インタビュー

1990年代の熱き「バーチャファイター」ムーブメントを描く!

舞台「TOKYOHEAD ~トウキョウヘッド~」上演記念
原作者・大塚ギチ氏と当時のバーチャトッププレーヤーふたりの“超コア”バーチャ座談会!(前編)

日程:3月18日~3月23日(20日と21日は1日2回公演)

会場:東京グローブ座

チケット:S席6,800円、A席(3階)5,800円(全席指定、税込)

フライヤーより

 ディー・バイ・エル・クリエイションは、1990年代のセガ「バーチャファイター」ムーブメントを描いたノンフィクション小説「TOKYOHEAD RE:MASTERED(大塚ギチ著)」を原作とした舞台「TOKYOHEAD ~トウキョウヘッド~」を、3月18日~23日まで東京グローブ座にて上演する。チケットはS席が6,800円、A席(3階)が5,800円。窓口はチケットぴあローソンチケットイープラスサンライズオンライン、コンビニ(セブンイレブン、ローソン、ミニストップ、ファミリーマート、サークルK・サンクス)店頭。

 舞台「TOKYOHEAD ~トウキョウヘッド~」は、1990年代に“社会現象”を巻き起こした3D対戦格闘「バーチャファイター」ブームを題材にしたノンフィクション小説「TOKYOHEAD RE:MASTERED」を原作にしたゲームセンターコメディ。人気劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠氏の書きおろしによる新作公演で、最新モーションキャプチャー技術を応用し開発されたリアルタイムCG再生システム「DL-EDGE(ディーエルエッジ)」を駆使。舞台の上に対戦台を2セット用意。大型スクリーンによる演出では、出演者による“ガチ対戦”シーンもあり、結果によって直後の展開が変化するなど、斬新かつ意欲的な試みが随所に散りばめられている。

 キャストは村川絵梨さん(トーコ役)、尾上寛之さん(ブンブン丸役)、吉沢亮さん(柏ジェフリー役)、今井隆文さん(シゲル役)、諏訪雅さん(スワ役)、石田剛太さん(イシダ役)、酒井善史さん(店員役)、土佐和成さん(トサ役)、亀島一徳さん(オーツカ役)、菅原永二さん(新宿ジャッキー役)、石田明さん(池袋サラ役)。脚本・演出はヨーロッパ企画の上田誠氏、制作協力はプラグマックス・エンタテインメント。企画・製作はディー・バイ・エル・クリエイション。

 弊誌読者層には、もはや説明不要といっていい「バーチャファイター」ムーブメント。既にチケット購入済みという方も少なくないだろうが、ここでは上演を記念して弊誌独占記事を前後編にわけて掲載したい。前編は、原作者の大塚ギチ氏、ゲームプレイの技術指導を担当されている当時のバーチャトッププレーヤー東京メガネさん、邪影丸さんによる座談会。後編は上田誠氏インタビューとバーチャプレーヤーおふたりの収録現場および稽古中の技術指導レポートをそれぞれお届けする。

やはりバーチャ神はいる!? ~大塚氏とバーチャトッププレーヤーのふたりの“点”が“線”に~

(左より)邪影丸さん、大塚ギチ氏、東京メガネさん

――まずは、大前提となる部分からお話をうかがいたいと思います。「TOKYOHEAD」は1995年に出版されました。舞台化は、どういった経緯でオファーが届いたんでしょうか?

大塚氏:演出家である上田さんからお話がありました。「TOKYOHEAD」は1995年、2000年(新装版)、2013年(文庫版「TOKYOHEAD RE:MASTERED」)と3回作り直しているんですけど、上田さんがたまたま大学生時代、2000年に出した新装版をたまたま読んでくださったらしくて。元々「バーチャファイター」とかアーケードゲームにあまり興味がある方ではなかったらしいんですが、「バーチャファイター」シーンは非常に熱いので、いつかどうにかしてみたいと思っていたらしく……で、ディー・バイ・エルさんと上田さんは「前田建設ファンタジー営業部」という前の舞台でご一緒しているんですね。

 プロデューサーの鈴木さんが「次、何かやるんだったらお題はありますか?」ときいたところ「『TOKYOHEAD』というのがあるので『バーチャファイター』の舞台をやりたい」という話から始まって、ボクのところに来たという流れなんですよ。ボクがたまたま上田さんを存じ上げていたのと、ディー・バイ・エルさんの技術、モーションキャプチャーを使ってリアルタイムで映像を出す技法とか、セガサミーの子会社で「バーチャファイター」のモデリングデータが使えるとか、お話をいただいたときに、いわゆる普通の舞台よりも、はるかに面白いものができると感じたので、一も二もなくOKしたというのが経緯ですね。

――それはいつ頃のお話ですか?

