インタビュー
「√レター ルートレター」プロデューサー安田善巳氏インタビュー
“ピンクシナリオ”がある? 昔懐かしくも真新しいミステリーアドベンチャー
(2016/2/3 01:19)
角川ゲームスは2月2日、Taipei Game Show SCETブースにおいてPS4向けミステリーアドベンチャーゲーム「√Letter ルートレター」のステージイベントを開催した。また、既報のように、ステージイベント後にはプレスカンファレンスを開催し、世界初公開の情報を含め、ゲームの紹介を行なった。中文繁体字版はすでにローカライズ作業もスタートしており、発売は日本と同じ2016年春を予定。
今回、角川ゲームスが「√Letter ルートレター」のイベントを、台湾で行なったのは大きな意味がある。1つはテキストアドベンチャーという日本独自のゲームジャンルは、テキストベースというゲームの特性から、これまでほとんどローカライズされておらず、その結果、日本のゲームが好きな台湾の人でもあまり遊ばれていないこと。もう1つはそういうジャンルであるにもかかわらず、今回、台湾で繁体中文版を日本との同時期発売を目指していることだ。
このアジアでの垂直立ち上げを成功させるために、イラストレーターに「ときめきメモリアル」や「ラブプラス」のイラストを手がけた箕星太朗氏、声優に元老級の大物である日高のり子さん、皆口裕子さん、井上喜久子さんという、アニメファン、ゲームファンならピンとくる大物を起用。しかも「角川ゲームミステリー」シリーズの女優役として中長期での起用を依頼しており、末永く楽しむことができる。
今回のイベントでは、角川ゲームス代表取締役社長兼「√Letter ルートレター」プロデューサーの安田善巳氏が登壇し、安田氏や、箕星氏、ディレクターの長谷川氏などが語る映像「クリエイターズボイス」や、ローンチトレーラーを流しながら、安田氏の出身地である島根を舞台したミステリーアドベンチャーであること、日髙のり子さんをはじめとした著名な声優にヒロインの声を演じていただいていること、角川ホラー文庫の作家がシナリオを担当している本格ミステリーアドベンチャー作品であること、そして最後に「皆さんがびっくりされる大どんでん返し」を用意していることなどを語った。
イベント後に行なわれた記者発表会では、安田氏が台湾メディアに向けて改めてゲームコンセプトを説明した。
「きっかけは、僕自身が島根県出身だったこと」と切り出し、島根県は日本の中では無名な県で、現在、県を盛り上げるために県をあげて世界に情報をしようとしており、その一環としてゲームと地方のコラボができないかと相談が来たことからプロジェクトがスタートしたという。
ジャンルとしては「日本の伝統的なミステリーアドベンチャー」とし、アドベンチャーでありながら、シミュレーション要素も加えており、それらの要素をミックスさせた点が特徴としている。
プロジェクトを成立させたのは、“現場の力”。30歳~40歳台の現場スタッフが、マーケット的に縮小傾向にあるため、なかなか市場にでなくなった青春時代を描いたアドベンチャーゲームを挑戦したいという想いがあり、ど真ん中直球の人間ドラマのアドベンチャーを描こうと言うことに決まったという。
島根県はこのプロジェクトに対して全面的に後援してくれており、県内に実在するお店、たとえば学校周囲のそば屋や喫茶店、駄菓子屋などが、実在する人物と共にゲーム内に登場するという。
気になる主人公は、ヒロインとかつて文通してた男の子、消息が途絶えた彼女と再び文通をしたいと思い、島根県を訪れるものの、部外者に冷たく、誰も口を利いてくれない。主人公は手探りで情報を集め、人々から手がかりを引き出しながら、彼女の行方を追っていく。
公開されたトレーラーによると、ヒロインは人を殺めており、罪を償わなければならない。「これでお別れです。さようなら」と意味深なキーワードを残して消息を絶っている。こうしたバックグラウンドひとつとっても、単なる青春学園アドベンチャーではなく、謎を解くというミステリー仕立てになっていることがわかる。ゲームはマルチエンディングとなっており、彼女との文通の内容により、ストーリーと結末を変えることができるという。
既報のように、ヒロインとなるのは、日髙のり子さんが演じるAYAのほかに、皆口裕子さん演じるSHIORI、井上喜久子さん演じるYUKARIの3人が発表されている。安田氏は「ときめきメモリアル」や「ラブプラス」で、幅広い年齢層の男子に絶大な支持を集めているイラストレーターの箕星太朗と、元老級の声優の力を借りて、「日本を舞台にした人々のドラマをシリーズ化していきたい」と力強く語っていた。
最後に、発表会後に行なわれた質疑応答の模様をお伝えしたい。
――「角川ゲームミステリー3人娘」というコンセプトは、声優がデジタル世界の女優となり、その女優がゲーム内のキャラクターを演じる仕組みだと思いますが、「ルートレター」1作で終わりではなく、それ以降も作品も考えているのですか?
