インタビュー
「ドラゴンズドグマ:ダークアリズン OST」発売記念インタビュー
コンポーザーの牧野忠義氏を直撃!
牧野氏自ら5.1chのサラウンドミックスまで手がけた楽曲を収録
本人による楽曲解説、サントラプレゼントも!
(2013/4/24 00:00)
プレイステーション3/Xbox 360用オープンワールドアクション「ドラゴンズドグマ:ダークアリズン」(以下「ダークアリズン」)の発売前日となる4月24日、「ドラゴンズドグマ:ダークアリズン オリジナル・サウンドトラック」(以下「ドラゴンズドグマ:ダークアリズン OST」)が発売される。2012年5月に発売された「ドラゴンズドグマ オリジナル・サウンドトラック」と同様、今回もスクウェア・エニックス ミュージック(以下スクエニ)からの発売となる。
このサントラは2枚組みで、Disc1には「ダークアリズン」の新規楽曲を中心とした25曲が、Disc2には「ドラゴンズドグマ オリジナル・サウンドトラック」未収録楽曲、前作のベストセレクション楽曲、ボーナストラックを含めた28曲が収録されている。
サントラ専用の公式サイトも公開されており、収録曲のサンプルを聴くこともできる。サンプル曲は徐々に増えていき、サントラ発売日である4月24日にはすべての曲のサンプルが公開される。
この度、サントラの発売を記念しコンポーザーの牧野忠義氏にインタビューを行なった。また特別に、Disc1で牧野氏が担当した楽曲の解説をご本人にしていただいた。じっくり読んでから実際の楽曲を聴いていただきたい。
【牧野氏本人による楽曲解説】
01. Main Title ~DarkArisen~
前作、ドラゴンズドグマの裏メインタイトル曲として存在していましたが今作ではメインタイトルとして使用。「Eternal Return」と「Coils of Light」のフレーズを共存させてリハーモナイズしました。
02. 願い ~オルガ~
波打ち際に佇むオルガ。その願いの意味とは。彼女から感じる神秘を楽曲に落としました。このバイオリンの旋律、すごく気に入っています。歌を無くそうかと思ったくらい(笑)。
03. 黒呪島 入り江
黒呪島上陸から始まるダークアリズンの世界を彩る神秘的な1曲です。「Coils of Light」のテーマを元に、幾重にも重なるボーカルが印象的です。
04. 深き闇へ
大きな扉が開いた先にあるものは……。コレくらいの大きな扉を動かす電気代が不安です。
05. 通常戦闘 ~黒呪島内~
黒呪島内でのみ、戦闘曲を変更したいという要望をだし実装してもらいました。民族チックに怪しく、激しく変化していく楽曲構成の第1段階です。
06. 気配
不気味な大気の音と共に、迫りくるものは如何なる者か? 黒ネコ?
07. 漆黒の追跡者 ~デス戦~
このインパクト! 恐怖感! 焦燥感! そう、火○スです。死のファンファーレをご堪能ください。
08. 寿命 ~バロック~
謎の男との出会い。その男が語る言葉の真意は? 良い剣をお持ちです。
09. 羨月楼
蒼い月明りが差し込む空間に合う様、ヒンヤリした温度感の楽曲で構成しました。プレーヤーの背筋をさっと撫でる雰囲気が好きです。
10. 怨嗟の囚人 ~囚人サイクロプス戦~
当初はサイクロプスの曲を当てていたのですが、動き始めたのを見て「あ、だめだ」と感じ1曲作りました。「ドラゴンズドグマ」風からはかなり離れて、無機質な殺人マシーンが大暴れするイメージで作ってます。
11.衝動 ~ドレイク凶種戦~
前作の「衝動」をアレンジし、より凶悪なドレイク戦用として今作では使用しています。もともと隙間の多い曲なので、音を詰めても良い感じになりました。
12. 覚者の隠れ家
かつて、ここに暮していた人がいるのでしょうか? そっと語りかけてくる様なボーカルですが、できるだけ印象に残らない方向で作りました(笑)。
13. 緊張戦闘 ~黒呪島内~
通常戦闘第2形態。パーカッションやブラスセクションが乗ってプレーヤーを煽っていきます。ここまでなら、まだ対応できるレベルの戦況です。
14. 真理の虚しきを知る眼 ~ゲイザー戦~
大きくてパッチリしたお目目が可愛いですね~(棒)。かなり長期戦になりそうだったので、曲としてはスローテンポで不協和音がジワジワくる、一言で言えば「嫌な感じ」にしてます(笑)。
15. 腐肉に群れし獣