大塚氏:もう2年前くらいになりますね。結局ボクのほう云々というより、ひとつあるのは上田さんとかヨーロッパ企画さんのスケジュールが相当先まで押さえられているわけですから、そこでの調整ということだとは思うんです。なかなかお会いするまでに時間もかかりましたし。その間、ボクは特に何をしているわけでもなく。ただ、動き始めると急速に“ガッと動く”っていうような状況。本当に、この半年ですよね。

――半年というのは、相当濃密な時間になりますね。

大塚氏:ボクは舞台を経験したことがないので……映画やTVドラマの仕事しかしたことがなかったんですけど、それに比べて短期間だなぁっていうのは、特に思いますね。映画やドラマの場合、脚本に凄く時間がかかっちゃうんですけど、今回はそういうことでもない。稽古場でバッ! と作っていくので。要するに、この1カ月で作っているという感じですね。この1カ月の間に、東京メガネ、邪影丸を含めて色々な人間たちが一気に召集されていくっていう。

――えっ、みなさん半年前から参加されていたわけではない?

大塚氏:いえいえ(一同)。もう本当に直前です。

――それ、土壇場すぎて(東京メガネさんと邪影丸さんは)拒否権がなかったんじゃないんですか?

邪影丸氏:あとでそういう話になると思うんですが……自分の場合は「やる人、いないかな?」という話があったらしいんですけど、そっちで出たとき個人的に「俺を誘ってくれればいいのに」くらいに思っていて(笑)。直接いわれてはいないんですよ。で、東京メガネがそういう話をしていて……。

東京メガネ氏:ギチさんに言われて。(今は)全然触っていないゲームをどう教えればいいのか迷って、「2」をやっている邪影丸に……。

邪影丸氏:相談がきた。で「いけますよ」と。

大塚氏:俺もきいたら「いける」っていうので集まった。

邪影丸氏:それが、くる3日前くらいですか?

大塚氏:そうそう。そもそもをいえば、まず筐体を稽古場に入れるっていう話自体が最初に確定しているわけじゃないし、舞台上でゲームを役者さんたちが生でやるということも決まっていたわけではないから、それ自体を稽古場でどんどん作り上げていくというプロセスが、この1カ月な訳ですよ。舞台の作り方というか、演出家のやり方ってさまざまで、上田さんの場合は稽古場でシナリオを固めていくやり方。映像の使い方、「バーチャ」の使い方、プレイをするのか否かは稽古場で決まっていった訳ですよね。

 で、そのなかで「じゃぁコーチは必要だよな」とか、そういう話が後から出てきて「じゃぁどうする?」といったとき、結局バーチャプレーヤーたちに対するパイプは製作の方々にない訳で、当然ボクになる。ただ、さすがに初代と「2」を現役でプレイできる人を探すのは非常に難しく、同時に(稽古が)平日であることも含めて「さてどうしようか」とバーチャプレーヤーたちと相談したら「いや、適任がいますよ。無職がいます!」と(一同笑)。

邪影丸氏:そういう言い方した!?(笑)。

原作者の大塚ギチ氏。技術指導のおふたりとは運命の邂逅(?)

大塚氏:コーチング能力には定評があって、当時全国に弟子を輩出した男で、かつ今時間があるぞ! っていうので、ちょっと連絡を取ろうと。その日に連絡を取ったんだけど、当然長い間触っていないので、できるどうかっていう意味での不安感もあるし、同時に……今でこそこうやって稽古場に何度もくれば雰囲気はわかる訳ですけど(その時点では)海のものとも山のものともわからない状況で、さすがに東京メガネ君もすぐに「うん」とはいってくれる訳もなく。

――悩まれたのでしょうか?

東京メガネ氏:自分でいいのかなっていうのと、それまでギチさんが声をかけた人が「無理です……」みたいな。

大塚氏:「さすがに全キャラはできない」って。そりゃそうですよね、20年前のゲームなので。

東京メガネ氏:それで自分に回ってきて「どうしてもやって欲しい!」っていわれたので……まぁ、引き受けざるをえないかなと。

大塚氏:その日の夜、とりあえず……(一緒に)飲んだね(笑)。

東京メガネ氏:飲みましたね(笑)。

――抱え込むときのセオリーですね。とりあえず飲もう。

大塚氏:飲んで、話をして……。今、邪影丸がXbox 360で「2.1」の研究を延々としているのは事前に知っていた。ただ、仕事もある人間なので、お願いできるのかどうかと思ったら、ここ(東京メガネさん)とここ(邪影丸さん)でそういう話のやりとりがあって。ボクから「もし可能だったら、休みだったりしないかな?」と思って連絡したら、わりと「待ってました」段階。

