インタビュー
NEXONがモバイルへの完全移植を目指す「メイプルストーリーM」
開発の苦労話がうかがえる開発者インタビューも同時にお届け
(2015/11/16 00:00)
韓国NEXONは、G-STAR 2015にAndroid/iOS用MMORPG「メイプルストーリーM」を出展した。本作は、NEXONが躍進する原動力となったWindows用MMORPG「メイプルストーリー」の完全移植を目指すモバイル版。G-STARには、パーティやギルド、エリートダンジョンへの侵入など一部の機能を制限したイベント用のビルドが、NEXONブース内のモバイルゲームゾーンに出展された。
また、会期中には、ゲーム部分の企画を担当しているNSCの代表取締役社長のカン・ヒョク氏と、サーバーの開発や監修を行っているネクソン開発本部室長のカン・ウォギ氏から、開発に関する話を聞くことができたの合わせてお伝えしたい。
PC版のボリュームとモバイルの気楽さを併せ持つゲームを目指す
カン・ヒョク氏らによれば、「メイプルストーリーM」の開発は1年3カ月前から進められており、現在の完成度は8割程度。すでにサービスを開始している「メイプルストーリーポケット」は「メイプルストーリー」のIPを使ったスタンドアロンのゲームだが、「メイプルストーリーM」は多人数プレイが可能なMMORPGとして作られている。
短い時間だが、筆者も実際に触ってみることができた。移動は画面左下部にある仮想十字キーを使う。右の下部には通常攻撃やスキル、アイテム、システムなどのボタンが並んでいる。もっとも大きなボタンは、キャラクターが近くにいるときにはチャット、敵がいる時には攻撃ボタンと状況によって役割が自動的に切り替わる。
エリア間の移動にはワープポータルを使う。ポータルには同じマップの中の別の地点に一瞬でワープできるものと、間にローディングが入って別のエリアに移動するものとがある。戦闘は、敵に近づいて剣のマークがついた大きなボタンを押せば、後はオートアタックになる。大きいボタンの周りには3つのスキルボタンもある。
画面は、PC版とほとんど変わらない印象だが、モバイルの小さな画面でも見づらくならないよう、多少要素を減らしてシンプルにまとめられているように思えた。
レイドボスのジャクムに行くには、マウントに乗る。画面下にあるマウントのボタンを押すと、その時騎乗可能なマウントのアイコンが表示される。そこから1頭を選んで乗ると、すぐにレイドボスエリアにワープするかどうかを聞いてくる。エリアに入るとすでに他のプレーヤーが戦っていた。筆者はすぐに倒されてしまったのだが、その後どうやら討伐には成功したようだ。
開発者インタビュー「最初は5つの職業と120のコンテンツでスタートしたい」
――「メイプルストーリーM」のMに込めた意味はなんですか?
カン・ウォギ氏: モバイルのMで、それ以外に特別な意味を含んでいるわけではありません。でもせっかくご質問いただいたので、もう少しほかの意味がないか考えてみます。
――PC版の完全移植を目指すということですが、PC版で遊んでいる人がモバイル版で遊ぶ場合、データの共有はできるのですか?
カン・ヒョク氏: PC版のデータを連動させることは考えていません。マーケティングは一緒にできるかもしれませんが、PC版のデータを引き継ぐことは考えていません。
――PC版と「メイプルストーリーポケット」があり、さらに「メイプルストーリーM」となると、データ連動がない場合ユーザーが分散してしまうのではないですか?
カン・ウォギ氏: 「メイプルストーリー」のIPを使ったゲームはいままで持続的に配信されてきました。それぞれの長所や短所がありますので、それぞれのユーザーの好みに合わせてお互いに相乗効果が期待できるように持っていきたいと思います。韓国ではすでに「メイプルストーリー2」もサービスされていますが、それぞれのユーザーに各ゲームごとの楽しさを体験していただいて、シナジー効果が出ていると思っています。
――このモバイル版はここから始める人をユーザーに想定しているのですか?
カン・ウォギ氏: 「メイプルストーリー」はモバイル版が初めてという方でもすんなり入ってきていただけると思います。最近のRPGゲームは3Dが中心で、2Dの横スクロールRPGはあまりないということがあります。また、チュートリアルもPC版より丁寧に提供することなど、モバイルから「メイプルストーリー」を始める人のための準備をしています。
――移植に関して、画像データなどのアセットは使いまわしているのですか? それとも専用に作り直しているのですか?
