インタビュー

ポイソフト 開発チーム ロングインタビュー

最新作、3DS「マンションパーカッション」について

最新作、3DS「マンションパーカッション」について

3DS用ダウンロードソフト「マンションパーカッション。3月6日配信予定、500円

――「マンションパーカッション」についてお聞かせ願えますか。

中川氏:壁を叩いたらリアクションが返ってくる。それがリズムになったり、曲になったら楽しいねという所からスタートしたゲームです。誰でも楽しめて、好き勝手叩いていたら気持ちが良くて、ゲームになっていたらいいよねと。それを社長がプログラミングしています。

石川氏:僕はすぐプレーヤーを殺したい(ゲームオーバーにしたい)んですよ。「はい、失敗した! ダメ!」みたいな(笑)。ただ、今回はそれをしてはいけないと。

中川氏:誰でもできて、失敗のないゲームにしたかったんです。いい悪いは出るけど、死なない。

石川氏:音楽を使ったゲームなのですが、変なサンプラーみたいだと僕らは言ってます。

中川氏:そんなサンプラー的なゲームで、こうすると音や曲が出る、そういう感じを楽しんでもらえたらと。

――譜面を出さない、死なないなど、音楽ゲームとしてのお約束をかなり取っ払っていますが、どういったことから決まったのでしょうか?

中川氏:あくまで僕個人のイメージなのですが、譜面通りに叩いて本当にカッコイイのかなと。杓子定規な感じがあまり好きではなかったんです。だったら、思う様叩いて、プレーヤーが気持ち良ければいいじゃんと。

石川氏:僕は音楽ゲームを制作した経験があって、あのタイプはもう完成していますから、もういいやと思っていた所がありますね。

――作る側からすると、成績で上下をつけるのはある意味作りやすいと思うのですが、どのような気持ち良くなってもらう仕組みが入っているのでしょうか?

中川氏:気持ち良さの検証には時間をかけました。要素を突き詰めていった時にコール&レスポンスだろうと。こちらが叩いたら向こうが叩き返す、向こうが叩いてきたらこちらが叩き返す。それをストレス玉というもので表現しています。向こうが先に叩いてくると出てくるものです。ユーザーに対して与えているストレスを表しています。3個なら3個分の嫌な思いをしているから、3回叩き返さないと自分はスッキリしない。全部消して叩いたら、向こうは曲を流してきたり、叩き返してきたり、それが楽曲のようになっていく感じです。

石川氏:大枠では譜面は内部的にありますが、プレーヤーによって、長く空けてドンドン、連続してドンドンと、同じにはならないかなと。

中川氏:プロトタイプの時に他人のリプレイを見てみたら、同じステージなのに叩き方が全然違うんです。それは新鮮で楽しかったので、すれ違い通信で交換できるシステムを入れましたね。

石川氏:すれ違いのシステムを組んでいる時はやっぱりやめておけば良かったと思ってました(笑)。

中川氏:タイミングを取るようなプログラムは微妙に難しいんですよね。それをきっちり作りあげたので「コイツ天才だ!」と思いましたね(笑)。

石川氏:ここに来る前に「1回天才と褒めてくれ」ってお願いしたから言ってるだけですので(笑)。

中川氏:凄いと思ったのは本当なんですよ。

――気持ち良いというコンセプトをどうやって意志疎通したのでしょうか?

中川氏:社長はゲームっぽくしたい意識があります。僕はディレクションをしてますが、プログラマーなので同じ気持ちになりやすいんですよ。そこで北郷が「シンプルなゲームって言っただろ!」と言うわけです。そこでグルグルと回ってしまう。進めては戻しの繰り返しですね。

――ゲームっぽくする方がやりやすいですよね。

石川氏:そうですね。

――シンプルにしていけば行くほど、それをやって何が楽しいのか? となる。

中川氏:社長はコミュニケーションが密接にできるので、感覚の部分もうまく伝えられるんです。

――形になっていないものを口に出して、コミュニケーションをしていく中で求めていた形に近いものになる。それは大きな会社ではやらないし、やれないですよね。

中川氏:そもそもスタート地点からギャンブルということもあるし、全くないものに足を踏み入れようとするので怖いです。面白くなるかもわかりませんし。想像した部分でもすり合わせをするしかないですね。

石川氏:議事録が超重要です。後で見て、俺こんなこと言ってるよと(笑)。

中川氏:先週自分が言っていた意見と違う主張をしていたりするんですよ(笑)。いざ形になったものをプレイしたら何か違うな、ということがあるんです。今回は特に多かったですね。「王だぁ!」の頃はそれほど起きなかったのですが。昔は僕、頑固だったのかな?

