インタビュー

SCEKプレジデント川内史郎氏ロングインタビュー

アジアでPS4が受けている理由と韓国発のPS4タイトルについて

アジアでPS4が受けている理由と韓国発のPS4タイトルについて

ブースでもっとも人気が高かったのは「Winning Eleven 2015」
子供は「Minecraft PlayStation 4 Edition」。この辺りは万国共通
インディーコーナーでは韓国産タイトルが公開されていた
現在の韓国パートナー

――私はアジア市場は、旧世代のハードを日本や欧米より長く販売するというイメージがあるのですが、今回の出展はすべてPS4でしたね。それは何故ですか?

川内氏: 我々として新しいゲームをアピールするためにPS4を見てもらいたいというところがあって、今回PS4にしていますが、もちろん、PS3も販売していて、PS3専用のタイトルもまだありますからね。

 逆に日本の方がPS4への移行が遅れている感じがあります。ソフトの売り上げを見ても、同じタイトルがPS3とPS4で出ているとPS3の方が多かったりします。それに比べると韓国だけではなくてアジアはすでにPS4に移行していて、PS4とPS3の両方あるタイトルを出したらPS4の方が倍以上売れるのですよ。

――なるほど。ユーザー自身がPS4にかなりシフトしてきているという実情があるんですね。その理由は何ですか?

川内氏: 日本に関して言うと、やはり販売のタイミングが日本だけちょっと遅れてしまったことと、遅れたのはタイトルを揃えたりといった事情ももちろんあったと思いますが、アジアでは日本のタイトルだけではなくて、欧米のタイトルも扱えるのでタイトル数が多いのですね。しかも、アジア先行で発売することができたので、ユーザーさんの支持をもらえて、割と話題にしてくれて、コアなゲームユーザーさんから一般の人が話題を聞いて見てみたいな、やってみたいな、やってみようかなという流れができたのかもしれません。購買していただく方の層が明らかに変わってきているというところもあります。

――一般の人たちがPS4に対して期待していることとは何でしょうか?

川内氏: もちろんゲームマシンというイメージはあるかもしれないですが、ゲームだけじゃないんだなと。ビジュアルソーシャル機能を使ったものがすごいらしいと。ゲームといってもすごいらしいな、みたいな。

 私が店にいって例えば6時、7時くらいにいくとネクタイを締めた人がかなり来るのです。一般の方にはまだゲームをやったことがない人とかももちろんいらっしゃるのですが、そういう人たちがPS4に関心を持ってくれる。一方で、私の顔を見て「川内社長!」と言ってくれるユーザーは、もちろんPS4を買ってくれているのですが、PS2の時からのユーザーだったりするわけです。聞いたところによると、PS3でいったんゲームから離れて、またPS4で戻ってきてくれたということもあるようです。

ハ氏: 韓国のメディアさんから言われているのが、やっぱりSCEKが出るG-STARと出てないG-STARでは全然違うと。ご覧になっておわかりだと思いますが、オンラインゲームの会社って、タイトルが1つか2つじゃないですか。うちは45タイトルですよ!(笑)。こんなたくさんの、あらゆるジャンルのゲームが楽しめるということが、これこそゲームだと。このブースだけがG-STARという感じがしますと言われました。

――初日の発表会では、韓国のパートナーも紹介しましたが、確実にその数が増えていますね。PS4の成功によって、韓国メーカーのSCEKを見る目も変わってきているのでしょうか?

川内氏: PS4を発売してからは変わりましたね。ただ、BlueSideさんとの「Kingdom UnderFire II」での協業発表はかなり前に表明していました。

――その発表会が行なわれたのが2010年ですよね。あのときにはPS3向けと発表していて、いつの間にかPS4になってますね。

川内氏: 良く覚えてますね(笑)。彼らはそういう意味ではPS3の開発状況というものを知っていて、その上で現在PS4で開発に取り組んでいる。彼らから発信してくれているのは、PS4は本当に開発しやすいと。パフォーマンスも出るし、PCともまったく遜色ない、もしくはもっとやりやすい。良いパフォーマンスが出るということを、他のデベロッパーさんに結構話してくれていたりするようです。

 あとはPS4が話題になることでPCのデベロッパーさんがこっちを向いてくれて、こんなに話題になって売れているのであれば、PS4で開発してみようと。今持っているアセットをコンバージョンするのは簡単ではないけれども、しやすくなっていると聞いたので、それではということで参加いただくデベロッパーさんも増えています。

――今まではなかなか韓国産のPSタイトルは出てきませんでしたが、PS4ではそれが変わりそうですか?