これは木下(「ダークアリズン」のディレクター)が非常にこだわった楽曲です。通常の戦闘とは違う感じにしたいというオーダーで、食われた覚者やポーンたちの断末魔や、モンスターの底なしの凶暴さを曲で演出しています。
16. 追憶の城砦
入り組んだ構造をしているこの砦のどこかで時を刻む時計がある。に違いない、と勝手に想像して時計の音を入れました。ごめんなさい。
17. 絶望戦闘 ~黒呪島内~
通常戦闘第3形態。この曲が鳴ったらまず勝てないので逃げてください。WARNING。
18. 屍竜と術者 ~カースドラゴン&ダークビショップ戦~
これは「モンスターハンター」的な作り方をした上で、「ドラゴンズドグマ」フィルターを通しています。たぶん自分にしかわからないフィルターですが(笑)、どちらの風味も味わってもらえるのではないかと。
19. 死闘の果てに
この曲は「ドラゴンズドグマ」で作った楽曲です。ボス戦である条件を満たすと流れる一曲。激しい戦闘であればある程より効果を発揮します。中毒性あり。
20. 異邦の落都
不気味さと、切なさを共存させたかの様な美しいメロディーライン。ささやくように歌う男の子。この街を抜けたら……。
21. 後には何も残さない
ほぼシンセサイザーしか使ってないですが、恐怖感や威圧感は半端ない演出だと思います。
22. Coils of Light ~Dark Arisen MainTheme~
「Eternal Return」のメロディーを、より歌曲としてリアレンジした「ダークアリズン」のメインテーマ。これが聴けるという言うことは、あなたは真理に1歩近づいたという事かも知れませんね。
23. 輪の外へ
輪廻から解放される魂。色々言いたいけど言えない、言ったらチームの輪から外される苦しみ(僕の)。
24. 証明
波打ち際に佇むオルガ。今、運命がひとつに。(これはセーフ!? セーフ!?)
25. 雫が集いし坩堝で、我は待つ
「Coils of Light」と共に、初期に作ったコンセプト楽曲。「ドラゴンズドグマ」の統一テーマ「Eternal Return」と同様、「ダークアリズン」でも先にコンセプト楽曲を制作してから各楽曲に散りばめる方法で制作しています。この楽曲が意味するモノは? あなたの目で確かめてください!
「ダークアリズン」の曲について
――「ダークアリズン」では閉鎖的な空間が舞台となっていますが、どのようなイメージで作曲されたのでしょうか?
牧野忠義氏:舞台の設定自体が黒呪島という閉ざされた異空間、かつ誰もが行ける場所ではないので、よりダークな感じで、戦闘曲を中心に24曲作りました。
――曲名にはゲーム中の地名(「黒呪島 入り江」)や、ボスの名前(「漆黒の追跡者~デス戦~」)が用いられているものがあります。これらの楽曲は、ゲームの設定資料等を見ながら作曲されたのでしょうか?
牧野氏:ステージに関係する曲は、作曲する時点で黒呪島のステージができあがっていたので、ゲーム画面に合わせて作っていきました。死体沸きなどは、曲作りの段階ではシステムが組み上がっていなかったので、木下研人ディレクターや企画の方々から話を聞いて作りました。
ボスの名前が入っている曲に関しては、モンスターに合わせたテイストにしたかったので、差別化と「ドラゴンズドグマ」らしさを共存させる事が大事になってきます。黒呪島での戦闘曲として、前作ではタブーとしていたシンセサイザーを味付けに使ったり、敢えて「モンスターハンター」風な曲作りをして「ドラゴンズドグマ」としてのフィルターをかけたりして、幅を広げています。ボス戦やステージの曲は、個人的には動いているゲーム画面があると作りやすいですね。
「ダークアリズン」のメインテーマ「Coils of Light」は、黒呪島のストーリーしか手元に情報がなかったのでイメージを膨らませながら作っていきました。。
――「Coils of Light」はストーリーしか手元にない状態から作曲されたとのことですが、最初に生まれた楽曲なのでしょうか?
牧野氏:そうです。「Coils of Light」のメインになるフレーズを、黒呪島で使われる曲に少しずつ入れてあります。最初にコンセプトがあって、そこから色んな曲に派生していくという作り方をいつもしています。ゲームをプレイしていただいた方が最終的にメインテーマへたどり着くイメージです。
――サントラに収録されている曲の中でオススメの(好きな)楽曲をいくつかご紹介いただけますか?