カン・ヒョク氏: キャラクターのクオリティをダウンさせることなく、PC版のキャラをそのまま使っています。だから私たちが「メイプルストーリーM」の開発で重点を置いているのは、PC版のデータをコンバートするときに、ロスなしにそのままもってくるためのツールや、どれくらい早くできるかを研究しました。モバイルだからクオリティが落ちるのではなく、PC版と同じクオリティのプレイを楽しんでいただけるかと思います。
――モバイル版を開発するうえで、苦心しているところを教えてください。
カン・ヒョク氏: 最適化の作業です。メモリの容量が限られていますので。「メイプルストーリー」にはたくさんの攻撃スキルがあります。それがメモリのなかでどのくらいの容量を占めるか。そういった限定された容量の中で最適化を進めるのが一番困難なところでした。
――PC版は長くサービスされているが、そのフルボリュームが入るのか、それともローンチサイズでスタートして、その後バージョンアップされていくのですか?
カン・ウォギ氏: フルボリュームを移植するのは難しいと思っています。最初は5つの職業と、120のコンテンツから始めたいと思っています。PC版の特定時期のバージョンを持ってきて、それを移植するという形ではなく、いままで長らくライブサービスをしてきておりますので、その中でよかったものを皆様に提供させていただきます。
――良かったものというのはどういう部分ですか?
カン・ウォギ氏: PC版をサービスしてきて、一番重要だと思っているのはユーザーがより親密度を持て入っていただけることと、ユーザーが簡単にプレイできることだと思います。2003年から2015年までのすべてのコンテンツを通して、それらの基準でコンテンツを厳選して、モバイル化する作業をしています。
――「メイプルストーリーポケット」にあったようなモバイルならではの便利機能は実装されるのでしょうか?
カン・ヒョク氏: 自動狩りは基本的に実装しようと思っています。マップからマップへ移動するときの自動移動の機能も入れようと思っています。具体的にはペットに乗って移動することになります。そしてマップのなかで一緒にプレイしているユーザーや同じギルドに所属しているユーザーがどこにいるのか、位置の確認が一目でできるようなシステムを提供したいと思っています。こちらはサーバーベースのゲームになりますので、「メイプルストーリーポケット」とは違って、自動狩りをする時モバイルをつけっぱばしにしておく必要がないようにしようと思っています。
――PCのオンラインゲームでは、プレイ時間が長くなりがちですが、それをモバイルで遊ぶと本体がかなり熱を持ってしまうのではないかと思います。そこへのフォローはあるのでしょうか?
カン・ヒョク氏: 先ほどの説明した自動狩りの機能がありますから、ずっとつけっぱなしにしてスマホを操作していなくても、ユーザーのスタミナが残っている範囲で自動で狩りをしてくれます。レベルアップのためのストレスを最小限に収めようとしました。
――将来のアップデートに備えてどの程度の容量を確保しておけば快適に遊べるでしょうか?
カン・ヒョク氏: 今の段階では正確にお答えできなくて申し訳ありません。現在まさに最適化のプロセスを経ているところで、今後はもっと減らせると思っています。「メイプルストーリー」は12年間サービスされていて、膨大なコンテンツがあります。それをどんなふうに最適化していくかが私たちの課題だと思っています。ダウンロードの容量で申し上げますと、300から400MB程度の容量を考えています。データをすべて解凍した時にも1GB以下になるのではないかと想定しています。最適化作業を進めて、なるべく容量が大きくならないように努めています。もしスペックの低いスマートフォンの場合は、クオリティをやや落としたコンテンツで対応する方法もありますし、圧縮を解除するときにダイナミックローディングという方法を使って容量を減らせるのではないかと思っています。
――「メイプルストーリー」は北米でも人気がありますが、グローバルサービスの予定はありますか?
カン・ヒョク氏: 開発チームはグローバルサービスを念頭に置いてワンビルドの体制で開発をしています。国別に配信していく場合の、国別に対応しなければならないシステムも、開発において考慮はしています。ただ、今の段階でどの国でサービスを行なうかは全くの未定です。
――日本でリリース予定はありますか? また、日本でリリースされる時もそのままのタイトルになるのでしょうか?
カン・ウォギ氏: まだ各国別の配信時期が定まっていないので、日本でいつ配信されるのか日程について詳細に申し上げることはできません。海外に進出するときに、このタイトルのままでいくのか、それとも変えるのかはまだ検討しているところです。
――ありがとうございました!