川内氏: 確実に変わりますね。例えばさきほどから話している「Kingdom UnderFire II」はワールドワイドで展開していきます。それから、「Diablo III」であったようなPCからのコンバート。それから、今後はコンバージョンだけではなくてPS4向けにエクスクルーシブに開発するというのも出てくるでしょうし、まだお話しできていないところでは色々と用意しています。

――今回は比較的ライトなインディータイトルが3タイトル出展されていましたが、大型タイトルもありますか?

川内氏: ありますよ。結構名の知れたというか、話題になっているPCゲームをそのまま移植してくるだけでもPCゲーマーがごそっと来るので、PCからの移植は重視しています。PCはゲームを遊ぶためにアップグレードするとけっこうお金がかかったりしますよね。それならPS4を買う方が安かったりする。同じようなパフォーマンスか、それよりもいいかもしれないし、ソーシャル機能もあるし、聞いて見るとおもしろそうだよねと、そういう循環が生まれるようになればと思っています。

――韓国産のタイトルはいくつぐらいリリースされる予定ですか?

川内氏: 韓国産のタイトルは今の所PS Vitaが1つあっただけで、韓国メイドのPS4タイトルはまだないです。今回出展したタイトルは2015年発売予定です。

――大型タイトルとしてBlueSide「Kingdom UnderFire II」がありますが、開発にかなり時間が掛かっていますね。

ハ氏: もともとPS3で開発していて、PS4に開発を変えて作り直しているからですね。

川内氏: PS3でやってたときにやはり色々と苦労もしたりして、聞いてみるとPS4ももうすぐ出るらしいよねということで、だったらもう新しいハードでやらせてくださいということになりました。だからニューヨークで行なわれたPS4のローンチベントにも「Kingdom UnderFire II」の名前があったんです。

――あのローンチベントから2年近くが経過しましたが、まだPS4版が発売されていません。開発のほうは大丈夫ですか?

ハ氏: 彼が言ってることは、PS4はびっくりするくらい開発しやすい。これはもう世界最高で、開発に対してはこれ以上のものはないとおっしゃっていました。

――来年はきっちりと出ますか?

川内氏: もちろん出ますよ。

――「KUF2」を始め、2015年は韓国産のタイトルがいくつくらい揃いそうですか?

川内氏: いくつとはなかなかちょっと言いづらいですが、いまここで展示させていただいている3タイトルと、あと韓国デベロッパーさんがいま6社表明していただいてますし、今交渉しているところもあるし、表明はしたけれども、具体的な話を詰めているところもあります。今後続々出てくると思います。

ハ氏: 最近他の会社もみんなPS4で開発しているので、うちもやらなくちゃいけないかなという動きにまでなっています。

――たとえばNHNさんやNCさん、ネクソンさんのような大手メーカーもPS4に関心を持っている?

川内氏: 興味はあるでしょうね。

ハ氏: もちろんですね。でも「GTAV」の販売数や売れ行きを見ていたら、これは冗談じゃないなという感じは受けていると思います。

川内氏: 「GTAV」は滅茶苦茶話題になっています。プロモーションがなくても売れまくるタイトルです。

――今回、パラダイスホテルにあるプレイステーションゾーンをちょっと見せていただいたのですが、これはどういう経緯で生まれたのですか?

ハ氏: 釜山は観光地なので、ホテルの競争が激しいのですね。ホテルから宿泊客に対して新しいサービスを何かできないかという相談がありまして、何回もラブコールを受けていたのですが、向こうで結構良い場所をとってもらって、ホテル側は他のホテルでは提供しないサービスを提供するし、ウチはプロモーションができるというお互いのニーズがちょうど合いましてそこでやることになりました。

――何年間くらいやるのですか?

ハ氏: 3年くらいですね。3カ月に1回くらいタイトルを変えています。観光地なので、平日はあまり人が来ませんが、週末とか、特に夏休みとかになるともう行列です。4人、5人がかりでそれを止めないと行けないくらいまで人気になります。あとは親御さんが子どもをちょっと預けてカジノに行くこともあるようです(笑)

川内氏: パラダイスホテル以外にもチェジュの新羅ホテルとかいくつかでやっています。

――いま韓国内にいくつあるのですか?

