インタビュー
プロゲーマーStanSmith氏に学ぶ「G310」の“最強”の使い方
あなたは上げる派?上げない派? “StanSmith打ち”の極意を聞く
(2015/8/12 00:00)
ロジクールが7月30日に発売したゲーミングキーボードの新製品「G310 コンパクトメカニカルゲーミングキーボード」。同社のフラッグシップモデルであるフルサイズのゲーミングキーボード「G910」をベースに、日本を含むアジア地域で嘱望されてきたテンキーレスモデルとなる。
「ROMER-G メカニカルキー」&コンパクトボディという時点で“即買”を決めるPCゲーマーも多いようだが、フラッグシップモデルの「G910」とどこがどう違うのか、同じコンパクトモデルとして最強のライバルである「Razer BlackWidow Tournament Edition」と比べてぶっちゃけどうなのか。
今回は、「G310」の伝道師であり、Logicool GアンバサダーのStanSmith氏に「G310」のウリを聞いた。
「G910」との違いはサイズだけではない! 見落としがちな小さな違いアレコレ
まずは、兄貴分である「G910」との違いから見ていきたい。「G910」と「G310」のカタログスペック的な違いは、フルサイズかコンパクトか、それに伴う重量(「G910」1,530g、「G310」765g)と価格(「G910」22,870円、「G310」14,630円)しかない。このため、何が何でもフルサイズを希望するという人以外は、コンパクトで安くて軽い「G310」がオススメとなる。
と思っていたら、StanSmith氏は「実はそれだけではないんです」という。大きな違いは、軽量化に伴う打鍵感の変化だという。「G310」では、「G910」からテンキーがなくなっただけではなく、ボディに使われている素材とデザインが変わり、着脱式の大きなパームレストからコンパクトな固定式パームレストに変わった。機能的にもRGBバックライトイルミネーションから青一色のイルミネーションとなり、ARXコントロール用の台座は固定台座から、取り外し可能な引き出し型に変わり、“誤操作の元凶”とされてきた左袖のマクロキーもなくなった。様々な点で軽量化を施した結果、体積的にはテンキー分だけしか変わっていないにも関わらず、重量は約半分になっている。ムダをそぎ落としたスリムボディになっているわけだ。
この結果、StanSmith氏によれば、「キーの押し心地がわずかに異なる」という。StanSmith氏はLogicool Gアンバサダーとして「G310」の魅力を伝えるために、すでに2台所有し、日々使い回しているというが、ロジクール独自のメカニカルキー「ROMER-G」でも打鍵感はわずかに異なるという。これについては良し悪しではなく好みの問題ということで、この違いはぜひ店頭で触り比べて確かめて欲しいという。
もうひとつの懸念点としては、キーボードを前に押し出すように使うタイプのゲーマーは、軽さがゆえにキーボードが動いてしまう可能性があることに注意して欲しいという。いずれもプロゲーマーらしい意見だ。
StanSmith氏が語る「Razer BlackWidow Tournament Edition」との違い
続いてPCゲーマーにファンが多いRazerのテンキーレスメカニカルキーボード「Razer BlackWidow Tournament Edition」との比較ではどうだろうか。
筆者が持ってきた「Razer BlackWidow Tournament Edition」をStanSmith氏に見せると、すぐさま手に取り、「コネクターが抜けるのがいいですよね。ずっと前からロジクールにはそう伝えているんですが」と、着脱式のUSBケーブルを最初に褒めた。
「Razer BlackWidow Tournament Edition」のウリであり、メカニカルキーボードの代名詞である“Cherry青軸”を彷彿とさせるRazer独自の「Cickly(緑軸)」については、自身、かつてメカニカルキーボードが大好きで、ハッピーハッキングキーボードを2台も使っていたことを踏まえた上で、「この打鍵感が好きな人には良いと思いますが、ゲームをするには音が煩いし、10分で飽きます」とかなり手厳しい回答だった。
また、個人的な印象と断った上で、「Razer BlackWidow Tournament Edition」のキーキャップは、長時間ゲームをしていると手がぺたぺたし、スペースキーが小さすぎて「変換キー」を押してしまいそうになるのがマイナス点だという。