牧野氏:「ダークアリズン」のオススメという意味では、テーマ曲の「Coils of Light」(Disc1 Track22)ですね。「Coils of Light」には、レイチェルさんが歌う日本語Ver.と、ウイリアム・モントゴメリー君が歌う英語Ver.があります(※)。歌詞は、「ダークアリズン」のストーリーを手がけた開発者に書いてもらっています。この曲には、「ドラゴンズドグマ」シリーズの統一テーマ曲「Eternal Return ~Dragon's Dogma Main Theme~」のメインフレーズを入れて統一感を出しています。ゲーム中でどう使われるかぜひチェックしてください。
※サントラに収録されているのは英語Ver.のみで、日本語Ver.はサントラには収録されていない。
ゲームをプレイ中に流れる曲だと「漆黒の追跡者~デス戦~」(Disc1 Track7)ですね。サスペンスっぽくしてあります。
先ほど話題になりましたが、「モンスターハンター」っぽい作り方をした曲は「屍竜と術者 ~カースドラゴン&ダークビショップ戦~」(Disc1 Track18)です。実機の映像を見た時、激しい戦闘が展開していましたし、ストーリーに沿って考えるとここで1つのピークを作りたいと思ったので、縦刻みでノリノリの曲にしてあります。
「雫が集いし坩堝で、我は待つ」(Disc1 Track25)は、タイトル名からしてとても重要な曲になっています。
――その曲はどのような場面で使われるのですか?
牧野氏:まだ言えませんが後半で使われます。これは完全に「ドラゴンズドグマ」の曲の作り方ですね。真っ先に作ったのが「Coils of Light」とこの曲です。この2曲は、「ダークアリズン」の世界観を表現できるような曲にしてあります。ぜひ聴いてください。
「雫が集いし坩堝で、我は待つ」もそうですが、今回はソロバイオリンを収録しているので、音に説得力があります。ブルガリアで収録した前作とはまた違った、繊細で芯が強く、悲しげな音になっています。
――今回25曲を作り上げたそうですが、1曲作るのにはどれくらいの時間がかかるものなのでしょうか?
牧野氏:個人差はあると思いますが、僕の場合は1日半~2日くらいで作り、ゲームに乗せて音のバランスを調整していきます。
通常僕らが作る曲はステレオミックスなんですが、「ダークアリズン」に関しては5.1chのサラウンドミックスまで自分でやりました。実際にゲームで動かして、SEやダイアログを鳴らしてミックスをいじったりと、何回も試行錯誤を重ねて満足いくまで調整することができました。
――牧野さんと言えばギターのイメージが強いですが、何を使って作曲しているのですか?
牧野氏:ピアノです。ギターは一切使わないですね。ギターでやると幅が狭くなるんです。僕が作るのはオーケストラものが多いので、広い音域をカバーできる鍵盤の方が作りやすいんです。
スクエニの関戸剛氏とのコラボ、そしてUSTREAM番組「デーデーデェーA」について
――前回のサントラに引き続き、スクウェア・エニックスとのコラボとして、今回は関戸剛氏がギタリストとして参加しています。どのような経緯で関戸氏が参加することになったのでしょうか?
牧野氏:まず、「死闘の果てに」という曲のギターアレンジバージョンは作る予定で、当初自分1人でやろうと考えていました。ですが、スクエニさんとのコラボ第2弾が実現できると聞き、もう少し踏み込んだ、ファンの皆さんに対して満足度の高いコラボができないかと思い、相談させていただきました。もともと関戸さんとは面識がありましたので、こちらからオファーしました。
――どのようなきっかけで関戸さんと知り合われたのですか?
牧野氏:数年前に共通の知り合いに紹介してもらったのがきっかけです。それから何回か飲みに行っています。酒が弱い者同士、ソフトドリンクでも気が合うんです(笑)。
――どのように曲が作られていったのでしょうか?
牧野氏:音源は僕の方でラフを作り、関戸さんに送った後、顔合わせして「ここからここまでは関戸さんのソロで」、「ここはハモってもらえませんか?」のような話を綿密にしました。収録自体はそれぞれ別に行ない、僕の方でミックスして、関戸さんにチェックしてもらうというやり取りを何度もしました。
関戸さんが、僕のフレーズを完コピしたりと面白いことをしてきてくれたので、逆に僕が関戸さんからいただいたものを聴いてコピーすることもありましたね(笑)。
――やり取りの中でぶつかったりすることはあったのでしょうか?
牧野氏:思ったことは何でも言いましょうと最初に話をしていたので、遠慮せずに意見を言い合いましたが、ぶつかりはしなかったです。ただ、曲にはギターバトル感が出ていると思います。それぞれのギタリストが、主張するところは主張しつつも、「ダークアリズン」の曲としてユーザーさんに納得してもらえる曲になっていると思います。関戸さんとのコラボは本当に楽しかったですね。
――何度かお会いしているとのことですが、関戸さんはどんな方なんですか?