ハ氏: 今結構なくなりましたね。4つですね。4~5年前は映画館も3つくらいあったのですが、最近なくなりました。

川内氏: 後はリゾート地のスキー場の所に設置してあります。パラダイスホテルの方も、ああいうのを見てラブコールをかけてくるのです。

ハ氏: やっぱりこういうところに来られる人たちって、購買力がある人たちじゃないですか。購買力を持っている人たちなので効果は大きいですね。

――1つ思ったのは、あそこで楽しいなと思ってもその場で買えないじゃないですか。ワンストップで買えないのはちょっともったいないと思ったのですが。

ハ氏: その代わりパンフレットなどは配っていますし、店舗の案内などもしています。スタッフはパラダイスホテルの正社員で、面接時にどれだけプレイステーションが好きかを聞いた上で雇っています。

――日本とか欧米のプロモーションとはちょっと違いますね。こういうスタイルが韓国の人の好みなんでしょうか?

川内氏: どうなんだろう。好みなのかな?

ハ氏: 好みというか、やはりそこは規制との兼ね合いです。韓国には色んな規制がありまして、特にゲームに対して、特に親の目が厳しいので、目にとまらないようにプロモーションすることが大事です。

――基本的に目立つ形のものはだめなのですね。

ハ氏: そうなのです。我々は違いますよ、ちゃんと注意を払っていますよというやり方をしないと、抵抗心が結構強いので。

【プレイステーションゾーン】
釜山の観光地海雲台の代表するリゾートホテル パラダイスホテルの地下にあるプレイステーションゾーン。宿泊客限定のサービスとなっているが、無料で最新タイトルを遊ぶことができる

――SCEKの今後の事業展開について教えて下さい。

川内氏: 今回このG-STARに出展した主な目的の1つなのですが、ユーザー層を広げることです。特にこのG-STARで遊んでいただきたいのは、今の私たちのコンソールのユーザーさんに加えて、PCのオンラインゲームやモバイルゲームをやられている、要するに本来G-STARにお見えになるお客さんにもプレイステーションならではの没入感を感じてもらいたい。それを継続することによって、韓国マーケットのユーザーの底上げができて広がっていくということで、さらにデベロッパーさんにも参入いただくことで、いい相乗効果を狙っていくことをこのまま継続してやっていきたいです。

 やはりあとはPS4ですね。PS3もPS Vitaももちろん販売を続けていきますし、プロモーションもするのですけれども、やはり軸となる中心のフォーカスするのはPS4で、そこでPS4に興味を持っていただくというのも進めて行きたいと思っています。

――今回Actozさんが「ファイナルファンタジーXIV」を出展しています。現時点ではPC版だけですが、SCEKとしてPS3、あるいはPS4版を出したいという考えはありますか?

川内氏: もちろんそうです。ただ、ここに関しては東京サイドとの話もありますので、まだこっちに届いていない情報もあったりもしますが、「ファイナルファンタジーXIV」に関してはまだお話できることはありません。当然、スクウェア・エニックスさん自体がPS4の魅力を十分おわかりいただいていますから、我々としてやらない理由はもちろんないし、どんどん一緒にやっていくというのは、基本的な考えとして持っています。

――機会があれば出したいが、オンラインゲームならではのサーバーの話だったり、韓国独自の規制だったりと色々あるので簡単な話ではないということですね。

川内氏: おっしゃるとおりです。

――ちなみに川内さんの任期はいつまでなのですか?

川内氏: 特にありません。できればずっといたいですよ。

――それは韓国のゲームファンにとっては嬉しいのではないですか?

ハ氏: もう最高です。ただ少し困っているのが、プロデューサーを招いてイベントをやる時にプロデューサーよりも川内さんが登壇したときのほうがもっと盛り上がります。これはちょっと困ります(笑)。

川内氏: それはダメだろ(笑)。

――最後にゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

川内氏: PS4の発売からもう1年近く経つのですが、ますますゲームマーケットや皆さんの声援が集まってマーケットも盛り上がってきているので、ありがたいですし、感謝しています。韓国だけにとどまらず、ワールドワイドでプレイステーションというのを認知につながるでしょうし、顧客の皆さんの期待に添えるようなものを、これからも作っていきたいです。皆さんの声援がやっぱり私たちの力になりますので、それをバネにしてこれからも頑張っていきたいと思いますので、是非よろしくお願いします。

ハ氏: G-STARに出たりするのは、ゲームの素晴らしさを伝えるためです。それは韓国の一般の方が思っているちょっとネガティブな考えとは違います。試しに見てください。触ってみてください。こんなに素晴らしいものですということを伝えたいです。今後もそうした活動を続けていきたいです。

――ありがとうございました。

(中村聖司)