インタビュー

“純国産ストラテジー”の真骨頂! 「クリスタル オブ リユニオン」インタビュー【前編】

ストラテジーゲームに「ストーリー」を入れこむチャレンジ

ストラテジーゲームに「ストーリー」を入れこむチャレンジ

両氏自ら「禁忌」だと語るストーリー要素。プレーヤー自身の物語と「英雄」の物語が平行して進むイメージだ

――変えさせてくれ、となったことでガラっと変わりましたか?

瀧澤氏: ガラっと変わりましたね。その直前まではもうちょっとストラテジーゲーム寄りの作品になっていて、ストーリー部分はそこまで力を入れていませんでした。でも、それがきっかけでより大きなチャレンジが始まったというか。

結城氏: 今回の売りでもあるJRPGスタイルの純国産ストラテジーゲームということで、ストーリーを入れてみたかった。MMOってそもそもそんなに直線のストーリーを語れないというか、自分で物語を作っていくゲームだと思うのですが、そういったところを覆すようなことをやりたいなと思って。

瀧澤氏: そうですね。わりと「禁忌」に挑戦しているというか。

――禁忌ですか。

瀧澤氏: ストラテジーゲームは自分も今まで作ってきましたけど、ストーリーはそんなに必要ないと思っていましたし、プレーヤー同士がドラマを作るジャマになってしまうのではないかとすら考えていました。ただ、絶対にストーリーが合わないとは思っていなかったので……とは言え「ここまで入れたか!」という感じにはなっていますね。

――それはビジュアル、アートワークをガラっと変えたことによって、本来ストラテジーゲームに必要とされてこなかった、ストーリーが生まれてきたということですか。

結城氏: そうです。2人で話し合っていくなかで、というのが中心ですが、やはり日本産であり日本で勝負するストラテジーゲームなのに、ほかと同じことをやってもしょうがないというのがまず大きいです。キャラクターを掘り下げることで魅力的に見せて、キャラクターのシナリオを作り込むことで外枠の世界観がどんどん埋まっていく、みたいなところをやりたいと。ストーリーについては今後も追加していきますが、極論を言うとストーリー部分は見なくてもいい。見てもらわなくてもプレイに支障はないよ、というコンテンツにはなっている。

瀧澤氏: とは言うものの、本当はすごく見て欲しいんですけどね(笑)。つまり、ストラテジーゲームにはストーリーはいらないと思っている人なら、ゲームの進行にはそれほど影響がない作りになっている、ということです。

【6人の「英雄」】
クローディア
クー・フーリン
ジャンヌダルク
ベオウルフ
ヘラクレス
平将門

ストーリー進行だけでなく、ゲームシステムの説明も各キャラクターが行なう。より世界観に入りやすい配慮だ

――でも、読み始めると気になっていく。

瀧澤氏: そうです。当初は私もそんなに必要ないと思っていましたが、実際に読んでみると物足りないんですよね。最初は1キャラクターにつき5話が設定されていたのですが、これだと「全然足りないね」となり、今では10話ぐらいまで話が入っています。現場では、それでも足りないという話をしているほどです。

結城氏: もっとクロスストーリーとかも入れていきたいですし。

瀧澤氏: ストラテジーゲームってどうしても難しいゲームで、RPGが好きな人たちがプレイすれば面白いゲームだとわかってもらえると思うのですが、そのハマる前にやることが多すぎる。そのせいでどうすればいいかわからない、と離脱している人が結構いると考えています。

 ただ、ストーリーがあることによって、RPGが好きな人たちがそこに触れることで、「ここは気になるからつづけてみよう」とか、そういった動機にはなり得るだろうということで、そこをしっかりと作っているという感じですね。

 また、ストーリーもそうですが、内政マップではNPCキャラクターたちが歩いていて、そのキャラクターをタップすると日常会話だったり、ゲームのヒントになるような会話が読める仕様が入っています。これはRPGの普通の村とか、城とかからヒントを得て作っています。

 こういったアプローチは今までストラテジーゲームを作ってきた中ではトライしてこなかったことなのですが、要素として非常に親和性は高いと思っています。

 ストラテジーゲームは空き時間があるゲームなので、建設などを終え、最初は数分の待ち時間からだんだん数時間に増えていくなかで、空いているときに今までのゲームだったら同盟員と喋ったり、つぎにどんなことをやろうかって考えたりすることしかできませんでした。そこにストーリーを見ていくようなコンテンツがさらに加わっていって、よりゲームに厚みが増しているのかなと。

 一方で、厚みは増しているのですが、やはりストラテジーゲームなので、ストーリーを見ているときに敵に攻められたりするとヤバイというのはあります(笑)。こればかりは避けようがない(笑)。

結城氏: ストラテジーにもう1個のベクトルを加えたいと思って作っています。さっきも出ましたが親和性は高いので、これまで欠落していた部分を補うという意味でも。

――ずっとストラテジーゲームをプレイさせるのではなく、キャラクターのストーリーを入れることで、普段ストラテジーゲームになじまない人たちにも届けられると。

瀧澤氏: そうですね。ストラテジーゲームを作っていて思ったのは、プレイスタイルとして「街作りが楽しい、でも戦争はしない」という日本人が結構多かったことです。そういう人たちは協力要素の部分だけ遊んで戦争はずっとやらないのですが、今回そういった人たちがより遊べるようになっているます。

結城氏: あとは先ほど瀧澤さんもおっしゃっていましたが、導入部分をとても重要視してます。というのも、やはりストラテジーゲームというのは難しいのです。僕らはもう慣れてしまっていますが、ライトユーザーの8割ぐらいは敬遠してしまっているところがあるんじゃないかと。