安田氏:はい、僕らとしては、アドベンチャーを1作作って終わりではなく、様々なテーマを見つけて作り続けていきたいと考えており、すでに声優の皆さんにもそういうオファーをしています。
――この3人の女性ユニットはゲームだけですか? アニメなどのメディアミックスについてはいかがですか?
安田氏:今回の僕らの取り組みは、アニメとかコミックで得意としているコンテンツをすごく愛して下さるユーザーの方に、アドベンチャーゲームという一種の“メディア”を提供するという考え方なので、当然親和性の高い“メディア”に広げていく努力はしていきたいと思います。
――マルチエンディングということですが、ヒロインの喜怒哀楽を表すアイコンが5つ並んでいましたが、これは5つのエンディングがあるということですか?
安田氏:5つ以上のエンディングを用意している。1990年代のアドベンチャーゲームの名作を楽しまれた方なら、「あ、これね」と笑っていただけるような様々な種類のエンディングが入っています。
――アドベンチャーゲームをあまりプレイしたことのない人たちにどのようにしてその魅力を伝えていくつもりですか?
安田氏:個人的に衝撃を受けたのは「HEAVY RAIN(ヘビーレイン)」でした。ハイエンドのアドベンチャーゲームなんですが、手法は日本のアドベンチャーゲームと同じで、おそらくハイエンドの手法を取り入れることで成功したというのは理解しているが、我々のようなアニメ的、コミック的な2Dのアプローチでも地道にコツコツ努力していけば、評価してくれるユーザーの方もいらっしゃるのではないかと考えています。2次元ユーザーという言葉もありますが、日本のアニメ、コミック的なアプローチで丁寧に良いものをゲームという方法論で提供することで、新しいユーザーを開拓していければと思います。
――1990年代の名作アドベンチャーゲームを、2016年に再現したいということですが、それは具体的に何を意味しているのですか?
安田氏:難しい質問ですね(笑)。先ほどもお伝えしましたが、「これあったよね?」という感覚といえばいいのか、昔のアドベンチャーゲームには、“ピンクシナリオ”というものがあって、マルチエンディングの中にも笑いを取るような、お笑い系のエンディングがあったり、今回は角川ホラー文庫の作家がシナリオを書いているので、ホラー系のエンディングがあったり、そういうものをいくつかちりばめています。「ふふふ、昔のゲームこういうのあったよね」、という要素が入っているという理解をしていただければと。
――「角川ゲームミステリー」の最初の作品となる「ルートレター」の名前の由来は何ですか?
安田氏:もともとこの企画は、箕星太朗氏くんというキャラクターデザイナーが、こういうゲームを作りたいと僕に提案してくれたんですが、その箕星くんと僕とディレクターの長谷川の3人で考えた名前です。名前の由来ですが、ひとつは箕星くんは手紙にどうしてもこだわったんですね。e-mailじゃなくて彼が手紙でゲームを作りたい、手紙に色んな想い出があると思うんですけど、手紙にこだわり、手紙で謎を解くシステムを考えたんですね。“ルート”とは平方根、因数分解のことですが、手紙を因数分解して謎を解く、だからルートレターと付けました。
――このゲームには、AYA、SHIORI、YUKARIの3人とも出演するのですか? 出演する場合、それぞれの関係性はどうなりますか?
安田氏:まず、3人は出演します。関係性なんですけど、可愛らしい女の子の地方を舞台にしたミステリーアドベンチャーなんですが、“大どんでん返し”がありまして、この3人がそのキーパーソンになります。ですので、関係性についてはまだ詳しくお話できません。
――3人がそれぞれゲームのヒロインということですか? それとも誰かひとりがヒロインですか?
安田氏:今回のヒロイン役が誰なのかというのもストーリーに関わるので、すいませんが、内緒にさせてください(笑)
――繁体中文発売のアナウンスがありましたが、文字数でいうと何文字ぐらいですか? テキストアドベンチャーとしての規模感が知りたいです。
安田氏:かなりたくさん合って、文字数をお伝えすると、SCE台湾のスタッフのモチべーションがあがると思うので、もう少し後でお話ししたいと思います(笑)。