石川氏:……過去形かね?

中川氏:ああ、今も頑固だね(笑)。昔は今より頑固だったんです。最初から企画書の段階から細かい所まで書いていたので動かしたくなかったんですが、開発を進めていく内に変えていけると思うようになったんです。なので「王だぁ!」と比べると仕様変更は結構するようになりました。

石川氏:ただ、どう変えてもいいけど「デザインデータだけは無駄にするな!」という意識が僕らにはあります。作ってもらったものは全部使うぞと。

中川氏:北郷の作業を無駄にしてはいけない。彼に頼むときはしっかり決めておこうと。

――作ってみたら違ってた、は1番まずいですもんね。

石川氏:僕は割とゲーム部分のテキストだけが出るプロトタイプを作るんですが、それでいけると判断したら北郷にデータ進めていいよと伝えることにしています。ただ、「早くしろよ! 俺には時間がないんだ!」と突っつかれるんですよね(笑)。

――大きい会社だと、仕様は決まっていなくても、とりあえず必要と思われるものを作っていったりすることもありますよね。

石川氏:よくわからないけど、こんな絵が出る! みたいなものから作っていったりしますね。

中川氏:大きい会社は分業性が災いして作業が滞ることもありますね。

――どのやり方がいいんでしょうね。

中川氏:完全分業は働く方は気楽ですね。

――先ほどの話にあったリプレイはバグの温床だったりして、みなさん嫌がりますよね。

石川氏:メモリーカード、セーブデータ、リプレイは本当にそうですね。

中川氏:でも外せない部分でしたのでやることにしました。

石川氏:「自分のプレイを人に見られると思うと恥ずかしいだろう?」って思いながら作りました(笑)。

中川氏:他にもスッキリ度や称号といった要素もあります。スッキリ度はわかりやすい指標として用意しました。

――たくさん叩くと増えるんですか?

石川氏:基本的にはそうです。最大で1,000%になります。

中川氏:ストレス玉を逃さず潰すと上がります。気持ち良く叩いて、リプレイを交換して、カッコイイリプレイがあればロックして保存と楽しんでもらいたいですね。

石川氏:正確に言うと音楽ゲームではないので、叩いてもいいし、叩かなくてもいいんです。

――めちゃくちゃ叩いたっていいんですもんね。実際遊んでみても、これまで遊んだことのない不思議なゲームです。

石川氏:1,500ちょっと叩くと「腕が限界だ!」と出て画面が暗くなります。その演出が凄くカッコイイので是非挑戦してもらいたいです。

――クリアすると称号が出るんですね。

中川氏:どんな称号が出ました?

――(持ってきていただいたROMで筆者がプレイ)「チョチョイ-ちゃん」が出ました。

中川氏:なかなかレアですね。「ちゃん」は、ちゃんとストレス玉を潰すと出ます。

――これらの称号はどうやって決めたのですか?

中川氏:開発の最後の方に決めたのですが、かなり揉めました。最初は4つの文字列を組み合わせようとしたんです。○○○で○○○で○○○な○○○みたいな。ただ、多すぎるとなり、前と後ろの2つにしようかと。

石川氏:その前の段階だと、出てきた数、潰した数、声を出した数を並べて、スッキリ度はいくつという予定でした。

中川氏:評価することは決まっているけど、雰囲気で伝えよう、意味のわからない言葉にしようなど、どんな言葉にするかで揉めたんです。全部英語にしてみようかという案もありましたね。Storm Passionとか。もう訳わからないなと(笑)。

石川氏:何もしないと「消費カロリー0kcal」とスポーツ飲料みたいな表示が出ます(笑)。

――どれくらいの称号があるのでしょうか?

石川氏:20種類くらいずつあるんですが、やり方によって出る、出ないがあるので20×20とはならないです。いつものようにプレイすると似たような称号が出ますが、別のプレイをすると別の称号が出るようになっています。

中川氏:開発でプレイしてもそれぞれ人によって同じように偏るんです。僕だと「口八丁手八丁-部長」になりやすいです。

石川氏:僕は「大爆発-先生」とか、そんなのに(笑)。

中川氏:自分だちで作っておいてなんですが、ちゃんと傾向が出るんだなと。

石川氏:そして称号もすれ違いで伝わります。

中川氏:称号からどんなプレイか気になるといいなと思いを込めて入れました。

――ステージは全部で7ステージですか?

