日(土)
11:30 ROUND1 Pool B501~508 ※ ROUND2以降は、 start.ggを参照のこと

4月28日(日)
10:00 Semifinals Pool I501
14:00 Finals Pool KZ501

大会スケジュール(27日、28日)
Day 1
Day 2

 LIVE配信で観戦される方は EVOJ2024公式のスケジュール を参照のこと。

LIVE配信
配信スケジュール
キャスター
MC

配信サイト
  EVOJapan01 (Twitch)
  EVOJapan02 (Twitch)
  EVOJapan03 (Twitch)
  EVOJapan04 (Twitch)
  EVO Japan 2024 presented by ROHTO (YouTube)

激動の格ゲー史を生き残った数少ないゲームの1つである「3rd Strike」。EVOJ2024でも熱い戦いを繰り広げる事間違いなし!

 紹介してきたように「3rd Strike」は、「スト3」シリーズの受難の時期を乗り越え、今なお多くの格闘ゲームファンに愛されるタイトルとなっている。

 EVOJ2024の大会運営委員長であるユニバーサルグラビティー代表 松田泰明氏は、ゲームセンター「GAME-NEWTON」の経営者であり、数々のゲームイベント運営を成功に導いてきた功労者だ。「GAME-NEWTON」では、3rd Strikeを含めた多種多様のゲームイベントを開催し続けている。EVOJ2024は家庭用ゲーム機がメインの大会にも関わらず、3rd Strikeはコミュニティーが求めるアーケード筐体で運営できるのは、松田泰明氏の力があっての事だ。3rd Strikeのメイン選出で、松田泰明氏が媒体で発言する「いつか闘劇を復活する」という夢も、実現に近づいていると確信できる。

 EVOJ2024の3rd Strikeは、プレイヤーもコミュニティーも運営も最高の役者が揃っている。1つのゲームを「25年間」攻略し続けたプレイヤー達を観戦し、「3rd Strike」コミュニティーの熱を皆さんに感じて欲しい。