インタビュー
【タイトー特集】ON!AIR事業部 事業部長 川島健太郎氏インタビュー
ゲームの中心価値は“おもしろさ”。タイトーが目指すソーシャルとアーケードの融合とは?
(2014/9/23 00:00)
タイトー特集第2弾では、9月17日に掲載した「LINEパズルボブル」プロデューサー西脇剛志氏に続いて、ON!AIR事業部 事業部長の川島健太郎氏のインタビューをお届けしたい。
ナムコで家庭用ゲームを作ってきた川島氏が、ソーシャルとアーケードを一緒にした理由
――川島さんは実はバンダイナムコ出身と言うことで驚いたのですが、タイトーに入るまでのキャリアを教えて下さい。
川島氏:そうなんです。1994年にナムコに入社しまして、タイトル的にはスーパーファミコンの「Jリーグサッカープライムゴール3」という当時としてはナンバーワンのサッカーゲーム企画を担当しまして、その後、「ファミスタ64」というニンテンドー64のゲームのディレクターを担当しました。
PS2時代は「7(セブン)~モールモースの騎兵隊」というRPGを出しまして、その後は「ヴィーナス&ブレイブス 魔女と女神と滅びの予言」というRPGを作りました。それまでずっと家庭用のプロデューサーをやっていて、その後は自分のチームに何人かプロデューサーがいて彼らが手がけるタイトルのプロデュースをするという仕事をしていました。最後に直接開発に関わったのはWiiの「FRAGILE さよなら月の廃墟」というタイトルのプロデューサーとしてです。基本的にはクリエイターです。ずっと家庭用の開発畑を歩んできました。
――過去に携わっていたタイトルを見る限りだと、シリーズものやナンバリングものではなく、常に新しいことを手がけている印象がありますね。
川島氏:そうですね。僕はずっと我が儘を言ってオリジナルばかりをやらせてもらっていました。2012年の5月からタイトーに移りました。
――ON!AIR事業部の事業部長ということは、タイトーの主要なデジタルコンテンツはすべて掌握される立場ということになるわけですか?
川島氏:そうですね。7月からアーケードの一開発部門も兼務することになりましたので、タイトー製アーケードゲームからソーシャルまで多くの範囲を担当すること全部になります。
――新しい名刺にはON!AIR事業部の名前がありませんが、なくなるのですか?
川島氏:アーケードゲーム事業もモバイルゲーム事業も連携をし、事業部の枠組みを越えてアーケードとソーシャルの開発を一緒にしようと考えていますので、事業部としてはデジタルコンテンツとして1つになっています。
――なぜコンソールとソーシャルではなくて、アーケードとソーシャルをくっつけるのですか?
川島氏:コンソールは景気が悪いというのもあるんですけど(笑)、ソーシャルと言いながら実はソーシャルという捉え方はしていません。コンソール以外のデバイスというくくり方で、メインのプラットフォームが、今はスマートフォンに来ているという理解の仕方です。
――まず、そのスマートフォン事業についてですが、川島さんの中で、現在タイトーのスマホ事業はどういう状態にあると考えていますか?
川島氏:スマートフォンは大きな流れがあって、ブラウザ向けのWEBアプリケーションが最初にあって、ガチャでカードを集めるゲームがあって、そこからどうやってネイティブアプリに対応させていくかという課題を各社さんはお持ちだと思うのですが、我々は運営面ではまだWEBアプリケーションをいくつかやっていますが、現在開発しているものはすべてネイティブに振ろうと思っています。
ネイティブという言い方も僕の中では違和感があって、要はゲームテクノロジーだと思うんです。その時々にあった1番素晴らしい体験を提供できるテクノロジーを使ってゲームを提供するという点では一貫していると思っています。
――そのテクノロジーについてですが、現在ネイティブアプリは何をベースにして開発しているのですか?
川島氏:基本Unityです。ただ、ゲーム開発環境は何年かしたら変わってしまうので、ここの選定に関しては重きはおいておらず、現状はUnityというだけです。
――今回、中国Qihoo 360と協業の基本合意を結ばれた「パズルボブル」についてですが、非常に良くできたゲームなので、日本でのヒットはある程度予想できた部分はありますが、韓国でのヒットは正直意外でした、これは何が要因になったと考えていますか?
川島氏:1つあって、実はこれ私もタイトーに入るまで知らなかったんですが、かつて韓国では「バブルボブル」のアーケードが大ヒットしたことがあったんです。
――うわ、それは知らなかった(笑)。
川島氏:はい、私も知りませんでした(笑)。ですので「バブルボブル」のキャラクターは韓国では凄いIPなんですね。アーケード版がヒットしている頃には、電車の中に全面広告を打ったこともあるようです。
――そうなんですね。アジアのお土産物屋に行くと「Angry Bird」のぬいぐるみや帽子などが売られていたりしますが、韓国でもバブルンとボブルンのアイテムが売られていたりするんですか?
川島氏:残念ながら、我々が感知しないところで、バブルンとボブルンが描かれた商品が流通している例もあるようですが、女性向けや子供向けのアパレルの正規ライセンス品なども存在しています
――つまり、そういった下地があったことが韓国でのヒットに繋がったのではないかと?
川島氏:そうなんだと思います。ゲームとそのキャラクターは最初から認知されていたんです。私は実は知らなかったのですが、現地の方に話を聞いてみると、そうだったんです。
――しかし、それだけ人気だったら、「バブルボブル」をスマホアプリにして展開すればかなり需要がありそうですよね(笑)。
川島氏:そうなんですが、そこで1つ難しいのが、「バブルボブル」はアクションパズルゲームで、スマートフォンの操作性で、そのアクション性がどこまで再現できるか未知数のところがあって、なかなか難しいところがあるんです。ただ、現時点でハッキリとしたことは言えませんが、検討はしています。
―― それはほかにも有力なIPがあるなかで、他の選択肢と同様にスマホアプリ化を考えているというわけですか。
川島氏:そうですね。
――それから私はひとつ勘違いしていたのですが「パズルボブル」は北米ではまだ展開していないのですね?
川島氏:そうなんです。北米及びグローバル展開に関して、現在いくつかの会社さんと交渉しているのは事実です。まだ決まっていませんが、比較的早い段階で展開したいと考えています。
――「Candy Clash Saga」を筆頭に、北米市場では肥沃なパズルゲーム市場が存在しますが、にも関わらず北米展開が後回しになっているのは何か理由があるのですか?
川島氏:正直に言うとリソースの問題で、なかなかそこまで手が回らなかったという部分はありますよね。
――なるほど、韓国が先というより、そこはgumiさんの協力のおかげという部分もあるわけですか。
川島氏:そこは当然ありますね。gumiさんは「パズルボブル」以前にもヒット作がありましたし、単純にライセンスアウトをして儲けたいというわけではなく、一緒になって開発をして、いかにその国に合わせた形で、おもしろさを作っていけるかということを議論できる会社と組みたかったんです。そういう意味ではgumiさんの運営チームは、私も実際に何度か訪問させていただきましたが、非常に信頼できる会社だと思っております。