一方、「G310」の伝家の宝刀である「ROMER-Gキー」は、特殊な質感のキーキャップが長時間使っても手に汗が付かず、内側がえぐれるようにデザインされたキーキャップはどの位置を押しても揺らがず確実に入力が可能で、かつ最小限の押下で入力されることによる連打のしやすさなどをアピールしてくれた。現在はとにかく「ROMER-Gキー」に惚れ込んでいるという雰囲気が伝わってきた。
Logicool GアンバサダーのStanSmith氏は、立場上「G310」を推薦すべき立場にあるが、それを抜きに1人にプロゲーマーとして客観的に判定しても、「G310」をオススメしたいという。
ちなみに8月7日にオープンしたロジクールのアンテナショップ「ロジクールGアリーナ」では、プロゲーマー名でデバイスを選べるコーナーが用意されており、StanSmith氏も名を連ねているが、彼がオススメしているデバイスはマウスは「G502」、キーボードは「G310」となっている。
上げる派、上げない派とは何なのか!? “StanSmith打ち”の極意を聞く
そんなStanSmith氏は「G310」をどのように使っているのだろうか? そこで以前「StanSmith持ち」を見せて貰ったときのように「StanSmith打ち」を見せてくれるようにお願いしてみた。
するとStanSmith氏は、「古澤さん(明仁氏、ロジクール シニア クラスターカテゴリーマネージャー、コアゲーマー)は上げる派ですが、僕は上げない派です」と切り出した。そもそも「上げる」、「上げない」とはなんだろうか?
答えはキーボードの“足”ことチルトスタンドを使うか使わないかの話で、StanSmith氏は、チルトスタンドを立てずにベタ置きで使っているのだという。
余談になるが、筆者も長らく記者の仕事をやっている関係上、商売道具であるキーボードには人一倍気を遣っている。メインの原稿書きマシンは富士通のLibertouch、ゲーミングPCは、ロジクールの「G910」、Razerの「Razer BlackWidow Tournament Edition」、SteelSeries「M800」を気分で使い分けている。ただ、正直に告白すると、足を立てないで使うという選択肢の存在を知らなかった。
StanSmith氏によれば、チルトスタンドを立てない理由は、試合時にキーボードを操作する際、チルトスタンドを立てていると、それに合わせて手首を上向きに角度を付ける必要があり、その角度を付けた状態でキー入力を長時間行なうことは手の負担になるからだという。また、立てない方がキーを奥までグッと押し込める感覚があり、その手応えが気に入っているのだという。
それを踏まえた上で「G310」の持ち方は、まずチルトスタンドを立てずに、自分に対して並行にキーボードを置く。次にWキーに中指を置いてホームポジションを確認してから、そのまま手首を降ろし、手根部をパームレストにグッと押しつける。手首をパームレストに固定したままキー入力を行なうという安定性を重視したスタイルだ。
これはWASDキー+αを素早く正確に押すことが重視されるPCゲームならではのスタイルと言えるが、実際にやってみると手首が固定されている感じが若干窮屈だが、チルトスタンドを立てていないためか、従来より少し奥にあるWキーをグッと押し込むと、未だかつて経験したことのないような安定感がある。
ちなみに、StanSmith氏は、これまで使っていた「G910」とは様々な点で感覚が異なるため、チルトスタンドを立てたり、手首を浮かせたりして、さらに効率の良い打ち方にもチャレンジしているという。
最後にStanSmith氏は、「『G310』は、『G910』のテンキーレスモデルとして発売までに1年掛かりました。かなり前から発売日を知っていましたが、これまでは発売を求めるコメントが届いても言えなかったので、ようやく公に言えるようになりました。PCゲーマーの皆さんには、遊び道具であり、武器であるデバイスにぜひこだわっていただいて、お店で触ってみたり、友人に貸して貰ったりして実際に試してみて、自分に合ったデバイスを見つけ出して使っていただきたいです。プロゲーマーのような上手い選手が使っているデバイスもオススメです。彼らのように活躍できるようになるかもしれませんよ」とコメントしてくれた。
この夏、ゲーミングキーボードを探しているPCゲームファンは、ぜひ「G310」を試してみてはいかがだろうか。