インタビュー

北米の老舗オーディオメーカー・Polk AudioのEd Johnson氏へインタビュー

サウンドバ-タイプのスピーカー「N1 surroundbar」

サウンドバ-タイプのスピーカー「N1 surroundbar」

サウンドバ-タイプのスピーカー「N1 surroundbar」
音の位置を正確に聞かせるために、不要な聞こえ方を打ち消すという「SDA Surroundシステム」。ノイズキャンセリングに原理は似ているというが、設置タイプのスピーカーでこれを行なう仕組みは特許を取得しているそうだ

Johnson氏:それではまず、「N1 surroundbar」について紹介しましょう。大きな特徴は“SDA Surround”という独自のシステムにあります。通常の2つのステレオスピーカーでは、距離感や音の大きさによって、音の聞こえ方が全く変わってくるのですが、このSDA Surroundシステムはそういった問題を解消するひとつの答えです。

 音の聞こえ方が変わる理由には、通常のステレオでは再現できなかった「音の流れ」があります。例えば、左のスピーカーだけから音が出ても、人は左の耳だけでなく右の耳でも、その音を聞き取ります。イヤフォンやヘッドフォンは別ですが、通常のスピーカーシステムでは、左からの音、右からの音の位置を厳密に知覚することが難しくなってしまうのです。

 そこでSDA Surroundシステムでは、“左の耳だけに届けるべき音を左耳だけに”届けます。左スピーカーから出ているのに右耳に届いてしまいそうな音は、右スピーカーから近い別の音をぶつけて消してしまうのです。それによって、左から出ている音がハッキリと聞こえるようになるのです。

――おお……。これはものすごい技術のような……。どうやって音を打ち消しているか、もう1度お聞きしてもいいですか?

Johnson氏:詳しく説明をするととても長く難しい話になりますが、原理そのものはすごく単純なんですよ。音は波動なので、マイナスの波動をぶつけてあげればゼロになります。それを細かく的確に行なってあげるというシステムです。

 この技術は、実際に音を聴いているユーザーは気づかないかもしれません。聴いている人は単純に“音がくっきりと良く聞こえる”という感想だけが残るのです。

――うーむ、なるほど……。イヤフォンやヘッドフォンで、ノイズキャンセリングを搭載している製品は多くありますが、おそらく原理はそれに近いものですよね。ですが、スピーカーでそれを行なうというのは聞いたことがありません。ポピュラーな技術ではないですよね?

Johnson氏:そうそう、その通り。ノイズキャンセリングに近い仕組みなのです。ポピュラーな技術ではありません。スピーカーでそれを行なうというのはPolk Audioでしか行なっていないのです。特許も取得しています。

 実は1980年代に、これに近いノイズキャンセリングを搭載したスピーカーというのを作っていたのです。ですが、その仕組みのためにはスピーカーの形状に横幅が必要でした。ですが、当時は細いスピーカーが喜ばれたのです。それ以降は、このテクノロジーは使わずに放っておいたのですが、最近はサウンドバーという、この技術にぴったりな横幅のあるスピーカーが出てきました。そこで、もう1度この技術を蘇らせたのです。

こちらの図はおおまかなドライバーの数とのことだが、「SDA Surroundシステム」で音を打ち消すためにはサウンドバ-タイプの横幅と、これぐらいのドライバーユニットの数が必要になるそうだ
北米では35歳以上のゲーマーが37%を占め、ソフトを多く購入する層の平均年齢は35歳というマーケティング結果に。ある程度、自分の好みとライフスタイルが完成されている層ということで、デザインもそれに合わせている

Johnson氏:私たちはまず、ゲームが好きな人達のマーケティングをしたのですが、想定していたものとは変化がありました。北米では35歳以上のゲーマーが37%いたのです。全体の47%は女性だったのにも驚かされました。そして、ソフトを多く購入している層の平均年齢は35歳でした。私たちが最初に思っていたよりも、高い年齢の人たちがメインのターゲットになっていたのです。

 そういった成熟した年齢の人達は、音に対してもクオリティが高いものを欲しがるのです。そして、デザインにおいても、奇抜なものより、家の中でも馴染むようなものが好まれます。

 私たちが、いや、どの音響メーカーもそうだと思いますが、「そこにまさに音(音源)があるかのような環境を作り出すこと」が、最終的なゴールです。そこにゲーミングというカテゴリーが加わるのは、新たなチャレンジになりました。

 「N1 surroundbar」では「Halo」と「Forza」に特化したチューニングモードを搭載しました。それぞれのモードは「Halo」だけでなくFPSシューティング全般に向いている、「Forza」だけでなくレーシングゲーム全般に向いていると言っていいでしょう。

 DSPモードに「Warrior(Haloモード)」、「Racer(Forzaモード)」、その他に映画用の「Cinemaモード」、音楽用の「Concert」があります。サブウーハーが内蔵されていますが、もっと低音を強めたい時には別のウーハーを追加できます。接続は、光端子、3.5mmアナログ、APTx Bluetoothの3つがあります。

――Xbox Oneだけでなく、Xbox 360や、その他のハードで使っても効果がありますか?

Johnson氏:Xbox Oneのために作られたものではありますが、Xbox 360やプレイステーションなど、他のゲーム機でも、もちろん効果がありますよ。とはいえ、「Halo」モードと「Forza」モードは、それらのタイトルに合わせたスペシャルなチューニングなので、それらを遊ぶのが1番です。

――「Haloモード」や「Forzaモード」は、どのような効果が得られるモードなのですか?

Johnson氏:それぞれのタイトルで、Microsoftと当社のエンジニアが話し合って作り上げました。やり取りがものすごく多かったですね。例えば、「この音はもっとこう聞こえるように」とか、「このシーンではこの音はもっと抑えて」というように。ゲームの開発チームが納得するまでチューニングしました。

 この機能は、高音を強めるとか、中域を太くするとか、そういったイコライザー的なチューニングではなく、ひとつひとつのシーンに対して、「爆発音がもっとくっきり聞こえるように」など、細かい要望を実現しているのです。“開発者が思う理想的な聞こえ方を忠実に再現できるようにした”モードですね。

ターゲット層に合わせ、奇抜なデザインではなくオールドスタイルで生活に溶け込めるデザインに仕上げたそうだ。色はホワイトとブラックがある

(山村智美)