邪影丸氏:そもそも半年前くらい……今回の企画で手伝ってくれる高田馬場のゲームセンター「ミカド」に「バーチャファイター2」があったんですけど、色々な都合でなくなってしまったんですね。自分としては、やりたいと。家庭用でいまだにひとりで研究しているのですが、調べていると色々と新しいことがわかってくる。それを売り込みたいので「ミカド」に「バーチャファイター2」を置いてくれないかという話をしたんです。表ざたにはなってないんですけど、半年前くらいに1回ギチさんに連絡をとって「ミカド」に売り込みにいったことがあったんです。そこでつながった。それも含めて、今回は半分立候補に近いですね。

大塚氏:連鎖的にはつながっているところがあるんです。たとえばボクと彼(東京メガネ)自体、それこそ20年ぶりの再会をしているわけです。

――20年ぶりに連絡がきて、いきなり無理難題が降ってきた?

大塚氏:いや、その前にボクらが「バーチャファイター3tb」世界大会(昨年9月に新宿ネイキッドロフトで実施。選抜された48人の強豪・古豪による“今”の戦いを現地だけでなくUstreamで全世界に配信。今後も大会の実施がアナウンスされている)をやったときに参加していて、そこで久しぶりに再会していたり、色々な“点”があるんですよ。“点”があって、それがここでこういう形で“線”になっている、というのはありますよね。

東京メガネ氏:ボクも邪影丸とは前回ここで教えるとき15年ぶりくらいに会ってるんです。一気にギュッ! と色々つながっている。

大塚氏:今回の舞台の中身にも抵触する話なんですけど、ボクは当時“新宿のプレーヤー”たち、いわゆる鉄人と呼ばれている人間たちを中心に描いていて、それ以外、たとえば町田や関西のプレーヤーたちを考慮していない訳ですよ。その新宿勢に対して“アンチ”というか、敵対意識を持っていた人たちがこのふたり(東京メガネさんと邪影丸さん)だったりする訳ですよ。

 そういう意味でいうと、もし当時、ボクとふたりがいて、鉄人たちがいたら、彼らからするとボクは鉄人側の人間になる。そういうのがあって、今だから普通にお酒も飲める……というわけじゃないけれども(笑)、時間の経過によってずいぶんと変わったなぁと思います。

邪影丸氏:正直、ギチさんと俺って現役当時は話をしたことが1回もない。一応、そういう人がいて、見たことはありますし。たぶんギチさんも人づてか、もしかしたらそこはかとなく知っているくらいなんですけど、それがここ半年とか1年くらいでつながっている。

大塚氏:ボクが「2.1」を終えて「3」のアタマで「バーチャファイター」から離れてしまっているので、プレーヤーたちをほとんど知らないという状態です。東京メガネ君が全盛期だった頃は後で知ることになる訳です。そういうブランクを2年くらいで取材しなおして、色々知り合いになったりとかして、全体を把握できて「じゃぁもう1回書き直そうかな」と思っていたときに舞台の話をいただいて……「バーチャファイター」ってなんか、そういう変な運とか縁とか、不思議な部分があるゲームだなってよく思うんです。よくいう「バーチャには神がいる」的なことって、意外とちょこちょこあったり……しないですか?

邪影丸氏:縁っていうのはたぶん凄くありますね。神がいるんじゃないか? っていうくらいのもありますし。人同士の縁、そことそこがつながってるんだ、つながったんだ! というのは物凄くありますね。

大塚氏:たとえば、こうやって筐体や基板をいじれるようになったのが、ボクが2年前「ノーコンキッド」というTVドラマの製作現場に入っていたからできる訳ですよね。それまでっていうのは、そこまでのテクニック、技術がなかった。それがあるから、今こうやって取り扱えたりとかメンテナンスをする仲間たちがいたりとかする訳ですよ。それ以前って、全然そういう付き合いがない。だから、本当にいいタイミングでこの舞台が始まってるし、やれてるんだなぁっていう気がします。

――シンクロニシティ的な感覚でしょうか?

邪影丸氏:僕は今日、初代をプレイしていて発見がありましたよ(一同爆笑)。

東京メガネ氏:この時期に「初代の大会、俺勝てるわ!」って。アホだよ(笑)。

――それ伏せておいて、あわよくば「ミカド」に持ち込んで大会を?

邪影丸氏:持込でひとりで優勝して。マッチポンプ(笑)。

大塚氏:「2」は家庭用でちゃんと移植されているのでできるけど、初代ってできないので基板でやるしかない。

(豊臣和孝)