中川氏:はい。「ひゅ~ストン」のステージなんかもありまして、最初からフルオープンです。

石川氏:1つずつオープンする話もあったんですが、順番に遊ぶなら変わらないじゃんと(笑)。

中川氏:そういえば、会社のロゴすら今回は切りましたね。

石川氏:最初に出る注意書きの所でポイソフトからのお願いだよって書いてありますし、そのあとにポイソフトのロゴ→セーブデータのロードとなると長いかなと思いまして、ざっくり切りました(笑)。

――ゲームスタートまでが近くなるのは、早くゲームを遊びたいユーザーからしたら嬉しいことですよね。

石川氏:僕らみたいな新興企業だと社名を知ってもらいたい気持ちもあるんですけどね(笑)。

――大きな企業だと作成基準でロゴの表示時間や表示順が決まっていたりしますが、そこも自由にできると。

中川氏:そうですね。前にいた会社にはありました。

石川氏:うちでは、誰も会社のロゴを出せって怒らないのでいいかなと(笑)。

中川氏:ロゴを切ったのは2週間前くらいだよね。社長は邪魔なものを切るのは得意ですね。

石川氏:せっかちなんで。

中川氏:ムービースキップできないと怒りますから(笑)。

石川氏:でもデザイナーは作ったから見せたいんですよ。その気持ちもわかるんです。

中川氏:それで僕らはスタッフロールをゲーム終わったら流すのではなく、メニューで選ぶ形にしました。見たい人は見てねと。どうせ流しても4人+α程度しか名前出てこないし(笑)。

石川氏:「王だぁ!」の時、エンディングを作ったら、出すものがなさすぎて余計なものまで出したくらいです。

――「マンションパーカッション」では、1ページとかなりスッキリですね(笑)。

石川氏:それでも僕と中川は2カ所出てます。川(kawa/gawa)が多いんですよね。wawawawawaと。

――ですねぇ……。

石川氏:もう……クレジットもええか(一同笑)。

中川氏:スタッフロールといえば、社会人になって始めてゲームのスタッフロールに自分の名前が出た時は嬉しかった。ただ、それを思い出すと、完全に作り手の自己満足だなと思いますけど。

石川氏:友人がアーケードの部署にいて、アーケードだと自分の手元にないから見られないじゃないですか。でも僕はコンシューマーだからいつでも見ることができます。そんな思いを込めて作ったゲームです(笑)。

――そんな思いは込めてないですよね(笑)。

石川氏:いっぱい人がいる会社いいなぁとね(笑)。

――いっぱい人がいるといいと思うんですか?

石川氏:はい。みんなが自分の手下ならいいなぁと。それほどいいことはない(笑)。

中川氏:遊んでいる間にゲームができたらいいよねぇ。

石川氏:僕らはミニ四駆で遊んでるから、ちょっとゲーム作っといてと。僕らがいろんなゲームを作って、誰かが続編を作ってくれるなら、それを楽しめますし。

中川氏:続編は大変ですから、前作を上回らなければならない。

――ユーザーから続編の要望が出たりするんじゃないですか?

石川氏:たまにTwitterで言われたりしますね。「もしかしてあの続編を作ってるんですか?」とかも。続編を希望してくれるなら、はっきりどれがいいか言ってもらえると助かります(笑)。

中川氏:「王だぁ!」を携帯ゲーム機で遊べるようにして下さいというのがありましたね。

――携帯ゲーム機はもちろんですけど、シミュレーションですし、スマートフォンとかでも遊びやすそうですね。

石川氏:AndroidはGoogle Playが出たばかりくらいの頃に検討して“見”(様子を見る)だなと判断しました(笑)。

中川氏:僕はタブレットが気になっていて、AndroidのSDKを落としてみたりしたんですけど、なんか違うかなと。

石川氏:ハードが多いと対応が大変ですよね。

中川氏:携帯アプリの開発をやったことがありまして、会社の棚に並んだ携帯で1つずつ試すんですよ。あれはなかなか……。

(木原卓)