 導入部分でゲームの世界に入らせて、チュートリアルでスムーズにつないでいく工夫もしていて、最初に「英雄」というプレーヤーのパートナーを選べるのですが、6人いるどの英雄でも、選んだ英雄が直接チュートリアルで説明してくれる。

 そういった細かいところにはこだわっています。なので、チュートリアルは6パターンあるんですよね。こうすることで、プレーヤーとキャラクターとの関わりを、少しでも長い時間楽しんでもらいたいなと思っています。

 1人遊びでも十分に楽しめるように、英雄だったり街の人だったり、サブキャラクターと「一緒にゲームを楽しんでいる感じ」みたいなところはこだわっています。私はほかにも、アニメーションなども作らせていただいているのですが、そこに素晴らしい声優さんをアサインして喋ってもらったり、そういう部分にも力を入れています。

濃厚なストーリーが面白い、世界観重視の内容に

本作において、英雄は「呼びだされた」存在。この背景にも、しっかりとした設定があるのだという

――先ほど「禁忌」というお話が出ましたが、オンラインのストラテジーゲームは「プレーヤー同士のコミュニケーションが生み出すストーリー」を中心に進めるゲームなので、「キャラクターのストーリー」は本来は邪魔になりますよね。だからこそ「禁忌」であると。

瀧澤氏: ゲームをプレイしていただくとわかりますが、このキャラクターごとに用意されたストーリーは、どれもなんとなく付けたものではなくて、練り込まれたストーリーとなっています。テストプレーヤーには「見ていて気になる」、「面白い」という評価もいただけました。

 どちらかと言えば、今までのゲームだと英雄に自分の好きな名前をつけて遊んでいたと思います。そして、自分の想像した英雄を、あるいは自分自身でロールプレイを楽しむ、といった感じだったと思いますが、そこにガッツリ設定のあるストーリーとキャラクターが出てきて、この世界についての話にも踏み込んできている。

 ストラテジーゲームの世界設定ってだいたいあいまいなんですよね(笑)。しかし、「クリユニ」はこの世界についての説明もしっかりあって、それがストーリーを進めていくと徐々に明らかになっていきます。たとえば、英雄はなぜ生まれたのか。これにもしっかりとした設定があります。

結城氏: そういったところを含めて、キャラクターをひとりひとり掘り下げていくことで、いずれはキャラクター同士を絡ませていくようなクロスストーリーにしていくことも考えています。

 あとは、特定のキャラクターでストーリーを一定まで進めると何かが入手できたり。しかし、根幹は好きなキャラクターと一緒に遊んで下さいというところですね。英雄はいつでも変えられるので、たくさん見てもらえればなと。

瀧澤氏: それぞれの英雄の視点でこの世界について物語があり、それこそRPGでいうマルチストーリーのような感覚で楽しめるようになっています。キャラクターによって全然話の流れも違いますし、英雄ごとに目的も違う。ストーリーが進み、より世界観のことがわかってくると、今度はほかのキャラクターのストーリーも気になります。1~2キャラクターを全部見た人は、6キャラクター全話を見たくなる可能性はすごく高いと思っています。

結城氏: ぜひやってほしいですね。

――そのストーリーを見る方法は、とにかく英雄と一緒に行動することでしょうか。

瀧澤氏: 英雄の変更はいつでもできますが、使っていた英雄で何をしたかによって親密度が上がっていきます。

 建設をしたり、魔獣を攻撃したりでどんどん上昇していって、一定値になるとレベルアップして新たなストーリーが開放されると。いずれアップデートでクーフーリンとベオウルフが一定レベル以上に達していると、さらに新しいストーリーが開放される、といったようなものも予定していて、アドベンチャーゲームみたいな体験になってます。

――逆に言うと、そういうストーリー開放を目的としてプレイしてもいいということですよね。

瀧澤氏: そうです。今回、RPGが好きな人にもオススメできる理由は、その辺りのストーリーがしっかりあって、物語も楽しめるようにできているからです。

――先ほど瀧澤さんがストーリーはもともと要らないのではないかと考えていたということですが、実際に完成間近の「クリユニ」を見て、ご自身としてどう感じていますか。

瀧澤氏: 自分は戦うのも好きですが、ストーリーもかなり気に入っています。正直言うと、最初の方はストーリーもまだ手探りだったうえ、5話しかありませんでしたし、「これだったらあんまり必要ないんじゃないの?」と思っていた時期もありました。でも、そこから練り上げた結果、今は「続きはまだか!」となっています(笑)。

結城氏: 実際に配信する際も、もう少し早めにストーリーを見せてもいいのでは、と。

瀧澤氏: そうですね。もともとはおまけという位置づけだったので、最初は1カ月くらいプレイして5話見られる、みたいなイメージで作っていて。でも今は最初の1時間で5話ぐらい見られてもいいんじゃないか、ぐらいまで変わっていますね。

――ストーリーが最初から見られる状態であれば、その分プレーヤーも世界に入っていけますね。

瀧澤氏: 「RPGが好きな人に向けて作ろう」と思うと、これがテンポよく開放されていかないと、気になる前にプレイしなくなってしまう。最初のプレイでそれなりに世界観に触れ、ストーリーを見て、英雄に愛着が持てるようなところまで見せてあげたいなと思い、チューニングしている最中です。

――それは楽しみです。

瀧澤氏: シナリオはおもに結城さんの方が重点的にやってるので、「がんばって! 早く俺15話まで見たいんだけど」みたいな(笑)。大変だと思います。

(安田俊亮/泊 裕一郎)