牧野氏:それは白石さん(※)の方が詳しいんじゃないですかね?(笑)
※スクエニ 音楽出版事業部の白石明生氏。
白石氏:本人は108個すべらないネタを持っていると自称しているんですが(笑)。昔、植松さんたちとやっていた「THE BLACK MAGES」のライブのマイクパフォーマンスでもなかなか笑いが起きませんでした。でも、本当は面白い人です(笑)。
――牧野さんもそのネタを体験されているんですか?
牧野氏:ありますあります。飲みの席でもそうですし、「デーデーデェーA」(※)でもいくつか披露してもらってますが、ウケてないですね(笑)。聞いている僕らにも笑ってはいけないという暗黙の了解が……(笑)。
関戸さんは大先輩なんですが、温和ですし、腰も低くて、いつも気を遣っていただいています。でもやっぱりギターをもたせるとえげつないことをしてくる人だなと。それが関戸さんの音として認知されている部分があると思いますね。個性のある方で僕はすごく好きです。
※4月10日から配信しているサントラの発売を記念したUSTREAM番組。
――“えげつない”というのはどういうニュアンスなんですか?
牧野氏:最大級の称賛です(笑)。簡単に言うと、すごくエッジの効いた音とフレーズですかね。僕らは曲に合わせた音色を作ってしまいがちなんですが、関戸さんはいつも関戸さんの音と弾き方で勝負してくるので、そういう所は見習わないといけないと思っています。今回のコラボでもそう感じました。聴くだけで関戸さんの音とわかるので、さすがに凄いと思いますね。
――先ほどお話に挙がったUSTREAM番組「デーデーデェーA」の反響はいかがですか?
牧野氏:毎週やって欲しいという反響を結構いただいています。お互いのファンの方々が時間になると見に来てくれて、コメントを残してくれています。僕もリアルタイムで見てますよ。関戸さんはリアルタイムでつぶやいているんですよね。
白石氏:そのツイートもなんというか……。放送1回目で「いいとも」という所を「ふともも」と言ったんですが、これはもうどうすればいいのかと思いました(笑)。正直、通常の音楽番組ではないですね。
牧野氏:作曲のやり方、会社間の作り方の違いなど、普段話す機会のない話をしたりしています。個人的に突っ込んだコラボ感は好きですし、ユーザーさんも楽しめたのではないでしょうか?
――全3回予定(4月24日の放送が最終回)なんですよね。
牧野氏:はい。最終回では演奏も披露します。最終回は、あのThe Black MagesとBlack Luteのコラボと言っても過言ではない内容ですから、楽しみにしていただければと思います。
――毎週やって欲しいという反響があるそうですが、継続する予定はないのですか?
白石氏:そういうありがたい反響をいただいているのはわかっているのですが、今の所予定はないです。
――アーカイブもされていませんが、アーカイブの予定は?
白石氏:今の所、弊社でやっているUSTREAM番組はアーカイブしていませんので……でもそこはお客さまの反響次第ですね。
ギターユニット「Black Lute」の活動予定など
――ギターユニット「Black Lute」で決まっている活動予定はありますか?
牧野氏:普段はそれぞれ別タイトルの制作を行なっているということもあり、「Black Lute」の2人が一緒に出ることはなかなか難しいですが、僕1人でも「Black Lute」の曲をやりますし、番組等で生演奏を1人でやることも多々あります。関戸さんとのコラボも今後の活動に大きく繋がっていくでしょうし、機会があればお客さんを呼んで本格的なライブも積極的にやりたいですね。
――最後に発売を待っているファンに一言お願いします。
牧野氏:「ダークアリズン」もそうですが、「ドラゴンズドグマ」というシリーズはユーザーさんに支えられているタイトルです。愛情を込めて音を作っているので、ゲームと合わせてサントラを楽しんでもらえたらと思います。是非とも5.1ch環境でプレイしてもらいたいです。
ゲームをプレイしながらサントラをじっくり聴いていただくことで、歌詞に込められた思いやメッセージ的なところもより理解していただけるかなと思います。特に「ドラゴンズドグマ」シリーズは、プレーヤーの心情を邪魔しないよう音量を控えめにしていますので、サントラでじっくり聴いてもらうと新たな発見があると思います。
――ありがとうございました。
「ドラゴンズドグマ:ダークアリズン オリジナル・サウンドトラック」を1名様にプレゼント!
スクウェア・エニックス様とカプコン様より、「ドラゴンズドグマ:ダークアリズン オリジナル・サウンドトラック」を1枚いただいたのでプレゼントいたします。ふるってご応募ください。
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